とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第六九話、投稿します。
次は一〇月二一日木曜日です。


第六九話:〈局面急変〉で行動を

「え。一〇〇四六号がDAの人質に取られた?」

 

真守が垣根たちと一緒に昼食を摂り、これからDAの施設を襲撃してDAのどこかの施設にいる菱形を探し出そうとしていると、ミサカ一九〇九〇号から真守の携帯電話に着信があった。

 

電話に出てみるとDAが病院を襲撃、それを一方通行(アクセラレータ)が迎撃しようとしたが、一方通行の頭の傷が開いてしまいその間にDAが逃走。

DAが逃走するために人質に取ったのがミサカ一〇〇四六号で、彼女はそのまま誘拐されてしまったらしい。

 

〈はい。あの異国の少女が追っています、とミサカは事後報告をあなたにします〉

 

「それで一方通行(アクセラレータ)は?」

 

〈手術の方に問題はありません。夕方には目覚めるとあのカエル顔のお医者さまは仰っていました、とミサカは報告します〉

 

「……私はDAを襲撃してミサカを取り戻す。だからお前は一方通行(アクセラレータ)が目覚めたら連絡してくれるか?」

 

〈了解しました、とミサカはあなたからのお願いを引き受けます〉

 

「ありがとう」

 

真守は通話を切ると、少し離れたところにいた垣根たちへと近づく。

 

「ちょっと野暮用ができた。垣根と誉望は林檎と深城のことよろしく頼む」

 

「野暮用?」

 

「……DAだな?」

 

誉望は真守の野暮用という言葉に首を傾げるが、垣根は事情を知っているので真守に問いかける。

 

「うん。ミサカが人質に取られたらしいんだ。ちょっと行ってくる」

 

「誉望、調べろ」

 

止めても真守が行くと分かっている垣根は隣にいた誉望へと顎を動かして指示をする。

 

「はい」

 

「……いいの?」

 

特に逡巡(しゅんじゅん)することことなく頷いた誉望を見つめた後、真守は垣根を見た。

 

「俺のモノを俺がどう使おうが俺の勝手だろ」

 

「……誉望、お前の人権は一体どこにあるんだ? モノ扱いされてるケド」

 

「懐柔されて『スクール』に入った時からですからもう慣れました……」

 

真守は垣根の言い分を聞いて誉望に憐憫のまなざしを向けると、誉望はフッと寂しそうな笑みを浮かべて目を逸らした。

 

「懐柔というか隷属じゃないか?」

 

誉望から放たれた悲しい言葉を聞いた真守は、思わず垣根を横目で見ながら呟く。

 

垣根がチッと舌打ちする中、林檎は誉望の服の裾を引っ張って(なだ)めて、深城は大変だねぇと呟いて泣く誉望の頭をよしよしと撫でていた。

 

女児と年上に慰められた誉望はなんだかみじめな気持ちになりながらも、DAを殲滅するために動き出した。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

『オマエ、DAを潰して回って妹達(シスターズ)を探し回ってたンだな?』

 

『うん。でもDAに目をかけていたスポンサーが見限ったらしくて、警備員(アンチスキル)に情報が回り出して警備員が動き出したんだ。お前が目覚めたって聞いたし、丁度良いからDAのことは一旦警備員に任せてこうやって帰ってきたんだ』

 

真守は現在、一方通行(アクセラレータ)の病室へと来ており、自身の能力である流動源力(ギアホイール)でエネルギーを生成、パスを形成して一方通行と意思疎通を行っていた。

 

一方通行(アクセラレータ)と真守の会話の通り、真守は垣根たちの力を借りてDAの施設を潰して回っており、誘拐されたミサカを探していたが、秘密結社であるDAが大きすぎて目ぼしい情報がヒットせず、中々ミサカへとたどり着けなかった。

 

その間に統括理事会メンバーの亡本裏蔵がDAを見限って警備員(アンチスキル)に情報を回し始め、警備員が本格的に動き出そうとしていた矢先に一方通行(アクセラレータ)が術後の麻酔から目覚めたと聞いて、区切りが良かったので病院へと戻ってきたのだ。

