本作はオリ主とfateのエリザベートとのイチャラブ短編です。原作とのイメージなど大丈夫な方は、よければ(^o^)/
一応表紙も
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僕は足早に帰り道を歩いていた。
デザイナーの仕事が終わった後、駅から降りて私服姿で家へと。……ちょっとだけ焦った気持ちで。
(今日は少し残業があって、帰りが遅くなったから。早く家に帰らないと)
とにかく早く帰りたいんだ。だって家には僕を待っている、大切な人がいるから。
――――
「――ただいま」
「おかえりなさい、子イヌ!!」
僕の住んでいるアパートの一室。玄関を開けた途端に、いきなり待っていたかのように抱きついて来た――僕の一番、大切な人。
「もう、アタシを待たせるだなんていい度胸ね。……心配してたんだから」
玄関で出迎えてくれたのは、ひらひらとしたピンクのエプロンを付けたロングの深紅色の髪をした女の子。背丈は普通くらいの僕よりも小柄。でも……数年前に初めて出会った時と比べれば5、6センチくらい伸びて、顔つきも少女からほんの少しだけど、大人びた感じに――成長していた。
「ごめん、エリザ。20分くらい残業で遅くなってしまって。でも僕は――」
「言わなくても分かってるんだから、それくらい」
そう言うと彼女は、上着の襟を軽く引いて僕の顔を自分の元に寄せると。
「――んっ」
強く熱い口づけ、いつものスキンシップよりも気持ちが強く伝わる感じ。僕は驚いてどきっとする。……でも、とても良い気持ちだ。エリザは唇を離すと、ニッコリと満面の笑顔を見せてこう言ってくれた。
「アタシが一番だって当然じゃない! だって小イヌ……ううん、タケルは私にとっても大切な旦那様、元マスターなんだから!」
――――
この僕――竜禅寺タケルは、今こうして普通の暮らしをしてはいるけど、実はほんの少しだけ魔術師の家系の血を引いてもいる。
最も直系なんかじゃない、一族ともあまり繋がりもなかったけれど一応は魔術師としての才能は一般人よりもあったんだろうな、それなりに魔術だって使えもしたし。
……だから六年前、僕は『聖杯戦争』と呼ばれる魔術師同士の戦いに参加する事になった。
聖杯によって選ばれた七人の魔術師が、高次元に存在する座に登録された、かつて歴史上に存在していた英雄の魂の情報を呼び出して形にした使い魔――サーヴァントを使役して戦いを行い、それに勝利した者が聖杯に願いを叶える事が出来ると言う。……僕が経験した聖杯戦争はまさにそれだった。
「――今日もお仕事お疲れ様ね。疲れていると思って、腕によりをかけて晩御飯を用意したのよ」
にこにことしながら、エリザはキッチンに案内するとテーブル前に僕を座らせて、自分は台所へと。
「待ってて、今夕食を持って来るから。……あれからまた一から料理を覚え直して、美味しい料理が作れるように頑張ったんだから。
サーヴァントだった時と違って、ね」
台所から聞こえるエリザの声、僕はある事を思い出して、可笑しそうに笑う。
「あはは。聖杯戦争の時に初めてエリザの料理、あの赤いシチューを食べた時は……本当に凄かったな。もちろんエリザの愛情が込もっていて嬉しかったよ。けれど、一口食べた瞬間に意識が飛んじゃって、数時間気を失ったっけな」
「思い出すと……自分でも恥ずかしいわ。まさかあんなに口に合わなかっただなんて思わなかったから」
「平気だよ、それくらい。料理の味よりも、ぶっ倒れた事よりも、君がそこまで僕を想ってくれた事があの時は嬉しかったから。エリザベート・バートリー、恐ろしい英霊だって知ってはいても、君は本当はどんな子なのか……優しくて良い所もあるって分かったし」
そう言う僕に、エリザは少し離れた場所から顔を向けて、優しく微笑んでくれたんだ。
僕の妻になった、エリザ。彼女は元々、六年前の聖杯戦争で僕が召喚したサーヴァント、エリザベート・バートリーと言う名の英霊だ。
エリザはの微笑みは嬉しそうだけれど……けれど少し寂しそうでもあって。
「タケルの想いは嬉しいわ。……けれど、アタシの本質は変わらないって言うのは、自分で分かるから。だって自分がやった事、若くいたいがために何百人の少女を残虐に殺して、その生き血を浴び続けた――怪物だって」
「それは……」
エリザの元になったエリザベート・バートリー。彼女は中世の時代、バートリー家と言う広い領地と領民を持つ貴族の名家の美しい娘だった。
