とある科学の流動源力-ギアホイール-   作:まるげりーたぴざ

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第八九話、投稿します。
次は一一月一三日土曜日です。


第八九話:〈嫌悪共闘〉でも共に奇蹟を

〈ねえ。今のは何なの?〉

 

垣根はエンデュミオン内を未元物質(ダークマター)の翼で飛びながら真守と共にいるカブトムシと情報を共有して即座に無線を使って美琴の問いかけに答える。

 

「エレベーターの中継地点ステーション付近で起こった爆発だな。施設が連鎖崩壊興してやがる」

 

〈……マズいです。重力バランスが崩壊してこのままだとエレベーターが倒壊して地上に倒れてしまいます!〉

 

そこで警備員(アンチスキル)のテントでナビをしている風紀委員(ジャッジメント)の初春が焦った声を上げるため、垣根は舌打ちをしながら初春に指示を出す。

 

「倒壊に際しての緊急プログラムがあるだろうが。それを早く調べろ」

 

〈ええっと……緊急用の切り離し(パージ)システムですね。本来はリモートで点火できるんですけど……今はシステム自体が凍結されています……。この三か所の爆砕ボルトを手動で点火させる事ができれば……〉

 

垣根の指示に従ってエンデュミオンの情報にアクセスした初春が自信なさげにそう呟くので、美琴が即座に声を上げた。

 

〈今はなんでもやってみるしかないわ。一か所は私が引き受ける〉

 

「もう一か所はしょうがねえから俺が行ってやる」

 

(後一か所だが……手がねえならカブトムシに行かせるが……)

 

〈なら一か所はこちらで引き受けるじゃん〉

 

垣根が頭の中で考えていると、黄泉川が引き受けるといったので丁度良いと鼻で嗤った。

元々カブトムシは情報収集のために構築したネットワークなので、統括理事会の言いなりになっている警備員(アンチスキル)にはできる限りその存在を秘匿したいと思っていたのだ。

 

「……真守の帰る場所が無くなったらマズいからな。しょうがねえからやってやる」

 

垣根はそこでカブトムシを呼び寄せてエンデュミオン内の地図を確認しながら、宇宙で魔術を止めようと奮闘している真守のことを想って柔らかく笑った。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

「ここが魔術の中心地点か?」

 

真守はレディリーをお姫様抱っこしたまま魔法陣の基盤部分へとやってきていた。

 

目の前には淡い赤紫色の輝きを帯びたクリスタルの核と、その周りに規則的に並び立つ透明な角柱と地面にびっしり埋め込まれた魔法陣が広がっていた。

 

「……もう一度聞かせて」

 

「何をだ?」

 

真守がお姫様抱っこしていたレディリーを地面に降ろすと、レディリーは真守を見上げて祈りを捧げるように手を組んで真守に目の前に差し出された救いに(すが)りつくような目を向けて問いかけた。

 

「本当に私のこの命を終わらせることができるの?」

 

「勿論だ。私は全てのエネルギーの源である源流エネルギーを生成する能力者。本来あるべき形へとエネルギーの流れを戻すことなんて造作もない。……ただ、お前の不死性を解くだけだから、後一度だけの命は残るけどな」

 

「あなたは私がすぐに自殺することは許さないのね?」

 

真守ができると宣言すると、レディリーは顔を安堵で表情を弛緩させながら真守に今一度確認を取った。

 

「うん、許さない。だから後一度きりの命の輝きを楽しむんだ。……それがお前のその不死性から解き放つための代償だ」

 

真守が柔らかくレディリーを見つめながら告げると、レディリーは真守から視線を外して(うつむ)き、そっと自分の組んだ手を見つめて微笑む。

 

「……代償。これまで終わらなかった命に比べれば安い代償だわ」

 

「そうか」

 

真守がくすっと微笑むと、レディリーは真守を見上げて柔らかく微笑んでから真守に背を向けて魔法陣を見つめた。

 

「私には魔力を精製することができないの。だからこの魔法陣は既に起動して私の手の届かないところにあるわ。今の私にできるのは発動を遅くするか早めることだけなの。……どうやってこれを止めるの?」

 

「私の友達にやってもらうんだ」

 

真守がレディリーにそう説明されてから儀式場の入り口を見ると、そこには真剣な表情をして周りの魔法陣を見つめて精査していたインデックスの姿があった。

 

「友達?」

 

「インデックス」

 

