とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第七〇話、投稿します。
次は一〇月二二日金曜日です。


第七〇話:〈最凶蹂躙〉はほどほどに

真守はスクナビコナ食品のサプリメント工場の入り口と違う場所を打ち破って侵入し、中枢へと向かっていた。

 

(一方通行(アクセラレータ)が戦闘音のした方へ行ったことだし、私は菱形に繋がる線を探さないとな)

 

真守は蒼閃光(そうせんこう)で造り上げた猫耳と尻尾を展開して能力を開放し、暗い通路の中をエネルギーを光球に生成して照らしながら歩く。

そしてエネルギーの流れを感知してこの食品工場の情報の中枢であるデータサーバーがある通信室の前へと立つ。

 

「ここか」

 

扉を蹴り破って臨戦態勢で入るが、中には誰もいなかった。

 

(全員出払って警備員(アンチスキル)と交戦してるのか、それとも外部と通信できる端末を全員が所有しているのか……後者だったらDAの一人を捕まえればそれで済んだが、まあしょうがない)

 

真守は通信室内を歩いて、壁一面に並べられたモニターがあるコンソールの前までやってくる。

 

「……ん。一方通行(アクセラレータ)が映ってる」

 

モニターの一つには一方通行(アクセラレータ)とその後ろにエステル、人皮挟美。それとその後ろには死体袋に入れられたミサカ一〇〇四二号と黄泉川愛穂が気絶した状態で横たわっていた。

そして、一方通行(アクセラレータ)の目線の先には暗部組織の人間だと思われる四人組が立っていた。

 

『おーい、そこのキミ! キミがいれば人数も丁度五人だし! 戦隊モノで言うところのブラックのポジションを与えてあげるよ! 魅力的だろ? どうかなー僕たちと一緒に「センセー」退治! やろうよ、ねえ!』

 

真守がコンソールを操作して一方通行(アクセラレータ)が映っているカメラの音声をスピーカーに出力した途端、赤い大型多脚兵器の上に乗っている特徴的なマスクをした赤髪の少女が一方通行を悪の道へと引きずり込もうとしている誘い文句が聞こえてきた。

 

(なんか一方通行(アクセラレータ)が熱烈なラブコール受けてる)

 

真守はびっくりして思わずモニターを注視してしまう。

 

『おい、コラ! 無視すんな!』

 

少女は一方通行(アクセラレータ)に無視されて大型多脚兵器から降りて一方通行へと近づきながら叫ぶ。

 

『なんとか言えー!』

 

『なンとか…………ねェ?』

 

一方通行(アクセラレータ)は少女をその赤い瞳で捉えると右足を地面に叩きつけて衝撃を生み出した。

 

ベクトル操作によってその衝撃が束ねられながら進んでいき、少女の下まで数度地面を叩きながら伸びると少女を弾き飛ばした。

 

『おわっぁあああ──!?』

 

少女は一方通行(アクセラレータ)の前までスライディングする形で吹き飛ばされ、一方通行の足元の前までやってくると、呆然とした顔で一方通行を見上げた。

 

『な・ン・と・か』

 

ポケットに両手を突っ込んだまま上体を前に倒して顔を少女に近づけると、一方通行(アクセラレータ)はゆっくりと発音した。

 

『……うぇ? ………………はい?』

 

一方通行(アクセラレータ)は意味が分からないと困惑している少女をため息を吐きながら見つめるとゆっくりと上体を起こす。

 

『オマエが「なンとか」言えつったンだろォがァ!!』

 

そして次の瞬間、声を荒らげて右足を思いきり地面に叩きつけた。

 

一方通行(アクセラレータ)はその衝撃を操って増幅させると、背後の一二〇トンはある大型多脚兵器を盛大に高く宙へと浮かばせて少女の上に落とす。

 

『ギャハハハハハハ!! 虫けらが虫けらに潰されるぞォ!!』

 

『うわぁあああああ──!!』

 

『『『リーダー!!』』』

 

リーダーと呼ばれた大型多脚兵器に圧し潰されそうになった少女を助けたのはウサギの凶悪な着ぐるみを裸体に(まと)った少女で、その腕にはセーラー服を着た長身と帽子の中に髪の毛を纏めて入れている少女が抱きかかえられていた。

