忍びと灰と焚べる者と狩人とダンジョン   作:noanothermoom

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忍又は狼編

 おや、それでも物語を聞くのかい

 

 なら語ろうじゃないか

 

 決して他所では知ることのできない物語

 

 隻腕の狼とその主について

 

 

 小さな家いや、もはやあばら家...廃墟とすら呼んでいいそこに一人の少年がいた。

 身なりも良くその顔立ちはともすれば少女と見間違えられる程の美しさ...そんな周囲の様子から浮かんでいる、一目見れば訳ありとわかる彼は酷く落ち着かない様子で壊れかけた扉の方を見つめていた。

 先程から時折吹く風によって軋み、いつあばら家があばら家だったものに変わっても不思議ではない。だがそんなことが少年の心を乱していたのではない。

 

 「よくぞ無事に戻ってきた、狼よ」

 「九郎様」

 

 ふと少年は口元をほころばせ何もないところに向かって声をかける 

 その言葉に答えたのは何もないはずのところにいつの間か片膝をついていた柿渋色の衣を纏ったいかめしい顔の男だった。

 主である九郎よって呼ばれるその名はかつての義父によってつけられたものだ

 男に名はない戦乱の世に生れ落ち、その闇の中に生きた〈忍び〉であるが故に。

 

 「それで、どうじゃった」

 「は、葦名では、いえ日ノ本でもないかと」

 

 九郎は好奇とも怯えとも取れる声音で聞き

 狼は低い声で答える。

 

 彼ら(九郎と狼)はその身に宿す力故に故郷である葦名より逃げ出した身である。

 いやこの表現は正しくない、かつて狼は九郎の身に宿る力〈竜胤〉を失わせただの人へと戻した...その身命を生贄として

 

 

 

 

 

 かつて九郎は《竜胤の御子》と呼ばれていた

 竜胤を持つ九郎は自身と契約した者に回生の力を与えることができた

 回生の力は不死の力、例え死のうとも蘇ることが出来る

 だが死した者が黄泉から還ってくる、そんな奇跡は代償なく起きない

 回生の力を持つものが蘇る度に周囲の者の命を吸う

 蘇る度に周囲の人物が命を落とすわけではない

 だが命を吸われ続ければ特徴的な咳を伴なう病...竜咳にかかる

 そしてじわりじわりと体が弱り命を落とす

 

 時は戦国、葦名もまた戦乱の波に飲まれていた

 狼は他国の者が竜胤の力を求め起こした争いの中致命傷を受け

 そんな狼を九郎は見捨てることが出来ず契約を結び回生の力によって命を長らえさせた

 しかし他国との戦いにおいて葦名は押され続け

 故に葦名を治める者は竜胤の力をもって葦名を守ろうとした

 九郎はそれを拒み、狼もまた竜胤の力を断つという九郎の願いのために動いた

 

 竜胤の力を持つものは通常の武器では傷をつけることすら叶わない

 故に不死斬りと呼ばれる超常の太刀を求め

 その最中に狼は人帰りと呼ばれる儀式を知る

 赤の不死斬り、いくつかの超常の素材、

 そして回生の力を与えられたものの命

 これらを使い竜胤の御子をただの人へと返すことが出来る

 

 狼は葦名に渦巻く人の陰謀、欲望

 それらを搔い潜りながら素材をそろえ

 その命を犠牲に人帰りの儀式を行ったのだ

 

 

 

 

 

 

 だが気が付けば狼はこの地に立っていた...或いはここは死後の地、僧侶の説くところの地獄かそうでなければ己のゆく道など修羅道であろうかとも考えていたのだが、

 そんな思考はすぐそばで気を失い倒れていた九郎を見つけると同時に掻き消えた、とにかく人の目のない所へとこのあばら家へと連れてきたのだ。

 

 気が付いた九郎に狼は何があったのかを尋ねた、だが九郎もまた何が起きたのかわからなかった。九郎の最後の記憶は人へと戻り葦名の地を去ったところで途切れていたのだ。

 解らないことだらけの二人だったが間違いなく今の状況はおかしい、それは解った。狼が生きていることは狼に与えられた回生の力によるものと考えられなくもないが、

 そもそも竜胤を九郎の体から失わせるために狼は己ごと契約を斬り故に九郎はただの人へと戻ったその筈だ。ならば狼もまた死なずの身からただの人へと戻るが道理

 

 

 死したはずの狼が生きている、失われたはずの力が戻っている、断ち切られた契約がつながっている、いやそもそもここはどこだ、葦名にこんな場所はなかったはず、そんな思いつく限りの疑問を互いに(正確には九郎が)口にしていたが神でも仏でも無い身答えが出ることもなく。

 

 只こうしているわけにもいかないと周囲の様子を探りに狼が出かけたのだが、そこで狼を待ち受けていたものは想像することすらなかったものばかり、

 見たこともない様式の建物が並ぶ街並み、その中で行き来する凡そ葦名いや日ノ本では見ることができないだろう異形の者ら(小人、獣人、エルフ、ドワーフら)、更には街並みの中心に位置するどこまで伸びるのか見上げることすらできない塔。

 

 

 「どういうことなのじゃ…」

 それら己が目で見たものを九郎へと伝えるとそうつぶやきそれらを目にした時の狼と同じように固まってしまった。

 

 頭を抱えるようにして動かなくなった主を見ながら狼は再び決意を決める。

 ここがどこで、なぜここにいるのか、解らないことはあまりにも多いだが

 再び会えた己が主を守るなすべきことはそれでよい、そう忍びは思う。

 

 

 

 

 

こうして隻腕の狼とその主はこの街に降り立った

 

数多の超常がはびこるオラリオですらなお超常の力を携えて

 

だが何があろうとも狼はその主を守るだろう

 

それこそが忍びが己に課した掟なのだから

 

 

 

 

 




お疲れさまでした

忍又は狼編これにて終了です
以下は筆者の一人語り...後書きです
興味のない方は飛ばしていただいて構いません

他のキャラクターと違って狼達は現状が解らないままオラリオの住民と関わろうとする姿が見えなかったので二人だけのお話です
なんというか狼は他のフロムゲーの主人公より真面目な気がします
対人要素がないからですかね?
修羅エンドもほかの主人公なら修羅に落ちてからがスタートみたいなところがあると思うのに
父親殺したぜー俺修羅ぜーみたいな変にまじめすぎるように感じます
そんなまじめな狼は九郎様を不用意に人目につかせる想像ができませんでした
実はこの話を書き始めたときに一番最初に書いた章なので拙さ満点長さはそれほどです
書いていて一番きつかったのは九郎様のしゃべり方だったり
よくわからなくて結局のじゃ口調のショタになってしまった。

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