とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第七話、投稿します。
虚空爆破事件篇はこれで終了です。
次は八月一一日水曜日に投稿予定です。



第七話:〈真価発揮〉を互いにこなす

上条たちと別れて真守は携帯電話で案内図を見ながら垣根に声をかけた。

 

「垣根、時間かかるけど靴見てもいい?」

 

「別に構わねえよ」

 

「良かった。夏用のパンプス買い替えなくちゃいけないの。同じブランドの新作をいくつか考えてるけど、どうしても靴の大きさって一つずつ違うから」

 

真守は垣根に許可を貰ってから靴屋に向かう。

 

(別にイチから見る訳じゃねえのに、律儀な奴だな)

 

女の買い物は悩みに悩んで堂々巡りをするものだが、真守は連れを振り回して買い物をする気はないらしい。

男に気を使って買い物をしているのか、そもそも男を振り回して買い物をしたことがないのか。どちらも性格的には納得できるな、と垣根は考えていた。

 

〈お客様にご案内申し上げます〉

 

真守が真剣に靴を選んでいると突然アナウンスが流れた。

 

〈店内で、電気系統の故障が発生したため誠に勝手ながら本日の営業を終了させていただきます〉

 

「あ?」

 

「……多分、事件だと思う」

 

怪訝な声を上げる垣根に向かって真守は冷静に告げた。

 

「なんでそう思うんだ?」

 

真守の突然の推測に垣根が純粋に声を上げると、真守は持っていた靴を棚に戻す。

デパート内を知覚するかのように瞳の焦点を散らしながら真守は理由を話した。

 

「私の能力はエネルギーに関することだから。エネルギーの流れに敏感になる。電気系統の故障にしてはちゃんと電気が通ってるから」

 

「……ああ。電撃使い(エレクトロマスター)も情報機器に強いとかそういうのがあるもんな」

 

「うん」

 

垣根にはぼかして伝えたが、真守はあらゆるエネルギーを操る超能力者(レベル5)流動源力(ギアホイール)である。

周囲のエネルギーの流れ。

つまり、電気エネルギーの流れがおかしいなら、真っ先に感知できる。

そこに異常が見られないので故障ではなく、店を閉めなければならない何らかの事情があるのだ、と真守は推測できたのだ。

真守の事を大能力者(レベル4)力量装甲(ストレンジアーマー)だと思っている垣根はその珍しい能力故にそういう事もあるだろうと納得してから、真守と共に店員の案内に従ってセブンスミストから外に出た。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

(日が高い時間で、なおかつ一般客が多いデパートで事件、か。暗部の人間はこんな目立ったことしねえからただの一般人か)

 

真守と一緒に外に出てきた垣根は心の裡でそう推測していた。真守は、と言うと垣根に気づかれないように視線を上に向けて宙を浮く深城を見ていた。

 

『真守ちゃん、お靴買い損ねちゃったね。また今度買いに行こうね?』

 

真守が深城の言葉に薄く頷いていると、上条が慌てた様子で真守に近寄って来た。

 

「朝槻!」

 

「上条。どうした?」

 

「あの子見なかったか!?」

 

上条は周りを確認して、自分が案内してきた幼女が近くにいないか探していた。

 

「え。はぐれたのか?」

 

真守が上条の切羽詰まった質問に即座に気がついて訊ねる。

 

「外にいないんだ、見かけてないか?」

 

「外にいないなら中だろ。先に探しに行く」

 

「頼む。俺はビリビリにも聞いてくる」

 

真守と上条が方針を立てると即座に二人は行動を開始した。

二人は頷きあうと、上条は美琴の下へ、真守はそのままセブンスミストへと駆け出す。

 

「おい、真守!?」

 

垣根がセブンスミストへと戻っていく真守に制止の声をかけたが、真守はセブンスミストに迷いなく駆け込みながら途中で振り返って声を上げた。

 

