とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第八四話、投稿します。
次は一一月八日月曜日です。


エンデュミオンの奇蹟篇
第八四話:〈休日休息〉はまさかの出会い


第三学区のプライベートプール。

 

ここは幾つものシチュエーションプールが取り揃えてあり、その中から好きなプールを選んで遊ぶことができる場所だ。

 

「Cタイプは予約済み? 一体どこの誰よ、まったく」

 

このプライベートプールを贔屓にしている超能力者(レベル5)第五位、麦野沈利は受付カウンターで不機嫌な声を上げた。

 

「どうします麦野。気分転換にレジャーついてるところ使おうって言ってましたけど」

 

隣に立っていた絹旗最愛が麦野を見上げて訊ねると、麦野は身を乗り出して訊ねる。

 

「そっちの予約は動かせないの? 私たちがリピーターなの分かってるわよね?」

 

「すみません、麦野さまでも変更するわけにはまいりませんので。誠に申し訳ありません。その代わりサービスを一つ無料で提供させていただきますので、ご了承ください」

 

「ちっ。どこの成金よ、まったく」

 

「えー。レジャーで遊びたかったー。完っ全にその気分だったってワケよ! ねえ滝壺!」

 

麦野が受付嬢の言葉に苛立ちを見せている中、フレンダ=セイヴェルンが隣に立っている滝壺理后へと声を掛ける。

 

「んー。浮いて漂うスペースがあればそれでいい」

 

「ええー……」

 

フレンダは特殊なプールの楽しみ方をしている滝壺の楽しみ方に思わず声を上げる。

 

彼女たちは全員『アイテム』という暗部組織のメンバーであり、普段も四人で過ごしたりするなど、仲間意識が強い暗部組織である。

 

そんな暗部組織『アイテム』のリーダーである麦野が数種類の中から無料にしてもらうサービスを選んでいるとエントランスへと団体が入ってきた。

 

「麦野。アレがCタイプの予約客じゃないですか?」

 

「あ?」

 

麦野が絹旗に急かされて顔を上げるとそこには男女一組が麦野たちへと近づきつつあった。

 

異国の血が入っていると分かるエメラルドグリーンの瞳の整った顔立ちに長い猫っ毛の黒髪を猫耳ヘアにして結い上げ、白と黒でまとめたファッションをアイドル体型に(まと)わせた美少女と、茶色い髪を肩口まで伸ばした黒曜石の瞳の高身長のホスト風のスーツを着たイケメン。

 

「あ?」

 

その高身長のイケメン──垣根帝督は麦野沈利に気づいて怪訝な声を上げる。

 

アイドル体型の美少女──朝槻真守は、垣根が怪訝な声を突然上げたので垣根の視線の先にいた麦野を見つめて小首を傾げた。

 

「……未元物質(ダークマター)

 

原子崩し(メルトダウナー)か」

 

互いが互いの能力名を呼ぶと二人の間にピリッとした一触即発の空気が生まれる。

 

原子崩し(メルトダウナー)……?」

 

「まもりちゃーん!!」

 

「ぐえっ」

 

真守が垣根の呟いた能力名に小首を傾げていると、後ろから抱き着いてきた深城に体を締め付けられて、カエルが潰された時のような声を真守は上げた。

 

「どぉしたのー? 垣根さんの知り合い~?」

 

「「なんでここに」」

 

深城がふんわりと笑って訊ねると、垣根と麦野は同時に問いかけた。

 

ハモったため、思わず無言になる二人。

 

「垣根。原子崩し(メルトダウナー)……って、超能力者(レベル5)の?」

 

「ああ。麦野沈利」

 

真守が小首を傾げて垣根のシャツの裾を引っ張ると、垣根が反応して真守に声を掛けた。

 

「……麦野! あの猫耳ヘア、新しく超能力者(レベル5)第一位になった流動源力(ギアホイール)じゃない!?」

 

そんな真守の前でフレンダも麦野の服の裾を引っ張って真守を指さした。

 

「人を指さすとは何事だ」

 

真守がムッと口を尖らせて自分を不敬にも指さしてきたフレンダを睨みつけると、フレンダは顔を引きつらせて『ひっ』と(うめ)く。

 

超能力者(レベル5)の機嫌を損ねたら何があるか分からないからだ。

 

「初めまして、流動源力(ギアホイール)。随分と有名になったそうじゃない」

 

