とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第七二話、投稿します。
次は一〇月二四日日曜日です。


第七二話:〈最強蹂躙〉で魅せつける

「やはりあなたしかいない!」

 

一方通行(アクセラレータ)やエステルにこれから菱形幹比古が自分を殺しに来ると伝えるために、真守が一方通行たちのもとへとやってくるとそんなエステルの声が響いた。

 

「あ……あの! 一方通行(アクセラレータ)!! わ、私の……! 師匠になってくれ!!」

 

エステルはそう大きな声でお願いすると、両手に赤い紙風船を乗せ、一方通行(アクセラレータ)へと差し出す。

 

(なんか始まってる)

 

「あァ……?」

 

真守が目を瞬かせている前で一方通行(アクセラレータ)も意味が分からずに言葉を零しており、エステルはそんな一方通行へ畳みかけるように懇願する。

 

「我がローゼンタール家では師弟の契りを結ぶ時、弟子となる者が身に着けている装飾品や道具から赤いものを渡す習わしとなっている! 己が血肉を師匠に預けるという意味だ!」

 

エステルはそこまで説明すると赤い紙風船を口元に持ってきて空気を吹き入れて、紙風船として機能するように膨らませる。

 

「こうやって厚みを持たせて形を与える事によって、より己の血肉の意味も増す!」

 

「ンな事はアイツにでも頼め」

 

エステルが意気揚々と手の中の赤い紙風船を一方通行(アクセラレータ)に見せると、一方通行はそれを見ずに真守の方へ顔を向けた。

自分よりも真守の方が適任だと考えたのだろう。

 

「あ、いや! そんなこと言わずに頼む! 真守も確かにすごい! だがあなたの強さを学びたいんだ!」

 

エステルが頭を下げた瞬間、一方通行(アクセラレータ)は面倒くさくなって赤い紙風船をベクトル操作で操って宙に浮かすと、適当な方向へと放り投げた。

 

エステルは慌ててそれを追うが、一方通行(アクセラレータ)はそんなエステルを気にも留めずに真守に問いかける。

 

「クソ野郎の居場所は掴めたのかァ?」

 

「掴んで挑発したらこっちに秘密兵器を向かわせると叫んでいた。その秘密兵器をぶち壊して戦力をゼロにしてから向かおうと思う」

 

「丸裸にするってことかァ? 面白そォじゃねェか」

 

「む。私を襲ってくるんだからお前は手を出さなくていいぞ? 頭の傷口がまた開くだろ」

 

一方通行が獰猛に嗤うと、獲物を横取りされる肉食動物の気持ちになって真守は顔をしかめる。

 

「オマエが力ァ使ってるトコを見ンのが面白ェって言ってンだよ」

 

どうやら一方通行は真守の能力について興味があるらしい。

そう言えば『絶対能力者進化(レベル6シフト)計画』の時は一方通行(アクセラレータ)の定義をぶち壊しただけで戦闘はしてなかったな、と真守は思いながら視線をエステルへと向けた。

 

「……ところで、あれはいいのか?」

 

「あァ?」

 

真守が告げると一方通行(アクセラレータ)は後ろから近づいてきていたエステルに気が付いて胡乱(うろん)げに視線を向ける。

 

とりあえず赤い紙風船は懐にしまったらしいエステルは、禍斗という疑似魂魄を定着させた人皮挟美の(かたわ)らで頭を下げる。

 

「頼む! 師匠になってくれ! あなたの強さを学びたいんだ! ……禍斗! お前からも頼んでくれ!」

 

一方通行(アクセラレータ)が完全に顔を背けて無視をしていると、エステルは禍斗にそう命令する。

 

「承知しました。ご主人様(アドナイ)の命令を実行します」

 

禍斗は機械的にそう呟いた後、一方通行(アクセラレータ)が面倒くさそうに体を背けた方へ回り込むと正面から頭を下げた。

 

一方通行(アクセラレータ)ご主人様(アドナイ)の師匠になるよう要請します」

 

一方通行(アクセラレータ)は目の前に風を切り裂いて現れた禍斗を睨みつける。

 

「どうかこの通りだ。頼む!」

 

「……つか、何で服着てねェンだ?」

 

エステルも回り込んで二人が頭を下げる中、一方通行(アクセラレータ)はマントの下に下着しか身に着けていない禍斗に目を向けながらエステルに訊ねた。

 