「垣根は外にいていい。大丈夫。私は何があっても死なないから」

 

「……ったく! 女一人で行かせられるか!」

 

躊躇うことなくセブンミストへと戻っていった真守に向けて、垣根が毒吐く。

垣根も真守を追ってセブンスミストへと戻っていった。

 

 

 

追いかける垣根の前で真守は軽やかにエスカレーターをタタタッと走って登っていく。

 

(こいつ、意外とすばしっこいし体力がある)

 

自前のポテンシャルが高い垣根は余裕で真守に追いつくが、真守のフィジカルが大層なモノと感じた垣根。

 

それもそのハズ。

真守は自身に必要なエネルギーを自分で生成し、体に行き渡らせることができるため、効率的に体を動かす方法を知っている。

ちまっとした印象からは考えられない程の力が出せるのは、能力が能力だからだ。

 

真守に追いついた垣根は真守と共に広いフロアを探して走る。

 

曲がり角を曲がった瞬間、真守と垣根の目の前を幼女が走っているのが見えた。

 

「いた」

 

真守が後ろから声を掛けようとすると、幼女は風紀委員(ジャッジメント)の腕章をした花飾りの少女へと近づいていた。

 

「あ。保護された」

 

「ったく、人騒がせなヤツ」

 

真守が幼女の無事を確認するように言葉を零すと、垣根が毒吐いた。

口が悪い言葉が出たが内心、何事もなく安心していたのは事実だ。

真守と垣根はスピードを落とし、目の前にいる風紀委員の少女と幼女に近づく。

 

だが、次の瞬間。

 

風紀委員の少女がバッと幼女から不格好なカエルのぬいぐるみをひったくると、真守と垣根の前に投げ捨てた。

 

真守はその瞬間、重力子というエネルギーが急速な収縮をしている事を感知。

そして隣に立っていた垣根は目の前で事象の法則に変化があったことに気が付いた。

 

「「爆弾!?」」

 

二人が声をそろえて叫ぶと、その目の前で風紀委員の少女が遅れて告げる。

 

「逃げてください! アレが爆弾です!」

 

その時、突如美琴が風紀委員の少女の横から出てくるが、爆弾の先に真守と垣根が立っている事に気が付く。

コインを持って臨戦態勢になっていたが、爆弾を弾き飛ばせば真守と垣根にぶち当たるととっさの判断ができなかった。

 

美琴の前に上条が飛び出してくると、上条はとっさに真守にアイコンタクトをした。

 

真守はそれを受けて即座に能力を解放した。

 

頭。丁度猫耳ヘアの真上にそれぞれ、青白い蒼白光の三角形が二つとそれに連なるように正三角形が二つずつ浮かび上がる。

セーラー服のスカートの上から細長いたすきのような猫の尻尾が伸びて、その尻尾の付け根にはリボンのように正三角形が二つ携えられるように現れた。

 

真守は能力を解放すると同時に、両腕を前でクロスさせ、生成したエネルギーを前方にシールドのように展開させた。

 

(良い位置。これなら垣根に爆発に巻き込まれない。上条がいるからあっちは大丈夫)

 

真守が高速で思考して爆発に備えると真守の目の前が突如真っ白に包まれた。

 

「──え」

 

その瞬間、爆弾が爆発した。

 

辺りには爆風と熱波が放たれて、それと同時に爆弾の欠片が飛び散るはずだった。

真守はそれら全てをエネルギーのシールドで防ぐことができたハズだった。

 

だが。

目の前が真っ白になっただけで、爆発が自分のシールドに届くことがなかった。

 

爆発音だけが聞こえてそれが止むと、真守の白くなった目の前が開けていき、視界が確保された。

真守の前では左手を添えて右手を前に突き出してる格好で御坂、風紀委員の少女、幼女を守った上条の姿が見えた。

 