「初めまして。別に有名になりたくなかったんだけどな」

 

真守は麦野に声を掛けられて仏頂面をしながらも麦野の言葉に応えて、そしてコテッと首を傾げた。

 

「お前の名前はなんて言うんだ? 知っているかもしれないけど、私は朝槻真守と言うんだ。よろしくな」

 

「……麦野沈利だけど」

 

「麦野。麦野も泳ぎに来たのか?」

 

麦野は真守のフレンドリーさに思わずうろたえながらも答えるが、真守は特に気にせずに麦野に声を掛ける。

 

「……ええ。そうだけど」

 

「そうか。まあ、ここに来るんだからそうだよな」

 

真守が納得したように頷いている姿を見た麦野は、取っつきにくい外見に似合わず意外と社交的ね、と内心思いつつくいっと顎を動かして自分を睨みつけている垣根に真守の視線を向けさせる。

 

「その男の付き添い?」

 

「あたしと林檎ちゃんが来たいって言ったのぉ!」

 

麦野の問いかけに答えたのは真守に抱き着いていた深城で、麦野は深城の能天気っぷりに思わず顔をしかめる。

 

「……林檎?」

 

絹旗が深城の告げた名前に反応すると、垣根の後ろ、深城の隣からひょこっと林檎が顔を出した。

 

最初からいたが体が小さくて見えなかったのだ。

 

「あ」

 

絹旗がそこで声を上げて、林檎は怪訝な顔をする。

 

「林檎、知り合いか?」

 

「んー……。あ、実験で一緒だった子」

 

真守が問いかけると林檎は少し考えた後、思い当たる節があって思わず絹旗をビッと指さしながら告げる。

 

「指さすのはやめろ」

 

「うん」

 

真守が注意すると林檎は指をさすのをやめてすすすーっと垣根の後ろに体を隠す。

 

林檎が垣根に随分と懐いている事、彼らと行動を共にしていることに絹旗が驚いていると、真守はフム、と一つ頷く。

 

「そうか。お前も『暗闇の五月計画』の被験者なのか」

 

真守が独り言のように呟いた言葉を聞いた麦野は、暗部の実験を知っている真守に警戒心を(あら)わにした。

 

真守が『闇』にどっぷり浸かっていると気づいたからだ。

 

「あんたの組織の新しいメンバーってわけ?」

 

「なんでテメエにいちいちそんな事話さなくちゃなんねえんだ?」

 

麦野が問いかけてくるので垣根は苛立ちを隠さずに逆に問いかけた。

 

「あら。あなたたちお揃いで」

 

垣根と麦野が一触即発の中、後ろから優雅に歩いてきた心理定規(メジャーハート)がひょこっと顔を出した。

 

その後ろには大量に荷物を持った誉望とその隣に何も持たずに並走している弓箭がいて、弓箭は垣根と真守が誰かと話しているのを不思議そうに見ていた。

 

(やっばー。多分あっちも暗部組織ってワケよ!)

 

(マズいですね。超一触即発の状態です。あっちには第一位と第三位……戦力的にはウチの方が超不利です)

 

フレンダと絹旗が内心焦っていると、真守は状況を察し、垣根の服の裾を再び引っ張った。

 

「垣根。喧嘩してる場合じゃない」

 

「……そうだったな。こんなくだらねえ事に時間使ってる場合じゃねえ」

 

垣根が矛を収めるのを確認すると、真守は機嫌を明らかに損ねている麦野に目を向けて申し訳なく思って眉を八の字にする。

 

「麦野。麦野もせっかく泳ぎに来たのに嫌な思いさせてごめんな」

 

「え……。そ、そうね。別に大丈夫……よ?」

 

麦野は真っ向からの謝罪に思わず面食らいながらも返事する。

 

「オイ、なんでお前が謝るんだよ」

 

「垣根。そんな苛立ち向けられて気分悪くしない人間なんていないだろ。それにこんなところでいさかい起こしてどうするんだ。私たちは遊びに来たんだぞ?」

 

「……チッ」

 

異議を唱えた垣根だったが、真守の言葉に正当性が見られるため、舌打ちしつつも引き下がる。

 

(えー!? なんかすっごい人格者なワケよ。麦野と大違い!)

