とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第一七九話、投稿します。
次は四月一八日木曜日です。


第一七九話:〈情報共有〉とお披露目準備

イギリスまでの長距離移動によって、『スクール』の面々や林檎たちは疲れている。

そのため話をほどほどに、彼らはそれぞれがあてがわれた部屋で一息ついていた。

そんな中、真守は深城と垣根と共に、とある部屋を訪れていた。

 

その部屋では、一二歳で成長が停まった源白深城が眠った姿でベッドに横たわっていた。

もちろん深城の隣には、垣根帝督に用意してもらった真守の避難先の体を寄り添わせてある。

 

真守はベッドの端に座って、()りし日の二人のように眠っている自分たちを見つめる。

深城はベッドに座っている真守の隣で、腰を下ろしてベッドにもたれかかっていた。

垣根は窓際に寄り掛かって、真守と深城を見守っていた。

 

「……神浄の討魔。それが、上条くんの中にあった力なの?」

 

真守は深城の問いかけを聞きながら、一二歳で成長が停まった眠る深城の頭を優しく撫でる。

 

「アレイスターは神浄の討魔を『計画(プラン)』に利用していた。『計画』がとん挫した今、アレは誰にも制御不能になった。……だから、上条の願いによって自我と器を手に入れて、動き出した」

 

「あたしと真守ちゃんが願って、あたしが生まれたみたいに?」

 

真守は深城の問いかけに、静かに頷く。

 

真守は現在、コロンゾンを撃破した後上条当麻の身に起きた出来事について話していた。

 

上条当麻と神浄の討魔。それは一二歳で成長が停まってしまった源白深城と、一八歳の肉体を持っている源白深城とある種似た関係になっている。

 

『スクール』の面々やみんなの前で、そういう事はちょっと話ができない。

だから真守は深城だけを呼び出して、事の顛末を話していた。

 

深城は表情が暗くなった真守の隣にとんっと座る。

そして真守の事を抱き寄せて、真守の背中を優しく撫でる。

 

「あたしは幸せだよ、真守ちゃん」

 

深城は心を痛めている真守の小さい頭に頬を寄せる。

 

「あたしは真守ちゃんがいれば自分のことはどぉでもいいから。真守ちゃんと一緒にいられれば、それだけで幸せなの」

 

「…………ん、分かってる」

 

真守は深城に背中を撫でられながら、上条当麻のことを考える。

 

「上条当麻と神浄の討魔。二人は深城と同じで、完璧に分かたれることはなかった」

 

一八歳の深城は、一二歳の源白深城が真守に生かされているからこそ存在できる。

どうやったとしても、二人は分かたれる事ができない。

そして一二歳の深城は、一八歳の源白深城を通して真守と一緒にいる。

源白深城は、真守がいればそれでいい。だが上条当麻たちはそうじゃない。

 

「上条たちは互いが互いを許せない。認めるコトなんてできない。だから自分という存在を懸けて、戦うことになった」

 

席は一つだけ。どちらかが優先順位をつけて、どちらかが相手に席を譲らなければならない。

上条当麻の本質は、全てを拳一つで解決するというものだ。

だから根本的な部分が同じ上条当麻と神浄の討魔は、自分の存在を懸けて拳で戦うことになった。

 

「で。最後にはどぉなったの? どっちの上条くんが勝ったの?」

 

「私たちとずっと一緒に頑張ってきた上条だ。……それは必然だったのかもしれない」

 

真守は脳裏に勝利を勝ち取った上条当麻を思い浮かべながら、目を細める。

ぼろぼろにながらも、笑顔で勝利を掴んだ上条当麻。

あの優しい笑みを思い出しながら、真守は告げる。

 

「神浄の討魔は上条の中に帰った。それが本来、あるべきカタチだからな。幻想殺し(イマジンブレイカー)も上条の手に戻った。すべては元通り。これでコロンゾンの起こした事件にやっと幕が下りた」

 

真守は深城にすり寄りながら、心中を吐露する。

 

「お前が私のことを一番に考えてくれて良かった……」

 

真守は深城にすり寄ったまま、眠っている一二歳の深城の手を優しく握る。

 

「お前たちが一つの席を懸けて戦ったら、私は耐えられない……」

 

真守はインデックスたちの前で気丈に振る舞っていた。

だが本当のところ、真守は上条当麻と神浄の討魔が戦うことが怖かった。

 