レディリーが首を傾げて振り返る中、真守は自分の友達であり、魔術の専門家であるインデックスの名前を呼ぶ。

 

「あ、まもり! う、わわっ! 地面に上手く足が付かないんだよっ?!」

 

真守に名前を呼ばれて表情を輝かせたインデックスは真守に駆け寄ろうとするが、地上と重力が違うのに地上と同じように地面を蹴ってしまって浮き上がってしまったので、インデックスはバランスを取ろうと両手をばたつかせる。

 

「大丈夫か?」

 

地面から足が離れて慌てるインデックスへと即座に地面を強く蹴って近寄った真守は、インデックスの手を優しくそっと取って誘導し、レディリーのもとへと戻る。

 

真守は自分の広がった黒髪を揺らしてレディリーのもとに近づきながら、修道服のフードをはためかせながら自分に手を引かれているインデックスを見た。

 

「上条は?」

 

「ありさを助けに行ったよ」

 

(先程から戦闘音が続いているし……もしかしてあの黒鴉部隊のシャットアウラが暴れているのか? 大丈夫かな、上条。……ううん、きっと大丈夫だな)

 

真守はインデックスから上条の現状を聞いて心の中で呟くと、自分を見つめているインデックスに微笑みかけた。

 

「上条が頑張ってるならこちらも頑張らないとな。……お願いできるか? インデックス」

 

「うん!」

 

真守の問いかけにインデックスが頷く中、真守はレディリーのそばに降り立ち、インデックスもちゃんと地面に着地させた。

 

「……こんな無茶な術式は初めて見たんだよ。地球を壊しちゃう気だったんだね」

 

インデックスは辺りの魔法陣を見つめた後、スッとレディリーを見た。

 

真守がそばにいて毒気が抜けていることからレディリーが既にこの魔術を必要としていないことをインデックスは見抜いたため、過去形で声を掛けたのだ。

 

「あなたの友達というのは禁書目録のことだったのね。……聞いたことあるわ。一〇万冊三〇〇〇冊の魔導書を記憶させられた、人間図書館」

 

レディリーは自分を見た後、即座にあたりの術式を再び精査し始めたインデックスを見つめながら一人呟く。

 

「ああ。インデックスは世界を救ってくれる。それがこの子にはできる。……いけそうか、インデックス?」

 

真守が問いかけるとインデックスはしっかりと頷く。

 

「うん、もちろんだよ。まもり、世界を……ありさを救おう!」

 

「ああ」

 

真守はそこで儀式場の核を見上げた。

 

必ず救ってみせる。何もかもを無駄にはさせない。

 

だってこの世界は理不尽で罪深きながらも、あらゆる可能性に満ちているのだから。

 

そんな世界を壊させるわけにはいかない。

 

真守はそう決意してエンデュミオンから放たれる魔法陣を見つめていた。

 

 

──────…………。

 

 

 

〈こちら黄泉川。すまないが、たどり着けそうにないじゃん!〉

 

垣根は爆砕ボルトへ向かう間に何もかもを切り裂く円盤を苛立ちを込めて未元物質(ダークマター)の翼で(さば)きながら聞こえてきた黄泉川の声に舌打ちした。

 

エンデュミオンにもともと仕組まれていた防衛システムを黒鴉部隊に起動させられているため、自分と同じように警備員(アンチスキル)や美琴も要所要所で足止めを食らっているらしい。

 

(ッチ。警備員(アンチスキル)の前で使いたくなかったが展開していたカブトムシに指示を、)

 

〈──大丈夫です〉

 

(なんだ? 割り込みか?)

 

垣根が頭の中で考えながら円盤を全て(さば)いていると美琴によく似た無機質な声が無線に割り込みを掛けてきた。

 

〈構わず、スリーカウントで点火してください、とミサカはお願いしてみます〉

 

プログラムじみたその声。そして『ミサカ』という一人称と特徴的な喋り方。

 

(妹達(シスターズ)? なんでここに。……ああ、病院にあいつら入院してっからそこから聞き出したのか)

 

垣根はそう思うがふと不安になった。

 

妹達(シスターズ)は現在調整中である前に彼女たちは超能力者(レベル5)の欠陥品とされたのだ。彼女たちに爆砕ボルトを起爆させるほどの火力があるとは思えない。

 

そう思った時、垣根の中で嫌な予感が走り抜けた。

 

そのため即座にエンデュミオン内に展開していたカブトムシに指示を出すと、そのカブトムシたちの一体と視界を共有することになり、その人物を認識した。

 

