とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第四六話、投稿します。
次は九月二六日日曜日です。


第四六話:〈絶望泥闇〉から連れ出して

(Aug.31_PM04:17)

 

気が動転していた真守だったが、途中から動く屍の体の中を循環しているエネルギーを破壊するようにエネルギーを生成して撃ち込む事で、爆弾が爆発しないように動く屍を停止させられる事に気が付く事ができた。

 

そのため、その方法に従って動く屍に対処したので、真守の周りには頭がない死体とピエロの被り物を被ったまま倒れている死体が散らばっていた。

 

『真守。垣根帝督(オリジナル)がこちらに向かっています。ですからあと少しの辛抱です』

 

「……ありがとう」

 

自分の事を元気づけてくれるカブトムシに力ない笑みを見せながらも、真守は電気エネルギーを手の平からパパパリッと音を鳴らして生成し、ピエロの被り物と爆弾の連動を断ち切っていく。

 

せっかく頭が吹き飛ばないように手心を加えたのに、遠隔操作で爆発させられて頭が吹き飛ぶところなんて見たくない。

 

真守はその思いを胸に抱いて必死に能力を行使しながら、自分を狙ってきた相手の事を並列処理によって頭の中で考えていた。

 

学園都市と言えど、こんな非人道的な仕組みを構築できる人間は限られているし、何より真守には人の尊厳を踏みにじる集団に心当たりがある。

 

最後の爆弾とピエロの被り物の連動を断ち切った瞬間、近くに転がっていた頭のなくなっている死体の一つ、その手術衣の中から着信音が鳴り響いた。

 

真守がその死体に近づいて手術衣の中を探ると、ご丁寧に内ポケットがつけられており、その中に携帯電話が入っていた。

 

『真守』

 

カブトムシは制止するが、真守は一つ息を吐いて『非通知』からの着信に応えた。

 

「…………木原か?」

 

〈正解でーす! 初めまして、真守さん!〉

 

真守が放った第一声を正解とした相手はどうやら若い男のようで、軽石のような中身のない、そして薄っぺらい声音だった。

 

〈木原相似っていいまーす〉

 

「…………お前がこの子たちをこんなにしたの?」

 

恐らく、木原相似は軽薄な笑いを浮かべて自分と話をしているのだろうと真守は想像しつつも、平常心を心掛けて訊ねる。

 

〈はーい、自分がやりました。体を動かしていた全てをあなたの源流エネルギーに指向性を付与したエネルギーで代替して、それを電気的に操って能力を放つ事のできる動く屍にしました!〉

 

「……どうしてこんな事をした? この子たちはお前が殺したのか!?」

 

真守が怒りを(あら)わにすると、木原相似は冗談じゃないと笑って軽やかに説明する。

 

〈この学園都市では絶望した学生が毎日自殺しているじゃないですか。その死体を拾ってきただけですよ〉

 

「……っ。……流石木原だな。研究の為ならばなんでも利用する、学園都市の癌……」

 

真守は顔に手の平を押し当てて苦しみに耐えながら呟き、精一杯の嘲笑を声色に乗せるために携帯電話を横目で睨みつけた。

 

「私の源流エネルギーをおもちゃにして随分と楽しそうだな。木原相似」

 

〈まだまだ全然楽しくないですよー。だって欲しいじゃないですか。全てのエネルギーを代替できる実験材料!〉

 

「……私は安くないぞ」

 

木原相似に自分がターゲットにされた事を忌々しく思いながら、真守はけん制の声を上げる。

 

〈そう。あの一方通行(アクセラレータ)を超える逸材ですからね。でも一回の奇襲で随分と動揺しているじゃないですか。これは一方通行の代替を造り上げなくても良かったですかね〉

 

一方通行(アクセラレータ)の代替……?」

 

真守が眉を顰めて木原相似の言葉に反応すると、電話越しに木原相似はストローで何かをズズズッと飲んだ。

 

〈あー美味い! 本物の果汁なんてほぼ入ってないのに、香料と甘味料でちゃんとジューシーな果物感! 代替ですよ。だ・い・た・い〉

 

