とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第五一話、投稿します。
次は一〇月一日金曜日です。


第五一話:〈前虎後狼〉と少しのハプニング

(Aug.31_PM09:38)

 

木原相似の暴走による朝槻真守襲撃は収束を迎え、『スクール』のメンバーはその後始末に奔走していた。

そんな中、垣根は一足早く離脱して真守と共に車でマンモス病院へと向かっていた。

 

マンモス病院に向かうのは真守の隣に座っている杠林檎の為である。

木原相似によって一方通行(アクセラレータ)の代替にまで仕立て上げられた林檎は真守に助けられはしたが、栄養失調気味なのと後遺症が残ってないかという心配があるため、冥土帰し(ヘブンキャンセラー)に診てもらう必要があるのだ。

 

林檎は薄手のキャミソールワンピースしか着ていないので、現在真守が着用していた白と黒のオーバーサイズのデザインパーカーを羽織っており、真守が香りづけに使っているミストスプレーの匂いが気になるのか、さっきから袖口を鼻に当てててスンスンと匂いを嗅いでいた。

 

「お前は杠林檎という名前なのか?」

 

「うん。……?」

 

真守が問いかけると林檎は匂いを嗅ぐのをやめ、真守を見上げて小首を傾げた。

真守は自分の名前を求めていると雰囲気で察すると、柔らかく微笑んで自己紹介する。

 

「私は朝槻真守だ。今運転しているあっちは──」

 

「垣根、帝督?」

 

真守が垣根の名前も言おうとすると、林檎が真守の言葉を先回りして訊ねてきた。

 

「垣根、お前有名なんだな」

 

「そりゃお前と違って順位付けされてるからな。知っててもおかしくねえだろ」

 

垣根は運転中なので自分に声を掛けてきた真守をちらっとルームミラーで確認してから、すぐに視線を前に向けた。真守は垣根をじーっと見つめている林檎に優しく話しかける。

 

「お前は『暗闇の五月計画』の生き残りなんだな?」

 

「うん。一緒に実験してた子、急に暴れて研究所が壊れたから外に出た」

 

「そこで木原相似に拾われたと?」

 

「うん」

 

「大変だったな」

 

真守は自分の問いかけに答えるためにこちらを向いた林檎の頭を労わりを込めてそっと撫でる。

林檎は頭を撫でられた事がないのか、真守のちんまりとした手に撫でられてその感触にきょとんとしていた。

 

「『暗闇の五月計画』は置き去り(チャイルドエラー)を使った実験だったから、お前も置き去りなのか?」

 

「そう」

 

「私も置き去り(チャイルドエラー)なんだ」

 

「そうなの?」

 

真守は小首を傾げる林檎を見てから寂しそうに微笑む。

深城の事を救ってほしいと真守が襲った病院にたまたま冥土帰し(ヘブンキャンセラー)がいたから真守は冥土帰しの患者となって必要な物を全てそろえてもらえた。

そんな奇蹟的な出会いがなければ、実験材料だった置き去り(チャイルドエラー)が一人で生きていくのは難しい。

 

「私と一緒に来るか?」

 

「……いいの?」

 

そのため真守が優しく微笑みながら提案すると、林檎は真守の誘いに薄く目を見開いてからじーっと真守を見上げて問いかけた。

 

「あの医者に診せた後、お前が引き取るって言うのかよ?」

 

真守が林檎と話をしていると運転していた垣根が口を出した。

 

「木原相似と戦う前に先生に私が超能力者(レベル5)になる事掴んでないか聞くために電話しただろう?」

 

「ああ。確か通達は来てなかったが、あの医者もお前が第一位に認定される事は掴んでたな。……どっから掴んだが知らねえが、それでも色々と便宜図るつってたな。そこに付け入るってことか?」

 

真守は垣根の言い方が酷かったので顔をしかめさせ、口を尖らせて抗議する。

 

「む。先生はお願いしてくれればきちんと応えてくれる。その言い方はちょっと酷い。……垣根は反対か?」

 

「……お前がそれでいいならそれでいい」

 

「良かった」

 

真守の方針を聞いても問題がなさそうだと判断した垣根は真守に好きにしろと告げ、真守は垣根から許しが出た事で顔を明るくする。

 

「じゃあ朝槻と一緒?」

 

「うん。お前はそれでもいいか?」

 

話を聞いていた林檎がこれから自分がどうなるのかを理解して自分に問いかけてくるので、真守は柔らかく微笑んでから逆に訊ねる。

 

「うん。いい、よ…………」

 

林檎は承諾するが、言い終わる前に眠くなったのかかくん、と首を落とした。

 

「林檎?」

 

「んー」

 