 

(第一位……割とまともそうですね……一触即発の状態を回避するなんて)

 

フレンダと絹旗は超能力者(レベル5)に本来欠けている人間性を真守が見せたので内心驚く。

そんな二人の前で真守は柔らかく微笑を浮かべて麦野に声を掛けた。

 

「私たちは急いでいないから受付、ゆっくり済ませてもらっていいからな」

 

真守はさらりと自然な気遣いを口にすると、垣根の裾を引っ張って後ろから自分に抱き着く深城をずりずりと引きずり、受付の近くにある待ち合いの意味を兼ねているソファとテーブルへと向かう。

 

そして大量に荷物を持った自分を追いかけてきた誉望を見て、誉望が持っていた荷物を次々と受け取り、床に降ろしていく。

 

「あの、麦野さま。受付を続けさせていただいてもよろしいですか?」

 

麦野が呆気に取られて真守たちを見つめていると、受付嬢が後ろがつかえていると一言も告げずに麦野を促す。

 

麦野が真守たちから視線を外して受付嬢と話す中、フレンダと絹旗はじろじろと真守たちを見つめ、滝壺はぽーっとした眼で真守たちを見ていた。

 

「チッ。見世物じゃねえんだよ」

 

垣根が苛立ちを込めて小さく呟くと、近くにいた誉望が顔を真っ青にする。

 

「暗部組織の顔見知りか?」

 

真守は不機嫌な垣根を眉をひそませながら心理定規(メジャーハート)に問いかけると、心理定規は軽い調子で答える。

 

「ええ。ウチと同じ統括理事会直轄の暗部組織で『アイテム』と言うのよ。麦野沈利がリーダーで、『アイテム』の仕事は主に学園都市内の不穏分子の削除・抹消なの」

 

「へー。ウチは統括理事会の命令に合わせてなんでもこなしますから汎用性が重視されますけど、あの方たちは役割がきちんと決まってるんですねえ」

 

心理定規(メジャーハート)の説明に声を上げたのは弓箭で、弓箭はチラチラッと四人組の少女たちを見ながら呟く。

 

弓箭の言う通り、『スクール』は情報収集から暗殺まで上層部から下された命令ならばなんでもこなす。統括理事会直々の命令もあれば統括理事会メンバーの個人的な依頼まで様々だ。

 

そのため中距離から近距離に対応できるスナイパーや尋問用の精神干渉系能力者、情報収集から暗殺ができる汎用性の高い念動使い(サイコキネシスト)、そして応用性に富んだリーダーと、臨機応変に活動できる人材が『スクール』集まっているのだ。

 

心理定規(メジャーハート)さんよく知ってますね。お知り合いで仲いいんですか?」

 

弓箭が感心していると心理定規(メジャーハート)は柔らかで余裕そうな表情で理由を述べる。

 

「生活圏が彼女たちと被るのよ。こういうレジャー施設でも会うし、デパートとかでもよく会うわね」

 

「ああ。例の小遣い稼ぎやそれ用の調達の時にか」

 

「小遣い稼ぎ?」

 

垣根が心理定規(メジャーハート)が行っている『人と話をして金を払ってもらう』というキャバ嬢じみたことを小遣い稼ぎと揶揄(やゆ)して訊ねると、真守が小首を傾げた。

 

「あなたには縁のない世界よ。私がしている事をあなたがしたら、あなたにご執心の彼が相手を殺しちゃうもの」

 

「……ああ。それだけで何してるのか分かった」

 

心理定規がしている小遣い稼ぎが援助交際まがいだと察した真守は遠い目をして呟く。

 

「え? 何してるのぉー?」

 

「お前は知らなくていい」

 

抱き着いて訊ねてきた深城の頭をぐいーっと押しのけながら、真守は深城に心理定規(メジャーハート)が何をしているか純粋な深城に話すのを拒絶した。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

誉望はプールサイドでそわそわとしていた。

 

垣根がプールに付き合えと自分に言ってきた時は天変地異が起こるかもしれないと恐怖したが、理由を聞けば『男一人になるのは嫌だ』という人数合わせ目的だったので密かに安堵した。

 

垣根は前開きのシャツに海パンを着て肩にかかっている髪の毛を一括(ひとくく)りにしてプールサイドチェアに座って真守たちを優雅に待っているが、同じような格好をしている誉望は落ち着くことができずにそこらへんをうろうろしていた。

 

誉望はなんといっても思春期真っ只中の男子高校生で、女子とプライベートプールに来るなんて初めての経験なのだ。

 

幾ら垣根の意中の少女と仲間である『スクール』の女子と言えど女子は女子。

 