 

垣根たちは暗部組織で表の組織である警備員(アンチスキル)といざこざを作ると面倒なので現在は待機状態である。

 

『DAと警備員(アンチスキル)が本格的に衝突したら人質にされているミサカにも動きがあると思うから、見つけやすくなる。だから行ってくるよ。警備員がミサカを助けるって言っても楽観視していられないしな』

 

『そォか。俺も行く、ヤツらの拠点を教えろ』

 

真守が自分のこれからについて一方通行(アクセラレータ)に教えると、一方通行が自分を睨みながら命令口調で告げるので、真守は呆れた目で一方通行を見つめる。

 

『お前、手術したばかりだろ』

 

『あァ? やられっぱなしじゃ終われねェンだよ』

 

『……バッテリーを手の届かないどっかに置いていってやろうか』

 

『ンなことしたら這ってでも行く』

 

真守がムッとした表情で一方通行(アクセラレータ)を脅すと、一方通行は顔に獰猛な笑みを浮かべて、真守に鋭い視線を向けて告げる。

 

『……分かった。心配だから一緒に行こう。それに私がいたら電気エネルギー生成できてバッテリーの充電無限にできるし』

 

真守がため息を吐きながら折れると、一方通行(アクセラレータ)は真守に打ち勝ったので勝ち誇った表情を浮かべて嗤った。

 

『至れり尽くせりだなァ第一位様よォ』

 

『…………いじわる』

 

真守が第一位の座を望んで手に入れたわけではないと一方通行(アクセラレータ)は知っているのにわざと強調するので真守が口を尖らせると、一方通行が目を細めて表情を柔らかくした。

 

『ったく。早く慣れやがれ。そンなンじゃ学園都市最強の名が泣くぞォ』

 

『……分かった。お前がそう言うならちゃんと胸張る』

 

真守は最強の座に君臨していた一方通行(アクセラレータ)に言われたので顔をしかめさせながらも頷いた。

 

『ンじゃまァ行きますかァ、第一位?』

 

『うん。行くぞ、第二位』

 

真守は一方通行(アクセラレータ)の問いかけにしっかりと頷いた。そして、充電しているバッテリーに手を伸ばして一方通行の電極に取り付けて、真守は一方通行に流していたエネルギー供給を止めてパスを生成するのをやめると、二人で行動を開始した。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

エステル=ローゼンタールは死霊術師だ。

 

彼女は一方通行(アクセラレータ)と交戦した『棺桶』という兵器に入れられていた人皮挟美を安らかに眠らせるために一度、『薔薇渓谷家参式(ローゼンタール・サードナンバー)禍斗』という疑似魂魄を人皮挟美に定着させた。

 

だが禍斗の定着が終了し、後は回路を閉じればいいだけだったところにDAが人皮挟美の死体を処理しようと現れ、一方通行(アクセラレータ)と激突。

 

その最中、一方通行(アクセラレータ)は頭の傷が開いてしまいその場で昏倒、エステルは自分を守るために動き出した禍斗と共にDAを追うが、DAが途中で一般人を人質に取って逃走してしまった。

 

禍斗の身を犠牲にすれば追いつく事もできたが、万全の状態で追うために一度態勢を立て直し、一方通行(アクセラレータ)へ伝言を残して禍斗と共に一般人と呼称されているミサカ一〇〇四六号を救出に向かった。

 

彼女たちが人質に取られた一般人と彼女を連れ去ったDAの匂いを辿って向かったのはDAのアジトの一つである第一四学区にあるスクナビコナ食品のサプリメント工場。

 

そこにはDAを殲滅するための警備員(アンチスキル)も集っており、既に戦闘が行われていた。

 

そんなDAと警備員(アンチスキル)の戦闘に、突然第三勢力が加わった。

 

統括理事会所属でDAのスポンサーだった亡本裏蔵の始末屋であり、その命令を受けてDAを殲滅に来た暗部組織の屍喰部隊(スカベンジャー)の四人組だ。

 

その四人は警備員(アンチスキル)とDAを殲滅すると、警備員の黄泉川とエステルを『センセー』と『優等生』と称して憎悪を向けて攻撃してきた。

 