「……それがお前の研究?」

 

木原相似が飲んでいるのは恐らく科学で完全に再現した学園都市製のオレンジジュースで、それが木原相似の研究理念に繋がっているのだと真守は推測して訊ねた。

 

木原一族は個人個人でそれぞれ、研究理念を打ち立てている。

その研究理念は科学を進歩させるという純粋で尊い理念だが、それを叶えるために木原一族は手段を問わない。そのせいで多くの人々が犠牲になってきた。

そして彼らは犠牲になった人々を(かえり)みず、あまつさえ『科学に犠牲は付き物』だと真顔で言ってのける非情さを持っているのだ。

だからこそ、真守の精神を折るためだけに動く屍を造り上げて真守が対処すれば頭を爆散させるなど人の命の尊厳をまったく考えてない手法で攻撃してくる。

 

〈はい! なんにでも代わりはあるんです。代わりのないものなんてこの世にはありません。手も足も主義主張だって代替品でまかなえます。その代替品を作るためにあなたが必要なんですよ、朝槻真守さん?〉

 

「私の源流エネルギーを全てのエネルギーの代替にすると?」

 

真守が頭の中で木原の非情さについて考えていると、木原相似は熱に浮かされたかのような恍惚(こうこつ)な声音でつらつらと目的を述べる。

 

〈はい。あなたの源流エネルギーには多大な価値を感じます。あなた一人がいれば全てのエネルギーの代替を作り上げる事ができますし、あなたは力やエネルギーを操る能力者の代替ができるんですよね。念動系能力、火炎系能力、発電系能力、大気系能力、光学系能力などなど、特殊な演算を必要としない一般的な能力の代替ですよ、代替! ……それに、あなたは頑張って隠しているようですが、精神操作も可能なんでしょう?〉

 

「……その根拠は?」

 

真守は舌打ちしそうになるほどに顔を歪め、胸のタンクトップの布をギュッと手で握り締めて、心の痛みに耐えながら木原相似に訊ねた。

 

〈あなたの能力、流動源力(ギアホイール)は源流エネルギーにあらゆる数値を入力して指向性として付与する。普段あなたはこの世に存在するエネルギーしか生成しないようにしてますが、やろうと思えば本来この世に存在しないエネルギーも生成できる。だから()()()()()()()()()()源流エネルギーに数値を入力して、そのエネルギーを人間に流し込めば精神干渉が可能なんでしょう?〉

 

「……そうだな。お前の想像通りだ」

 

(木原は能力開発のエキスパートだからやっぱり気づくか……)

 

真守が心の中で木原の洞察力に舌打ちしつつも肯定すると、カブトムシの赤く染まっていた瞳が驚いたように瞳を縮小する。

 

〈代替品としての価値が上がりましたね〉

 

木原相似は精神的に追い詰められている真守に向けて、軽薄な様子で心底楽しそうに告げた。

 

「……お前は一方通行(アクセラレータ)の代替品を用意したと言っていたな。私と一方通行の力関係は五分五分だ。それでも私には必勝法がある。お前が私を捕まえる事なんてできない」

 

『木原相似が一方通行(アクセラレータ)の代替を用意した』という話題へと戻って真守はけん制するが、木原相似は動じる事なく笑って応えた。

 

〈あなたはその代替品を殺せないじゃないですか。殺さないと止まらない一方通行(アクセラレータ)の代替品に対して、あなたに勝機はないじゃないですか。それにあなたを随分と焦燥させた生ける屍の在庫はまだまだたくさんありますよ?〉

 

「……………………殺してやる」

 

真守は沸き上がる殺意の(おもむ)くまま、地を這うような声で呟く。

 

だがその言葉を吐いた次の瞬間、真守は後悔した。

 

〈あらあら。いいんですか? あなたは殺しがお嫌いじゃなかったんでしたっけ?〉

 

真守の後悔を後押し、そして真守を追い詰めるように木原相似は軽薄な声で訊ねてきた。

 

「………………ころ、……っ殺し、て……殺してや…………でも、…………木原だけは、でも…………、いいや、でもやっぱり、……」

 

『真守』

 