「ああ。これは時間がなかったんだ。追いかける事を優先にしたんで装備を十分に用意できなかった。……確かにこれでは防御力が心もとないな。……そうか! 私の装備を禍斗に譲ればいいんだ! そうすれば禍斗の防御力が上昇する!」

 

エステルはぽん、と手の平に拳を乗せて明るい声で告げると妙案だとして、自分のナース服に手をかける。

 

「それではご主人様(アドナイ)の防御力の低下が懸念されます。……一方通行(アクセラレータ)の衣服を借りると言うのはいかがでしょうか?」

 

エステルは禍斗の言い分に再びぽん、と手の平に拳を落とすと、一方通行(アクセラレータ)へと向き直って頭を下げて手を出した。

 

「成程! 師匠ならば衣服の防御力になど頼る必要もないしな! では、お願いします!」

 

「で? そのバカはいつここに来るンだァ?」

 

「……聖音高等学校から頑張って飛んでくるからもうすぐじゃないか?」

 

まったく興味がなくガン無視した一方通行(アクセラレータ)が自分へと問いかけてきたので、真守はちらちらとエステルを見ながら一方通行の疑問に答えた。

 

「師匠! 無視しないでくれ!」

 

一方通行(アクセラレータ)ご主人様(アドナイ)の師匠になる事を要請します」

 

エステルは一方通行(アクセラレータ)へと近寄ると、禍斗と共に一方通行と真守の周りをぐるぐると回る。

 

「何も指導してくれなくていい、勝手に学ぶ! だから師匠になってくれ!」

 

ご主人様(アドナイ)の師匠になるように、重ねて要請します」

 

禍斗は二回目の要請だと強調するように二本指を立てながら一方通行(アクセラレータ)と真守の周りを歩き回る。

 

「師匠がいるかいないかには大きな違いがあるんだ!」

 

ご主人様(アドナイ)の師匠になるように、ひたすら幾重にも要請します」

 

禍斗は三回目の要請だと強調して二本指に一本、指を足す。

 

「なあ、お願いだ! どうしてもあなたに師匠になって欲しいんだ! 頼む!」

 

エステルはそこでついに一方通行(アクセラレータ)の服を掴んで懇願(こんがん)し始める。

 

「チッ。しつけェぞォ」

 

一方通行(アクセラレータ)は呟きながら電極のスイッチに触れて能力仕様モードに切り替えると、エステルと禍斗を吹き飛ばした。

 

「うわあああっ!」

 

真守のセーラー服のスカートの中の下着が見えない範囲でその衝撃波によって揺れ動く中、エステルと禍斗は衝撃波をもろに浴びて背中から地面に落ちる。

 

「頼む! あいつらを放っておいたら、世界が、」

 

それでもエステルは体を即座に起こして一方通行(アクセラレータ)へと懇願すると、一方通行がブチ切れてエステルの顔のすぐ横に衝撃波を飛ばした。

 

「うぇッ!?」

 

一方通行(アクセラレータ)の繰り出した衝撃波はエステルのすぐ横を通り過ぎて赤い大型多脚兵器のセンサーがついた頭部に風穴を空ける形で着弾し、エステルは人間の頭蓋骨を簡単に割るほどの威力に思わず固まる。

 

「世界とかどォでもいいンだよ。これ以上絡ンで来るなら本気で黙らせンぞ」

 

「私はどうしても蛭魅を止めたいんだ! 今の私では、蛭魅を止められない……強さが、強さがいるんだ……!」

 

エステルは涙を零しながら一方通行(アクセラレータ)と真守へと近づいて、一方通行に再び縋りつく。

 

「頼む!」

 

「フン。よくもまァテメエ勝手な事が、」

 

一方通行(アクセラレータ)が鼻で嗤って言いかけたその瞬間、真守のすぐそばに横たわっていたミサカがぴくりと反応したので一方通行はそちらを見る。

 

「う……」

 

「ミサカ、大丈夫か?」

 

エステルと一方通行(アクセラレータ)の掛け合いを静観していた真守は意識を取り戻したミサカ一〇〇四六号に近づいて顔を覗き込むように膝を折る。

 

「……あなたが助けて下さったのですか? と、ミサカは他の個体とは違い、あなたに直接助けてもらった事に少しだけ優越感を覚えながら問いかけます」

 