何故なら真守にとって、どちらも正真正銘の上条当麻だからだ。

そこに違いをつけてしまうと、真守は大事な深城に違いを付けてしまうことになる。

 

真守にとって、どちらにも等しく価値がある上条当麻と神浄の討魔。

真守でさえ、二人を存続できるようにすることはできない。

 

神浄の討魔は世界の根幹に触れる事ができる力だ。だから不用意に手を出してはならない。

『流行』を冠する真守だからこそ、あれには触れてはならない。

 

だから真守は見守ることしかできなかった。

そして二人が戦うのが、本当に悲しかった。

 

「頑張ったねえ、真守ちゃん。大変だったでしょぉ」

 

「……本当に大変だったのは、上条だ」

 

真守は深城に頭を撫でられながら、すんっと鼻を鳴らす。

 

「でも私、頑張ったよ。頑張ってこらえてた。だからもっと褒めて、深城」

 

「ふふ。甘えん坊さんだ」

 

深城はにまにま笑いながら、すり寄ってきた真守のことを抱きしめる。

 

「良い子だ真守ちゃん。よしよし」

 

深城は真守の事を一身に抱きしめる。

真守は深城に抱きしめられて満足すると、体を起こして垣根を見た。

 

「垣根も褒めて。ぎゅー」

 

垣根は少し悲しそうな顔をして自分に抱擁を求めてくる真守を見て、くすっと笑う。

 

「かわいいヤツ」

 

垣根は笑うと、ベッドに座っている真守の隣に座って真守を抱きしめた。

 

「大変だったな、真守。……上条のために悩んでたってのが気に食わねえけど」

 

「ふふ。相変わらず独占欲強い。……ありがとう、垣根」

 

真守は垣根に包み込まれるように抱きしめられた、ふにゃふにゃ笑う。

深城はそんな真守の頭を優しく撫でる。

 

「えへへ。幸せだ」

 

真守は大事な人たちに囲まれて、ふにゃふにゃ笑う。

 

「真守ちゃんが幸せでうれしい」

 

深城は真守の頬をぷにぷにと突く。

垣根は深城が突いていない頬に顔を寄せて、真守の頬にキスをした。

 

「ふふー……っ」

 

真守は二人に甘やかされて、嬉しそうに笑う。

あまり甘やかされるとダメ人間になってしまうが、いまばかりは良いか。

真守はそう思って、大切にしたい女の子とだいすきな男の子に囲まれて幸せに過ごしていた。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

深城たちがロンドン入りをした夜。夕食後。

深城はリビングでみんなと集まって、真剣な表情でカタログを凝視していた。

何のカタログかというと、ドレスのカタログだ。

ウィンザー城で行われる、コロンゾンを倒した者たちを讃えるパーティー。

そこで着るためのドレスである。

 

「む、むぅぅ……難しいよぉ……ッ!」

 

深城は大量にあるカタログの一冊を手に取って、ぐぬぬっと歯ぎしりする。

 

「ダメだぁ!! 真守ちゃんに超絶似合うドレスを選ぶのってすごく大変だああっ!!」

 

深城はカタログを持ったまま叫ぶ。

深城にとって、自分のドレスなんて二の次。大切な女の子である真守のドレスが一番大事だ。

 

しかも真守はパーティで、マクレーン家の一員としてお披露目される事が決まっている。

それに加えて、真守はこれから学園都市の統括理事長として頂点に君臨するのだ。

そんな真守のことを家族として受け入れたマクレーン家は全力で支援する。

 

というわけで、今回のウィンザー城でのパーティーは重要なお披露目パーティーなのだ。

真守のドレスを選ぶ事に真剣となっている深城。

そんな深城をよそに真守はというと、呼び出した一方通行(アクセラレータ)に寄り添ってカタログを見ていた。

 

「一方通行、一方通行にはこれが似合うと思うな」

 

「面倒くせェ……」

 

一方通行はカタログを見せてきた真守の隣でげんなりとする。

 

「パーティーなンて性に合わねェ」

 

一方通行はソファの肘おきに肘を乗せて、本当に嫌そうに顔をしかめる。

そんな一方通行の隣に座っている真守はふふっと笑う。

 

「確かに一方通行(アクセラレータ)は下町でどんちゃん騒いでアングラ帝王やってる方がお似合いだけど。これから私の隣に立つんだから、こういうのも慣れてほしい」

 