真守は奥歯を強く噛み締めて殺意を抑えようとする。

そんな真守の様子をカブトムシは心配して、とっさに真守の名前を呼んだ。

 

真守はカブトムシに声を掛けられて一度息を呑み、その殺意を忘れようと冷静になろうとするが、この世で最も嫌悪している殺意から離れる事ができなかった。

 

殺意のままに動くか、殺意を抑え込むか。

 

そんな葛藤を覚えるのすらやってはならない事だと思って、真守は唇を強く噛む。

 

〈いいんですか? 線を引いちゃって〉

 

気が遠くなりそうな真守に、木原相似は楽しそうにからから笑って訊ねてくる。

 

〈あなたの源流エネルギーで人間を焼き尽くして殺すと、その人間の存在がこの世から『抹消』されるのに? あなたは人の存在を消去してしまうその恐怖で人を殺せないのに? それでもやるんですかーっ?〉

 

真守はビクッと体を震わせて、タンクトップを握り締めていた手にもっと力を込めた。

体を縮こませて、体の中心に力を入れて、真守は小さく呻く。

 

「……黙って、」

 

言葉にされるのも嫌だった。

 

木原相似の言う通り、流動源力(ギアホイール)の源流エネルギーは物質や下位互換のエネルギーを焼き尽くして『抹消』する特性を持っている。

 

物質や下位互換のエネルギーが源流エネルギーによって『抹消』されると、『存在の抹消』とも呼べるべき現象が起こり、後には『空白』だけが残される。

 

この『存在の抹消』に例外はない。

 

つまり人間を源流エネルギーで焼き尽くせばその『存在』がこの世から『抹消』され、周囲の人間は源流エネルギーによって焼き尽くされた人間の存在を()()してしまう。

 

想いあう男女がいたとして、その一方である男を真守が源流エネルギーで焼き尽くして殺し、その存在を『抹消』させたとしよう。

 

男の存在がこの世から『抹消』されたことにより、男を想っていた女は誰かを想っていたが、それがどんな人物で男か女かだった事すら思い出せなくなってしまう。

 

そしてぽっかりと空いたその『空白』には、その女にとって大切な存在としても不都合がない()()()()()()()が当てはめられる。

 

源流エネルギーによって引き起こされる『存在の抹消』とは凶悪過ぎる特性なのだ。

 

〈当然と言ったら当然ですけど、記録は残るんですよねーっ。電子的な情報に『存在の抹消』は流石に作用されない。だからこそ木原は気づいたんですけどね。何せあなたは僕の親族を三人も殺していますから〉

 

真守は木原相似の言葉に、ハッと息を浅く呑んだ。

 

〈……あなたの能力開発を行った、あなたが潰した『特異能力解析研究所』の所長だった木原分析〉

 

木原相似は真守を追い詰めるかのようにゆっくりと語り掛けてくる。

 

〈木原関数と木原円錐。それだけじゃありませんよねー?〉

 

そして木原相似の軽薄な声が、ゆっくりと真守の罪を暴いた。

 

〈あなたは九七二名の人間を殺した。研究者はもちろん、研究所に資材搬入をしていた人間や能力開発用機材を作っていた人間──つまり民間人もあなたは殺した。人を分け隔てなく平等に殺し、その存在を『抹消』した。……なんて恐ろしい人なんでしょうか、あなたは!〉

 

木原相似の楽しそうな声が響く中、真守は携帯電話から手から離して地面に落としながら、アスファルトが敷き詰められた道路にぺたんと座り込んだ。

 

するっと真守の手から落ちた携帯電話は地面に落ちて一度跳ねると、跳ねた先でクルクルと回転してその場に(とど)まった。

 

九七二名。

 

その人たちが遺したデータと、その人たちの最期。

 

真守はそれをすべて覚えている。

 

忘れたらこの世から彼らがいた痕跡が全て消えてしまうから。

 

この人数を十日にも満たない日数でこの世から『抹消』したのだから、どう考えても真守は人間を虐殺できる化け物だった。

 

〈木原的には、もっと殺して欲しいんですけれどねー〉

 