真守が名前を呼ぶが、林檎は真守のパーカーの袖で目をぐしぐしと(こす)って起きようと頑張るが、抵抗虚しくそのまま寝てしまった。

 

「まだ話してる最中なのに突然寝た」

 

「……木原相似に色々弄られたからおかしくなってんのか?」

 

「どうだろう。先生に診てもらえれば大丈夫だと思う」

 

真守は車の振動で頭をガクガクと揺れさせながら眠る林檎の頭を自分の体に寄り掛からせながら、垣根と話をする。

 

(林檎を送り届ければ私のゴタゴタは終了だ。一方通行(アクセラレータ)はどうなっただろうか。必要なら車途中で降りてそのまま直行しても……)

 

真守は心の中でそう呟き、携帯電話を取り出して一方通行(アクセラレータ)に連絡を取ろうとする。

 

(あれ。上条から電話が来てる。それも鬼電……?)

 

「お前にしてほしくない事がある」

 

何故上条から着信がたくさん来ているのだろうと真守が首を傾げていると、垣根がそんな真守に声を掛けてきた。

 

「……何?」

 

真守は垣根の『してほしくない事』に心当たりがありながらもそう問いかける。

 

「AIM拡散力場を操って高次元の存在に自分を近づけるのはやめろ」

 

真守は携帯電話を見つめるのをやめて顔を上げ、ルームミラー越しに垣根を見つめる。

垣根は前を向いているが辛そうな顔をしていた。真守はそんな垣根を見て寂しそうに微笑みながら告げる。

 

「……自分を完全に造り替えなければ大丈夫だよ、垣根」

 

「もしもの事があったらどうするんだよ」

 

「今は演算能力を翼で拡張しているだけだ。私の体にメスは入れていない」

 

真守がそう言えば問題ないのだろう。

 

だがそれでも垣根は少しでも真守に自分を組み替えてほしくなかった。

 

「……頼むからやめてくれ」

 

垣根が(うめ)くように呟くと、真守は垣根の声を聞いて悲痛で顔を歪ませる。

 

「垣根の気持ちは分かった。……でも、この子を救うみたいに力が必要なら、やっぱり私は力を使うと思う。……私は、私が助けられる人間なら助けたい。その人たちの幸せを守ってあげたいから」

 

真守は鼻に髪がかかって息が苦しそうな林檎の髪の毛を払ってやりながら垣根に自分の気持ちを正直に伝えた。

 

「だったらお前がその力を使わなくていいように、俺がお前の代わりをしてやる」

 

「! ……垣根、ありがとう」

 

お前の代わりにお前が守りたい人間を守ってやる。

 

自分の事を大切に想ってくれている垣根の優しさに触れた真守はそれを聞いてふにゃっと微笑んだ。

 

「だから何かあったら言え。……ああいや、お前は絶対に俺を頼らねえから俺は俺で勝手に動く」

 

「ちゃ、ちゃんと頼る! 頼りにしてる。もう垣根がいなくちゃ嫌だ。だからそばにいてくれ。……ずっと一緒って言ってくれた! だから、一緒に……」

 

垣根がじゃじゃ馬娘の真守を信用していないと告げると、真守は焦った表情を浮かべて少しだけ声を大きくする。

 

「それは当たり前だろ、約束したんだからな。…………ただ俺が言ってるのはお前が一人で突っ走る事に関してで、それが俺は気に食わねえっつってんだよ!」

 

怒りがふつふつと湧いてきたのか、最後怒鳴るように垣根が語気を強めるので、真守はしゅんと小さくなって申し訳なさそうに俯く。

 

「う。以後気を付けます…………」

 

「気を付けるって言っても俺は信用しねえからな」

 

「酷い……」

 

真守がそんなに信用がないのか、とショックを受けて最初から縮こませていた体をもっと縮こませるので、垣根は『ちっとは反省しろ』と心の中で呟く。

 

真守はいじけたまま携帯電話をカコカコと(いじ)って一方通行(アクセラレータ)に現状がどうなっているか電話をくれとメールを送る。こちらから電話を掛けたら垣根の機嫌が急降下するからだ。

 

(よし。一方通行(アクセラレータ)には連絡した。……で、鬼電が来てる上条へと連絡……っと)

 

〈朝槻か!?〉

 

真守が心の中で呟いて、上条当麻を選んで電話を掛けると、上条は切羽詰まった様子ですぐに通話に出た。

 

「上条、電話に出られなくてすまなかった。少し立て込んでいてな。どうした、大丈夫か?」

 

〈インデックスが(さら)われた!!〉

 

「は? 攫われた? 誰に?」

 

真守が突然怪訝な声を出したので、垣根は問題がまた起こったのかと車を運転しながら嫌そうな顔をする。

 

〈ロリコン! ロリコン誘拐魔に!! それでバカ猫がまたバカな事をやらかして時間食って、そんで!!〉

 