落ち着かずにパーカーを着直したりしていると、プールサイドに真守たちが来た。

 

真守はいつもの猫耳ヘアに白と黒のホルターネックにレースアップのビキニを着ており、デザイン性の高い無駄な紐が細い腰や胸周りを締め付けているのが特徴的だ。

 

真守の隣にいる深城はレースの薄桃色のハイネックビキニを着ており、布部分は真守よりも大幅に多く、本人も自分がけっこうなむっちり体質だと知っているので、着やせ効果が見られる水着だ。

 

そんな深城と手を繋いでいる林檎はビタミンカラーのタンクトップビキニを着ており、頭に子供が着けるようなチープなサングラスを乗せている。

 

心理定規(メジャーハート)はピンクの紐ビキニにパレオを巻いており、優雅な印象を与える水着で、ところどころがフリルに覆われている。

 

そして心理定規(メジャーハート)の隣を歩いている弓箭は純白のワンピースタイプの水着だが、胸の質量は質量なのでグラマラスな印象が見受けられた。

 

そんな水着を着た女子たちが入ってくると、誉望は目のやり場に困り垣根に視線を移す。

すると垣根はおもむろに立ち上がって何故か手元に持っていた女物のパーカーを持って真守に近づいて真守の肩にパーカーをかけた。

 

「ちゃんと着とけ」

 

「なあ。どうしてプライベートプールで上着を着なくちゃいけないんだ? 教えてくれるか?」

 

真守は垣根が自分の肩にかけたパーカーを見た後、ジト目を垣根に向けて顔をしかめる。

 

「というかなんでお前が女物のパーカーを持ってるんだ」

 

「お前が着てこねえと思ったからだよ」

 

「だからどうしてプライベートプールで着なくちゃならないかって聞いてるんだ!」

 

「うるせえちゃんと着とけ」

 

(うわあ……過保護だ…………)

 

真守と垣根が上着の攻防をしているのを遠目に見て心の中で呟いていた誉望に、弓箭はにやにやとしながら近づく。

 

「誉望さ~ん。見てくださいおニューの水着ですよ、おニューの水着! どうですか?」

 

「ああ。いいんじゃないか」

 

「適当! 適当に答えないでください! むぅ~」

 

弓箭は適当に答えた誉望が気に入らなかったのか、突然ワンピースをぴらっと上げた。

 

思わずバッと見てしまった誉望は弓箭がワンピースの下にホットパンツのような水着を着ているところを目撃する。

 

「あら~朝槻さんみたいにセクシーな水着を期待しましたか~ほらほら~」

 

「くっ……!」

 

弓箭がぴらぴらとワンピースをひらめかせてにやにやとするので、誉望は男として条件反射してしまった事に悔しさを覚える。

 

というか前にもこんなことあった、と誉望が後悔していると真守と垣根の言い合いがヒートアップしていく。

 

「大体、深城と林檎はウォーター・パークに行きたいって言ったのに、お前がプライベートプールじゃなくちゃダメだって散々言ったからここに来たのに! 人目がないんだから別に着なくていいだろ!?」

 

「公共のプールにお前を行かせられるわけねえだろ! ただでさえ街中歩いてりゃ色目使われるっつーのに! それにそんなとこ行ったら人に囲まれて泳げるわけねえだろ!」

 

垣根が怒鳴ってくるので、真守はムーっと口を尖らせる。

そしてガウッと牙を剥いて垣根に反論する。

 

「寄ってきたら一人見せしめに撃退すれば大丈夫だって言ったのに!」

 

「ッチ。この分からず屋! しょうがねえから教えてやる! お前のその姿を誰かに見られんのが耐えられねえんだよ、バーカ!」

 

「バカって言うな! というかなんでそんな微妙なところでお前はいつも器が小さいんだよ!」

 

「だから小さくねえつってんだろ!!」

 

垣根と真守がぎゃあぎゃあ言い合いをしている中、それを見ていた林檎は不毛な争いだと思って深城の手に触れてぐいぐいと引っ張った。

 

「深城、ウォータースライダーに一緒に乗りたい」

 

「うん、いいよぉ。心理定規(メジャーハート)さん、ああいうの使うの初めてだから一緒に来てくれる?」

 

「いいわよ」

 

真守と垣根が言い合いをしている中、林檎は通常運転で深城を急かして、深城は心理定規(メジャーハート)にお願いしてプールを楽しむために行動を開始する。

 