遠隔操作でスピーカーフォンに切り替えたのか、木原相似の声は自分は化け物で人でなしなのだと呆然と考える真守の耳にはっきりと届く。

 

衛星か監視カメラで見ているのかもしれない。

 

だが真守は精神を攻撃され過ぎて、どうやってこちらを把握しているのか考える気にさえなれなかった。

 

〈あなたが源流エネルギーで焼き尽くした際に現れる『空白』が増えれば増えるほど、あなたが消した存在が一体どうなるかその原理の解明が進むんですよ。だったら人間の二〇〇〇人や三〇〇〇人くらい、その解明の礎になったって問題ないでしょ?〉

 

真守は人をもう殺したくない。

 

それでも木原一族は科学の進歩のために、真守に人を殺せと言う。

 

「…………………………っわたし、は」

 

木原相似の言葉によって真守の世界がぐらぐらと揺れる。

 

やめてほしかった。もう何も言ってほしくなかった。

 

頼むから、頼むから。──そんな事、言わないで。

 

〈この世界に『空白』が生まれてしまうのに、その埋め合わせは一体どうなっているんでしょうねー? そして消えた人間とは果たしてどうなるのでしょうか。興味は尽きませんよ〉

 

真守が必死に言葉を紡ごうとすると、木原相似は興味をそそられたのか嬉しそうな声を出す。

 

道路の真ん中で夏の太陽に照らされる中、真守は虚ろな目を地面へと向ける。

 

「……、………………わたしは…………」

 

罪に(まみ)れた体を浄化の炎で焼かれるような感覚を覚える中、真守は消え入るような声で呟く。

 

「……………………ただ壊したかっただけだ」

 

真守は思い出す。

 

あの時の想いを。自分を突き動かしていた想いを。

 

どろどろと醜いあの感情を。

 

それを思い出しながら、許されない罪と知りながらも、誰かに許してほしくて。

 

真守はぽそぽそっと力なく言葉を()らした。

 

「……深城を殺した、世界が憎くて。深城を、助けられなかった自分が、許せなくて……その怒りをどこにぶつけたらいいか、分からなくて……っ手当たり次第に殺してしまって。でも、でも……私…………わたっ」

 

その時、真守の目からボロッと涙がこぼれた。

 

罪の意識に()し潰されそうで。

 

一人で耐えるのは厳しくて。

 

世界の全てへと懺悔(ざんげ)するように、真守は嗚咽(おえつ)()らしながら体を縮こまらせて呟く。

 

「…………………………この世の誰かを消したくなかった…………」

 

今すぐに学園都市から逃げ出したい。

 

全てのしがらみから解放されてどこか遠くへ行きたかった。

 

でもそれはできない。

 

真守にとって垣根と同じくらい大切な源白深城が学園都市に蔓延するAIM拡散力場を自分の体と認識しているから、学園都市から離れる選択肢なんて初めからない。

 

『死にたくない、一人にしないで。…………まもり、ちゃ……』

 

死ぬ前にそう(こぼ)した深城を置いていって自分は幸せになんかなれない。

 

深城が導いてくれたから自分は人間らしくなった。

 

深城がいなければ人間として生きていられない。ただの化け物に成り下がってしまう。

 

だからこそ真守は、深城を学園都市の『闇』の魔の手から守りながら学園都市で生きていくしかない。

 

だからずっと抗ってきた。

 

 

でも今回ばかりは駄目だった。

 

 

後少しで助けられなかった場合の深城のような少年少女を造り上げられて。

 

罪を(あば)かれて、古傷を(えぐ)られて、最も嫌悪する感情を呼び起こされて。

 

科学を崇拝する学園都市の悪意なき純粋な思想が自分を食らいつくそうとする。

 

苦しかった。

 

どうすればいいか、もう分からなかった。

 

この痛みとどうやって向き合えばいいか、全く分からなかった。

 

「………………………………かきね」

 

真守は追い詰められて長い沈黙の後、ぽつりと呟いた。

 

自分だけに向けてくれる、あの優しいまなざし。

 

差し伸べてくれる手。

 