「私だけじゃなくて一方通行(アクセラレータ)も助けてくれたぞ」

 

ミサカが嬉しそうに控えめに微笑むのを見て、真守は顔を背けている一方通行(アクセラレータ)にミサカの視線を誘導させるように仕向ける。

 

「あの人もミサカのことを? とミサカは意外な人物に微かな驚きを覚えます」

 

「うぅ……アレ、どうなってんじゃん……」

 

ミサカが一方通行(アクセラレータ)を見つめて柔らかく微笑む中、ミサカの隣に横たわっていた黄泉川が目覚めて頭を押さえながら体を起こす。

 

「黄泉川先生、目が覚めたのか。良かった、とりあえずは大丈夫そうだな」

 

「朝槻……? あんた、また首突っ込んだんじゃん!?」

 

黄泉川に怒鳴られて耳がきーんとしながらも真守はミサカをちらっと見つめながらムスッとした表情をする。

 

「この子が誘拐されて黙って見過ごすなんてできるワケないだろ」

 

「……まったく、月詠先生が特別目をかける理由がわかるじゃん?」

 

黄泉川が真守の破天荒さに降参したようにしみじみ呟くと、真守は少しばつが悪そうに、でも嬉しそうにぶっきらぼうに告げる。

 

「小萌先生は生徒全員を愛してくれる。別に私だけに構ってない」

 

「優秀なのに目をかけてるって時点で特別ってことじゃん? あいつ、出来の良い生徒よりも出来の悪い生徒の方がタイプだし」

 

「それは私もそう思ってる。そして本人もちょっと気づいているらしいぞ」

 

「──オイ、無駄話は止めた方が良いぜェ。来たぞ」

 

黄泉川と真守が話をしていると夜空を見上げていた一方通行(アクセラレータ)が真守に声を掛けた。

 

立ち上がった真守は一方通行(アクセラレータ)(うなが)されて夜空を見上げた。

 

そこには綺麗な星々の中に人工的な光がぽつんと存在していた。

 

その光がどんどんと大きくなってこちらへと落ちてくる。

 

「さて、やっと来たか」

 

真守は風を繰り出しながら舞い降りた菱形幹比古が寄越した『棺桶』を見上げて不敵に笑う。

 

その『棺桶』は紫色に赤いラインが走った戦車の形状を取っていた。

 

キャタピラはついていないが、キャタピラに当たるところにはブースターがついており、その『棺桶』は真守たちの前の空中で静止する。

 

そして四つの赤い魔法陣が浮かび上がると、それが回転してその中心に大きな魔法陣が展開される。

 

「ローゼンタール式の魔法陣……? あれは、饕餮(とうてつ)だ」

 

「饕餮……。ああ、アレがナンバーズの悪霊の、四凶の饕餮か?」

 

エステルの呟きに真守が問いかけると、エステルは緊張した面持ちで呟く。

 

「ああそうだ。真守には以前に話したな。禍斗よりはるかに強力な符でローゼンタール家五代目当主、ネイサンが生み出したナンバーズの悪霊。その一つが饕餮だ……!」

 

エステルはそこで一方通行(アクセラレータ)と真守の前へと飛び出した。

 

「下がって! アイツの狙いは私だ! 私が、」

 

「オマエは下がってろ」

 

「でも!」

 

一方通行(アクセラレータ)の言葉にエステルは反論するが、そこで真守はエステルの前に出た。

 

「いいから見ていろ」

 

エステルがその言葉に首を傾げると、真守は一方通行とエステルの前へと出た。

 

そして真守は不敵に微笑みながら能力を解放した。

 

蒼閃光(そうせんこう)によって形作られた三角形を猫耳ヘアに被るように猫耳のように展開、その猫耳に正三角形を二つずつ連ねさせる。

 

セーラー服のスカートの上から四角く長いタスキを尻尾のように伸ばして、その根元にリボンのように三角形をぴょこっと出現させる。

 

「待ってくれ! そいつは何の能力を強化したか分からない! 慎重に……!」

 

エステルが言いかけた途端、饕餮の肩に乗っていたミサイルポッドからミサイルが四発発射された。

 

「真守!」

 