真守は笑うと、悪戯っぽく微笑む。

 

「それに何より私のお披露目も兼ねているから、お前にはそばにいてほしい。だめか?」

 

「……聞くンじゃねェよ……」

 

一方通行(アクセラレータ)にとってこの少女はとても尊い存在である。

そんな存在が自分のことを必要としているのだ。断れるはずがない。真守も真守で一方通行に断られたとしても、引きずってでもパーティー会場に連れて行く気満々である。

 

「一方通行には黒いシャツに白いベストに、白いズボン。ネクタイはーピンクが良いかなあ。あ、でもでも白いシャツに灰色のジャケット、灰色のズボンに黒のネクタイとかもかっこいいかも」

 

「……オマエは自分のドレスを選べよ」

 

一方通行がじろっと真守を睨むと、真守は鋭く目を細める。

 

「一方通行」

 

「なンだよ真顔になって」

 

「私に、選択権があると本気で思っているのか?」

 

一方通行(アクセラレータ)は真守に問いかけられて、ちらっと垣根とアシュリンを見る。

 

「……やっぱり心配だから、少し丈が長いのがいいな」

 

「あらあら帝督くん。それは男の願望が入っていてよ。やっぱり真守ちゃんは少しスカートが短くてふりふりで、すらっとした足を見せた方がいいと思うの」

 

垣根はアシュリンの言葉にムッとして火花を散らす。

その向こうでは源白深城が一人でうんうん唸っているし、どう頑張っても真守には選択権、いいや人権までもがないかもしれない。

 

「オマエは変なベクトルの方向で大変だよなァ」

 

「そうだろ。だからこうして息抜きに一方通行(アクセラレータ)の服を選んでるんだ」

 

真守は自分の意見そっちのけでドレスを決めようとしている彼らを見て遠い目をする。

 

「大丈夫だ、私は一方通行の趣味を最大限に尊重する。……私も少しは尊重してほしいなあ」

 

遠い目をする真守。そんな真守を見て、一方通行はため息を吐いた。

 

「悲壮感漂わせるンじゃねェ。流石にそこまで変なのにはされねェ、……だろォが」

 

「ふふ。一方通行の慰めに自信がないのがなんともいえないな、ふふふふふ……」

 

真守は力なく笑いながらも楽しそうに目を細める。

アシュリンは顔を上げて、そんな真守へ声を掛けた。

 

「ねえ、真守ちゃん」

 

「? どうしたんだ、伯母さま?」

 

ちょっと不穏さを感じながらも、真守は微笑んで首を傾げる。

そんな真守へ、アシュリンは真剣な声を出して告げる。

 

「年の半分はウェールズに滞在するのはどう?」

 

「へ?」

 

「ほら。統括理事長さまに就任するって事は、多少の自由が利くでしょう? 最初の内は大変だけど、少し落ち着けば学園都市の技術なら、遠隔地からでも運営が可能でしょ? だったら年の半分はイギリスにいてもいいんじゃないかしら」

 

「……えー確かに統括理事長は自由な身だけど、私は学生だしなあ。……そういえば統括理事長が学校通うってちょっとおかしいかも……?」

 

真守がはっと息を呑むと、一方通行は呆れた表情をする。

 

「オマエ、学園都市を仕切るよォになっても学校に行くのかよ……」

 

一方通行(アクセラレータ)も一緒に行こう」

 

「……」

 

何と答えればいいか分からない一方通行。

真守はそんな一方通行を見てにっこりと微笑み、形の良い顎に人差し指を当てた。

 

「統括理事長と言っても学生だからなあ。ウェールズに半分いるのはちょっと……というか、マクレーン家の本邸って私が自由に出入りするとマズいんじゃなかったのか?」

 

真守はこてっと首を傾げて、アシュリンに問いかける。

真守はケルトの血に東洋の血が混ざっている。

要は異物混入という感じで、ケルトの民として受け入れられないのだ。

 

そしてマクレーン家本邸はケルトの民としての領域が大きい。

すると何が起こるかというと、異物っぽいのに異物じゃない真守にマクレーン家本邸が不自然に反応してしまうのだ。

 

ある意味バグが発生する。そのため真守は数日後にマクレーン家本邸に行くことになってはいるが、その時もあまり自由に移動できないハズなのだ。

 