そして屍喰部隊(スカベンジャー)の一人であり、念動能力(サイコキネシス)を基盤にした浸紙念力(パーフェクトペーパー)という能力を使うナルという少女の猛攻をエステルと禍斗は受けた。

 

エステルは彼女と応戦するために禍斗に土でできた『死者の鎧』を(まと)わせるが、その纏わせた『死者の鎧』を削るために、ナルは紙で巨大な掘削機を作り出して禍斗の死者の鎧を削ってそのまま禍斗を殺そうと迫る。

 

禍斗はその掘削機を持って特攻してくるナルから逃げ続ける。

 

「ちょっ逃げるなぁ!!」

 

ナルは悔しそうな声を出して禍斗を追って何度も掘削機を振るが、禍斗は疑似魂魄らしく表情一つ動かさずに避け続ける。

 

「逃げるなぁって! 今度こそ──っ!」

 

しびれを切らしたナルは掘削機を持ったまま飛び上がると禍斗に向かって掘削機を上から垂直に振り下ろす。

 

だが禍斗はその掘削機を難なく避けて、ナルは地面に回転して土を削る掘削機を当てた事で自身がぐるぐると回ってしまい、目が回ってふらふらとする。

 

「ナル! 金髪を狙え!」

 

屍喰部隊(スカベンジャー)のブレインであるリーダーと呼ばれるマスクをした赤髪の少女が目を回すのから復帰したナルに鋭い口調で指示を出した。

 

エステルは標的にされると思って逃げようとするが、そこで思い至ってバッと振り返った。

 

エステルの後ろには死体袋に詰められたミサカ一〇〇四二号と黄泉川が気を失って倒れているのだ。

 

(ダメだ……今は動けない!)

 

エステルは焦った表情で心の中で呟くと、掘削機を構えて迫ってくるナルを見て、二人を守るために両手を開いて通せんぼをするように立ち塞がった。

 

エステルをご主人様(アドナイ)と認識している禍斗はご主人様(アドナイ)の危機だとして即座に動き、掘削機とエステルの間に滑り込むとその掘削機を『死者の鎧』によって受け止めた。

 

「禍斗!」

 

「お~初ヒット! じゃあこのまま~スピードアップぅー!!」

 

エステルが自分を守った禍斗が心配でとっさに名前を叫ぶと、その前でナルは浸紙念力(パーフェクトペーパー)で造り上げて着込んでいるウサギの着ぐるみの尻尾の部分のブースターを起動させて、前へと推し進む。

 

ナルのスピードアップしてより強力となったその攻撃によって、禍斗の腕に装着されている『死者の鎧』が掘削機によってどんどんと削られていってしまう。

 

「禍斗、やめろ!!」

 

「問題ありません。ご主人様(アドナイ)はお逃げください」

 

エステルが叫ぶが、主を守ることを第一としている禍斗はその命令を拒んで逆に主に逃走するように(うなが)す。

 

「禍斗、やめるんだ!」

 

ご主人様(アドナイ)の安全を最優先とします」

 

「あ~あ~ヤだねえ。点取り虫はぁ。回転あげま~す!」

 

ナルは互いを思いやる二人の会話を聞いて心底嫌そうに笑ってから掘削機の回転速度を上げる。

 

その瞬間、禍斗が手に(まと)っていた『死者の鎧』が砕けた。

 

それでも禍斗はご主人様(アドナイ)を守るために両腕で掘削機を受け止める体勢へと移行する。

 

エステルの前で禍斗の腕から血が流れて雫となって吹き飛び、エステルの頬を赤く染まり、エステルはそれを受けてヒッと(うめ)いた。

 

「もう……やめてくれ……! お願いだ……やめてください……っ」

 

「「や」」

 

「だ」

 

「よ~!」

 

エステルが懇願するも、見ていた屍喰部隊(スカベンジャー)の他の隊員三名も、ナルと一緒にそれぞれ声を上げて心の底から愉快そうに笑う。

 

「何故……何故、こんな事ができるんだ……!」

 

