とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第六三話、投稿します。
次は一〇月一四日木曜日です。


第六三話:〈真実暴露〉で誓いを胸に

夜。

垣根は真守の病室にあるデスクの椅子に座り、長い脚を組んで本を読んでいた。

 

その本は真守の病室の本棚にあるオカルト本の一つだ。

 

真守が言うには能力開発とは全く別の法則で成り立っている『魔術』という技術が学園都市の『外』にあるらしい。

 

学園都市が『科学』を信仰するならば、魔術世界は『神秘』を信仰する。

 

そうやって住み分けをしていたはずだが、イギリス清教と学園都市が協力体制を敷いた事でその住み分けが曖昧になりつつあった。

 

以前、イギリス清教の一部と学園都市の一部が秘密裏に新たな能力者を生み出そうとした時に悲劇に()ったシェリー=クロムウェルは、その協力体制によって再び悲劇を生ませないために両者を切り裂く目的で学園都市に侵入、テロを敢行(かんこう)した。

 

現状、とても危うい状態でバランスを保っている科学と魔術。

 

そんな科学と魔術は全く別の技術でありながらも、どうやら目指している場所は同じらしい。

 

それは思想や文化が違えど、あらゆる神話が同じ末路を辿ってしまうのと同じだと真守は言っていた。

 

人類が人類であるが故に行き着こうとする先は同じなのだとも。

 

そのため()()()()()()()()()事もできるし、その逆もまたできるのだ。

 

垣根が手に取っているのは天使の本だった。

 

真守はシェリー=クロムウェルが警備員(アンチスキル)に連れて行かれる前に自分の事を『最上級の()天使』と呼んだのは一体どういう意味だと訊ねた。

 

熾天使とは、天使の階級の一つで九段階の最上とされている。

 

本来ならば熾天使に『最上級』なんてつけない。

熾天使という地位が階級としての最上位だからだ。

 

その熾天使には四人の天使が分類されることがある。

だが話を聞くに、熾天使は()()いた説がある。

 

 

その『最上級の熾天使』とは──光を掲げる者(ルシフェル)

 

 

神と対等であるとされ、神の右側に座る事を許された唯一の天使。

 

神と等しい力を持つ証として六対一二枚の翼を持ち、神に最も愛された神の遣い。

 

だが光を掲げる者(ルシフェル)は天から()ちて地獄に身を()とし、熾天使の座から引きずり降ろされ、天界に戦争を巻き起こした。

 

光を掲げる者(ルシフェル)が神に等しい力を振るえるのと同じように、真守は絶対能力者(レベル6)として神に等しい力を望まずとも近い未来に手に入れる事が決まっている。

 

真守の翼は()えて未完成にとどめているので、やろうと思えば最大()()()()()まで翼を展開できる。

 

白と黒の歪な翼は、まるで天界から()ちて身を()としたようで、真守は堕ちた歪な天使と言える。

 

これだけ当てはまれば、光を掲げる者(ルシフェル)は真守にピッタリな表現だ。

 

そしてもし光を掲げる者(ルシフェル)であるならば。

 

 

朝槻真守の結末は学園都市()から()ちて身を()として学園都市の敵となり、学園都市に()()()()()()()()という事だ。

 

 

科学の徒が魔術の徒(オカルト)(かか)げる結末に辿り着くはずがない。

 

そもそも魔術の徒(オカルト)なんて科学の徒は誰も信じない。

 

誰もが与太話と笑い、まさかそんな事が真守に限って起こるわけないと考えるだろう。

 

だが納得せざるを得ない周囲が知らない証拠が多々あるし、魔術には『偶像の理論』という法則がある。

 

『偶像の理論』とは、かたちや役割(ロール)が似ているものはお互いに影響し合い、性質・状態・能力などが似通うという法則で、かたちと役割が似ていればホンモノの力の何%かが宿るというものだ。

 

オリジナルがレプリカへと力を分け与える事ができる理論であり、オリジナルに対してレプリカに類似性があればあるほどその力が強力となる。

 

聖人も『偶像の理論』に基づいており、神の子と聖人は身体的特徴が似ているからこそ、神の子の力の一端をその身に宿す事ができるのだ。

 

『偶像の理論』は様々な場所に存在している。その『偶像の理論』を使って、あらゆる神話に類似性を見出してそれを利用する魔術師だっている。

 

