忍びと灰と焚べる者と狩人とダンジョン 作:noanothermoom
おや、また聞きに来たのかい
ならまた語るとしよう
今度は火のない灰についてね
「なにさヘファイストスのやつ」
そう文句をたれながらオラリオの道を行くツインテールの少女、その人とは思えない美しさと神威から分かるように彼女は人ではない。
天界から娯楽と未知を求め降りてきた神(超越存在)の一柱、名前をヘスティアという。
本来天界より降りてきた神は神の恩恵(ファルナ)を人に与え眷族とし、人はそのお返しに様々な供物を献上する、そうした関係性で結ばれた神と眷族による集団(ファミリア)を創るのだがヘスティアは自身の眷族もファミリアも創っていない。
天界においては万能の力を振るう神であるが、地上に降りてきた時より神の力(アルカナム)の使用は禁じられ眷族からの貢ぎ物で生活するそれがルールだ。
ではファミリアも眷族もないヘスティアはどうしているのかというと、天界にいるころからの知り合いであるヘファイストスのファミリアに居候してた。
働きもせずごろごろしていたヘスティアは当然ヘファイストスに怒られその怒りが静まるまで、逃げ出す前に確保したお酒と一緒にオラリオをぶらぶらしているのだ。
文句を言いながらもヘスティアはヘファイストスがなぜイライラしていたのか想像はついていた。最近オラリオを騒がせている闇派閥が原因だ。
神は娯楽と未知を求め地上へと降りてくるそういった神の中には他者の迷惑など顧みないろくでなしと呼ばれるような神も多い(むしろ程度の差はあれどほぼすべての神がそうであるといえる) そんなろくでなしの中でも秩序を壊そうとする邪神と呼ばれる神がいる、その神のファミリアこそが闇派閥だ。
ダンジョン内にて悪意を持ってほかの冒険者に対して敵対する者だけでなくオラリオで商売をする商人などにもその手は伸び、そういった行為を取り締まるギルドの中にさえ闇派閥は存在するといわれている。ダンジョンの中は危険でありいくらファルナを受けた眷族といえど無事に戻ってくるとは限らない、そんなダンジョンに悪意を持ちほかの冒険者に敵対する者がいればその危険性は計り知れない。
自分の子ども(眷族)を心配しているときにだらだらと過ごしているヘスティアの姿が目に入り怒りが爆発したのだろうと予想し、もし自分に眷族がいてそんな危険なところに行かなければならないと思えばヘファイストスの怒りももっともだとヘスティアは思う。
だが怒られたという事実に八つ当たりみたいなものじゃないかと文句を言いながら
早く怒りが収まらないかとオラリオをお酒を飲みながらぶらぶらしていく。
ヘスティアがとある広場を歩いていると細い小道に全身に鎧を纏った人物が倒れていることに気が付いた。
「大丈夫かい、何かあったのかい」
一瞬飲み過ぎたかとも思ったが目をつぶろうが擦ろうが消えぬ姿に本当に倒れた人がいるのだと悟り軽くゆすりながら声をかけるヘスティア。
闇派閥が存在するにもかかわらず人気の少ない小道に入って見知らぬ人物に声をかける、あまりにも危機感がないといえるが
同時にヘスティアという神の他者を捨て置けない善性の表れでもあった。
「う…ん?」 「ここは…?」
「気が付いたのかい」
鎧の人物がかすかに呻きそうつぶやくのを見てヘスティアは意識が戻ったことに胸をなでおろす。
「ここは広場から少し入った小道だよ、なんだってこんな所で倒れてたんだい」
「広場…?小道?そんなことよりはじまりの火は...いや世界は?」
「始まりの火?...大丈夫かい?自分の名前はいえるかい?、ああ僕はヘスティア竈の女神さ」
なぜこんな場所に倒れていたのか聞くが帰ってくるのはあいまいな困惑の声ばかり
その中に詰っていた言葉に神として気になるものが混じっていたが
とりあえず鎧の人物に名前を聞きながら自己紹介をする。
「竈の女神?...は、はは!」
「ハッハッハッ!終わったはずの自分を揺り起こしたのが竈の女神とはどういうことだ?これがダークソウルの加護とでも言うのかッ!!」
それまで困惑した様子の鎧の人物が急に笑い出す。
思わずヘスティアが距離をとるがそれにも構わずに笑いながら叫び続ける
「ああ済まない女神殿、あなたが私を助けてくれたのだろう?」
「ああ...うんまあ人...じゃない女神として当然のことをしたまでさ」
「なんと慈悲深いのか、...名乗り遅れました私は......そうですね“灰”とでも呼んでください」
ひとしきり感情を爆発させ終えた鎧の人物は周囲を見渡し
その気迫に圧倒されて逃げることすらできなかったヘスティアを見つけると近づく。
ヘスティアとしては元気なのは十分わかったからさようなら...と行きたいのだが先ほど名乗っただけであれだけの狂乱を見せたのだ。
下手に何か言えばどうなるか...逃げるにしても正直この人物に背後を見せれば何をされるか分かったものじゃない...
