フローリアン関係やアニスアリエッタ関係、カンタビレ、ディストとの絡みなど頭の中にネタはあるのでキリの良いところまで本編が進んだら少しずつ番外編などで放出するつもりでいます
なおキリが良いところが遠い模様
ベルケンド上空に近づいた私たちは、目立たぬようにベルケンドから離れた位置にアルビオールを着陸させ、ノエルに留守を任せて歩いて街中を目指すこととなった。地形を無視して移動できるアルビオール以上の速度で動く手段はこの世界には無い。となれば、追手はまだ追い付くことは無いだろう。そもそも、どこに行ったのかすら分かっていないはずだ。あるとすれば伝書鳩を用いた連絡がベルケンド知事に入っているくらいだろうか。
「ま、そうだとしても気にすることは無いだろうけどな。何せベルケンドはファブレ公爵家のお膝下だ。旦那様だったらここの知事に働きかけて追手が掛からないように取り計らってくれてるだろうさ」
とのガイの言葉に、一行、特にナタリアに浮かんでいた不安げな表情が和らいだ。気丈に振る舞っているが、やはり父に拒絶されたことは彼女の心に暗い影を落としていたようだ。
「ナタリアもそんなに沈んだ顔をするなよ。もしキムラスカを追い出されたらマルクトに来ればいいさ。ピオニー陛下なら喜んで受け入れてくれるだろうさ」
「ダアトも歓迎しますよ。モースが大詠師に返り咲けばキムラスカの干渉なんて跳ね返してくれますから」
そんなナタリアを励ますように、ガイとイオンが声をかける。しかし、イオンから私への期待が妙に大きいのは何故なのだろうか。もちろん万が一ナタリアがダアトに身を寄せることになり、自分が再び大詠師の地位に就いたのならば彼女も全力で守るつもりではいるが。
「ふふっ、ガイも、導師イオンもありがとうございます。そうですわね、私にはこんなにも頼りになる仲間がいるんですもの。いつまでも凹んでなんかいられませんわ。モース、もしものときはよろしくお願いしますわね?」
「ええ、そんなことにならないことを祈ってはいますが、もしもの時は何とかいたしましょう」
二人の励ましにナタリアもいつもの調子が戻ってきたのか、私に悪戯っぽく笑いながらそんな冗談を言ってきた。やはり彼らは良い仲間だ。
「よしっ、それじゃさっさと行こうぜ!」
ルークの言葉に、一行は再びベルケンドの街中に歩を進める。やはり追手はまだ掛かっておらず、街はいたって平穏なまま、ナタリアとルークが歩いていても頭を下げて道を譲ることはあれど追いかけてくることは無い。
「しかし、さっきからチラホラと神託の盾兵が見えるのが気になるな……」
「ベルケンドにはローレライ教団からも人を出しているので神託の盾兵がいるのは分かりますが、確かに多いかもしれません」
見慣れた鎧姿が往来を行き来しているのを横目にガイと私はひそひそと声を交わす。私は今この街にヴァンとリグレットがいることを知っている。恐らくヴァンに付き従う神託の盾兵の分ベルケンドの神託の盾兵が増えているのだろう。私がいることがばれていないのか、あるいはヴァンのシンパは研究所付近に集められており、今街中に出てきているのは彼らと関係ない派閥の兵なのかは分からないが、幸いにも騒がれることは無く、何事も無く私たちは歩を進めることが出来ていた。
しかし、このまま進めば自分やイオンが露見する可能性が高い。そうでなくとも、記憶ではルークがアッシュと間違えられてヴァンのもとに案内されたのだ。ヴァンとの対面は避けられないだろう。とはいえ、それを避けるつもりもない。私一人の身の可愛さでヴァンを避けるくらいなら最初から記憶の道筋から外れた行動など取っていない。
「モース、あんたがここにいることがバレちゃまずいんじゃないか?」
「それを言えばここにいる誰もがヴァンに所在を掴まれればマズいですよ。今更私一人が保身に走ってどうしますか。子ども達を放り出して逃げる情けない大人などと思われるのはごめんですね」
「ま、固まってた方が安心なのは確かだな。……つくづくホド戦争のときにあんたが大詠師だったらって思っちまうよ」