エステルが屍喰部隊(スカベンジャー)の非道に泣き叫ぶように訊ねると、髪の毛を帽子の中にまとめた少女が呟く。

 

「ん~セイギのためかなあ?」

 

エステルはそれを聞いて愕然とする。

 

正義とは人々を守るためにあるものだ。

 

人々を傷つけるためにあるものじゃない。

 

「こんなの……正義じゃない……っ!」

 

「あっそう」

 

自分が信じている正義と屍喰部隊(スカベンジャー)の正義がかけ離れていると感じたエステルは声を絞り出して否定すると、リーダーと呼ばれた少女は冷めた声で軽く告げる。

そしてエステルを冷酷な瞳で蔑むように見つめた。

 

「キミの正義と僕たちの正義は違うから。まあどうでもいいことだ。仕事に戻るぞ、ナル」

 

そして自分たちの正義は『仕事』だと言わんばかりにナルという少女に声を掛ける。

 

「じゃあ! まずは『優等生』を殺して、その次は『センセー』!」

 

リーダーに命令されたナルは元気よく返事をしてから誰から殺すか順番を決めて、掘削機を回し続ける。

 

「そして最後はあんた……この世に絶望してあの世に行きな」

 

セーラー服の長身がエステルへと死刑宣告をすると、エステルは膝をついて涙をぽろぽろと零す。

 

「どうして……どうしてこの世界には絶望しかないんだ……っ」

 

自分は菱形蛭魅を救えなかったばかりか、蛭魅のフリをした檮杌(とうこつ)に踊らされている菱形幹比古の目を覚まさせてやれなかった。

 

それどころか、多く人間の命を(もてあそ)ぶ術を菱形に教えてしまった。

 

自分がこれまで見てきた絶望を嘆くエステルを見て、ナルはにやっと無邪気に笑う。

 

「それはぁ、全部『センセー』が悪いんだよぉ? だからぁ──」

 

ナルはそう言いかけると掘削機の形状を変化させて、土を砕くためではなく肉を砕くためへと変貌させた。

 

「ちゃぁんと皆殺しにしてあげるから──!!」

 

肉を砕くための掘削機を巨大化させると、エステルと禍斗、二人同時に確実に殺すためににナルは迫る。

 

「これで、おしまいだぁ──!!」

 

エステルが目をぎゅっと閉じた瞬間、その場に降り立つ人間がいた。

 

一方通行(アクセラレータ)

 

彼は天から舞い降りた無慈悲な天使のようにそっと地面に降り立ち、伸縮自在の杖の先を持ち手にしまうと右手を前に出してベクトルを操作。

 

ナルが浸紙念力(パーフェクトペーパー)によって作り上げた巨大な掘削機を紙にまで分解、そしてそれを生み出していたナルを吹き飛ばした。

 

「う、うわァッ────!?」

 

「ナルっ!」

 

髪の毛を帽子にまとめた少女がナルを心配するが、ナルは一方通行(アクセラレータ)に吹き飛ばされて地面に激突し、爆風を生み出した。

 

「なんだ?」

 

リーダーと呼ばれるマスクをした少女はひらひらと舞う紙吹雪の中、自分たちを睥睨(へいげい)する白い天使を見つめて呆然とする。

 

「ったくよォ。学芸会ごっこは一人でやれ」

 

一方通行は心の底から面倒くさそうにそう呟き、首に手を当ててゴキゴキッ! と鳴らしながら屍喰部隊(スカベンジャー)の面々を一人ずつ一瞥(いちべつ)する。

 

「そォしないと──俺みたいなのが寄ってくるからよォ!」

 

一方通行(アクセラレータ)屍喰部隊(スカベンジャー)を睥睨しながら愉快そうに笑みを深くして高らかに自身の存在をアピールした。

 

エステルは目の前に降り立った頼もしい一方通行(アクセラレータ)の姿に安堵して、ひっくとしゃくりあげて涙を(ぬぐ)うと、顔をほころばせて一方通行を見上げていた。




誉望くんの扱いが相変わらず垣根くんは雑です。

そして一方通行、あの屍喰部隊の目の前に現れて次回は蹂躙タイムです。

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