なお自分の知識と時間の問題で投げられたネタ全てを書けないことをここでお詫びします。でも絶対にいくつかは書くので……何卒ご容赦くださいませ。
if モース様が武官方面に極ぶりしていたら……
今回も捏造設定が入っておりますのでご注意ください(本編とは一切関わらない番外編なので多少はセーフということでここは一つ……)
なお武官と言いながら戦闘シーンはありません。武官ルートに行ったモース様のとある一日です
世紀末大詠師伝説モース(武官ルートモース様)
神託の盾騎士団には六神将という枠組みが存在する。
頂点たる主席総長ヴァン・グランツに付き従う六人の特務師団の幹部を指す。黒獅子ラルゴ、魔弾のリグレット、烈風のシンク、妖獣のアリエッタ、死神ディスト、鮮血のアッシュ。それぞれが一般の兵士を遥かに上回る武力を持ち、たった六人で通常の一師団を超える戦力と評されている。
そんな六神将の枠組みからは外れているが、実力とその地位において彼らと同格とされている師団長がもう一人いる。神託の盾騎士団の第六師団長、カンタビレである。六神将が大詠師派であるのに対し、唯一彼女のみが中立を表明しており、そしてそれが許されるだけの能力を備えていた。
そしてもう一人、六神将に並び立つと人々が噂する男がいた。
「おい、モース。また大詠師職を固辞したんだって?」
神託の盾騎士団本部の一室。師団長であるカンタビレに割り当てられた部屋。部屋の主である黒髪の麗人はそう言って呆れたように自身の斜め前に座る副官の男に声を掛けた。それに反応して、モースは手元の書類に落としていた視線を上げ、困ったような表情で頬を掻いた。
「私には過ぎた地位ですから……」
「毎年毎年要請されてんだからさっさと大詠師になっちまえば良いものを」
「大詠師と副師団長の掛け持ちなど出来る訳が無いではありませんか」
カンタビレの言葉をすげなく否定しながら、モースは書類をトントンと机で整えると、カンタビレの前に置かれている箱にそれを置く。
「お前が副師団長に甘んじてるから、大詠師になれって連中が煩いんだろうよ。いっそのことあたしを下して師団長になっちまえ」
「ご冗談を」
ニヤリと好戦的な笑みを浮かべてモースを挑発するが、彼がそれに応じることは無い。困ったように笑いながら冗談だと流してしまうのみだ。カンタビレは今の自分の立場に不満など無い。優秀な副官が居て、気心の知れた仲間たちと日々の訓練や任務をこなす。そこに不満は無い。ただ、一つ不満を挙げるとするならば、
「杖術と譜術の組み合わせでラルゴやあたしと渡り合えるような男が何を言ってるんだか。少しは自信を持ちな」
「私の方が長く訓練を積んできたのに、あなた方よりも強くなれていない時点で私の底が知れてしまいますよ」
しれっと言うモースに、カンタビレはジト目を返す。この男はどうにも自分の評価を辛くし過ぎるきらいがある。それはカンタビレが初めてこの男に会った頃から変わらなかった。ラルゴや自分よりも強くないと嘯いてはいるものの、模擬戦をしてみれば戦績は五分五分、よりはややラルゴと自分が優位といったもの。つまり実際の戦闘力においてモースは六神将やカンタビレと十分に張り合える力を持っている。更に言えば第六師団の事務処理や新兵訓練といった雑務はほぼモースが捌いている。自身の訓練や任務もあるというのに一体どうやって時間を捻出しているのか、恐らく最も長くモースと共にいると自負するカンタビレにも分からなかった。それでも底が知れるなどと言ってしまうのは、単純にこの男が自らに課しているハードルが高すぎるだけだった。
「その卑屈癖はどうにも直らないんだね。お前の悪いところの一つだ」
「こればかりは性分ですので……」
そんな他愛無い会話は、扉がノックされる音で終了することになる。カンタビレがノックの主に促してみれば、部屋を訪れたのは一人の若い男だった。
「失礼します。カンタビレ師団長、モース副師団長。本日の訓練と任務のご報告に伺いました」
「ああ、ご苦労様です。オスロー君」
キビキビと敬礼する男に、モースは柔らかに微笑みながら返す。カンタビレはそれをやはり目を細めたままじっくりと観察していた。
ユーリ・オスロー
かの魔弾のリグレットであるジゼル・オスローの弟であり、ある日モースがヴァンの部隊から引き抜いてきた男だ。そのときのモースは普段からは考えられない程に強引な手段を取っていた。本人の意向も半ば無視する形で第六師団預かりとし、モースの補佐官とした。当初はヴァンに心服しており、突如行われた配置転換に誰の目から見ても明らかに不満たっぷりの様子だったが、気が付けば立派にモースの補佐をしている。心服の対象がヴァンからモースに移ってしまったようにも思えるくらいの変わり身だった。
