とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第一八四話、投稿します。
次は五月六日月曜日です。


第一八四話:〈至上最高〉のとろける時間を

ウィンザー城でのパーティーは続く。

真守たちが仲良く談笑していると、パーティー会場の空気がガラッと変わった。

 

オーケストラがダンス用のクラシックを演奏し始めたのだ。

 

真守は美麗な音楽に目を細めていたが、垣根が自分に向き直ったので顔を上げた。

垣根は真守をまっすぐと見つめて、そして笑う。

 

「一曲いかがですか、レディ」

 

真守は垣根に慇懃無礼に手を差し伸べられて、大きく目を見開く。

真守を中心として取り囲んでいた学園都市の子供たちは、穏やかに真守と垣根を見守っていた。

 

食蜂操祈と御坂美琴、インデックスは、ちょっとうらやましそうに。

上条当麻は垣根帝督らしいと笑い。『スクール』の面々はさすがだと肩をすくめて。

 

一方通行(アクセラレータ)は呆れながらも穏やかな目をしていた。そんな一方通行の近くで杠林檎は目をキラキラと輝かせて。八乙女緋鷹はくすりと笑い。白い少年と黒髪の少年は楽しそうにしていた。

そして源白深城は本当に嬉しそうに。うっとりと笑って真守を見ていた。

 

真守は学園都市の大切な人々に見つめられたまま、ふわりと微笑む。

そして垣根の手に、自分の手をちょこんっと乗せた。

 

「喜んでっ」

 

真守が頷くと、垣根は自分の手に乗った真守の手を自分の顔に近づけながら、ひざを折る。

そしてお辞儀をしながら、垣根は白い手袋に包まれた真守の手の甲に一つキスを落とした。

 

「こちらへ」

 

優しく、妖艶に微笑む垣根。

真守はそんな垣根を見て、こくこくと幸せそうに頷いた。

 

垣根は嬉しそうな真守が愛おしくて笑いながら、踊るために真守を連れて歩き出した。

真守は垣根に連れて行かれる前に、自分たちと一緒にいた学園都市の面々に小さく、ふりふりと手を振った。

 

真守に手を振られると、学園都市の人々は笑う。

真守はそれが嬉しくて目を細めると、前を向いて垣根を見た。

 

「垣根。予習はしたケド、私はダンスパーティーで踊るのは初めてなんだ」

 

「問題ねえよ、真守。俺がリードしてやるんだぜ?」

 

垣根は笑って、少し不安そうにしている真守を見て微笑む。

そしてダンスホールの中心に真守を連れて行って不敵に笑った。

 

「俺がお前を主役にしてやる」

 

真守は頼もしい垣根に表情が緩んでしまう。

垣根はそんな真守だけを見つめて、音楽に乗って真守をリードし始めた。

 

「わあ……」

 

真守は垣根にリードされて、ダンスホールを優雅に舞う。

垣根がとても心強くて、真守は体を預けているだけで綺麗に踊ることができる。

 

「垣根、すごい。上手だ、とてもっ」

 

「当たり前だろ。ダンスなんて俺の常識の範囲内だ」

 

垣根は笑って、ダンスホールを大きく動く。

垣根が真守を連れて動くたびに、真守のドレスのフィッシュテイルがふわりと広がる。

 

「楽しい。ありがとう、垣根」

 

真守は垣根にリードされるのに慣れてきて、ふわりと微笑む。

 

「垣根は本当になんでもソツなくこなせるな。私は本当にすごいと思ってるぞ?」

 

朝槻真守は頑張って練習しなければ、表の生活に溶け込めなかった。

だが垣根帝督は違う。表の世界で学生をやって、裏の世界で暗躍して。どちらもこなしていた。

垣根帝督は本当に器用な人間なのだ。だがどこか歪で、不器用なところもある。

 

「俺に常識は通用しねえ。だから他のヤツができないこともできる。知ってんだろ?」

 

「うんっ」

 

真守は垣根と踊りながら、ふわりと微笑む。

 

「垣根の全部がすきなの」

 

真守はふにゃっと笑って、垣根だけを見つめて告げる。

周りの人は自分たちの踊りに注目している。

だがいつも人目を惹く自分たちにとって、それは日常茶飯事だ。

だから真守は周りなんて気にせずに、垣根に向けてとろけた笑みを向けていた。

 

「かっこいいところも、器が小さいところも。悪党してた事も、学園都市の悲劇に翻弄されて、ちょっと歪んでしまったところも」

 

真守は懸命に言葉を紡いで、自分の気持ちを口にして微笑む。

 

「垣根の全部がだいすきなの。だいすきな垣根のために私の全部をあげる。だからずぅっと一緒にいてほしい。それで垣根の全部が私は欲しい」

 

