とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第四一話、投稿します。
次は九月二〇日月曜日です。


第四一話:〈適材適所〉で救済を

「んー。人造細胞の主流から外れてるから見当たらないな」

 

真守はPC机にだらしなく寄り掛かってぐでーっと体を弛緩させて座っていた。

人工的に生み出されたフェブリの技術を探しているが、手持ちの『知識』の中にそれらしいものが一つもないので手ごたえが掴めず、行き詰まっているのだ。

 

『人造人間なんてマイナーな実験、俺も聞いたことねえな』

 

「そりゃそうだろ。私だって聞いた事ない」

 

真守は椅子に座り直して机に片肘を突いてから、机の上に乗っていた未元物質(ダークマター)で垣根が造り上げたカブトムシのツノをつんつん触りながら呟く。

どうやらこのツノは圧縮砲を撃ち出す砲身らしく本来ならばツノの先端を触るなど銃口に手を突っ込むような危険行為なのだが、真守は気にせずにつついていた。

 

『暗部組織の実験っつっても色々あるからな。俺だって有名どころしか知らねえ』

 

「有名どころ?」

 

真守がオウム返しすると垣根は淡々と告げる。

 

『「暗闇の五月計画」。一方通行(アクセラレータ)の演算パターンを植え付けて自分だけの現実(パーソナルリアリティ)を最適化、能力者の性能を向上させる、なんて言うイカれた実験だ』

 

真守は『暗闇の五月計画』の実験内容を聞いて目を鋭くさせる。

 

「その計画は今どうなった?」

 

『研究者全員皆殺し』

 

「……もうないのか。被験者はどうなったのだろう。大丈夫かな」

 

真守は『暗闇の五月計画』で被験者になっていた子供たちの事を想ってぶつぶつと呟く。

 

『「暗闇の五月計画」にまでお前は首突っ込むのかよ』

 

「──少し、よろしいでしょうか」

 

真守が垣根のぼやきに応えようとすると研究室の扉の向こうから声が聞こえてきた。

 

「いいぞ」

 

真守が入室を許可すると、妹達(シスターズ)の一体が扉を開けて入ってきた。

 

「失礼します、とミサカは頭を下げてから入ります」

 

口で言っているだけでまったく頭を下げていないミサカは黒猫を抱いたまま、真守の前までやってきた。

真守に気づいた黒猫がミー、と鳴くので真守はミサカから黒猫を受け取って膝の上に乗せると、その額をくすぐるように撫でる。

真守の猫の扱い方を参考にするために、ミサカは真守の仕草を全て記録してミサカネットワークにアップしながら口を開く。

 

「あなたがお調べになっているあの少女の事で話があってきました」

 

「ん? フェブリがどうかしたのか?」

 

真守が黒猫の背中を撫でながら告げるとミサカは、はいと返事してから切り出した。

 

「お姉さまにはもう話したのですが、昨日あの少女と深夜に少し話をしました、とミサカは事後報告をします」

 

「……それで?」

 

フェブリの情報が不足している今、ミサカからもたらされる情報は重要なものであると真守は感じて、視線を鋭くさせながら頷く。

 

「あの少女にはどうやら姉がいるそうなのです、とミサカは少女との会話を思い出しながら告げます。それと彼女の持つ知識にはその偏り方に一定のパターンがあるように感じられました」

 

「偏り方のパターン? ……お前たちと同じように学習装置(テスタメント)で知識を学習したという事か?」

 

「はい。学習の初期状態と似ています、とミサカは明言します」

 

学習装置(テスタメント)。……成程。肉体面(ハード)人格面(ソフト)で作り上げた人間が違うのか」

 

真守はミサカからもたらされた情報を基に思考する。

 

(そりゃそうだ。肉体面(ハード)人格面(ソフト)両方作りだせる研究者なんて早々いないからな)

 

真守が心の中で呟いていると、ミサカから何か迷っているような印象を受けて、真守はミサカを正面から見つめた。

ミサカは真守の視線を受けて、真守にギリギリ分かる程度に躊躇(ためら)いがちになって話し始める。

 