「ところでモース様。どうやら今年も大詠師への就任を拒否なされたとか」
今日一日の報告を終えたユーリはモースの隣の席に腰かけながら半眼で自身の上司を睨む。カンタビレに睨まれてもあまり動揺を見せなかったモースだが、ユーリにまで睨まれてしまっては流石に堪えたらしい、うぐぅと不可思議な鳴き声を上げた。
「仕方ありませんよ。今の仕事で私には精一杯なのですから」
「でしたら僕が仕事を一部引き受けると言っているではありませんか! いつまであのオーレルとかいう男に好き勝手にさせておくのですか!」
「いえいえ、彼も別にそこまで悪い人間というわけでは……」
「導師イオンをお飾りだと言わんばかりに好き勝手言ってるあの男がですか!? 他人への評価が甘すぎますよ」
モースの精一杯のフォローを食い気味に否定するユーリ。その詰め寄りっぷりに先ほどからモースは押されっぱなしだった。
「そうだそうだー。モースはいい加減腹を括れー」
「カンタビレ様はまずモース様に任せっぱなしにしている仕事をご自分で処理なさってください」
「おっと藪蛇だったか」
これ幸いと便乗しようとしたカンタビレであったが、自分にも飛び火がしそうだと感じると素早く撤退の判断を下した。
「まあまあ、落ち着いてください。ほら、報告も終わったことですし、今日はもう切り上げてはいかがですか?」
どうどうと鼻息荒い自身の補佐官を宥めながら、モースはそう提案する。すると、ユーリは良いことを思いついたと言わんばかりの顔でモースの両手をがっちりと掴んだ。
「確かにそろそろ切り上げましょうか! モース様も今日はこの辺りにして食事にでも行きませんか、姉さんと一緒に!」
「え”!?」
ユーリの提案にモースの口から聞いたことの無いような声が漏れた。
「ふむ、それは良い案だ。流石は私の弟だな」
「リグレット?!」
「いつの間に部屋に入ってたんだいリグレット……」
そして気配を消して部屋に侵入していたのか、いつの間にか部屋の中にいて自分の弟の言葉にうんうんと頷いているリグレットに、カンタビレはげんなりとした表情を隠そうともしない。このリグレットという女、弟のことになると少々どころではなく盲目になってしまうのだ。敬愛する上司から離されたと不満を漏らした弟のために、カンタビレとモースの下に直談判しに来たのも未だにカンタビレの記憶に新しい。そしていつの間にやらモースへの評価がおかしなことになっているところも弟とそっくりだった。
「気にするな、カンタビレ」
「いえ気にして下さい、リグレット」
カンタビレに代わってモースが力なく肩を落としながら窘める。普段は凛とした佇まいを崩さず、誰よりも規律に厳しいこの女傑は何故かカンタビレの執務室内ではおかしなことになってしまうのがモースの悩みのタネであった。余りにもモースの記憶にある姿とかけ離れているのだ。
モースが物心ついたころには頭の中に巣食っていた忌まわしい記憶。
自身が大詠師になってしまえば、不幸を撒き散らすだけになってしまう。そう思った彼は、記憶の自分とは最もかけ離れた道を選ぶことに決めた。それが今の神託の盾騎士団第六師団副師団長という地位である。杖術と譜術の鍛錬に全霊を傾け、身体動作によって譜術の詠唱を代替する独特の戦技を編み出した彼は、その実力を以て騎士団内でその地位を確立した。 そして自身の出来る範囲で手を差し伸べようと努力した。鍛錬を通じてラルゴと誼を通じ、弟の死の
ただその過程で、自分の知る筋道からかけ離れた世界になることをモースが恐れなかったかと言えば嘘になる。だが、今更自分が大詠師になることの方が、モースにとっては恐ろしかった。万が一にもあのような恐ろしいことをしでかしてはならない。病的なまでに記憶の自分を恐れるモースは、何度大詠師への就任要請があってもそれを突っぱね続けているのだった。
「おいモース、聞いているのか!」
「は、はい!?」
と、思考の海に沈んでいたモースをリグレットの咎めるような声が引き戻す。気が付けば、鼻の頭がくっつかんばかりの距離にまで迫られていた。
「あの、近くないでしょうか、リグレット……?」
「貴様が心ここにあらずな様子だったからな。それで、今日はこの後暇か? ユーリが言ったように食事でもどうだ」
「あ、あぁ、いえ、私は少しやらねばならないことがありますので」