エステルが制止の声を上げるが、真守はそのミサイルを全て源流エネルギーで焼き尽くそうと、歯車が噛み合ってガキガキと鳴る音を響かせながら蒼閃光を(ほとばし)らせて源流エネルギーを生成、そして地面を蹴りつけて空中へと躍り出る。

 

だがそのミサイルは真守を捉えることなく四方に散っていく。

 

真守が四方に飛び散ったミサイルを訝しんでいると、突然饕餮の姿が真守の前から消えた。

 

四発のミサイルの内、一つのミサイルと饕餮の場所が入れ替わったのだ。

 

真守がミサイルと入れ替わった饕餮の方へと振り返った瞬間、饕餮は肩に取り付けられていた火炎放射器を真守へ放った。

 

爆発が起こり、あたりに煙が充満する。

 

「朝槻!」

 

黄泉川が悲鳴を上げるが、一方通行(アクセラレータ)はフッと嘲笑した。

 

「俺の定義を簡単にぶっ壊すよォなアイツが簡単にヤられるワケねェだろォが」

 

一方通行(アクセラレータ)の呟きの通り、真守は煙の中から炎からシールドで身を守りながらスカートをひらめかせて無傷で現れる。

 

「……確か饕餮に搭載された死体の能力は物体置換(リプレイス)だったな。本当にあの質量を入れ替えることができるのか。驚きだな」

 

真守は菱形のデータサーバーから引き出した情報を頭の中で展開しながら呟く。

 

真守に睨みつけられている饕餮は真守に向かってではなく四方へ飛び散るようにミサイルを放つ。

 

そして物体置換(リプレイス)が発動し、ミサイルの替わりに水色のボディを持つ犬型のロボットをそのまま大きくしたような兵器が現れた。

 

窮奇(きゅうき)だな。確か念動能力(サイコキネシス)超能力者(レベル5)並みに引き上げているとかなんとか。何が超能力者(レベル5)並みなんだか」

 

真守が呟いていると突然真守の目の前で突然空間が歪み、黄土色の円錐に球体が乗った兵器が現れる。その兵器は円錐状になっていた装甲を四枚、翼のように展開して中から犬のような小さい体を露出させて、その装甲から触手状のチューブを手足のように伸ばした。

 

「なるほど。あれが渾沌か。隠密隠形(ステルスハイド)で認識を阻害するという知覚に作用する能力だったな。三体現れたということか。菱形も必死だな」

 

真守はフッと笑いながら三体を視界に入れると、まず手始めに青い犬型ロボットの窮奇へと迫った。

 

窮奇は自分の体の周りに念動能力(サイコキネシス)のフィールドを形成する。

 

「……悪あがきだなァ」

 

「え?」

 

一方通行(アクセラレータ)が呟くので真守が宙を舞い踊るのを見つめていたエステルは思わず一方通行を見つめた。

 

「アイツは世界に自分の定義をねじ込むンだ。だからアイツの攻撃は物理法則を食い破るンだよ」

 

一方通行(アクセラレータ)が呟く前で、真守は右手に源流エネルギーを生成して槍のように先端を鋭くさせると、そのまま窮奇へと突進した。

 

ガキギギ! と、歯車をかみ合わせたような荘厳な音と共に蒼閃光が(ほとばし)り、真守の生成した源流エネルギーは念動能力(サイコキネシス)でできた壁を突き破ってそのまま窮奇の胴体をぶち抜き、大爆発を引き起こした。

 

辺りには爆風が吹きすさび、煙によって視界が阻まれる。

 

だが真守はひるむことなくそのまま饕餮の懐に潜り込むと、饕餮のセンサーが密集している頭部を思いきり蹴り上げた。

 

真守の強力な蹴りによって饕餮の頭部は戦車の形をとっていた胴体から離れ、接続パーツをまき散らしながら宙を舞う。

 

真守は饕餮の頭が宙を舞う中、饕餮の胴体の中枢部分に源流エネルギーを球にして叩き込み、完全に沈黙させる。

 

真守が一瞬で饕餮を破壊している間に、渾沌は自身に搭載されている能力隠密隠形(ステルスハイド)によって身を隠していた。

 

「馬鹿だな。空間の揺らぎでお前の位置は丸分かりだ」

 

だが真守はそう呟くと、自分の蹴りによって宙を舞っていた饕餮の頭に向かって猫のように身を(ひるがえ)して近づき、その饕餮の頭部をボールに見立ててオーバヘッドで身を隠した渾沌に蹴りつけてクリーンヒットさせる。