上条の右手には身体検査(システムスキャン)で測る事の出来ない幻想殺し(イマジンブレイカー)という全ての異能を打ち消す力があり、それによって上条は自分たちに向かってきた爆発を打ち消し、三人を守ったのだ。

 

真守は彼らを気にすることなく自身を覆っていた白い壁を目で追って振り返った。

 

真守が白い壁だと思ったモノの正体は純白の翼だった。

 

純白の翼が三対、六枚。

垣根の背中から伸びており、それが白い燐光を周囲に放っていた。

 

真守はその翼を見て目を見開く。

 

柔らかな光。

聖なる光。

一点の穢れもない無垢なる光。

 

その翼が、垣根の未元物質(ダークマター)という能力で形作られているのだと真守はなんとなく理解した。

 

(コイツも見た目変わんのか)

 

真守が垣根の翼にじぃっと見惚れていると、垣根も能力を解放した事によって猫っぽさが増した真守を見ていた。

 

垣根には真守の能力がどれだけ防げるか知らない。

だから自分の身を守ると共に真守の事も守ったのだ。

 

そんな垣根に、真守はぽそっと呟くように告げる。

 

「……綺麗な翼」

 

「あ?」

 

垣根が自分には似合っていないと自覚しているビジュアルについて言及されたので、不機嫌な声を上げた。

 

真守は垣根の機嫌が急降下するのになんて気にも留めずに、垣根の姿を清く気高いものを見ているかのような優しい瞳で、そして柔らかくにっこりと微笑んだ。

 

「垣根の能力は正義の天使みたいだ。綺麗な翼。本当に綺麗だ。綺麗な能力だ」

 

「──っ」

 

興奮しているように告げる真守を見て、自分のビジュアルを嗤っている訳ではなく、純粋に賞賛しているのを感じて、垣根は言いよどんだ。

 

似ている。真守はあの子に良く似ている。

 

自分が唯一心を許していたあの子。

自分の事を気にかけてくれたあの子。

そして、自分の掌からこぼれ落ちていったあの子。

 

「垣根の能力は人を守れる凄い能力だ」

 

真守の心の底からの感嘆の笑顔を初めて見て、垣根は何も言う事ができずに黙って真守を見つめるしかできなかった。

 

「垣根!? なんかすっごい羽根出てるけれど大丈夫か!?」

 

二人を軸に時が一瞬止まっていたが、上条が声を上げたのに気づいて垣根は我に返った。

自分のビジュアルについて何かマイナスなことを言いたげな上条を、垣根は睨み、そして地を這うような声を出した。

 

「なんか文句あるか?」

 

「い、いいえ。ないですけど」

 

上条は垣根が自身の能力によって生じる翼と、自分のビジュアルが一致していないことを気にしていると即座に理解して、首を横にブンブンと振った。

 

垣根はフッと翼を消して未元物質の発動を抑える。そして、真守を見つめた。

 

「お前は能力全開にするとますます猫っぽくなんだな」

 

「勝手に出るから仕方ない」

 

真守はスカートの上から伸びた尻尾をゆらゆらと横に揺らしながら告げる。

どうやら真守の意志で猫耳や尻尾が動かせるらしく、ますます自分の羽根と似ていると純粋に思って、垣根はぽそッと呟く。

 

「……お前もそうか」

 

「なんだ垣根もか。一緒だ」

 

真守は柔らかく微笑んで、ぴょこぴょこと猫耳の向きを変えて動かせることを示した後、能力を抑えて蒼閃光(そうせんこう)で出来た猫耳と尻尾をフッと消した。

 

「上条の方は無事?」

 

「ああ、問題ねえ。あの爆弾はやっぱり能力か」

 

「当たり前。爆弾持ち込む馬鹿はいない」

 

(つーか、ますますこいつは俺に似てんな……逆に不気味なんだが)

 

垣根は真守の能力の事を考えながら二人の会話を見ていた。

 

「皆さん、お怪我はありませんか!?」

 