 

鋭い閃光のように着ぐるみたち三人がリーダーと呼ばれる少女を助けたと同時に大型多脚兵器はクレーターを作り上げながら地響きを轟かせ、辺りに粉塵を巻き起こしながら地面に着地した。

 

一方通行(アクセラレータ)はベクトル操作で大型多脚兵器の上に向かって飛び上がると、ガァン! と甲高い音を響かせながら難なく着地する。

 

そして自分を恐怖の目で見上げている四人組を睥睨(へいげい)する。

 

(冗談言ったのに反応が薄かったから気にくわなかったんだあ)

 

真守は一方通行(アクセラレータ)の気持ちを察してモニターを見つめながら思わず苦笑する。

 

(あ、ヤバい。見てないでハッキングハッキング)

 

真守はそこで自分のするべきことを思い出すと、コンソールを操作してパリパリッと掌から電気エネルギーを(ほとばし)らせると電撃使い(エレクトロマスター)のようにハッキングを開始する。

 

真守がハッキングを始めると、四人組の暗部組織がひそひそと作戦会議をし始める。

 

『──コンビネーションで行く』

 

暗部組織の少女たちが動揺して作戦会議をする中、赤髪にマスクをしたリーダーと呼ばれた少女が最大限まで警戒心を高めて呟いた。

 

『『『え?』』』

 

屍喰部隊(スカベンジャー)の連携攻撃から逃れたヤツはいない。……そうだろ?』

 

リーダーの言葉に三人が頷く。

 

『我らは無敵の、屍喰部隊(スカベンジャー)だ!!』

 

(おー。すごい気合入れてる。頑張れー)

 

真守はハッキングを行いながら並列処理をして監視カメラ越しの一方通行(アクセラレータ)──というか屍喰部隊(スカベンジャー)を見守る。

 

一方通行(アクセラレータ)がこの場から離脱しようとしているエステルを眺めているとウサギの着ぐるみを着た少女がセーラー服を着た長身を一方通行へと投げつけた。

 

セーラー服の長身は一方通行(アクセラレータ)のすぐ横に降り立つと、両手を大型多脚兵器にピタッと張り付け、何らかの能力を発動する。

 

すると一方通行(アクセラレータ)の周りに能力が作用したのか、淡く発光した。

 

『よし! 人は摩擦係数のない場所では動けない! ──ナル!』

 

『芸術はぁ~さく裂だぁ──!!

 

リーダーと呼ばれた少女が着ぐるみの少女をナルという名前で呼ぶと、ナルと呼ばれた少女は身に(まと)っていた着ぐるみを紫色の光を帯びた無数の紙へと戻していき、一方通行(アクセラレータ)の周りに展開する。

 

『ほい、完成!』

 

その紙はアイアンメイデンのような形状を取り、一方通行(アクセラレータ)をすっぽりと中に収めた。

 

『やっくん!』

 

次にリーダーの少女は後方にいた髪の毛を帽子にまとめていれている少女の名前を呼ぶと、やっくんと名前の呼ばれた少女は腰に巻いたポーチから野球ボールほどの鋼でできた球と薬品が入った二本の試験管を取り出した。

 

『たぁあああ────!』

 

やっくんと呼ばれた少女が試験管内の薬品を野球ボールのような鋼の球に注入すると、その鋼の球を野球ボールらしく投擲(とうてき)した。

 

投擲された鋼の球はアイアンメイデンの頭まで放物線を描いて飛んでいくと、タイミングよくアイアンメイデンの口がガポッと開く。

 

鋼の球はそのまま吸い込まれるようその口の中に入り、ゴロン、と何かに当たって固い音を内部から響かせた。

 

そして次の瞬間、内部から強く土色の煙が噴き出した。

 

『お、優等生たちが戻ってきた!』

 

『遅かったねえ。ヤツならあの中だよ』

 

着ぐるみの少女に畳みかけるようにリーダーと呼ばれた少女が声を上げると、エステルは一方通行(アクセラレータ)がいたであろう場所を見つめた。

 

そこにあるアイアンメイデンの表面は赤熱し、酷い熱波が立ち昇って辺りを陽炎(かげろう)のように揺らし、黒い煙が噴き出していた。

 