右手に現代的な松葉杖を突いたやせ細った体。

 

真っ白な髪に深紅の瞳。

 

「ああ!? なんでやっぱり一方通行(アクセラレータ)のヤツがここに来てんだよ!?」

 

垣根は打ち止め(ラストオーダー)と一緒に爆砕ボルトへと気怠そうに向かっている一方通行(アクセラレータ)の存在に声を荒らげながら、全ての円盤を捌いて未元物質(ダークマター)の翼をはばたかせて爆砕ボルトへと向かう。

 

途中、真守の知り合いの魔術師であるステイル=マグヌスが魔女っ()の服を着た三人の女の子と共に金髪のやけに機械的な行動をする女性と戦っていたが、無視をして爆砕ボルトの前までやって来た。

 

「くっ……ここでアイツとまさかの共闘だと…………!?」

 

垣根が(うめ)きながら淡く青色に輝く爆砕ボルトの前に降り立つと、自分の腕にくっついていたカブトムシが暗い空間の中で淡い輝きを放つヘーゼルグリーンの瞳をキロッと動かした。

 

『きちんとやり遂げなければ真守の帰ってくる場所が無くなってしまいますよ』

 

「うるせえ! 言われなくても分かってんだよ端末!!」

 

垣根がカブトムシを怒鳴りつけると、カブトムシは垣根の腕にしかがみつくための足を一本だけ離して垣根の腕をとんとんと叩きながら無機質な声音を薄い翅によって発する。

 

『ですが垣根帝督(オリジナル)から何もかも投げ出したいと思う程に嫌そうな感情がネットワークによって伝播してきましたので、くぎを刺したほうがよろしいかと』

 

「ああ!? 嫌に決まってんだろ舐めてんのか!?」

 

『垣根?』

 

垣根がカブトムシを怒鳴りつけた瞬間、カブトムシのヘーゼルグリーンの瞳がキュキュッと収縮して、突然発声の音が変わって真守の声が聞こえてきた。

 

「……真守?」

 

『垣根、こっちは魔術を止められそうだから大丈夫。そっちでも分かってると思うけど、エンデュミオンは爆発で重力バランスが崩壊している。地上の方で何か対処をしているか?』

 

垣根が突然聞こえてきた真守の声に怪訝な声を出すと、真守は状況を説明してくれて、垣根の方ではどうなっているかと現状を聞いてきた。

 

「……これから爆砕ボルトを破壊してエンデュミオンをパージする。その後は運だが、お前ならなんとかできるだろ」

 

真守が何も知らずに訊ねてくるので、垣根は一方通行(アクセラレータ)と共闘していることについて嫌悪感を抱きつつも、真守を不安にさせるわけには行かないので冷静になって真守に報告する。

 

『? 垣根、なんか機嫌悪い?』

 

「うるせえ別に悪くねえ」

 

だが真守が即座に自分の機嫌の悪さを察したので垣根が早口に告げると、一瞬真守が沈黙する。

 

『え。一方通行(アクセラレータ)が来てる!?』

 

どうやら真守のそばにいるカブトムシが真守に理由を話したらしく、真守はそんな驚愕の声を上げた。

 

『か、垣根。……その、本当に嫌だと思うけど……その、私のために頑張ってくれるか……?』

 

垣根が事情を知った真守の言葉を黙って聞いていると、真守が申し訳なさそうに告げるので、垣根はチッと舌打ちする。

 

「分かってるよお前のためにやってやる。ただし、貸しイチな」

 

『……かしいち…………』

 

垣根は後で真守のことをいつもより好きにしようそうしようと心の中で決めていると、真守が垣根の言葉に不安を覚えて復唱する。

 

『う、うぅ……なんかすっごく嫌な予感がするけど……わ、分かった。垣根頑張ってな』

 

真守が嫌な予感を覚えながらも自分を激励してくるので、垣根はフッと柔らかく笑った。

 

「お前も気を付けろ」

 

垣根が声を掛けると、そこで通話が終了してカブトムシがヘーゼルグリーンの瞳をカメラレンズのように収縮して垣根を見上げた。

 

『これでやる気が出ましたね』

 

「テメエ俺の端末なのに俺を操作するようなことするんじゃねえよ」

 

垣根が自分の手にしがみついているカブトムシを腕をぶんぶんと振って揺すりながら責め立てる。

 

〈行くわよ! ────スリー!〉

 