下界の存在が神を手にかけるのは禁忌だがそんなことは関係ないだろうと
先ほどの様子からそう確信したヘスティアはとりあえず当たり障りのない返事をする。
そのヘスティアの返事に感動したように深々とお辞儀をする灰。
「君住むところはあるのかい?」
「いえ正直に言えばこの町...オラリオでしたかここにもいつの間にいたのかも分からない有様でして」
そうしてひどく敬われて話しているうちにお酒の力もありヘスティアは気が強くなり様々なことを尋ねていた
そしてこれからの生活について尋ねられて困った様子の灰に
「なら僕に住む場所の当てがあるんだついておいでよ、ああ遠慮しなくていいよ僕にも得のある話なんだ」
ヘスティアは言いながらぶらぶらと歩いてきた道を駆けていく。
「困っている子ども(人間)一人救えないようじゃ女神の名折れだ」
そう考えながら。
当然ながらこの危険な時に一人で出歩いたこと、素性の知れない怪しい人物を助けたこと、そんな人物を勝手にファミリアのホームへ連れてきたことで
ヘスティアは酔いも消し飛ぶほどヘファイストスにしこたま怒られるのだがそれはまた別の話。
「こっちこっち、こっちだよ」
ツインテールを揺らしながら道を駆ける《竈の女神》を見失わないように追いかけながら灰は考える
始まりの火を消し火の時代を終わらせ自身もまた永遠の眠りについたはず、だがこのオラリオという聞いたこともない街で目が覚めた。
先ほどから目に映るすべてにロスリックに満ち溢れていた終わりは匂いすらなく、そこに住む者らからも亡者はおろか呪われた不死者の気配すらない。
ならば火の時代を終わらせいずれ生まれる新たな時代に望みを託すという計画は達成されたのだと確信する。
決して見る事が出来ないだろうと諦めていた平和な光景を見ながら、この光景を見せてもらった恩はどれだけ大きいものだろうか灰は考える。
幸い女神の方から
不死者もほかの灰もいない平和な世界だが灰のなすことは変わらない
ただ殺しあうそれだけだと。
かくして火のない灰は竈の女神とであった
皮肉なものだね或いはかの地にて神族がもっとしっかりと火を管理すれば...
いや意味のないことだね忘れておくれ
灰が変わらないように神もまた変わらないのだろうから
だがそのそばに善良なる神がいるなら安心できるだろう
お疲れさまでした
灰こと火のない灰編これにて終了です
以下は筆者の一人語り...後書きです
興味のない方は飛ばしていただいて結構です
火のない灰が竈の女神であるヘスティア様と出会う
多くのフロム×ダンまちを書いた人或いは想像した人の始まりじゃないですかね
事実筆者もその一人です
本文中にて灰さんかなり丁寧口調でしゃべってますが
ヘスティア様が灰相手にずっとパーフェクトコミュニケーションした結果です
構想という名の脳内妄想であるダンまち本編ではヘスティア様を雑に扱う灰が見られます
まあダクソ世界の住人にしては神であるというだけで雑に殺しにかからないだけかなり気に入ってますよね
コミュニケーション失敗していたらオラリオが灰になってたかも...
地味にオラリオの救世主のヘスティア様
そんなヘスティア様ですが本文中にお酒片手でぶらぶらしているのは
構想の段階ではヘファイストスのファミリアに用心棒として連れて行って
灰が高名な冒険者になる→ヘファイストスファミリアの地位が上がる→灰君を連れてきた僕の株も上がる
というヘスティアうはうは計画を立てていた名残です
書いていてあまりにも駄女神が過ぎたので酔っぱらっていたことにするためにお酒を持たせました
それでも駄女神だったのでいっそのことそのくだりをカットしてふわっとしたまま
ヘファイストスファミリアまで連れていくことにしました
でも結果としてヘスティア様の善性といまいち締まらないところを書けたので良かったと思います