「夢かよ!
朝からなんちゅう夢を見てんだ……縁起でもねぇ」
朝、静寂に包まれた自室の窓から小鳥(雀)の囀ずく鳴き声が聴こえ目を覚ました。
ベッドの上で上半身を起こし、今のが夢オチだった事を悟る。
低血圧気味のせいか頭がぼーっとする。
身体が少し痛むが寝ぼけて何処かにぶつけたりしたんだろう。
「夢オチか……」
いや、でもまあ。
そりゃあそうだな。
あんな光景、夢以外にありえない。
メカ少女だの、魔法少女だの、俺達が死ぬだのって。
「……」
一応念の為に、背中をゴソゴソ触ってみるが、もちろん傷なんてない。
あんな夢を見るなんて……ゲームのしすぎか?
「……しばらくゲーム時間減らすか」
銃ゲーしかほとんどやらないけど。
などと溜息をつきながら、新しい制服に着替えた俺は__
ムダに広い洋館の中を、2階の自室から1階のダイイングへと歩いていく。
昨日から住み始めたばかりだが、この館は中途半端に現代的な洋館だ。
静刃の話では、昔は海外から来た貿易業の貴賓客を泊める、隠れ家的なホテルとして使われていたらしい。
なので、裏には小さな教会、の、廃墟やプールなんかもある。
「迷った……どこだここ?」
朝っぱらから1階のダイイングに行くはずが来たこともない知らない部屋へと来てしまった。
無駄に広くて迷った。
「なんだかずいぶんと古い本や時計が置いてあるな……」
本棚にある本を手に取って中を開いてみると英文やイタリア語、ギリシャ語なんかで書かれている。
どうやら静刃達の前の住人だかホテルの物品だかがそのまま残されてるようだ。
「ん?
なんだこの本……光ってる⁉︎」
『それ』を見つけたのは本当に偶然だった。
古本が並ぶ本棚の端で赤い背表紙の古めかしい本が薄っすら緋色に光り輝いていた。
中を開いてみるとギリシャ語かなんかで書かれていた。
「読めねぇ……」
残念ながら解読不能だ。
本を棚に戻してると俺を探しに来たのか祈さんが来た。
「あ、あの……よかった。
こちらにいたんですね?
朝食の支度できてますからダイイングへ来てくだひゃ……はぅ⁉︎」
俺を案内しようとして部屋を出る寸前に盛大に前へ転けた。
ぱんちゅが丸見えだ。
「大丈夫か?」
ゴチッと床に頭を打ちつけたので心配になって声をかけると……。
祈は目に涙を浮かべながら起き上がった。
「ほら、痛いの、痛いのとんでけぇ〜」
つい子供をあやすような態度で頭を撫でたりして接してしまったが祈は嫌がるどころかむしろ嬉しそうな、けど恥ずかしいようなそんな顔で見つめてきた。
「よし、もう大丈夫だ!
ダイイングまで案内頼む」
顔を赤く染めた祈の案内で無事にダイイングまでたどり着けた。
案内を頼んだ時祈が小声で『なんだか懐かしい……』とか言ったが意味がわからなかったのでスルーした。
ダイイングへ入ると静刃がアツアツのハンバーグを食べていた。
朝からハンバーグって……しかも、ハートの形してるし。
「おはよう、朝から凄いな」
静刃が食べてるハンバーグを指していうと。
「ああ……まあな。毎朝のことだ。
それより
静刃が『何かを確認』するようなそんな様子で聞いてきた。
アレはただの夢だから気にする必要はない。
そう思い俺は静刃に問題なく寝れたと返した。
「お、おまひゃ……お待たせしました」
祈が俺の分の朝食が載ったトレーを持ってきてくれた。
トレーに載ってたのはアツアツのハートの形をしたハンバーグだった。
朝から、重いな……。
残さず食うけどさぁ。
「じゃあ、行ってくる」
「行ってきます」
玄関でしゃがみ、新しい学校指定の靴を履きヒモを整えてると__
ぱたぱたぱた、とスリッパを鳴らして祈がやってきた。
そして、きゅっ。静刃の目の前でしゃがんだ。
「お兄ちゃん、こ、これ……お弁当。祈が作ったの。た、食べて下さいっ」
とランチボックスを静刃に手渡した。
そして、ネクタイが緩んでる静刃に。
「あっ、ネ、ネクタイが緩んでるじゃってるよ」
などと言って、その白くて小さく綺麗な指で静刃のネクタイを整えはじめた。
「静刃、夜道に気をつけろよ?
背中を刺されるかもしれないぜ……俺に」
「なんでお前が刺すんだよ⁉︎」
ケッ、本当にこれだから天然ジゴロは……。
そんなことを考える俺を静刃は一瞥した後、ネクタイを直してる祈に向かって。
「い、いいって別に。俺は自分の見た目とか興味ないから。俺は何事も、大体でいいんだ」
なんていう事を言いやがった。
「やっぱ刺すか……」
イチャついた挙句に美少女の好意を無下にする男なんて刺されても仕方ないよな、な?
俺はカバンからカッターナイフ(護身用)を取り出し静刃の首につきつけた。
「待て! 早まるな」
静刃をからかい(脅し)つつ、身支度を整えていった。
「お兄ちゃん、もったいないよ。お兄ちゃんは、普段もかっこいいけど……ちゃんとすれば、すっごく、もっと、かっこいいんだよ」
まるで静刃の
「はあ……?」
「祈、知ってるよ。お兄ちゃんは本当は、何でも優秀な人なんだよ」
かなり静刃を尊敬(美化)してるな。
「___祈。俺は優等生のお前と違って、何の能もない人間なんだ。俺が優秀じゃないってことは学校の成績が教えてくれてる」
「___違うもん。
「
「右に同じ。
そもそも俺の
俺は、あらゆる物事において、必要最低限のこと以上は
凡人が本気を出して頑張っても、大した見返りはない。それが今の日本だ。
だから、自制しないといけない。
それがとっさのことでも、とっさの判断でも、ちょっとのことでも、衝動的に
そう。
夢、夢の、あの子……。
夢の中で、なぜか、本気で走ってしまったあの瞬間。
それを思い出した瞬間俺は、あの少女の事を思い浮かべてしまった。
____マリナーゼ。
夢に登場した美少女のことを。
「___『魔剱』、『魔弾』___?」
その時。
不意に祈が、おっとり顏を真面目にして、シリアスな声を出した。
「あっ」
俺や静刃と目が会うとすぐ、いつもの表情に戻した。
なんなんだ、いったい。
その後は、いつもの状態(?)に戻った祈が静刃の入学式に出たいと言って駄々を捏ね、静刃はそれを突き放して俺達は家を出た。
「入学式、か……」
私立・居鳳高。
地方都市横須賀・居鳳町のさらに外れにある私立学園。
初等部から高等部まであり、今まで女子校だったのを今年から共学化した。
周りは女子、女子、女子のオンパレード。
男子は俺や静刃を入れてあと2人しかいない。
で、その入学式に臨んだんだが。
どうやら俺はとんでもない過ちを犯していたらしい。
なぜなら。
俺の隣には……。
夢の中で出てきた、とんでもなく可愛い。
黒髪ツインテールの。
美少女。
_____『マリナーゼ』さんが座っているからだ。