『リキッドテルミット反応。反応の際に出る熱は四〇〇〇度。まあ、骨の欠片も残らないんじゃないかな?』

 

髪の毛をまとめて帽子に入れている少女は先程投擲(とうてき)した鋼の球と同じものを手が転がせながら愉快そうに説明する。

 

『そんな……』

 

『アイアンメイデン。罪深き者にはぴったりの末路だ』

 

エステルが膝をついて嘆く中、リーダーと呼ばれる少女の嘲笑が響く。

 

『さあ、次は「センセー」だ』

 

『害虫「センセー」は潰さないと』

 

『命乞いしても無駄だよーっ?』

 

(バカだなあ。……というか、消えた八人目だって噂されてる私はともかく、一方通行(アクセラレータ)のこと知らない暗部組織の人間っているんだな)

 

真守は屍喰部隊(スカベンジャー)の余裕に満ちた声を聞きながら呆れた様子で一人心の中で呟く。

 

(……お、このアジトは意外と深いところに繋がっているな。これだったら菱形の居場所を突き止められそうだ)

 

そして一方通行(アクセラレータ)を微塵も心配せずにコンソールを操作して即席でプログラムを組み上げていると監視カメラに接続されているスピーカーから一方通行(アクセラレータ)の声が聞こえてきた。

 

『センセーセンセーってうるせェんだよ』

 

一方通行(アクセラレータ)は気怠そうに告げると、モニターに映っていた赤熱していたアイアンメイデンを爆発させて無数の紙に戻し、無傷で現れる。

 

『今から俺が「センセー」だ。オマエたちに正しい悪党を教えてやるよォ……!』

 

傷一つ負わずに紙吹雪が舞う中、獰猛に余裕の笑みを浮かべる一方通行(アクセラレータ)を見て、屍喰部隊(スカベンジャー)は呆然とする。

 

『ま、マジ!?』

 

『完璧なコンビネーションだった……!』

 

『ありえない……』

 

『こいつは一体……?』

 

『──一方通行(アクセラレータ)!』

 

屍喰部隊(スカベンジャー)が困惑して一方通行(アクセラレータ)を見上げる中、エステルが嬉しそうに一方通行を見上げて彼の名前を叫んだ。

 

一方通行(アクセラレータ)……?』

 

リーダーという少女は一方通行(アクセラレータ)の名前を聞いてさーっと顔を青くする。

 

『聞いた事がある。白い顔、白い髪。赤い目。まさか、コイツ……元第一位、現第二位!?』

 

『オォイ……? ちまちました小ネタはもう品切れかァ?』

 

リーダーと呼ばれる少女の呟きによって恐怖で呆然とする屍喰部隊(スカベンジャー)に、一方通行(アクセラレータ)は愉快そうに訊ねた。

 

『なンだその面はァよォ……? こっちのテンションが下がッちまうだろォがァ……! ────あァ!?』

 

一方通行(アクセラレータ)屍喰部隊(スカベンジャー)の反応が気に食わず、叫びながら音速を超えて移動すると、セーラー服を着た長身に近づいてその腹に右拳を押し付けて自分と一緒に強引に音速移動させる。

 

『喜べよォ! 良いベッドが見つかったぜェ!!』

 

セーラー服の長身が体に突然かかったGに苦しめられている中、一方通行(アクセラレータ)はそのままセーラー服の長身を横転しているトラックの荷台部分に叩きつけた。

 

『──ぐあっァあああ!?』

 

ドゴォッ! という音と共にセーラー服姿の長身は自分の体に走った衝撃に悲鳴を上げる。

 

セーラー服の長身はそのまま一方通行(アクセラレータ)に胸の部分を押し付けられて、クレーターができたトラックの荷台に縫い留められて宙ぶらりんにされる。

 

『人間の体ン中に、生体電流ってのが流れてるの知ってるかァ? ちっとばかしイジってやるから楽しめよォ……!』

 

『ああァっ──!? があああァああ──!!』

 

セーラー服姿の長身は生体電流を(いじ)られたことで体中に耐え切れない激痛が走り、体からパリパリと淡い紫色の光を発させながらガクガクと震えて叫び声を上げる。

 

『ちっとは楽しそォな顔しろよォ……』

 