垣根は必死に自分の思いを伝えてくる真守が愛おしくて、目を細める。

垣根のその表情はとても幸せそうだった。

真守は自分のことを想って垣根帝督が幸せになれているのが、本当に嬉しかった。

 

「真守」

 

垣根は真守のことをそっと抱き寄せてまっすぐと見つめる。

 

「俺の全部はお前のモンだ。お前の全部は俺のモンだ。ロシアの地で約束しなくても、それは決まっていた事だ」

 

真守は嬉しくて、目がうるうると潤んでしまう。

垣根帝督と朝槻真守は出会うことが運命づけられていた。

それはアレイスターによって造られた運命でもあり、真守のことを神として掲げている者たちによる運命でもあった。

 

出会う事が決まっていた真守と垣根帝督。

だからこそ、真守は垣根帝督の自由な未来が欲しかった。

 

運命ではなく。自分の意志で、朝槻真守と一緒にいることを望んでほしかった。

だからロシアの地にまで赴いた。

垣根はそんな真守と踊りながら、甘い口調で囁く。

 

「俺は俺の意志で、お前と永遠を共にする。そう決めた」

 

真守は嬉しくてはにかみながら、垣根を見つめる。

 

「愛してる、真守」

 

垣根が愛を告白すると、曲が壮大になる。

まるで、自分たちを祝福しているようだと。真守は感じていた。

 

「永遠に──ずっと一緒だ」

 

「うん。ずぅっと一緒だ」

 

真守は垣根だけをまっすぐと見つめて微笑む。

垣根も真守だけを見つめていた。

そして、曲が終わる。

 

垣根は慇懃無礼に礼をする。真守も礼を返した。

 

すると。拍手が聞こえてきた。

学園都市の子供たちも、アシュリンやランドンたちも。

多くの人が祝福してくれているのだ。

 

真守は嬉しくて、頬に熱が集まるのが分かる。

そんな真守を、垣根は抱きしめた。

 

「お前は色んな肩書を得た。それでここまで来た」

 

真守は消えた八人目の超能力者(レベル5)だった。そこから、真守は超能力者第一位となった。

絶対能力者(レベル6)へと進化(シフト)して、神であり人であるという意味で神人と呼ばれるようになった。

そして学園都市から解き放たれた真守は、『流行』へと至った。

それから人造の樹の頂点に立つ事となった。

 

「お前の肩書きなんて、俺にとってはどうでもいい。そんなのに意味なんてねえ」

 

垣根は断言すると、真守だけを見つめて笑う。

 

「お前はいつだって、俺にとってはただの女の子だ」

 

垣根は小さな真守の甘い体温を感じながら、甘く囁く。

 

真守の肩書きなんて、垣根帝督にとってどうでもいい。

垣根帝督にとっては、ずっと真守は大切な女の子だった。

好きな男の子に嫌われるのが嫌で、一人で泣いていて。

でもどうすればいいか分からなくて途方に暮れている、たった一人の女の子だった。

 

「俺にとって、お前はいつまでも絶対に笑っていてほしい、大切な女の子だ」

 

「……うれしい」

 

真守は柔らかく微笑むと、垣根の腰に手を回す。

 

「私も垣根のコト、かっこいい男の子だって思ってる。垣根の事が男の子としてだいすきだから、あの時泣いてたの」

 

垣根帝督のことを、一人の男の子として必要としている。

他の人じゃ駄目だった。垣根帝督の手が、とても安心するものなのだ。

 

「だいすき、垣根」

 

真守はこの世で一番かっこいい男にすり寄って微笑む。

垣根はそんな真守の頬に手を添えて、そしてキスをした。

 

いつもなら人前だと恥ずかしくてうろたえてしまうが、それでもこの場だけは良いかなと真守も思った。だから垣根とキスをして、甘い空気を過ごしていた。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

真守はダンスホールから続くバルコニーへと出ていた。

火照った体を風に当てて、少し涼みたかったのだ。

だから真守はするりと一人で抜けて、バルコニーへと来ていた。

 

もちろん熱っぽくなったのは、垣根と踊ってそして熱い抱擁とキスをしたからに他ならない。

恥ずかしいけれど、とても幸せだった。

 

真守はぽぽっと頬を赤らめながら、幸せの余韻に浸る。

そして真守はバルコニーの石造りの手すりにちょこんっと手を置いて、夜空を見上げた。

月夜が美しい晩だ。学園都市とは違う夜天だが、それでも星が綺麗に輝いている。

 

「ご令嬢。寒くはないですか?」

 