それらを思い出して、真守はどうしようもなく垣根に会いたくなってしまった。

 

「垣根……垣根……………………たすけ、」

 

真守は右肩にしがみついていたカブトムシに手を伸ばしてぎゅっと胸の前で抱きしめる。

 

『大丈夫ですよ、真守』

 

カブトムシは羽が広げられないので、圧縮砲を撃ち出すための角で空気を振動させて真守に告げた。

 

真守が悲痛で顔を歪ませる中、ふと、垣根のAIM拡散力場が近付いてきているのが分かって顔を上げる。

 

夏の高い空。照り付ける太陽。

 

その向こうに、三対六枚の純白の未元物質(ダークマター)の翼を広げた垣根の姿があった。

 

「…………………………かき、ね」

 

真守はカブトムシを抱きしめたままく安堵で顔をしゃっと歪ませ、よたよたと立ち上がってカブトムシを片手で抱いて空高く舞う垣根へと手を伸ばした。

 

垣根は未元物質(ダークマター)の翼を動かしながら上空から舞い降りてきて、絵になるほど綺麗にぽろぽろと涙を零す真守の小さな体を優しく抱きしめた。

 

「…………………………垣根っ…………」

 

真守は片手でカブトムシを抱きしめたまま、空いた手で垣根の腰に手を回して必死に(すが)りつく。

 

「…………わ、私、わたっ……私…………あのな、」

 

真守が垣根の胸に額を押し付けながら泣きじゃくると、垣根は真守の後頭部を優しく撫でた。

 

「悪かった」

 

垣根は真守を安心させるようにゆっくりと告げる。

 

「お前を一人にして、一人で戦わせて……悪かった」

 

垣根の言葉にぼろぼろと大粒の涙を零しながら、真守は震える声を出して呟く。

 

「だいじょうぶ……………………っだって、垣根、来てくれた……」

 

そして真守は垣根のジャケットをくしゃっと握り締めながら嗚咽(おえつ)()らし、体を押し付け、垣根の広い背中に必死に(すが)りつく。

 

「ずっと一緒だって、約束守ってくれるために…………来てくれた……」

 

「ああ。……ずっと一緒だ。お前が離してって言っても絶対に離さねえ」

 

真守はぽろぽろと涙を(こぼ)しながら鼻をスンスンと何度も鳴らして、垣根の言葉に頷く。

 

〈おやおや。『スクール』のリーダーがそんなナリしてナイト気取りですかー?〉

 

そこで、全てを聞いていた木原相似の軽薄な声が二人の耳に届く。

 

「テメエがコイツのこと追い詰めた木原か」

 

垣根は真守の頭を抱きしめる手に力を入れながら携帯電話を睨んだ。

 

「流石に我慢ならねえ。丁寧にじっくり殺してやるからふんぞり返って待っていやがれ」

 

〈ええ、楽しみにしていますよ。では。──新たな超能力者(レベル5)第一位、朝槻真守さん。そして降格した第三位、垣根帝督さん? また後で〉

 

「…………え?」

 

真守は垣根の胸に頭を押し付けるのをやめて、驚きでひっくとしゃくりあげながらブツッと切れた携帯電話を見つめた。

 

「今、なんて。え?」

 

垣根は歯噛みしながら腕の中で困惑している真守の事を抱きしめる。

 

「とりあえず落ち着ける場所に行くぞ。そこで話をするから」

 

「……………………うん」

 

真守は垣根の胸に顔をうずめて小さく返事をした。

 

「でも、あと少しだけ。あと少しだけこうさせて…………おねがい」

 

真守がぎゅっと垣根の腰に回した片手に力を入れると、垣根は真守の事を柔らかく、そして壊れ物を扱うかのように優しく抱きしめた。

 

 

Aug.31_PM04:31終了

 




やっぱり木原一族でした。
しかも木原相似……そして一方通行の代替って事は、まさか……という事でお楽しみいただけたら幸いです。

真守ちゃんが過去にどんな殺人を犯したか、垣根くんが知る事となり、これで二人共全ての過去を共有した事になります。

それにしても、真守ちゃん絶対にピエロがトラウマになる……。



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