貴族として何不自由なく過ごして、それが当然の権利だと、他の人間よりも上の存在で――いや、そもそも人間と見なそうともせずに、自分は何をしても許させると当たり前のように信じていた。そして彼女の美貌も。周りからも無条件で愛され、本人も自らの美しさを誇りにしていた。
……けれど、やがて歳を取り、自分の美貌が失われつつあるのを感じたエリザベートはそれを恐れ、若さを保つためにあらゆる手段に手を出した。
様々な美容法は勿論、怪しげな魔術にまで頼り出しその果てに――若く汚れない少女の血が若さを保たせてくれると信じるようになった。自らのために他者を犠牲にしてその血を浴びる、残虐非道な真似ではあるけれど貴族としての自分の特別さ、そして人を人ともみなさない彼女の在り方、本人さえ気にも留めも反省もしなかった。……だからこそ。
自らの若さのために何百人の少女を殺害し、血を浴び続けた。やがてその悪行が明らかになり、化け物として一人孤独に幽閉されて、生涯を終えた。
「アタシはそんな人間のサーヴァント。人間を人間としても見られず、何が悪い事なのかも分かりもしない。――根っこからの怪物なの。それがアタシ、エリザベート・バートリーなんだから」
そう話をして、エリザは台所から夕食を持って来てくれた。彼女の態度はあれから切り替わって、朗らかな表情を僕へと向けてくれた。
「……あはは、ごめんねタケル。何だか暗い話をしちゃったわね。それより夕ご飯を一緒に食べましょう。今日はアタシの得意料理、シチューよ!」
僕の前にはエリザが作ってくれた料理、真っ赤な色をしたシチューだった。
「あはは。そう言えばシチュー、エリザは得意だったよね」
「うんうん! それに料理だって上達したって言ったでしよ?あれからまた美味しくなるようにって……見た目は変らないかもだけど、味はお楽しみ……ってね!」
――最初食べた時は倒れてしまう程の凄い味だったけど、今は。
僕はスプーンでシチューをすくって一口、口に入れる。
「味は……どう?」
期待の眼差しを向ける、僕のエリザ。そんな彼女に僕は微笑んで答えて――。
「もちろん美味しい。前よりもずっと、美味しくなってるよ」
するとエリザはとても嬉しそうな表情を見せると。
「そうかしら――嬉しい! タケルが言ってくれるなら、今度はもっと美味しく作りたいわ」
喜んで、満面の可愛い笑みを浮かべてくれるエリザ。
――本当はまだ凄い味だけど、前よりはずっと、食べても大丈夫なくらいには良くなっている。それに味よりもやっぱりエリザの愛情があるから。何よりそれが、一番で。
――――
夕食が済んだ僕達は、リビングでゆっくりとくつろいでいる。ふかふかのソファーに座って、借りて来た映画のDVDを見て……ゆったり。
「ふふっ、こうして過ごす時間……大好き」
エリザはソファーに座る僕の太ももを枕代わりにして寝そべっている。
「映画、ほとんど見ていないけど良いのか? 今日借りて来たのはエリザが好きだって言ってたアクション物のシリーズなのに」
「へーき、へーき! 映画はちゃんと横目で見てるから。今はそれよりも、こうしてタケルの事も見たいの。買って来てくれたキャラメル味のポップコーンも美味しいし。甘いスイーツ――食後のデザートにも最高ね!」
「エリザは甘いお菓子が好きだって分かってたから。喜んでくれて何よりだけど、喉を詰まらせないように気をつけてよ」
でも、美味しそうにポップコーンを食べているエリザ――僕の妻はとても可愛くて、自分自身、見惚れてもいた。彼女はそれに気づいたのか、赤面して視線を少しそらす。
「……タケルだって映画よりもアタシの事を見てるじゃない」
「僕も同じだよ。今はエリザ、君の事を見てたいから。それに――こんな事もしてみたいって」
僕は言うと、寝そべっていたエリザにそっと顔を近づけて……また口づけを交わした。交わす唇と唇。ふわりと柔らかい感覚。さっきはエリザからされたからお返しだ。
それに今回はキャラメル味のポップコーンを食べたせいか、エリザの唇はキャラメルの甘さと、塩のしょっぱい味がする口づけだ。エリザは一瞬びっくりした顔をした。けれど――。
「ふふん!」
すぐに当然と言わんとばかりにきらきらした瞳を見せると、彼女は左手を僕の首に絡ませて更にぐっと近づけて、もっと深い口づけを。
「――!!」