そう言ってモースはやんわりとリグレットの申し出を断ると、そっと彼女の身体を押し返して席を立った。
「あ、おい待たないか」
「では師団長、私は一旦失礼します」
「おう、分かった分かった」
そして失礼にならぬ程度に急いでカンタビレの執務室を後にしたのだった。
「ふぅ……、どうしてリグレットはあんなことに」
騎士団本部の廊下を歩きながら、モースはそう独り言ちた。リグレットからの評価が高いことはモースにとっては喜ばしいことだが、評価の方向性が自身の思っているものとずれているような気がしてならなかった。
そうして、何故こうなってしまったのかと顎に手を当てながらぶつぶつと言っていると、突然背中に衝撃が走り、思わず前につんのめってしまう。
「モース、何をぶつぶつと言っている。悩み事があるなら訓練場で俺と身体でも動かさないか」
「……ラルゴ。あなたはもう少し力加減というものを覚えて頂けませんか」
そう言って下手人を睨みつけるモースだったが、当の本人はどこ吹く風とその巨躯を震わせて豪快に笑っている。
「この程度でどうにかなるほど柔な鍛え方はしとらんだろう。それでどうだ? 少し手合わせでも」
「何故あなたは会うたびに私と手合わせをしようとするのですか」
「俺と渡り合える実力者はそうおらんからな。それにお前の戦い方は新鮮で面白い。いつも予想もしない奥の手を隠し持っているからな」
「その奥の手を初見で対応してくる方とはあまり戦いたくないのですがね。手の内を晒して増々勝ち目が無くなってしまいます。それに私は少し用事がありますので」
「むぅ、ならば仕方ない、か。ならば手合わせは暫くお預けだな」
そう言ってラルゴは残念そうな表情を隠すこともせずモースを解放する。
「むさ苦しい男が何をじゃれ合ってやがんだ、暑苦しい」
そんなモースとラルゴの背後から刺々しい声がかかる。声の主は紅い髪を靡かせながらずかずかと二人の下まで歩み寄ってくると、相も変らぬ不機嫌そうな表情でモースを睨みつける。
「人を呼びつけておいて待たせやがって」
「ああ、すみませんアッシュ。急いで向かってはいたのですが」
「なんだ、用事とはアッシュと会うことだったのか」
「そういうことだ。だからさっさとモースを解放しろ、ラルゴ」
「おお、怖い怖い。なら俺はもう行くとするか」
アッシュの睨みにも怯んだ様子は無く、ラルゴはそう言うと笑いながら歩き去っていった。それを見送ってから、私とアッシュは並んで歩きだす。
「ヴァンの動きが怪しくなってきやがった」
「ということは、そろそろ動き出すということですか」
モースとアッシュは互いに視線を前に向けたまま、声を潜めて情報交換を行う。今のモースにとって、この世界で最も信頼していると言える人物こそアッシュであった。共にヴァンの計画を阻止する同志として、モースはアッシュに自身が知る情報をほぼ全て話していた。
「お前の情報が確かならレプリカはタタル渓谷に飛ばされるんだな?」
「その筈です。あなたはタルタロス襲撃に参加し、その後カイツールでヴァンと合流する直前のルーク達と出会うでしょう」
「チッ、さっさとあの出来損ないを始末してやりたいが、お前の話が確かなら奴を殺せば俺も一蓮托生ってわけか。忌々しい」
アッシュは苦虫を噛み潰したような表情で呟く。モースはそれを小声でまあまあと宥めながら歩みを進める。
「まあいい。ヴァンの野郎が何をしようとしてるのかが分かってるってのは大きなアドバンテージだ。定期的に連絡を送る、見逃すなよ」
「ええ、頼りにしています」
モースとアッシュ。六神将とカンタビレの副官という異色の組み合わせの二人が共闘するこの世界がどのような道筋を辿るのか。それはローレライすら知る由もない。
武官ルートモース様と本編モース様の人間関係変化一覧
武官ルート 本編ルート
アッシュ 良好 普通~やや悪
シンク 悪 良好
ラルゴ 良好 悪
ディスト 悪 良好
アリエッタ 良好 良好
リグレット 良好 悪
カンタビレ 良好 良好
アニス 良好 良好
ティア 良好 良好
ヴァン 悪 良好(?)
イオン 普通 良好
【悲報?】ヴァン、右腕をモースに奪われる【朗報?】
なおモース様の戦闘力は本編から強化されたものの各国への影響力が無くなってしまったため本編よりハードモードになる模様。
ただこのルートではモースとアッシュが最初から手を結んでおり、アッシュが冷静になる分ルークとの和解ルートが発生する可能性有
基本的にモース様がルークパーティに合流してバリバリ戦闘をこなします。