そこで美琴の声が聞こえてきたので、垣根は未元物質(ダークマター)の翼を大きく広げて振りかぶった。

 

「ッチ! おぅ、らっ!!」

 

そして大きく盛大に舌打ちをしてツーカウント目を数えて翼を爆砕ボルトへと切り裂くようにぶつけて起爆させる。

 

その次に一方通行(アクセラレータ)が最後に爆砕ボルトを起爆させた。

 

激しい振動と共に全ての爆砕ボルトが爆発し、エンデュミオン全体が揺さぶられる。

 

 

 

──────…………。

 

 

 

「エンデュミオンが切り離された! インデックス!!」

 

真守は振動を感じながらよろけたレディリーとインデックスの肩をそれぞれ支えなががらインデックスに声を掛けた。

 

「うん。今ならできるよ……折り重なった術式を解いて、崩す方法を見つけられる」

 

真守の声に応えたインデックスは真守に肩を抱かれたまま祈るように目を閉じる。

 

そしてインデックスは頭の中の一〇万三〇〇〇冊から『知識』によって術式を解くための最適解を探す。

 

エンデュミオンが断続的に揺れる中、インデックスは真守からゆっくり離れて手を組んで俯き、息をゆっくりと吸った。

 

『運命の──……シンフォニー──』

 

インデックスが歌い出した途端、インデックスの周りから淡い水色の光の奔流(ほんりゅう)が流れ出す。

 

その歌は()しくもアリサと共に完成したら一緒に歌おうと約束した歌詞だった。

インデックスも真守も知らないが、この瞬間ステージでアリサも歌っていた。

自分に才能を分け与えて生み出した自分の半身であるシャットアウラ=セクウェンツェアと一緒に。

 

『幾──重──もの──傷痕の────最期を──みとる、から──』

 

その光の奔流に呼応するように外の魔法陣が輝きを増していき、魔法陣の核である水晶も鋭い光を放ち始め、魔法陣も光り輝き、真守たちがいる儀式場がまばゆい輝きに包まれる。

 

そしてインデックスの歌によって緻密に編まれた魔術が少しずつ端から空気へと()けるように(ほど)いていく。

 

『私は──……うたおう。……いま、光をあつ──めて──』

 

(……今、分かった)

 

『無限へと還っ──た──愛を──静かに眠ら──せて──』

 

真守はインデックスの歌を聞きながら辺りに満ちていく虹色のオーラと共に星のような無数の淡い白い光を感じながら心の中で呟く。

 

『あなたへ、うたおう──……もう何も失──わず──……』

 

(これは、この現象は……人の想いが世界の根底にある法則を捻じ曲げているんだ)

 

真守はそこで思わず空間へと手を(かか)げて今一度人の想いが織りなす奇蹟へと手を伸ばす。

 

(……私がいつか、科学の徒の願いにとって絶対能力者(レベル6)へと至るのと同じ……)

 

『誰もが──笑顔に──……な──れ、る──確かな日々が』

 

(私が人の祈りと悪意、その想い全て力に換えるように。人々の想いが歌によって編み上げられて力に換えられて、奇蹟を生み出す)

 

『ず──っと続くように──…………』

 

(鳴護アリサとは。あの子は、きっと──)

 

『Get over again──……天空(そら)へと向かって──……』

 

(奇蹟を願った人間の想い、願いや祈りによって生み出された人間だ)

 

『Get over again──…………羽撃こう──……』

 

(その本質は、純粋無垢で、そして。歪で醜いながらも、美しい)

 

インデックスが魔術を停止させるための歌を紡ぐ中、真守はエンデュミオンが地上へと落下するのを防いだ奇蹟を生み出して、元の場所へと還っていった鳴護アリサを想って宇宙へと手を伸ばし続けていた。

 




垣根くんまさかのこの世で一番憎い敵(一方通行)と共闘です。

これ原作では『スリー』で第三位の美琴が、『ワン』のカウントで第一位の一方通行が爆砕ボルトを起爆させたんですよね。

ということなので『スリー』から『ワン』まで超能力者の順番に則って起爆させました。まあ真守ちゃんが第一位なので若干違いますが、順番的には合っているということで。
そもそも第一位から第四位まで共闘していますし。豪華すぎる……。

ちなみに初めて使用楽曲情報入力したんですがこれで合っているんでしょうか。間違っていたら直しますので確認の程よろしくお願いします……自信ない……。

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