「彼女の人格面(ソフト)にはミサカと類似性が感じられます、とミサカは報告します。つまり彼女の学習装置(テスタメント)のプログラムを開発したのは、ミサカの時と同じ人物である可能性が高いのでは、とミサカは推測を述べます」

 

「同じ人物……? お前たちの人格の基礎を監修したのは布束砥信だったな。ソイツか?」

 

真守はミサカの推測に目を瞬かせてから『絶対能力者進化(レベル6シフト)計画』の概要に書かれていた人物の名前を挙げて小首を傾げる。

 

「はい、彼女で間違いないかと思います」

 

「布束砥信……確か『量産型能力者(レディオノイズ)計画』にはがっつり、『絶対能力者進化(レベル6シフト)計画』では初期のみに関わっていたハズだが、その人物が暗部でまだ活動していると?」

 

真守が問いかけるとミサカはその焦点が分散している瞳を少しだけ揺らした。

 

「彼女はミサカにミルクティーと世界の美しさを教えてくれました。願わくば、彼女にもう一度会ってお礼を言いたいです、とミサカはささやかな希望を口にします」

 

自分の意見を人格形成の際に押し殺すように設定されているミサカが希望を口にしたので、真守は柔らかく微笑む。

 

「そうか。その人はお前にとって大事な人なんだな」

 

「はい。彼女はミサカが穏やかに生きていくために大切なものをくれました、とミサカは告げます」

 

真守が以前に教えた生き方についてミサカが言及すると、真守はしっかりと頷いた。

 

「分かった。フェブリの技術を探していけば辿り着くだろうから、一緒に探ってみる」

 

真守は黒猫を抱き上げてミサカに返すと、ミサカは受け取ってからそっと目を伏せた。

 

「よろしくお願いします、とミサカは頭を下げます」

 

真守がミサカが扉を閉めるのを見送っていると携帯電話に着信があった。

表示されていたのは『御坂美琴』で、真守はその電話に出た。

 

「もしもし?」

 

〈朝槻さん。私、みんなに話したわ。だから一緒にやってくれる?〉

 

美琴の決心とお願いを聞いて、真守は通話越しなので美琴に見えないのに、しっかりと頷いた。

 

「もちろんだ。私はフェブリの製造技術について調べているが、そちらはどうなっている?」

 

〈初春さんはフェブリを造った人たちを探しているの。監視カメラが作動しなかったからシステムに侵入された可能性があるかもって。それと佐天さんがね、フェブリが生きるために必要な飴が作れないか考えているの。病院に行ったと思うから会ってくれるかしら?〉

 

「分かった。私のところに来られるように手配しておく。美琴、お前は一人で突っ走らなくていいんだぞ。お前には白井もいるんだから」

 

真守が釘をさすと、美琴は電話の向こうで一つ苦笑をしてから応えた。

 

〈……ええ、分かってる。朝槻さんも一緒にいてくれてありがとう〉

 

「うん。ではまた後で」

 

〈うん、じゃあね〉

 

真守は通話を切って携帯電話を机の上に置く。

 

『……暗部が関係しているから状況を見極めなきゃ表立って動けねえが、何かあったら言え』

 

真守が携帯電話を置くと、カブトムシが薄い羽を広げて伝えてきたので真守はカブトムシの頭を撫でながら微笑んだ。

 

「ありがとう、垣根」

 

真守が頭を撫でるとカブトムシが嬉しそうにヘーゼルグリーンの瞳をきょろきょろっと動かすので、それを受けて真守はにへらっと幸せそうに笑った。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

「失礼しまーす」

 

佐天は真守の研究室を訪れてそっと扉を開いた。

中は広く、資料が綺麗に押し込められた棚がいくつも並んでおり、そこら辺に無造作に資料が散らばっていた。

 

(うわ。超能力者(レベル5)の研究室ってこんなんなんだ……)

 

佐天が辺りを見回しながら心の中で呟くと、机の上にある六枚のマルチモニターにはそれぞれグラフやら資料やらを表示されており、真守はその前で高速タイピングをしてデータの分析を行っていた。

 