「……ちょっと待て。分かるように最初から説明してくれ」

 

真守が落ち着くように(うなが)すと、上条は走っているのか息を切らしながら真守に説明する。

真守のおかげで夏休みの宿題がちゃんと終わった上条は、お祝いと夏休み最後の日という事もあって少し贅沢をしようとインデックスと一緒にファミレスに行った。

ウェイトレスにできたての熱々ご飯を頭から被せられたりしたが、なんとかして食事にありつこうとしたその瞬間、大男が襲撃してインデックスを拉致。

そして大男は文字通り姿を消してどこかへと消えてしまい、上条は攫われたインデックスを探している最中らしい。

 

朝槻真守は木原相似に襲撃されて『スクール』と共に戦った。

一方通行(アクセラレータ)打ち止め(ラストオーダー)妹達(シスターズ)を救おうと動いている。

そして上条当麻は魔術師に襲撃されて攫われたインデックスを救うために奔走(ほんそう)している。

 

「今日は厄日か……」

 

真守が思わず(うめ)くと、上条はそれを聞いて同意する。

 

〈厄日? そうなんだよ、不幸の上条さんでもこんな厄日はねえよ! 午前中はアステカの魔術師とやりあう事になっちまうし! なんで一日に二回も魔術師相手しなくちゃならねえんだよ!〉

 

「まさかの二人目!?」

 

(どうする……!? インデックスと最終信号(ラストオーダー)。どっちも大切……! でも私の体は一つしかない。どうする……どうする……!?)

 

真守は上条の言葉に驚愕しながらも二者択一を迫られて焦る。

 

ダラダラと汗を流す中、真守はルームミラー越しにこちらを(うかが)っていた垣根の存在に気が付いた。

 

「か、垣根!!」

 

真守が自分の名前を呼んでくるので、垣根はハッと嗤いながら告げる。

 

「やっと頼る気になったか。これでお前がスルーしたらどうしてやろうかと、」

 

 

一方通行(アクセラレータ)最終信号(ラストオーダー)を帝兵さんで探して! 頼む!」

 

 

「……あ゛?」

 

当然の(ごと)く真守のトンデモ発言に垣根が機嫌を急降下させるので、真守は必死に垣根を説得にかかる。

 

「き、嫌いなのは分かってる! でも私の体一つしかないから全く違う二人を同時に助ける事ができない! だからお願い! 一方通行(アクセラレータ)最終信号(ラストオーダー)は垣根に頼めるんだ! とりあえず見つけたら現状どうなっているか私に教えてくれ! お願い! 手助けしろとまでは言わないから!」

 

「ああ゛? なんで俺が一方通行(アクセラレータ)のために動かなくちゃ、」

 

真守の頼みごとを拒絶しようと口を開いた垣根だが、すぐに言葉を詰まらせる。

 

先程自分を頼れと垣根は真守に言った。

 

その舌の根も乾かないうちに拒絶するのか? 

真守がやっと頼みごとをしてきているのに?

でも自分にこの世で最も憎い敵のために動けと普通言うか?

 

「上条、今から行くから場所教えろ!」

 

垣根が頭の中で葛藤していると、真守は時間が惜しくて上条に声を掛ける。

 

〈何か色々立て込んでるみたいだけどすまん、頼む! ええっとここはどこだー? うわっ美琴のヤツがまだ追ってきやが……っ!!〉

 

真守が居場所を聞くと、何故か上条は美琴に追われているらしく、バリバリバリッと電撃が走る音が電話越しに聞こえてくる。

 

(なんで美琴に追われてるんだ? ええい、しょうがない! 上条の携帯電話にハッキングして居場所を特定……いいやインデックスを探して連絡した方が早いか……!)

 

「じゃあ、垣根! 一方通行(アクセラレータ)の情報収集よろしくな!」

 

真守は上条の現状がうまく呑み込めず心の中で困惑しながらも方針を打ち立て、携帯電話を構えたまま後部座席のドアのロックを解除する。

 

「待て! テメエ勝手に決めてんじゃねえ!」

 

「待てない!」

 

葛藤から復帰した垣根に怒鳴られながらも真守は即座に声を上げて蒼閃光(そうせんこう)でできた猫耳と尻尾をぴょこっと出してドアを開ける。

 

「おい、まも────!?」

 

垣根がドアを開けた真守を止めようと振り返るが、その瞬間垣根は言葉を詰まらせた。

真守が履いているスカートが後部座席の扉を開けた事により入ってくる風でパタパタはためいている。

そのせいで何が起こるかと言うと、スカートの中に隠れていた真守の下着がチラッチラ、チラチラ垣根の視界に入ってくるのだ。

 