科学技術であろうと、『偶像の理論』を(かか)げる魔術世界が真守の事を光を掲げる者(ルシフェル)と表現すればその結末だって同じなのだ。

 

それに真守は自分が絶対能力者(レベル6)へと進化(シフト)すれば自分が自分でなくなると感じている。

 

真守はシェリーから告げられた自分の役割(ロール)を聞いて全てを理解した。

 

このまま自分が何もしないまま絶対能力者(レベル6)へと進化(シフト)したら学園都市の、ひいては人類の敵になるのだと。

 

だから学園都市は何らかの手法で自分を制御しようと考えており、自分に(ほどこ)された情操教育はそのための一環だったのだと、そこまで真守は流れを読み取って正確に理解した。

 

『…………私、このままだと垣根や深城の敵になるらしい』

 

真守の呆然とした表情を思い出して、垣根はオカルト本を持っていた手に力が入った。

 

真守がその言葉を吐きながら何を考えていたか、真守とこの夏の間一緒に過ごした垣根には分かっている。

 

 

『七年間の特別な時間割り(カリキュラム)』を受けて学園都市の制御下で絶対能力者(レベル6)へと進化(シフト)した方が良いのではないのかと真守は考え、学園都市が運営する研究所に戻るべきかもしれないと考えているのだ。

 

 

真守は研究所を壊滅させて脱走した身なので、自分が本来あるべき場所へ戻ると真守が言えば、学園都市は諸手(もろて)を上げて真守を歓迎し、『七年間の特別な時間割り(カリキュラム)』に必要な施設を楽々と作り上げるに決まっている。

 

それだけ真守には利用価値があるからだ。

 

だがあの時間割り(カリキュラム)は真守の尊厳など欠片も考えていない時間割りで、それに真守は絶対能力者(レベル6)へと進化したら人ではなくなってしまう。

 

だがいつか絶対能力者(レベル6)へと進化する事が決まっていて、彼らの舞台で進化(シフト)せずに勝手に進化(シフト)してしまったら人を傷つけてしまう。

 

学園都市に反抗している場合ではなく、彼らの支配下へと戻るべきかもしれない。

 

だが学園都市はいつだって学生を食い物にしている。

 

真守が学園都市の支配下に戻れば、真守は学園都市の非道を許すことになる。

 

垣根はそこで真守の悩みを一旦(すみ)に追いやり、真守が知らないが自分が知っている『計画(プラン)』について考える。

 

第一候補(メインプラン)』である真守は『計画(プラン)』の要で、恐らくアレイスターは『計画(プラン)』にいずれ絶対能力者(レベル6)へと到達する真守を制御する方法を組み込んでいるのだろう。

 

その『計画(プラン)』の中で垣根帝督は『補助候補(サブプラン)』に位置付けられている。

 

 

その『補助』という役目はもしかしたら『第一候補(メインプラン)』である真守の制御の『補助』のために存在しているのではないか。

 

 

そんな考えが(ぬぐ)えない。

 

真守がアレイスターに『計画(プラン)』の要として不当に利用されるならば、垣根は『計画(プラン)』を破綻させようと垣根は考えていた。

 

真守が示してくれた『無限の創造性』を彼女のために使おうと決めた時から、真守の笑顔を絶やさないように、守るためにずっと動いてきたのだからそれは当然だった。

 

だから『計画(プラン)』についての情報を集めるためにカブトムシという独自の情報網を形成した。

 

だが『計画(プラン)』こそが真守の尊厳を守るための鍵なのかもしれない。

 

計画(プラン)』と真守は運命共同体で、真守が学園都市の敵にならないようにするために『計画(プラン)』は必要不可欠なのかもしれない。

 

「垣根さん」

 

自分の背中に冷や汗が流れ落ちているのを垣根が感じていると、病室に深城が入ってきており、パーテーションの中にいる垣根を覗き込むようにして声を掛けてきた。

 

「真守は?」

 

真守が深城のそばにいないので訊ねると、深城は簡潔に説明する。

 

一方通行(アクセラレータ)さんが目覚めたってお医者さまから聞いたから、一方通行さんのところにいるの」

 

「脳に損傷を受けて周りが上手く認識できねえんじゃないのか?」

 

一方通行(アクセラレータ)は弾丸を頭に撃ち込まれて前頭葉が傷つき、言語能力や運動能力、それと演算能力にも支障が出てしまっている。

 

手術後に目覚めたとしても話ができるはずがない。

 