「もう少しで手が空くからそこにソファがあるから座ってくれ。……それと忠告しておくが、ここにある研究資料を外で漏らしたら色々と面倒事に巻き込まれるぞ。それが嫌なら見ない事をおすすめする」

 

「え」

 

真守は佐天の方を振り返るが、タイピングを止めずに佐天にそう忠告する。

そこら辺に散らばっている資料やら論文が危険極まりないものだと知って佐天は硬直する。

それでも真守に言われた通りにソファが二つ向かい合って並べられている一つに座った。

目の前のローテーブルにも資料が散らばっており、佐天は目のやり場に困って目を泳がせた後、モニターに視線を戻して真剣な表情をしている真守の横顔を見つめた。

 

消えた八人目の超能力者(レベル5)流動源力(ギアホイール)

御坂美琴が自分の家でクッキーを作っていた時に渡すと明言していた人。

美琴は随分と真守に世話になったらしく、真守の話をしている時は穏やかな笑みを浮かべていた。

 

(気難しいように見えるけど、御坂さんから話を聞いたり昨日の夜のこと考えると、とっても優しい人なんだよね。……力を持ってて、まったく攻撃が効かなくって。よく覚えていないけど、幻想御手(レベルアッパー)使って昏睡状態になっていた時に、あの人の強くて凛々しい力を感じた気がする)

 

佐天が胸の内でそう考えていると、真守は一息ついて佐天と話をするために椅子をくるりと回して振り返った。

 

「先に言っておこう。飴を作り出す事は一日二日ではできない」

 

「そう、なんですか?」

 

真守は分析のために自動で動いているモニターの一画面を見ながら呟く。

 

「飴の組成から分析しているが、分析の途中経過を見る限り自然界に存在しない物質が含まれている。まずはコレの精査が必要で、その後にも毒と、その中和に使われている成分の関係性も調べなくてはならない。それに加えて毒がどういったプロセスでフェブリの中で生成されるか、その毒に中和成分がどのように作用するかの確認など、一つ一つの課題をクリアしないと飴を作り上げるのは難しいな」

 

真守は分析データをマウスでスクロールさせながらつらつらと説明すると、佐天は顔をしかめて申し訳なさそうな顔をする。

 

「ええっと……専門的すぎてあたしにはちんぷんかんぷんなんですけど……」

 

「つまり飴の中和成分と毒の分析、それとその二つの因果関係を調べ上げなければ中和剤は作れないという事だ」

 

「なるほど、それなら分かります。やっぱり難しいんですね……」

 

佐天は真守の簡潔な説明に頷くが、すぐに表情を曇らせた。

 

「できない事はない。だが時間がかかるからこれは進めておくとして、私はフェブリの製造技術も調べてみる。数年前と先生が言ってたから(さかのぼ)るのは大変だが、なんとか見つけてみせる。だからお前たちは事件として捜査する方から探ってくれ。お前たちにしかできない事もあるしな」

 

「あたしたちにしかできないこと?」

 

佐天がオウム返しで訊ねてくるので、真守は力強く微笑んで告げた。

 

「フェブリはお前たちを信頼している。私は所詮ぽっと出で、あの子が本当に自分を守ってくれると信じている人間はお前たちだ。だからあの子の期待に応えてほしい。それ以外のフォローなら何だってする。だからお前にはお前にしかできない事を精一杯こなせ。私も、私にしかできない事を必ずやり遂げてみせる。それがフェブリのためになる。まあ簡単に言ってしまえば適材適所、というヤツだ」

 

佐天は真守の言葉に目を見開いた。

人はそれぞれ違う役割を持っている。

その役割を十全にこなせば、力を合わせて誰かを救う事ができるのだ。

 

「……はい!」

 

佐天はフェブリの下へと戻るために立ち上がって、真守へと頭を下げた。

 

「朝槻さん、ありがとうございました! あたし、行きますね!」

 

「道中気を付けて帰れよ」

 

「はい!」

 

佐天は元気な声を上げて満面の笑みを浮かべて駆け足で去っていく。

 

(真っ直ぐな子だな。佐天はきっとあの真っ直ぐな気持ちを誰にでもぶつけることができるんだろう。だからフェブリも心を許して信頼関係を築けたんだ)

