とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第五八話、投稿します。
次は一〇月九日土曜日です。


第五八話:〈苦労慰安〉は誤解(?)と幸せと共に

「インデックス! お前、こんなところにいやがったのか!」

 

上条が始業式に行く学生の列から抜けてインデックスを探して校内を歩き回っていると、食堂のテーブルの一角を彼女が陣取っているのを見つけて、上条はインデックスにずんずんと近づく。

 

「あ、とうま!」

 

「『あ、とうま!』じゃねえんだよ! なんでまだこんなところに……って、そっちの女の子は一体……?」

 

インデックスに怒っていた上条だったが、インデックスの向かいに知らない女の子が座っていたので首を傾げた。

 

背も高ければ胸もでかい。薄桃色の髪にはちみつ色の瞳を持った、少し子供っぽい表情をしている女の子。

 

「私の友達でみなしろみしろって言うんだよ。まもりの大事な人だって!」

 

インデックスの説明に上条は目を瞬かせる。

 

「朝槻の? そうか、わりぃな。インデックスの面倒見ててくれて」

 

そもそもインデックスが迷惑をかけていて深城には申し訳なかった上条だったが、深城が自分の大切な友達である真守の大切にしている人間だと知って尚更(なおさら)申し訳なくなる。

 

「む。その表現はちょっといただけないかも」

 

「ううん、大丈夫。あたしも真守ちゃん待ってる間に楽しく過ごせたからよかったよ!」

 

インデックスが口を尖らせる中、深城はふふふっと軽やかに笑って上条の迷惑をかけたという申し訳なさを払しょくさせる。

 

「朝槻……? そういや、今日は朝槻の姿見てねえんだけど、学校に来てんのか?」

 

上条が教室にいなかった真守の事を思い出しながら首を傾げると、深城が困った笑みを浮かべて事情を説明した。

 

「真守ちゃんは今日の一二時付けで超能力者(レベル5)として承認されるから、その手続きで忙しいんだよぉ」

 

「あー。そういや昨日そんな事言ってたなあ。超能力者(レベル5)として承認される前日に学園都市から出ると学園都市が総力挙げて追ってくるとか、なんとか」

 

「上条くん、もう聞いてたんだねえ」

 

上条が真守の事情を知っているほどに真守に近いところにいると分かった深城は、嬉しそうに目を細める。

 

「『れべるふぁいぶ』ってすごいの?」

 

「……インデックスさん? 科学が絡むと途端にポンコツになるあなただって、流石に超能力者(レベル5)は知っていないとマズいですよ?」

 

「だって分からないんだもん。ねえ、みしろ。『れべるふぁいぶー』って一体どんなの?」

 

上条の呆れた様子にインデックスはムスーッと拗ねながらも深城の方へ向き直って問いかけた。

 

「学園都市の能力開発における頂点で、七人しかいないんだよ。まあ、真守ちゃんは一度承認を蹴ってるから、上層部では八人いるって認識だったんだけど、一般には知られてなかったの。真守ちゃん、今回正式に第一位に承認される事になったんだよ」

 

「ふーん。じゃあまもり、すごい人になるんだ! さすがまもりだね!」

 

「そうなんだけどねえ。超能力者(レベル5)に認定されると良い事ばっかりじゃないんだあ」

 

インデックスの喜びに水を差すようで悪いが、深城は苦笑いをしながら事実を口にする。

 

「どうして?」

 

「真守ちゃん、学校始まってクラスメイトの子たちに会うの楽しみにしてたの。でも、超能力者(レベル5)に認定されて朝から事務作業だから、教室に行って友達に会う事も、一緒に始業式に出る事もできないの。超能力者(レベル5)はみんなの憧れだけど、大変だって言うのもインデックスちゃんには知って欲しいな」

 

インデックスの純粋な問いかけに深城がお願いを込めて告げると、それを聞いていた上条が腕を組んで、成程。と頷いた。

 