目線を外して呟いた後半の言葉は私に聞かせるつもりは無いのだろう。それを敢えて掘り返す気もないため聞かなかったことにする。私が何を言おうと慰めにはならない。ガイもそれを分かっているから独り言のように呟いたのだ。
「お、研究所が見えてきたな。……って、やっぱり神託の盾兵が入り口を固めてるな、どうする?」
そんなことを思いながら歩いていると、先頭を行くルークがこちらを振り返って聞いてきた。彼の言葉通り、研究所の入り口両脇を固めるように神託の盾兵が佇んでおり、物々しい雰囲気が漂っている。思えば、キムラスカ領であるベルケンドにここまで堂々と神託の盾騎士団が駐留し、我が物顔で警邏などしているというのは改めて見れば不気味な話だ。一体どこの国に他国の兵士に自国の街を警備させるというのか。キムラスカとダアトの親交が深いと言えば聞こえは良いが、
「行くしかないでしょう。どうせ遅かれ早かれ見つかってしまいます」
ジェイドがそう言って立ち止まったルークを促す。それを受けて彼は覚悟を決めたように一度頷くと、再び研究所に向き直って歩き始めた。
そうして研究所の入り口に差し掛かったところで案の定両脇を固める神託の盾兵に止められた。
「師団長、探しましたよ。主席総長がお待ちです」
「師団長……?」
彼らがルークを止めた理由は私の記憶の通り、ルークを自身の上司であるアッシュと勘違いしたというものだった。私とイオンが連れ立っているのも、アッシュが私達を捕らえて連れてきたものだと受け取ってくれたらしい。そしてこれまた記憶の通り、ジェイドの発案でルークを先頭に神託の盾兵の後に続き、ヴァンと対面することにしたのだった。
「アッシュ師団長をお連れしました!」
その言葉と共に部屋に乗り込んだ私達の顔を見て過剰に反応したのはヴァンの隣に立つリグレットだった。
「貴様、どうやってここに!」
その言葉と共に彼女の代名詞とも言える譜業銃を構えようとするが、それを手で制したのは他でもないヴァンだった。
「よせ、リグレット。兵士がレプリカをアッシュと見間違えたのだろうな。顔だけは同じだからな。それに良い機会だ」
「良い機会、ですか?」
「そうだ。ティアと、モースの話を聞く機会だ」
戸惑うように返したリグレットに、ヴァンはそう言葉を返して私に視線を向ける。まさかティアだけでなく私にまで水が向けられるとは思っていなかった。貫くような鋭い視線に、思わず背筋に冷たい汗が流れるのを感じた。
「モース。何故そこのレプリカを庇う? お前の役目は世界をユリアの
ヴァンが最初に語り掛けてきたのは私。その語り口は妙に優し気で、ともすれば安心感を抱いてしまいそうなほどだ。だが、言葉とは裏腹にその目は冷めきっている。
「あなたが自身の目的のために私を利用するつもりだったように。私もあなたに話していない目的があっただけのこと。互いに相手を利用しあい、利用出来なくなったから切った。それだけのことでしょう?」
あなたが私を切り捨て、詠師オーレルを次の傀儡として選んだように。
その意を込めてヴァンの目を見つめ返す。それが伝わったのか、ヴァンは口元だけの笑みを浮かべた。
「確かに互いを騙し合おうとしていたのは確かだな」
「だからこそ彼に目をつけたのでしょう? 色々と吹き込んでいたようで」
「それを食い破ってきたというのだから、中々厄介な男だ。奴に渡した薬も、結局は数日お前を拘束することしか出来なかった」
ヴァンの言葉に、ダアトで倒れてしまったことが脳裏に蘇る。確かに唐突であったから怪しくは思っていたが、やはりこの男の差し金でオーレルが何かを私に盛っていたらしい。
「殺せるほどの量を盛らなかった奴の器の小ささを見抜けなかった私の落ち度かもしれんな」
「詠師オーレルが早々不用意なことをすることは無いでしょう。保身にかけては余念が無い男です」
「だが、今ここで殺してしまえばその心配も無くなるというわけだ」
そう言ってヴァンが腰に佩いた剣に手をかけようとする。それにいち早く反応したのはティアとアニスだ。私とヴァンの間に割って入り、アニスはメイスを、ティアはメイスとナイフを構えた。他の面々も一拍遅れて戦闘態勢に入ろうとする。それどころか、イオンまで私の前に立とうとするのでそれだけは手で押し留めた。あなたは私に逆に庇われなければならない人物だというのに、何をしているのか。