 

真守は佐天が出て行った扉を見つめながら真守は心の中でそう呟きながら目を柔らかく細めた。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

真守は美琴が渡してきたルームキーホルダーのような紫色の四角柱のカプセルを貰って分析にかける。

 

(このカプセルの中身に含まれているAIM拡散力場。仮想物質化とでも言うべき状態になっているようだ)

 

真守がカプセルを見つめて自分にしか分からないエネルギーについて思考していると、カプセルの中に入ってた繊維状のものの分析結果がモニターに表示された。

 

「どう?」

 

「フェブリの体を構成している成分と同じだな。この形状から察するに髪の毛だ」

 

「フェブリの髪の毛が入っているの?」

 

美琴の問いかけに真守は他のモニターにデータを表示させて見比べながら呟く。

 

「いや、違う。フェブリのものじゃない。別個体……つまりミサカ一〇〇三二号がフェブリから聞いた姉のものである可能性が高い」

 

「やっぱりフェブリにお姉ちゃんがいるのね……」

 

美琴がミサカの話を思い出しながら呟くと、真守はモニターを見つめるのをやめて美琴を見据えた。

 

「それと、お前に伝えなければならない事がある」

 

「……何かしら?」

 

真守の真剣な表情に美琴が緊張していると、真守は一つ頷いてから真実を包み隠さず告げた。

 

「率直に言う。フェブリの所有する飴の量を考えて約七二時間でフェブリは死に至る」

 

「そんな……飴の成分分析は?!」

 

美琴が声を荒らげるが、真守は美琴のその様子に心を痛めつつも淡々と説明する。

 

「自然界に存在しない化学物質が使われているからな。分析が終了してもすぐには造れない。あの子を『直せる』人間はあの子を造った人間だけだ。フェブリの命は製作者が握っている。……大丈夫。探す手立てはあるから問題ない。少し時間をくれ。それでフェブリを救おう」

 

「……ええ」

 

美琴は真守から元気づけられるが、フェブリの命の危機が刻一刻と迫っている事を知って気落ちしたまま真守の研究室を去っていく。

 

『良いのか、言わなくて』

 

美琴が去った研究室で、カブトムシ越しに垣根が真守に声をかけた。

 

「私が一人で対処できそうだから大丈夫。それに美琴を仲間外れにしてるのではなく、役割分担というヤツをしているだけだ」

 

真守は垣根に自分の行動についてそう説明しながら、パソコンのモニターを切り換えて美琴に隠していた情報を映し出す。

『スタディコーポレーション』という企業と暗部組織『スタディ』。

真守は既に企業を隠れ蓑にしてフェブリを造り出した暗部組織に辿り着いていたのだ。

 

冥土帰し(ヘブンキャンセラー)から数年前に人造人間を造る噂を聞いた事があると聞かされたため、真守はこの数年間に学園都市で開催されたコンペにそういった研究計画が発表されていないかネットワーク上やデータベース内に片っ端にハッキングをかけて探していたのだ。

 

コンペとはコンペティションの事で研究費用を目的として支援者を探すための催し物で、研究計画をプレゼンテーションさせて競い合わせ、支援者が優劣を決めて研究費用を出資するか審査する場である。

人造人間を造る研究は人造細胞技術の主流から外れているため、コンペで支援者を募らなければ計画を推し進める事ができないはずだと真守は推察したのだ。

 

真守が検索にかけてヒットしたのは一件だけで、その名称は『ケミカロイド計画』。

安価に能力者を大量生産しようとするプロジェクトだ。

この論文を書き上げたのは有冨春樹という学生とその以下数名。

彼らの名前で検索をかけると、学園都市研究発表会、通称『学究会』の入賞常連メンバーだった。

有冨春樹はこの『ケミカロイド計画』を同志と共にコンペにかけたが上手く行かなかったため、『スタディコーポレーション』を立ち上げて自ら資金を調達し、『ケミカロイド計画』を実行した。

 

「『ケミカロイド計画』はとん挫寸前だった。なんせ肉体面(ハード)を用意しても人格面(ソフト)が造り上げられなかったからだ」

 