「そうだよな。超能力者(レベル5)には超能力者(レベル5)の悩みがあるもんなあ。だったら朝槻の事務手続きが終わるまで待って、おめでとうじゃなくてお疲れさまって言ってやろうぜ」

 

「うん、そうだね。とうま!」

 

「ありがとう、上条くん。インデックスちゃん。真守ちゃんもきっと喜ぶと思うなあ。……ところで上条くんは始業式に行かなくてもいいの?」

 

上条とインデックスの優しさに深城はとろけるような笑みを浮かべるが、途端に今は始業式の最中だと思い出したので上条にそう問いかけた。

 

「あ。……今から行っても目立つしなあ。始業式終わったら教室に戻ってしれっと出てましたアピールするかな」

 

上条が堂々とサボる宣言をしても深城はそれを咎めるつもりが全くなく、笑顔の花を咲かせて提案した。

 

「じゃあ、お話して待ってよっか。インデックスちゃんもそれでいい?」

 

「うん!」

 

インデックスが満面の笑みで答えると上条はインデックスの隣に座る。

 

「あ。そぉだ。言っておくことがあるの、上条くん」

 

「なんだ?」

 

「あたしのこの体、能力でできてるんだ。あなたの右手に触られちゃったらどうなるか分からないから、真守ちゃんが気をつけなさいって言ってたの。こっちも一つだけ防壁張ってあるから不意の衝突一回までなら大丈夫なんだけど、気を付けてくれるかなあ?」

 

「え。能力でその体ができてんのか?」

 

深城の説明に、上条はどう見ても普通の体にしか見えない深城の体を思わず無遠慮に見つめながら訊ねる。

その上条の視線がインデックスにはいやらしく見えて、密かにムッと口を尖らせた。

だがそんな無遠慮な視線を気にせずに、深城は困った顔で微笑む。

 

「うん。ちょぉっと色々あってね。でも今まで真守ちゃんに触れなかったから、こんな体でも嬉しいんだぁ。それに上条くんやインデックスちゃんともお話ができてとってもうれしい!」

 

「……そうか。お前も色々と大変なんだな。分かった、気を付けるよ」

 

「とうま。本当に気をつけてよね。みしろが消えるなんて私は嫌だよ」

 

上条のしみじみした言葉を受けて、インデックスは右手を見つめながら真守の言葉に頷く上条をじろっと睨み上げて念を押すように注意をする。

 

「わ、分かってるって! 俺だって朝槻の大切な人を傷つけたくない!」

 

「ほんとーに気をつけてよね!」

 

インデックスが再三に渡って念を押すと、それを見ていた深城はくすくすと微笑む。

 

「ふふっ。インデックスちゃん、ありがとぉね」

 

深城が幸せそうに微笑むので、インデックスと上条は顔を見合わせて微笑む。

 

それから深城と上条、インデックスは始業式が終わるまで楽しくお喋りをしていて、上条は始業式が終わると教室へと戻っていって、ホームルームが終わったら二人に合流する事を約束した。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

真守が応接室で契約書の束を小萌先生とまとめていると、校内放送が流れてきた。

 

『統括理事会より、全学生へお知らせです。本日、九月一日一二時付けで第七学区内の高校に通う朝槻真守を、学園都市八人目の超能力者(レベル5)として承認、流動源力(ギアホイール)と能力を改名。順位を第一位と位置付けます。既存の超能力者(レベル5)の順位の前後はありません。統括理事会より、全学生へのお知らせです。本日、九月一日付けで朝槻真守を学園都市八人目の超能力者(レベル5)として承認──』

 

「一二時になったのですよーっ朝槻ちゃん! おめでとーなのですっ!」

 

「……ありがと」

 

小萌先生が祝福する中小萌先生に礼を言うと、真守は学園都市中に統括理事会からの通達が流れているのに気が付いて応接室の窓から空を見上げた。

 

学園都市の空に浮かぶ飛行船の大画面には、真守の写真とどこの高校に所属しているなどのプロフィールが出ており、個人情報の秘匿なんてあったものじゃなかった。

 