真守が夜天を見上げていると、優しい声が聞こえた。

真守が後ろを向こうとすると、肩に優しく何かが掛けられた。

毛皮の、ふさふさもこもことした純白のコートだ。

アシュリンが用意してくれたコート。それを掛けてくれたのは、垣根帝督だった。

 

「えへへ」

 

真守は自分に笑いかけてくる垣根がかっこよくて、思わず表情を弛緩させる。

垣根はそんな真守が愛おしくて目を細めると、そっと腰に手を回す。

真守は垣根に抱き寄せられて、そっと寄り添った。

 

「……ついこの間まで。私は消えた八人目と呼ばれたただの置き去り(チャイルドエラー)だったのに」

 

消えた八人目の超能力者(レベル5)

黒猫のように優美であり、それでいて不吉。遭遇すると『不幸』になる。

そんな都市伝説を流されていた存在が今や学園都市を統括する位置にまで上り詰めた。

それは本当に驚く事だ。

 

「あの時は学園都市の魔の手から逃げることばかり考えて、平穏な暮らしを望んでいたのに。色々あるケド、いまは嘘みたいに幸せだ」

 

「嘘じゃねえよ。これが現実だ」

 

垣根は真守のことを抱き寄せて、夜空を見上げる。

 

「俺だってついこの間まで悪党だった。……いま思えば、俺は中途半端で。悪党にすらなりきれてなかったように思える」

 

垣根帝督は学園都市に星の数ほど存在する悲劇によって、少しおかしくなっていた。

歪に歪んで。全てを利用して信じられなくなっていた。

だから真守も利用しようとした。そうやって近づいた。

 

「お前はとても綺麗だった。清らかなのに、穢れていて。でも綺麗だった」

 

垣根帝督にとって、朝槻真守は本当に貴重な存在だった。

闇のことを知りつつも。傷つきながらも懸命に表の世界で生きる少女だった。

垣根帝督は何でもソツなくこなせるため問題なく学校生活も送っていたが、それでも真守のような存在は学園都市の闇に潜む者たちの希望なのだ。

 

「お前が変えてくれた。だから俺はここまで来られた」

 

真守は垣根に優しく頭を撫でられて、とろんっと表情を緩ませる。

大好きな手。絶対に欲しかった手。他の存在では替えの利かない、自分の欲しかったもの。

真守は垣根に小さくすり寄りながら、幸せそうに微笑む。

 

「この幸せがずっと続くんだな」

 

「ああ、そうだ。俺たちが続けていくんだ」

 

「……しあわせになるための努力を怠ってはならない。か」

 

真守はとある超常存在の言葉を思い出し、ふっと笑う。

 

「絶対に私たちの幸せを誰にも邪魔させない。邪魔してきたひとたちも私が幸せにして、みんなで幸せになってやる」

 

垣根は力強い真守の宣言を聞いて、くすっと笑った。

 

「お前なら……いいや、俺たちならできる」

 

垣根は言い直して、そして身体を動かして真守の事を抱き上げる。

 

「わっ」

 

真守は垣根に抱き上げられて、思わず声を上げる。

垣根は抱き上げた真守を抱きしめると、丁寧にバルコニーの柵に座らせた。

 

そして垣根はまっすぐと真守を見つめて、真守の両手を握った。

真守の右手の薬指には、垣根帝督が渡した指輪が嵌められている。

 

もちろん垣根の右手にも同じ指輪がしてある。それは光の入り方で精緻に輝く紋様が刻まれた、婚約指輪に匹敵する指輪だ。

 

「結婚できるようになったらすぐお嫁さんにしてやるからな」

 

「……はいっ」

 

真守は愛おしそうに自分を見つめてくる垣根を見つめて、ふにゃっと微笑む。

 

「お嫁さんにしてください、垣根」

 

垣根は真守の頬に緩く手を添えると、触れるだけのキスをする。

だがやっぱり深いキスもしたくて、垣根は真守にもう一度キスをした。

 

「……ふ、」

 

真守は小さく息を漏らすと、垣根と長いキスを堪能する。

 

「……ん。はふぅ。ちから抜けちゃう……っ」

 

真守は垣根とのキスが気持ち良くて、へにゃへにゃになってしまう。

垣根はそんな真守の腰に手を回して、柔らかく微笑む。

 

「かわいい」

 

垣根はちゅっと真守の首筋にキスをする。

そして二人きりの時間を過ごすと、真守と垣根はパーティーへと戻って行った。

 

真守は垣根といちゃいちゃしているところを見られてちょっと恥ずかしかった。

だがみんなが温かく迎えてくれたので、真守はとても幸せだった。

 

理解してくれる大切な人たち。

そんな彼らに囲まれて。真守たちは穏やかなパーティーを過ごしていた。

 

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