あまりに強く深いキスに今度は僕がドキッと驚いて、なすがままにされてしまう。深くて、熱い口づけ。やがて唇同士を離したエリザは僕にニッと笑いかける。
「アタシを出し抜こうだなんて数世紀早いわよ。それに、ね。ワタシだってタケルの事をずっと、一番に愛してもいるんだから!」
「ふふっ、エリザには敵わないな」
僕の言葉に当然と言ったように、勝気な表情を見せる彼女。そして……心底満ち足りているかのような感じで。
「本当に何気ない毎日だけど。たったそれだけでアタシは今満足している。生前みたいに豪勢な暮らしをして何もかも思い通りに、ずっと若いままでいたいだとかも……どうでもいいくらいに。頭痛だって今は全然大丈夫だし。
アハハ、ちょっとおかしいわね」
こんな風にしている彼女に、僕もつられて表情が緩む。
「僕だって同じだよ。――だって、本当なら僕はこうして、生きている事さえなかったから」
――――
聖杯戦争に参加した六年前。僕は不治の病にかかって……余命も僅かだったんだ。自分に残された時間さえ無くて、そんな中で聖杯戦争の参加権を手にした。
自らの願いを叶える聖杯をかけて七人の魔術師が英霊を召喚して使役し、マスターとサーヴァントとしてただ一組の勝利者を決める戦い。僕もその一人として、自分のサーヴァントを召喚した。彼女こそ――。
『貴方がワタシのマスターかしら? ずいぶんみすぼらしい……小イヌじゃない』
初めて彼女と会った時の事は忘れない。
血のように深紅の髪に、澄んでいるけれど冷たい水色の瞳の……小柄で美しくて、それに冷酷残忍な雰囲気を漂わせる十四才くらいの少女。ひらひらとした可愛いドレスを纏っているけれど、まるで竜のような、禍々しい二本の角と尻尾を生やした怪物を思わせる姿をした彼女こそ僕が召喚したサーヴァント。クラスはランサー……真名、エリザベート・バートリーだったんだ。
ある程度の歴史の知識はあった。だから彼女がどれ程に、恐ろしい英霊なのかも分かっていたし事実、実際に対峙してみて雰囲気で理解した。人間とは違う異質で恐ろしい存在だと、だけど……。
――分かっていても、美しいと思ってしまった。僕は彼女に一目惚れした……運命を感じたから。
それから僕はマスターとして、サーヴァント・エリザベートとともに聖杯戦争の日々を駆け抜けた。他のマスターとサーヴァントとの戦いはもちろん、エリザベートと過ごす日常の日々。そんな中で僕達は互いの事をもっと知って、心も惹かれ合った。
確かにエリザベート・バートリーは過去に多くの人間を自分の欲望のために惨殺して来た怪物とも言える存在だった。けれど一緒に過ごすうちに彼女が普通の女の子である事が、少し心が弱い所があって、恋を夢見る乙女だって。それに彼女の残虐性、狂気も、思うよりも少なく本人も抑えられるくらいでもあった。……本人の話では以前、何処かでサーヴァントとして召喚されたのがきっかけで変わる事が出来たらしいんだ。
エリザベートも、僕の事を認めて好意を抱いてくれたから。マスターとしてはもちろん、一人の人間として。互いに両想いで……紆余曲折あって絆も深まった。
これからも、聖杯戦争が終わってからも共に過ごしたいと思った。だからこそ――
僕達は手ごわいマスターとサーヴァントを相手にして、倒してそして……聖杯戦争の勝利者になった。僕は元からの願いでもあった自分の病の完治を、そしてエリザベートは人間になること――サーヴァントとしての仮初の身体ではなく生身の、人間としての身体へと『受肉』する事を望んだ。
聖杯戦争に勝利した僕達。それからは晴れて普通の人間として僕とエリザベート、いや、『エリザ』と言う名前で生活を送った。
サーヴァントの時にはあった目立つ角と尻尾はなくなって、人間と同じように年をとって大人へと。それから僕達は結婚して……夫婦になったんだ。
「……うーん」
一足先にシャワーを浴びた僕は、自分で淹れたココアを口にしながら、窓から外の夜景を一人眺めている。
――今はエリザがシャワーを浴びているから。そろそろ上がってくる頃だと思うけど。
ようは彼女のシャワーの終わりを待っているわけだ、僕は。二人で暮らしているこのアパートの部屋はそれなりに良くて、ここからだと街景色や夜空がよく見える。
――それに今夜は晴れているから星だって見えるし。良い夜だ。
そんな風に僕がゆっくり暇をつぶしていると、横からふいにふわふわな感触がした。
「景色、そんなにいいの?」
「……およ」