風紀委員の花飾りの少女が真守と垣根に近づいて来たので真守は安心させるために即座に頷いた。

 

「大丈夫、垣根が守ってくれた」

 

真守が風紀委員(ジャッジメント)の少女と話をしている隣で上条は美琴の姿が見えなくて首を傾げた。

 

「あれ、ビリビリはどこ行ったんだ?」

 

「え。本当だ、御坂さんどこに行ったんでしょうか……。ですが、あの……ご迷惑をおかけしました!」

 

真守たちは風紀委員の少女に突然謝られて首を傾げた。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

虚空爆破(グラビトン)事件って風紀委員(ジャッジメント)狙いだったんだ」

 

真守は風紀委員の少女──初春飾利から事の詳細を聞いて納得する。

 

虚空爆破事件とは最近学園都市で起こっていた連続爆破事件の俗称だ。

量子変速という能力を使って、アルミを基点に重力子を加速して爆弾にしていたらしい。

人的被害が出始めて風紀委員が勢力を上げて捜査をしていた事件である。

 

事件の全貌に納得した真守に、垣根はいい迷惑だ、という感情を込めて吐き捨てるように告げる。

 

「どうせ逆恨みだろ。あのひょろっちいの標的にされそうだからな」

 

垣根は美琴が捕まえてきた犯人の外見を見てそう判断していた。

カツアゲにでもあって風紀委員が助けてくれなかったから風紀委員に恨みを抱いた。

その様子が垣根にも分かるほどに滲み出ていたのだ。

 

「……力があるなら自分と同じ人守る立場に回ればいいのに」

 

量子を変速させるという量子変速は真守の能力に通じるところがある。

あの能力が造り上げた爆弾を間近で見た真守は、彼の能力の強さに思わず呟く。

 

真守の言い分に垣根は苛立ちを込めながら、変えようのない現実を真守に諭すように告げた。

 

「ああいう奴はひがむしかできねえ。そんな立ち回りができる筈ねえだろ?」

 

「そう? 要は頭の使いようだ。風紀委員にでもなったら公的権限で自分をコケにしたヤツを潰せるのに」

 

確かに、あの少年が風紀委員に入れば、真っ当な理由で自分を狙った相手に報復できる。

それでも、その動機はどこか本質的な所で歪んでいる。

 

そんなやり方を人格者であるハズの真守が推奨するので、垣根は思わず眉を顰めた。

 

「お前……意外とアグレッシブなんだな」

 

「自分をけなしたヤツを潰したらダメだってことはない」

 

真守が報復を我慢する事はない、と真面目な口調で告げると、垣根はフッと笑った。

 

「まあ、間違ってないな」

 

「そうだろう」

 

真守の言い分に納得して笑った垣根を見て、真守も悪だくみをするように微笑んだ。

 

垣根にとって表の世界での生活とは面倒な事この上なかった。

だが悪目立ちしてしまうと何かと動き辛くなるので、面倒でもそつなくこなしていた。

裏で活動しようが表での活動を疎かにしてはならないと。その両立が自分にはできるから的確にこなしていただけだ。

 

だが。

この陽の光の下を歩く少女と打算的ながらも一緒に行動していると、どうしても心のどこかで思ってしまう。

 

心の底から嫌悪するこの学園都市での表の生活も、悪いものではないのだと。

 

「垣根。今日は色々あったけれどありがとう。楽しかった」

 

「────おう」

 

真守が改めてお礼を言うので垣根はその言葉に絆されて柔らかく微笑む。

 

真守は嬉しそうににししっと笑うと、そのまま二人で帰路についた。

 




メルヘンな外見になる二人(笑)
ちなみに真守ちゃんが垣根くんの翼を絶賛していたのは明確な理由があります。
杠林檎ちゃんみたいに『天使様みたい』という理由ではないです。
……天使だとはもちろん思ってるんですが。

デートが書けて大満足。


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