垣根がそう思って深城に訊ねると、深城は目を柔らかく細めて少し寂しそうに答えた。

 

「真守ちゃん、言葉を使わなくても一方通行(アクセラレータ)さんと意思疎通ができるの」

 

「……それは精神感応(テレパス)みてえに真守は自分の脳で一方通行(アクセラレータ)の代理演算ができるという意味か?」

 

「んー、真守ちゃんは色んなやり方できるから、正確には分からないなあ。ただ、疑似的なパスを繋げることは確実にすると思う」

 

垣根は新たなエネルギーを生成してこの世界の定義を造り変える事ができる真守の能力、流動源力(ギアホイール)を頭に思い浮かべながら訊ねると、深城はにへらっと笑う。

 

「……まあ、あいつの能力の応用性は高いからな」

 

垣根がそう呟いていると深城は垣根へとまるで大事な話をするかのように向き直った。

 

「垣根さん。真守ちゃんがいない今、あなたに言いたいことがあるの」

 

「……なんだ?」

 

深城がかしこまって告げるので、垣根は片眉を跳ね上げさせて深城の言葉の続きを待った。

 

 

「あたしね、統括理事長さんと話をする機会があったの」

 

 

「──は?」

 

垣根は深城の告白に時が停まった気がした。

 

だが深城ならばできない事はない。学園都市のAIM拡散力場を体と認識している深城なら、アレイスターが『窓のないビル』に(こも)っていようが接触できる。

 

垣根が瞬時に把握したのを感じ取った深城は、口を開いた。

 

「真守ちゃんは放っておけば悪い神様になるって言われたの。そんな真守ちゃんを学園都市も世界も滅ぼす悪い神様にしない、制御方法があるって言われたの」

 

垣根はその『制御方法』を聞いて嫌な予感がした。

 

この世で最も危険で最も利用価値のある真守を、アレイスターならどんな手段を用いても制御しようと画策するだろう。

 

「その制御方法は?」

 

垣根が深城越しにアレイスターを睨みつけて殺意を(つの)らせていると、深城はそっと呟いた。

 

 

「人との繋がり」

 

 

「……繋がり?」

 

その言葉にピンと来ない垣根は、深城にそう問いかけ、深城はそれにコクッと頷いた。

 

「人と繋がる事で、真守ちゃんは()()()()()()()()()()存在する事ができるんだ。……要は真守ちゃんが何を優先するか優先しないか、心の持ちようなんだって」

 

絶対能力者(レベル6)へと進化(シフト)して真守が人の精神から神と呼ばれる精神となる。

 

だが神は人ではない精神を持っていようと自分を(あが)めて信仰する人間には必ず慈悲を授け、進むべき道を示してくれる。

 

「……確かに筋が通ってるな。だったら真守は俺やお前がいれば問題ないって事か?」

 

垣根の問いかけに深城はふるふると首を横に振った。

 

「それだけじゃダメなんだよ。あたしや垣根さんや、周りにいる人間だけじゃダメなんだ。真守ちゃんは、一人の人間が繋ぎとめられるほどちっぽけな存在じゃないんだよ。もうそういう次元を超えているの。たくさんの人が真守ちゃんを繋ぎとめなくちゃいけないの」

 

(繋ぎとめる人間は多い方がいい。それは真守の事を多くの人間が知って神として認めなければならない。多くの人間が知る……って事はまさか、)

 

垣根はそこで心当たりがあって目を見開き、即座に深城に訊ねる。

 

「上層部があれだけ大々的に真守の事を公表して超能力者(レベル5)第一位に位置付けたのは、真守を繋ぎとめるための学生──信徒を集めるためか?!」

 

「そう。今日、色んな人が真守ちゃんを知ったよね」

 

深城はスッと窓の外に浮かんでいる飛行船を指さした。

 

飛行船の大型モニターには統括理事会からのお知らせがまだ映し出されており、真守の写真も一緒に映っていた。

 

「真守ちゃんの存在を学生全員が認識して、超能力者(レベル5)第一位として認める。誰もが真守ちゃんを目指して努力して、真守ちゃんに羨望の眼差しを向ける。真守ちゃんを偶像(アイドル)に仕立て上げて人々の心に根付かせる事こそ、真守ちゃんを縛る強固な繋がりになるんだ」

 

上層部は真守を繋ぎとめるために超能力者(レベル5)第一位に位置付けたかったが、真守がそれを拒絶していた。

 