『だが妹達(シスターズ)の人格面を作り上げた布束砥信をヤツらが「闇」から買い取って、人格面(ソフト)を造り上げさせた。お前の話ではそういうからくりだったな』

 

「そう。だからこそフェブリとミサカたちの人格面(ソフト)が類似している理由に繋がるんだ。要はフェブリは妹達の疑似的な妹、というコトだな」

 

真守はパソコンを動かしてハッキングプログラムを使って『スタディ』の情報を暴く。

 

「というわけで布束砥信を助けて、フェブリの姉妹個体も助けて、それで『ケミカロイド計画』での人造人間製造技術もぶんどってくる」

 

真守は垣根にそう宣言して立ち上がると、垣根はカブトムシのヘーゼルグリーンの瞳を動かして真守に待ったをかけた。

 

『俺も行く。それで「スクール」として後始末つけてやる』

 

「え?」

 

真守が垣根の申し出を聞いて目を見開いていると、垣根は付け加えるようにカブトムシから呟かせた。

 

『お前が嫌がらなかったら、の話だが』

 

真守が『闇』の事を嫌っているから『闇』である『スクール』の手を借りるのを嫌がるかと、垣根は懸念(けねん)しているのだ。

真守は垣根の優しさに微笑みながら、とりあえず椅子にもう一度座り直す。

 

「確かに私は暗部組織があまり好きじゃない。でも垣根が不用意に人を傷つける人間じゃないって知ってるから、私のために垣根が力を使ってくれるのは嬉しいよ。でも『スクール』としては大丈夫なのか?」

 

『統括理事会直轄って言っても他の暗部組織との小競り合いなんてしょっちゅうある。「絶対能力者進化(レベル6シフト)計画」みたいな上層部主導の実験への介入は流石にマズいが、学生のお遊び連中なら気に食わないって理由で余裕で潰せるから問題ねえ』

 

「そうか。……垣根が私のために自分の配下の事を動かしてくれるのは嬉しい。でも垣根には私のために無理しないで欲しい。色々としがらみが多いはずだから」

 

垣根の立場を聞かされて、垣根が動くのには問題ないと考えているのが分かった真守だったが、それでも垣根が心配で真守はその想いを垣根に伝えた。

 

『お前はそんなこと気にしなくていい。俺は俺が持っている力をお前を助けるために使うって決めただけだ』

 

垣根の方針が自分のためであると聞かされ、真守は嬉しくなってふにゃっと微笑んだ。

 

「ありがとう、垣根。……でも一つだけお願いがあるんだ」

 

そこで真守は眉を八の字にして控えめながらもお願いをする。

 

『なんだ?』

 

その姿がおやつを欲しがっている子猫のように見えて、垣根はカブトムシの向こうでフッと笑ってから応えた。

 

「……『スタディ』の人のこと、殺さないで欲しいし、売らないで欲しい……ダメか?」

 

『安心しろ。お前が俺を信じてるから不用意に人を傷つける事はしない。それに俺は格下に寛容だ。俺が敵と判断した人間以外は見逃すし、一般人にも手は出さない』

 

真守は垣根の言葉にぱあっと顔を輝かせてカブトムシを抱きあげて微笑む。

 

「お願い聞いてくれてありがとう」

 

『俺の方針に、お前のお願いとやらが合致しただけだ。気にするな』

 

「うん。それでもありがとう」

 

真守はにこにことカブトムシを抱き上げながら微笑む。

 

「じゃあ早速動かないとな。あ、『スタディ』の情報はどこに送ればいい? 共有していた方がいいだろ?」

 

『今「スクール」で使ってる暗号回線を教える。……そうだな、カブトムシにデータを転送する機能を今度つけるか』

 

「ふふっ改良の余地ありだな」

 

真守はカブトムシを机の上に降ろしてつんつんとツノをつつきながら微笑んだ。

 

 

こうして真守は垣根率いる『スクール』のメンバーと共に『スタディ』を襲撃する手筈を整えて行動を始めた。

 




『スクール』のメンバーと初めて行動を共にします。

それにしても真守ちゃんが万能すぎる。


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