色々と弊害があるはずなのに、その弊害を蹴飛ばそうとしているアシュリン。

真守がそれで大丈夫なのかと心配していると、アシュリンは目を細めた。

 

「真守ちゃん。常識にとらわれ続けてはいけないわ。何事も臨機応変が大事なの」

 

「伯母さままで常識云々を語りだした!? 垣根みたいなコト言ってる!!」

 

真守は驚愕して垣根を見る。だが垣根は真守に視線を向けなかった。

すっごく真剣な表情で、真守のドレスを選び続けていた。

 

「なんだと……っツッコミ入れるのが手間なほど真剣なのか……!?」

 

真守が恐れおののいていると、垣根は適当に手を振りながら雑誌を見つめたまま告げる。

 

「ああ、そうだ俺は真剣なんだ。後でたくさん突っ込んでやるから待っとけ」

 

「やああああちょっとえっちな言い方ヤメテ!」

 

真守はひいっと声を上げる。

そんな真守を見つめて、アシュリンは少し愚痴っぽいように熱弁する。

 

「マクレーン家の本邸では真守ちゃんを受け入れられるようにいま術式を精査しているの。だから最初の方は不自由だけど、少しすれば真守ちゃんでも自由にどこへでも行けるようになるわ。それが真守ちゃんにとって重荷なら、別荘でも造らせるから。どう?」

 

「いや、どうって言われても……ど、どうって言われても……」

 

真守は思わずぼそぼそと呟いて、困惑してしまう。

そして隣にいた一方通行を見た。

 

一方通行(アクセラレータ)ぁ……」

 

「俺を巻き込むンじゃねェ……」

 

一方通行は縋ってきた真守を見てため息を吐く。

そんな一方通行の向こうで、アシュリンは違う意味のため息を吐いた。

 

「大体マクレーン家に東洋の血が混じるって初めての事態なのよ。だから色々と準備が必要だし、学園都市に籍を置く以上、建前的にも線を引いておかないといけないとか考えたのだけど……そういうの別に良くなったじゃない?」

 

マクレーン家がアレイスター=クロウリーと交渉したのは、科学サイドと魔術サイドのバランスと真守が政争の発端にならないように配慮したからだ。

 

魔術サイドと科学サイド。

二つはまだ隔たりがあるが、それでも互いが歩み寄れるような環境が作られ始めている。

 

しかも学園都市のトップに立つのが真守なのだ。

魔術サイドは魔神オティヌスの一件で、真守の人となりを把握している。

 

しかも名実ともに身内になる英国女王なんて結構学園都市と連携を取るのに乗り気である。

魔術の総本山イギリスが動くならばローマ正教、ロシア成教も動く事だろう。

 

「しがらみが色々と消えて、あなたたちはこれからレールの敷かれていない道を歩くの。大切な姪が頑張っているんですもの。わたくしたちだって応援したいわ」

 

「でもあんまり私を甘やかすのは良くないと思うぞ。何度も言ってるけど、何もできない人間になってしまう」

 

真守が口を尖らせて告げると、アシュリンはにっこり微笑んだ。

 

「何を言っているの真守ちゃん。その予定よ」

 

「へ?」

 

「真守ちゃんを甘やかして甘やかして骨抜きにして、わたくしたちがいないと寂しくて悲しくて生きていけないようにするの。そしたらもう離れられないわ」

 

「やばいっ伯母さまって私を独占したい垣根と私にゾッコンな深城を掛け合わせた凶悪さを有してるのかっ! だ、ダメ人間にされてしまうっ!?」

 

一方通行(アクセラレータ)はひぃっと声を上げている真守を見て遠い目をする。

 

(何事も行き過ぎるのは絶対によくねェなよなァ……)

 

周りには、この少女のことをとことん甘やかす人間が多すぎる。

おそらくそんな甘やかす人間たちを、自分が止める役目を担うのだろうと一方通行は考えていた。

 

(間に挟まれて大変そォな未来が見えるなァ……)

 

一方通行の隣で、真守はアシュリンが意外と独占欲強めな事実に恐怖を感じている。

そんな真守を見つめて一方通行はふっと笑った。

ちなみに『スクール』の面々や林檎、そして人造の樹に組み込まれた白い少年と黒髪の少年は静かに服を決めていた。

あれに構ってはマズい。そういう魂胆で、一同は触れないようにしていた。

 

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