真守はそんな飛行船を不安そうに見上げてからため息を吐いて、書類に不備がないか確認するために視線を落とした。

 

(これからどうなるんだろう。……早く終わらせて、深城と合流して垣根と林檎に会いに行こう……)

 

真守は(ささ)やかな願いを心の中で呟きながら、淡々と手を動かしていた。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

真守が解放されたのはそれから三〇分程後のことで、学園都市中にアナウンスが流れなくなったとしても飛行船の大画面には真守が超能力者(レベル5)になったニュースが映し出されたままだ。

真守は飛行船を不愉快そうに見上げながらも深城がいる気配のする食堂へとやってくると、そこにはインデックスと上条が共にいた。

 

「上条、インデックス。深城に付き合わされてたのか?」

 

「お前を待っていたんだよ。お疲れ様、朝槻」

 

深城が迷惑かけていないか真守が心配して上条に問いかけると、上条はその言葉を否定してから真守に(ねぎら)いの言葉を掛けた。

 

「ありがとう、上条」

 

上条の言葉に、真守は仏頂面ながらも嬉しそうに頷く。

その様子を見ていた上条は、突然真剣な表情をして真守に向き直った。

 

「お前にとって超能力者(レベル5)認定って色々と大変だとは思うけど、俺にとってはお前の力が認められたことが嬉しいから。お前が嫌だって分かってる。でも言わせてほしい。……おめでとう、朝槻!」

 

「! うん……ありがとう、上条」

 

上条が最大限自分の気持ちを汲み取ってくれているので真守は控えめに微笑み、その祝福の言葉を受け取った。

 

「まもり! よく分からないけれどおめでとうなんだよ!」

 

「ありがとう、インデックス」

 

真守がよく分からないのに祝ってくれたインデックスに向けて優しく笑うと、深城が真守のその笑みを見てガターン! と席を立った。

 

「真守ちゃん真守ちゃん! その笑顔! その笑顔あたしにもちょーだい!!」

 

「いつもあげてるだろ」

 

真守が顔をしかめて深城にツッコミを入れると、深城は泣きそうになりながらバッと両手を広げた。

 

「そんなぁー! 真守ちゃあああん!」

 

真守は深城の抱き着きから逃げようとしたが、深城は真守の行動パターンを知り尽くしているので先回りするとガバッと抱き着いた。

 

「だ、だからくっつくなって……!」

 

真守は最初は嫌がっていたが、深城にがっちりホールドされて頬ずりされて逃げられないと気が付くと、『好きにして』と遠い目をして深城にぎゅうぎゅう抱き着かれていた。

 

「ねえ、真守ちゃん! あたしインデックスちゃんと上条くんともっと仲良くなりたいなあ。一緒に遊ぼうよ!」

 

「お。いいな、それ! 飯でも食いに行くか!」

 

「みしろと話してたら忘れてたけど、私もうお腹ぺこぺこなんだよ」

 

上条とインデックスが自分の意見に同意するので深城はにへらっと笑って真守を見つめる。

 

「ねえ、真守ちゃん良いよねぇ?」

 

「……うん、いいけど。垣根と合流する予定、もしかしてお前忘れてる?」

 

「あ。……まあ垣根さん許してくれるよ!」

 

深城がグッと親指を立てて叫ぶので、真守は垣根がどう思うか不安になって顔をしかめた。だが林檎も深城もいるし、別に二人きりでどこかへ出かけるわけではないからいいか、と真守は思って、そこではた、と気が付いた。

 

(な、なんで二人きりだったら垣根に申し訳ないとか思ったんだ? ……あ、そっか。垣根の器が小さいから拗ねると思ったのか)

 

「垣根? ……ああ、お前のスキャンダル相手!」

 

真守が自分の疑問に納得していると、上条が『垣根』という名前に聞き覚えがあったので声を上げた。

真守は上条が記憶を失った際に人間関係について説明しており、上条が垣根と会った事があるため垣根の事を『スキャンダル相手だとお前は思っていた』と説明していたのだ。

 