一方通行(アクセラレータ)はずるずると滑り落ちてトラックの荷台に寄り掛かって激痛で失神しているセーラー服姿の長身から手を離して数歩下がって呟く。

 

『まァ無理かァ? このベッドは寝心地悪そォだもンなァ?』

 

『よくも清ヶを……! リーダー指示を! あいつを倒す、』

 

『このヤロォ────!』

 

髪の毛を帽子にまとめた少女がリーダーに指示を乞うが、その目の前で怒りに突き動かされたうさぎの着ぐるみを操る念動使い(サイコキネシスト)一方通行(アクセラレータ)に向かって疾走した。

 

『ナル、待て!』

 

『死ねェえええ──!!』

 

帽子の少女の制止むなしく、ウサギの着ぐるみの少女は一方通行(アクセラレータ)へと右拳を振り下ろす。

 

一方通行(アクセラレータ)はそっと着ぐるみの少女へ手をかざすと、着ぐるみの少女の着ぐるみを構成していた紙をばらばらと(ほど)けさせて淡い紫色の光を帯びさせた元の四角い紙へと戻していく。

 

『なっ──!?』

 

少女が一方通行(アクセラレータ)によって服を構成していた紙の制御権を奪い取られながら吹き飛ばされる中、一方通行は少女に向けてかざした手をそのまま地面について舌打ちを打つ。

 

『つまンねェなァ……。…………つまンねェよォ』

 

一方通行(アクセラレータ)が呟いた瞬間、床を割って杭のようにコンクリートの塊が四本、宙を舞う着ぐるみの少女の体へと突き立てられた。

 

『そンな小ネタじゃ俺には届かねェ。俺の定義を外側からぶっ壊すよォな人間でも連れてくるンだなァ!!』

 

真守は一方通行(アクセラレータ)の怒鳴り声によって顔を上げた。

 

「なんか今呼ばれた」

 

顔を上げた瞬間、モニターからプログラムが無事に走ってハッキングが完了した音が聞こえたので、真守はコンソールを再び見つめた。

 

「……──見つけた。おそらくここが菱形幹比古の隠れ家だ。……聖音高等学校第六科学棟、か。周辺状況を調べて残存勢力を確認。まあ多くのDAは出払っているだろうな」

 

真守はモニターから残された二人の少女の阿鼻叫喚の声が聞こえる中、コンソールを高速で操作してハッキングを仕掛ける。

 

『残るはオマエだけだがァ。幾ら俺でも無抵抗のガキをいたぶる趣味はねェからなァ』

 

一方通行(アクセラレータ)は帽子の少女を軽々と撃破して残ったリーダーと呼ばれた少女へと近づく。

 

『さァ。どォする……? なァ?』

 

リーダーが恐怖でたたらを踏んで床に盛大にお尻を打ち付ける中、一方通行(アクセラレータ)はゆっくりと歩いて顔を近づけた。

 

『だァからァ。な・ン・と・か、言えよォ──?』

 

一方通行(アクセラレータ)が邪悪に微笑むとリーダーは白目を剥いて失神した。

 

『──ッチ。ション便くせェガキがこンなトコ歩き回るとはなァ。ガキは大人しく布団にくるまって寝てろォ』

 

「聞こえるか、菱形幹比古」

 

一方通行(アクセラレータ)屍喰部隊(スカベンジャー)蹂躙(じゅうりん)し終わったのと同時に、真守は菱形幹比古へと通信を掛けた。

 

〈うん。キミはもしかしてもしかしなくとも流動源力(ギアホイール)だね?〉

 

「ああ、そうだ。九月一日付けで超能力者(レベル5)第一位に認定された流動源力(ギアホイール)──朝槻真守とは私の事だ」

 

真守は宣言をしてから真剣な表情で告げる。

 

「ちょっと話をしようか、菱形幹比古。……建設的な話をな」

 

 




一方通行蹂躙無事終了……。
真守ちゃん、その間に菱形に辿り着きました。

一つ気になることがあるのですが、この事件の時上条くんは何してたんでしょうね。
漫画版ではインデックスとアレイスターがちょこっと描かれていたんですけど、普通に学校に行ってたんでしょうか。
『流動源力』ではそれなりに辻褄合わせていますが、原作ではどうなんでしょう。気になる……。

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