振り返るとそこには風呂から上がったばかりのエリザが、寝間着姿で僕のすぐ右隣にやって来ていた。
彼女のもふもふしたピンク色の寝間着が密着する感触と、それに風呂上りから間もないからか彼女自慢の赤髪はしっとり濡れて、湯気が立っているのも見える。それに石鹸とシャンプーの良い匂いも。
「タケルってば、美味しそうなココアも飲んでるじゃない。アタシにも飲ませなさいよ!」
「あっと」
そう言うやいなや、エリザは僕の手元からココアをすっと取ると、そのまま口につけた。
「やっぱりココアは甘くなきゃ。……ねっ!」
せっかく自分で飲む用に用意したのに取られてしまった。けど、あんな良い顔をしている彼女が見れたからよしとするかな。
「ありがとう、タケル」
「うん? どうかした?」
ふいに話を振って来たエリザ。僕は気になっていると彼女は微笑みかけて。
「アタシに恋してくれた事よ。愛してくれて……素敵なお嫁さんにしてくれて、ありがとう。今更、言う事かもだけど――夢だったもの」
エリザはきらきらした瞳で、こう続ける。
「誰かと運命的な恋がしたいって、愛される事を夢見てたの。生きている間には出来なかったから。それに――」
「……」
「それに言ったでしょ? アタシはやっぱり怪物だって。どこか壊れている。善悪の判断がまともに出来もしないし、ろくに人を人としても見れなくて狂っているから」
「……エリザ」
「なのにタケルはアタシのそんな所を分かった上で、ただサーヴァントとしてだけじゃなくて、もっと大事な人として見てくれたじゃない」
そう言ってエリザは僕の隣にぴたりと寄り添う。
「本当に、嬉しいの。……だから」
彼女が僕に向ける水色の瞳。まっすぐ見つめて、エリアの伝えた事は。
「これからだってずっと、一生傍にいてくれる? こんな怪物だけど……それでも」
ほんの少しだけ不安な問いかけ。でも、答えなんて当たり前だ。僕はそっと右腕で抱きよせて、ただ彼女だけを見つめてこたえる。
「当たり前だよ。エリザが何だとしても僕はずっと傍にいるし、想いだってこの先変わりはしない。例え怪物でも全然大したことなんかじゃない、分からない事くらい……何がいけない事かくらいこれからだって教えるし、僕も一緒に考えるから。だからそんなの気にしないで、さ」
「……タケルってば」
「ああ、答えは決まっている。昔から、聖杯戦争で共にした頃から決まっているとも。
エリザ、僕は君の事が大好きだ。もちろん傍にいるさ。――傍にいたい」
これが僕の想い。同時に聖杯戦争で勝ち抜いて、手に入れた幸せでもある。
僕の答え、エリザは凄く幸せそうに笑顔でぎゅっと強く抱きしめ返してくれた。とびきりな笑顔で、それに少し涙目な瞳で……僕に。
「とっても嬉しいわ! さすが小イヌ! アタシの自慢のマスターね」
「マスター、か。そう呼ばれるのは久しぶりさ。とっても懐かしくて変な感じ、でも……悪くない、とても」
こそばゆく感じて僕は、照れてしまうんだ。エリザは僕のそんな顔を見てにこりとしながら続けてくれる。
「マスターとサーヴァント、今は素敵な旦那さまとその奥さん。アタシはとても満ち足りている、タケルが……アタシの傍にいてくれるだけで」
当たり前の日常、大切な人が傍にいる事。僕も彼女と同じ想いだから。
「僕だって、これから先も傍にいたい。いいかな?」
「もちろんじゃない! ずっと若くいられなくても、タケルとなら年をとっても全然平気だから。
だから――これからも、アタシと!」
これが僕達二人の戦いの果て、手にした願いと幸せだから。
彼女がそう言って差し伸べた手、薬指には結婚式を挙げた時に贈った赤いルビーの婚約指輪。差し伸べた手の意味はもちろん分かる。僕はその手を……同じくルビーの婚約指輪をはめた自分の手で繋いだ。
「ああ。僕は君の傍にいる、もっと、これから幸せな家庭を作りもしたいんだ。だから何度だって言う。……愛している、誰よりもエリザの事を。年をとってシワだらけになったとしても、僕の気持ちはずっと変わらない。
怪物じゃない、君は僕にとって――かけがえのないヒトだからさ」
今の彼女は、生前のように人を傷つける事はしない。きっと、これからは互いに幸せになれるはずだから。
――これで良かったんだって。いいよね、エリザ。
傍にいるエリザは僕のそんな思いに気づいたのか、頷いたように見えた。
本当に綺麗な彼女の笑顔、これからだって僕は誰より傍でエリザと……その笑顔と、共にいたい。