「もう、プール入れば一緒だろ!」

 

真守は垣根との不毛な争いをするのが嫌になって肩にかかっていたパーカーをびたーんと床に捨てると、プールへと飛び込む。

 

ばっしゃーんと華麗に着水した真守はそのまま綺麗な仕草で潜水していく。

 

普通は準備運動をした方がいいが、体内のエネルギーの循環を操れる真守に限って足をつるなどの事態にならないので準備運動は彼女に必要ないのである。

 

「オイ真守、逃げんじゃねえ!」

 

「弓箭ー浮き輪持ってきてー! 一緒に入ろう!」

 

垣根が怒鳴り声を上げながら真守に触発されてプールに飛び込むと、真守は既にプールの端っこまで行っており、潜水するのをやめて水面から顔を出すと、弓箭へと声を掛けた。

 

「あ、はい!」

 

弓箭は誉望で遊んでいたが、真守に声を掛けられて律儀に軽く柔軟を始める。

 

「もう。垣根しつこいぞ!」

 

真守は自分に近付いてきた垣根から逃げるようにすいーっと背泳ぎで遠ざかりながら追ってくる垣根に声を大きくして憤慨する。

 

「お前の危機感がなさすぎんだよ! セーラー服の下にもスパッツ穿きやがれ! 確かオーバーパンツとか言うのもあるんじゃねえのか!?」

 

「なんでいきなり下着の話になるんだ!?」

 

「うるせえ前から言おうと思ってたんだよ! お前の下着はエロ過ぎる! 男が食いモンにするからヤメロ!!」

 

「別にいいだろうが! かわいい下着着てるとテンション上がるし、別にかわいくない下着穿いてるわけじゃないから見えても大丈夫だろ!?」

 

「下着でテンション上げんなよ!! つーかお前見られてもいいと思ってんの!? 危機感なさすぎだろ!?」

 

垣根が困惑しながら怒鳴り声をあげて近づいてくるので、真守はすいーっと長く潜水して逃げ出し、それを垣根が泳いで追いかけるという攻防が続く中、弓箭がプールに入ってきたので真守は弓箭へと近づく。

 

「もうっ。垣根しつこいっ! なんで下着にまでケチ付けられなくちゃいけないんだよ! なあ弓箭!」

 

「ふぇっ!? あああ朝槻さん、落ち着いてください!」

 

真守はうきわを浮かべようと手を挙げている弓箭にぎゅーっと抱き着くので、弓箭はうきわを掲げたまま顔を赤らめてあからさまな動揺する。

 

「弓箭! 可愛い下着はテンション上がるよな!?」

 

「え!? は、はいそうですね。今日は可愛い下着着ていると思うと自信がつきますし」

 

突然鬼気迫った様子で真守が声を掛けてくるので弓箭が慌てながらも頷くと、真守は自分と弓箭に近づいてきていた垣根をキッと睨み上げた。

 

「ほらあ! えっちする時だけ女がかわいい下着身に着けると思ったら大間違いだぞ!」

 

「え……っ!? テメエなんて事言いやがる!」

 

「事実だろうが! 男の方がえっちでそーいうこと考えてるくせになんで今更動揺するんだ!」

 

「偏見ヤメロ! つーか俺が動揺してんのはお前の口からそういうことが出たからだ!!」

 

「は、はうぅ~朝槻さん、さっきから柔らかいものがぎゅうぎゅう当たってます~ていうか腰すっごい細いですね……!」

 

垣根と口論しながら真守がぎゅーっと弓箭に抱き着くと、弓箭は真守のアイドル体型のすさまじさを実感して顔を赤くする。

 

(これが進んでいる男と女の話なのか……というかこれで付き合ってないってどういう事なんだ、一体……)

 

誉望はぎゃあぎゃあと騒ぐ彼らを見つめながらビーチサイドシートに寝転がって高みの見物をしていた。

 

だがそれを真守が許すはずもなく、真守に呼ばれた誉望はあまり近づきたくない真守と垣根、それと弓箭の輪にすぐに入っていくことになる。

 




エンデュミオンの奇蹟篇、開幕しました。
上条くんがアリサちゃんと初めて会った日は昼食をインデックスと食べてバッティングセンターに行っているのでおそらく学校は休みだったんじゃないかと思って、真守ちゃんたちにも休日を楽しんでもらいました。水着回に満足。


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