「アニス、ティアやめなさい。皆さんも、ヴァンもここで事を起こすようなことはしません」
「……ティア、何故その男を庇う。お前の後ろに立つ男はお前すらも利用しようとしている男だ。そこの出来損ない諸共死んでも誰も困らん」
「その言葉、取り消して! ルークは出来損ないなんかじゃないしモース様はそんなお方じゃないわ!」
ヴァンの言葉に、ティアは常ならぬ怒りを滲ませた瞳で彼を睨みつけた。だが、唯一の肉親からぶつけられた強烈な感情にもかかわらず、ヴァンは内心を表に出すことなく、涼し気な表情は崩れない。
「出来損ないだ。そのレプリカは単独で超振動も起こせん。それに忘れたのか、そもそもレプリカを、そしてお前をアクゼリュスに送り込み、崩落に巻き込んだのはモースだ。いくら詭弁を弄そうと、モースが多くの者を死においやろうとしたことは変わらない」
「それこそ詭弁だな。モースはカンタビレを使ってアクゼリュスの住人を助けたぜ。それにルークにアクゼリュスを崩落させたのはお前だ、ヴァン」
「ガイラルディア様。アクゼリュスは私が何もせずとも
「だったら猶更モースに剣を向けるのは可笑しいぜ。モースは
「……今は理解されなくとも、私はいつでもあなたの協力を受け入れる心づもりでいます」
「その機会は無いだろうぜ」
「貴様、閣下のお気持ちを!」
「よせ、リグレット」
ヴァンに明確な拒絶を示したガイに対し、リグレットが敵意を剥き出しにするもヴァンが一喝してそれを抑える。
「兄さん、これ以上外殻大地を崩落させようとするのはやめて」
「メシュティアリカ。いずれお前も理解出来よう。この世界がいかに救いようもなく
そう言うとヴァンは私達に背を向け、それ以上の対話の拒絶を態度で示した。どうやらこの場で事を構えなくて済んだようだ。ヴァンも最初から戦いを挑むつもりも無かったのだろう。ティアに対する肉親の情、ガイに対する主従の情がまだ彼の中に残っているのかもしれない。だとすれば、この段階の彼はまだ踏みとどまれる余地があるのだろうか。
尚も言い募ろうとするティアを押し留め、リグレットに言われるままに追い出されるように私達は部屋を出た。ヴァンと初めて正面から対峙した結果は、互いに譲れぬものがあることを再認識するだけに終わった。
スキット「悪者顔はどっち?」
「主席総長って髭生やしてる分人に怖い印象与えますよねぇ」
「ヴァンの武人としての雰囲気もそれ助長してるな。だがそれを言ったらモースも中々迫力ある顔つきをしていると思うけどな」
「あー! 言っちゃいけないこと言ったよガイ!」
「うひぃ!?す、すまなかった。謝るから急に抱き着きに来るのはやめてくれアニス!」
「……やはり目つきが悪いせいでしょうか」
「ほら、モース様が落ち込んじゃったじゃん!」
「あ、気にしてたのか。それはすまなかった」
「いえ、自分の人相が悪いのは自覚してますので」
「まぁあなたのその顔で言われるとどうしても最初に警戒が来ますねぇ。かくいう私もそうでした」
「交渉事においては相手に威圧感を与えることも重要だと思いますわよ?」
「カーティス大佐、ナタリア殿下。そうやって心を抉るのはやめて頂けませんか?」
「モース様は悪役顔なんかじゃありません! ちょっと誤解されやすいかもしれませんけど……」
「ティア、それはフォローしてるように見えてもっと追い詰めてるよぅ」
「アニス!? わ、私そんなつもりは……!」
「良いのです、良いのですよ。だからこそ半端な言葉よりも行動で示すべきだと自分を戒めていますので……」
「モース、僕はあなたの顔が怖いとは思いませんよ」
「フォローありがとうございます、導師イオン……」
「……責任が重い仕事をしてたらストレスで人相が悪くなったりするのかな」
「おやおや、私はそこまで人相が悪いつもりはありませんよ、ルーク」
「ということは旦那は責任が重い仕事をあんまりしてないってことかもしれないぜ」
「はっはっはっ、ガイは面白いことを言いますねぇ。お礼に今度知り合いの女性を紹介してさしあげましょう」
「や、やめてくれ……」
「……普段からもう少し目を見開くようにしてみましょうか」