きちんと説明しなければならないと思いつつも、『スキャンダル相手』というのがあまり好きではない真守は少し嫌な顔をしながら上条に話していた。

 

「……上条、確かに私は垣根の事をお前にそうやって説明したが、ちょっとその言い方はやっぱりよくないから、その事に関しては秘密な?」

 

「あ。お前やっぱり嫌だったのか? 説明してた時嫌そうだったしな。だったらお前と垣根、本当はどんな関係なんだ?」

 

「ど、どんな関係……?」

 

真守は上条の問いかけに身を固くする。

どんな関係と言われて正直に答えれば、垣根は深城と同じように何があっても一緒にいてくれると約束してくれた大切な人だ。

 

でもその約束が一般的にはどう頑張っても恋人的に聞こえてしまうのと、そもそもその約束をした理由がいつか自分が人ではなくなってしまうかもしれないという理由なので、どこからどう説明したらいいか分からず、真守は困り果ててしまう。

 

「垣根さんはね、真守ちゃんとずぅっと一緒にもがもがっがももも」

 

「お前は口が軽すぎる! 重しを乗せてやるからちょっと黙ってろ!」

 

だが突然深城が全てを包み隠さず言おうとしたので、真守は深城の口を塞いで叫んだ。

 

「もももっぷはっ。真守ちゃん! 真実はちゃんと言わなくちゃダメなんだよ!」

 

深城は力任せに真守の手を自分の口から引っぺがして真守に向き直ると真剣な表情で告げる。

 

「お前はもうちょっとオブラートに包む言い方を考えた方がいい!」

 

「え。オブラート……?」

 

真守が頬を赤く染めて叫ぶので上条は(いぶか)しんだ後に全てを察してぽん、と手の平に拳を叩きつけて合点がいったと頷く。

 

「な、成程。付き合ってたのか。……本当にスキャンダル相手だったんだな。大丈夫、クラスの連中には黙っておくから」

 

「ちがう! 別に付き合ってない! ……確かに周りから見たらそうなのかもしれないけれどちょっと違うの! そういうんじゃないの!」

 

上条が真守に対してグッと親指を向けるので、真守が顔を赤くして叫ぶと、上条は腕を組んで何度も頷く。

 

「分かった分かった。恥ずかしいから朝槻はあんまり言われたくないんだな。そりゃ朝槻も完璧超人って言っても女の子だもんなあ」

 

「上条っ! 私をそんな温かい目で見るなぁっ!!」

 

真守は顔を真っ赤にして上条を見上げて睨みつけるが、上条はにやにやと笑って楽しそうに真守の表情を観察している。

 

「……もう、先に行くからな!」

 

真守は恥ずかしくて顔を真っ赤にすると、食堂の入口へと一人で歩き出す。

 

(垣根は恋人とかそれ以上に私のこと大切にしてくれてる。だから私と垣根の関係は特別なものだ! 表現できないけど恋人じゃない、絶対ちがうっ!)

 

真守は慌てて三人が追う中、スタスタと歩いて頭の中で思考する。

 

(……だって、だって垣根、ぎゅーってして頭撫でてくれるのがすっごく優しいし、私のこと、壊れ物みたいに大切に扱ってくれる。アレやってもらうと恥ずかしいけどとっても幸せ。えへへ。……ん? 恋人ってそういうものなのか? ……でもやっぱりちがうと思う。……考えたら垣根に会いたくなってきた。垣根、林檎と仲良くやってるかな。学校から出たら連絡とってみよう)

 

真守は垣根に抱きしめてもらった時の事を考えて幸せそうに微笑みながら、心の中でこれからの方針を決めて昇降口へと急ぐ。

 

その様子を唯一見ていたカブトムシ越しに垣根がそれを見て、ステーキハウスで身もだえしている事を真守は知らなかった。

 




真守ちゃん、コイバナ的な話になると女の子らしく動揺してしまいます。

それにしても色々とすっ飛ばしているので普通の言葉で形容できない関係性になっている二人。心理定規も言ってたけど、女の幸せ考えなくていいのか垣根くん……。

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