それでも超能力者(レベル5)第一位に位置付けることは真守を制御するために重要であるため、真守が許容できるようになるまで辛抱強く待っていた。

 

だからこそ執拗(しつよう)に監視し、真守が逃げられないように外堀を少しずつ埋めていったのだ。

 

学園都市は真守に与えた超能力者(レベル5)第一位という地位を、ただ単に真守に利用するために(なだ)める飴として与えたかったわけではなかったのだ。

 

 

「お願い、垣根さん。あたしと一緒に真守ちゃんのそばにいてほしいの」

 

 

深城は垣根に近づき、祈るように両手を組んで垣根に心の底からのお願いをした。

 

「神さまになったら人から崇められて真守ちゃんの幸せを誰も考えないの。自分の幸せを求めて神さまに願うんだから当然だよね。だから真守ちゃんの幸せを願う人がそばにいるべきなの」

 

深城は自分が真守の幸せを一心に願っている事を垣根に伝えて、それから寂しそうに、でも心の底から幸せそうに微笑んだ。

 

「あたしには真守ちゃんがあなたと何を話しているか、分からなかったよ。でも真守ちゃんはあなたと話していると、とっても幸せそうで楽しそうで。あたしもとっても嬉しかった。真守ちゃんが幸せなら、あたしはそれでいいの。だからお願い。真守ちゃんのそばにいてあげて」

 

必死に真守の幸せを願う深城を、垣根は眩しいものを見るかのように目を細めて見つめる。

 

「俺の覚悟は決まってる」

 

垣根はそこでギュッと太もものスラックスの生地を掴んで、はっきりと宣言した。

 

「お前に頼まれなくたって、俺はアイツのそばにいる。アイツのそばにいるためならなんだってする。利用できるものは全部利用する。アイツを傷つけるヤツはお前だって許さない」

 

真守が絶対に守ろうとしている深城が真守の幸せを奪うのならば、自分は深城にも容赦しない。

 

その覚悟を伝えるべく、垣根は深城に挑発的な事を言った。

 

「それでいいよ」

 

深城は垣根のその言葉に怒ることなく微笑んだ。

 

「でもあたしも真守ちゃんの幸せを一番に願っているって、忘れないでね」

 

垣根のその決意に、深城は自分も同じ気持ちで、垣根がもし真守の幸せを損なうのならば容赦しないと宣言した。

 

「……お互い、面倒な人間に惚れたな」

 

垣根が真守の事を想ってフッと笑うと、深城はにっこりとおどけて告げた。

 

「そうかな? ちょっと一目惚れしちゃった女の子が、少しだけすごい子だっただけだよ」

 

「ハッ。……違いねえな」

 

深城は垣根の同意を得られてくすくすと微笑む。

 

「垣根さんに伝えたいこと伝えられたし、あたしは林檎ちゃんのところに行くね。垣根さんはどうする?」

 

「ここの本を読んでおきたい」

 

垣根は棚に並べられているオカルト本に目を向ける。どうやらここにあるだけではなく、部屋の中のちょっとしたクローゼットに入っている段ボールの中にもたくさんあるらしい。

 

普通の人間は読むのに一苦労しそうだが、学園都市最高峰の頭脳と称される超能力者(レベル5)ならば苦ではない。

 

「分かった。……林檎ちゃん、垣根さんに懐いているからちゃーんと相手してあげてね」

 

「……あれで懐いてんのか?」

 

垣根はぼーっとしてイマイチ反応が悪い林檎を思い出しながら首を傾げる。

 

「そうだよぉ。なんだか垣根さんは前から特別で、真守ちゃんは助けてくれたから特別で、あたしには別の意味で懐いているけどね」

 

「前から? ……なんでお前には分かんだよ?」

 

「そのうち垣根さんにも分かるよぉになるんじゃないかな?」

 

垣根が怪訝そうな顔をして問いかけてくるが、深城はくすくすと笑ってそんな垣根を置いて林檎の下へと向かう。

 

 

〈取り引きをしようか、源白深城〉

 

 

廊下を歩きながら深城は垣根に話さなかったAIM拡散力場に直接プログラムを書き込んで対話を勝手に始めた統括理事長との話の内容を思い出す。

 

〈朝槻真守は「神」に()る。「神」には「天使」が必要だろう?〉

 

いつか朝槻真守は源白深城を必要としなくなる。

 