 

真守の攻撃を受けて渾沌の能力が解除されて渾沌は姿を現す。

 

真守はそんな渾沌の装甲の内部に向かって源流エネルギーを蒼閃光で彩られた極太ビームにして放った。

 

渾沌は胴体を破壊されて四つの装甲と頭部、それと両足がバラバラになる。

 

真守は地面に激しい地響きを鳴らして落ちた渾沌の頭部へと着地すると、表面の装甲をべりべりと剥がして中のセンサーを露出させた。

 

ケーブルを数本思い切り引っ張って引き出すと、手の平に電気エネルギーを生成させてハッキングを開始して回線を繋げる。

 

「菱形幹比古。お前の『棺桶』は役に立たなかったぞ?」

 

〈わ、悪かった……悪かったから蛭魅を殺すのはやめてくれ……!!〉

 

真守が威圧を込めて笑いながら告げると渾沌の目に当たる部分がビカビカと光る。

 

「だから私はさっきから言っている。菱形蛭魅は既に死んでいるんだ。それを証明するためにお前のもとに出向いてやる。だから待ってろ」

 

〈いや、そうじゃなくて……! あれ、そうなんだっけ? で、でも蛭魅は生きて……生きているんだっ!〉

 

菱形が真守への恐怖で錯乱状態にある中、真守は柔らかく(さと)すように告げる。

 

「菱形蛭魅が生きていると思い込んでいたら死んでいる菱形蛭魅がいたたまれない。死んだならちゃんと悼んでやらないと。そうじゃなきゃ悲しいだろう」

 

〈やめ、やめ……来るなァ!〉

 

「ダメだ。菱形蛭魅に憑いている檮杌(とうこつ)をどうにかしないといけないんだ。じゃあな、菱形幹比古。また後で」

 

真守はブチィッと手に持っていたケーブルを引きちぎって通信を終えると、渾沌から飛び降りた。

 

「黄泉川先生。警備員(アンチスキル)じゃ手に負えない存在だけを私たちが始末してくるから、その後菱形幹比古を確保して、アイツが昔所属していた『プロデュース』の捜索をしてほしい」

 

「『プロデュース』?」

 

「うん。後で『プロデュース』がやってた実験についてのデータを渡すから。お願い。後ミサカのこと頼むな」

 

「この子のことは分かったけど……私たちが手に負えない存在って、そんなにヤバいモンをあんたが相手するの?」

 

真守がお願いをすると、黄泉川は真守の表現に警戒心を(あら)わにする。

 

「問題ない。私は超能力者(レベル5)だ。できないことはない。……それこそ、神さまに手をかけることだってできるんだから」

 

真守が自嘲気味に笑うと黄泉川は首を傾げた。

 

「……それに面倒な事はさっさと終わらせて私は病院に帰りたい。深城たちも待っているし、これ以上この件に関して動いていると垣根の機嫌が悪くなるし」

 

真守が片目を閉じながらチラッと一方通行(アクセラレータ)を横目で見つめると、一方通行は怪訝な表情をする。

 

真守はそんな一方通行(アクセラレータ)の怪訝な表情に応えず伸びをする。

 

菱形幹比古が逃げないのは分かっている。

 

何故なら、死んでしまって菱形蛭魅のフリをしている檮杌が巨大な機械に繋がれていて聖音高等学校から逃げる事ができないからだ。

 

「……誰よりもかけがえのない存在がいるから強大な魔の手が差し迫っていても逃げられない気持ち、私にも分かるよ」

 

真守は学園都市と一体化している深城を置いて学園都市から逃げられない自身と、機械に繋がれた菱形蛭魅を置いて逃げられない菱形の今の状態に対して共感を覚えてそうぽそっと呟くと、振り返ってエステル、禍斗、一方通行(アクセラレータ)を見つめる。

 

「では檮杌を止めに行こうか?」

 

真守の問いかけで頷いた三人がやる気であることを知って、真守はにこっと(ひか)えめに微笑んだ。

 




真守ちゃんも蹂躙しました。

ちなみに漫画の方でもwikiでもリプレイスやステルスハインドの四文字での表記がなかったので作中で出てきたものは『流動源力』オリジナルです。
ご了承ください。


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