「く…………──っ!?」

 

垣根は真守の下着を見てしまい、思わず叫びそうになる。

 

思わず垣根が呟こうとした通り、真守の下着は黒。

 

しかもその下着はなんとも洗練されたデザインで、大事なところを隠す布地の部分は少ないし、腰にかかる部分は何本もの細い紐で支えられている所謂(いわゆる)紐パンに分類されるものだった。

 

しかもただでさえ紐パンなのに布地が少ないので真守の小ぶりのお尻の割れ目がちょっと見えている。

 

垣根が顔を固まらせている間に、真守はタイミングを計ってバッと扉から外へと出る。その瞬間、これまでちらちら見えていただけの下着ががっつり垣根の目に入った。

 

「垣根、一方通行(アクセラレータ)が何してるかは移動しながら話すから! 帝兵さんこっち来て!」

 

真守は車と並走する形で飛ぶと、車に一緒に乗っていたカブトムシにそう指示する。

 

ぶーんと飛んできたカブトムシが右肩に留まるのを確認した真守は、後部座席の扉を閉めて車と並走するのをやめて夜の街へと繰り出す。

 

「ちょ、おまっそれで飛んでくのは止めろ!!」

 

垣根の制止むなしく真守はひらひらとスカートをひらめかせてどエロ下着をちらちら見せながら飛んでいく

 

「オイ! アイツのスカート守れ!」

 

『今注意してスカートの上から押さえています。一方通行(アクセラレータ)の方は?』

 

垣根がネットワーク上から真守についていったカブトムシにオーダーを出すと、カブトムシから淡々とした返事があった。

 

「テメエに言われなくても分かってる! 一方通行(アクセラレータ)を探、うっ!?」

 

垣根は全体にオーダーを出そうとするが、そこで(うめ)いて言葉を切る。

 

カブトムシが真守のスカートを押さえるために真守の腰からお尻にかけて張り付いた事により、カブトムシに個別オーダーを出すためにリンクしていた垣根に真守のお尻の感触が流れ込んできたからだ。

 

「真守の尻の感触伝えてくるの止めろ!」

 

『感覚共有はオンオフ切り替えなため、感触だけ切る事は出来ません。他の感覚も共有できなくなりますので、真守の現状をリアルタイムで垣根帝督(オリジナル)に伝える事ができなくなりますが、よろしいでしょうか?』

 

「それでいい! つーかテメエは俺の分身だろうが! なんでそんな平常心なんだよ!?」

 

カブトムシのあまりの冷静さに、垣根は林檎が寝ているにも関わらず思わず声を荒らげると、カブトムシは変わらずに淡々と述べる。

 

垣根帝督(オリジナル)の端末と言えど、私たちはあなたと明確に違う生き物です。確かに嬉しい気持ちはありますが、性的な欲情は持ち合わせていませんので』

 

「やっぱり嬉しいのかよ!? それ絶対真守に言うんじゃねえぞ!? 後ストレートに表現すんな!」

 

『……というか垣根帝督(オリジナル)がそういう風に造ったのに何故今更そんな事を確認するのですか?』

 

「うるせえ動揺してんだよ悪ぃか!?」

 

自分よりも格下であり、感情の起伏があまりないはずのカブトムシから白い目を向けられた感じがした垣根は、思わず怒鳴る。

 

『それで一方通行(アクセラレータ)の探索のオーダーをきちんと出していただけますか? 私たちは垣根帝督(オリジナル)が掛けた反逆防止機構により、全体での動きには制限が設けられていますので』

 

「……っテメエに言われなくても分かってる! 一方通行(アクセラレータ)最終信号(ラストオーダー)を全機で探せ! 最終信号(ラストオーダー)の方は妹達(シスターズ)と身体的特徴一致で捜索! 記録も参照してとっとと探せ!」

 

垣根が顔を赤くしながらネットワーク上にオーダーを流すとカブトムシが一斉に動き出す。

 

「…………これからアイツに絶対スカート履かせるわけにはいかねえ…………!!」

 

垣根はネットワーク上でカブトムシが一方通行(アクセラレータ)最終信号(ラストオーダー)を探し始めるのを確認しながら、頬が熱くなるのを感じて(うめ)く。

 

ちなみに垣根の願いは真守の高校の制服がセーラー服な時点で土台からして無理な話である。

 

 

Aug.31_PM09:52終了

 




作中でも何度も登場していますが、真守ちゃんはモノクロファッションで洗練されたデザインが好みなので、自分がいいなと思った服ならばスカートでもズボンでもなんでも着ます。
だから下着ももちろん白と黒。

そして洗練されたデザインが好きなので高校生にしてはえちえちな大人デザインの下着を着用してます。
風紀委員のあの空間移動と好みが合いそう……。

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