それでも深城はそばにいられればそれでよかった。

 

だが『人間』は『神』が必要とする『天使』の役目を深城に与えると言ってきた。

 

『そこまでしてこの世界を引き裂きたいの?』

 

深城は自分がAIM拡散力場を体と認識しているので、自身の体であるAIM拡散力場にこの世界を引き裂く力があると知っている。

 

だからこそ、アレイスターは自分に『天使』の役目を与え、その代わりにAIM拡散力場によって世界を引き裂こうと考えていると推察する事ができたのだ。

 

〈キミはそれを拒まないはずだ。世界なんてどうでもいい。朝槻真守の隣に自分がいられればなんだっていいと考えているキミならば、ね〉

 

深城が訊ねると、アレイスターはそう返してきた。

 

『……確かに、あたしは真守ちゃんのそばにいられればどうでもいい。世界が滅びようがあなたが何をしようとどうでもいい。……あたしはね』

 

〈朝槻真守は許さないと?〉

 

深城が強調すると、即座にアレイスターは訊ねてきたので、深城はその時はまだなかった胸を張って答えた。

 

『そういう子だもの』

 

〈アレは随分と非情な存在だぞ?〉

 

『真守ちゃんをそんな風にしたのはあなたたちでしょ』

 

〈……で、取引はどうする?〉

 

深城が語気を強めて責めると、アレイスターはそれを軽くいなして訊ねてきた。

 

『……取引なんて、するつもりないくせに』

 

深城は怒りでAIM拡散力場を軋ませながら呟く。

 

『どうせあなたはあたしのことも真守ちゃんのこともいいように扱うんだから。飴を与えておけばどうとでもなるって思ってるんでしょ?』

 

〈それを知ってもキミには何もできまい?〉

 

深城がびりびりと『陽炎の街』を震わせながらアレイスターを責めると、アレイスターは脅しなんて物ともせずにそう問いかけてきた。

 

『そうだね。あたしには別に何もできない。でもね、真守ちゃんはなんだってできる。それをあなたも知っている。だからあなたは真守ちゃんの事を欲している。でも真守ちゃんはあなたが簡単に制御できる子じゃないんだから』

 

〈気に留めておくよ〉

 

その言葉を残してアレイスターは何も言わなくなった。

 

 

その直後、深城の体であるAIM拡散力場に核が生まれて、源白深城はAIM思考体としての体を得た。

 

 

(あたしにできることはないよ。だってあたしはずっと真守ちゃんに守ってもらっているから)

 

朝槻真守が最終的に人ではなくなってしまう事を深城は知っている。

 

結末は変えられない。それはその通りだ。

 

(でも真守ちゃんのそばにいるって決めた。何があっても、真守ちゃんのそばから離れないって決めた。……それは垣根さんも同じだ。あたしたちは何があっても真守ちゃんを一人にしない)

 

深城はそこで真守に初めて会った時の事を思い出した。

 

(初めて見た時、神さまみたいな子だって思った)

 

蒼閃光(そうせんこう)で造り上げた猫耳と尻尾を展開している、無表情で人形みたいに美しい少女を。

 

(でも、だからこそそばにいなくちゃいけないって思ったの)

 

自分の事を無感動に見つめる透き通ったエメラルドグリーンの瞳を。

 

(あの子の幸せを、考えられる人間になりたいって思ったの──)

 

それらを思い出しながら、源白深城は朝槻真守を想って寂しそうに目を細めた。

 

神の幸せを誰も願わない。

 

神に幸せを願うのだから当然だ。

 

だからこそ。

 

朝槻真守が神さまではない時から神さまと感じていた源白深城は、どうしても朝槻真守の個人の幸せを願わずにはいられなかった。

 

あの子に幸せになってもらうために、自分は無償の愛を捧げる。

 

自分と同じように真守の事を想っている垣根帝督と共に、源白深城はいつまでも朝槻真守のそばにいる。

 

(ずっと一緒だからね、真守ちゃん)

 

深城は心の中で絶対に破らないと誓った約束を呟くと、林檎の病室へと笑顔を浮かべて入っていった。

 




真守ちゃんの『役割』が明らかとなりました。
そして垣根くんも『計画』について察し始めます。でも真守ちゃんを真守ちゃんとしていさせるためには許容するしかない。ジレンマ。

そして深城、愛が純粋過ぎてある意味ヤバい。


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