やがて妖銃の弾輝《はじき》   作:トナカイさん

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異能6X【エックス】

私立・居鳳高。

 

俺がこの高校に入ったのは、高校受験に失敗したからだ。

中学までは普通の成績だったし、高校入試もきちんと受けた。

だけど、俺は本命、対抗、滑り止め、いずれの高校全てに落ちてしまったんだ。

あわや中学浪人か、と思われた俺に……担任教師が推薦入学の話を持ってきた。

俺の中学では俺みたいなケースに備えて、後から推薦入学で入れる提携高校があるという話だった。

で、その中から、俺にはここ、居鳳高が声をかけてくれたというわけだ。

中学の担任から渡された資料によると元お嬢様学校を今年から共学化した学校だと書いてあった。

正直、女子に近づきたくなかったが中学浪人するよりかはマシかと腹を括り入学を決意した……というのがこの高校に来た理由だ。

そんな俺は今、広い教会みたいな講堂で居鳳高の入学式に臨んでいる。

引越しでバタバタしてたから下見はしてなかったが、学園の環境は良さそうだった。

白塗りの校舎はキレイで、敷地内には緑も多い。

裏山には桜が満開に咲いてたし、広場には噴水まであった。

さすがは元お嬢様学校。施設の充実っぷりは凄まじい。

などと思いながら視線を前方へ向けると。

前の方で方陣状に着席している、セーラーブラウスとチェックスカートの女子達に視線がいってしまった。

_____ゾクリ。

前方の女子を見ていたら隣から(・・・)強烈な殺気が向けられてる。

担任っぽい教師に『男子はここにすわってね。あ、でも席一つ足りないからあの女の子が横に座るけど気にしないでね』などと言われたから、なんとなくそんな気はしていたが。……それにしても、やたら胸がデカイ女性だったな。

着席した最後列の長椅子には……俺と静刃と『あの少女』の他に、座る場所を間違えたらしい双子の美少女が座っている。

ふんわりウェーブした髪をツインテールに結った双子は、砂糖菓子みたいに愛おしい。

こんな可愛い子達が男子なわけないだろう。

仮に男子だとしても第三の性別『秀○』として受け入れられそうだ。

などと見てたら、双子も俺や静刃を見て……それから2人で顏を見合わせ、くすくす。笑ってる。

失礼な奴らだな。だが、可愛いから許す。

可愛いは正義。

ていうかこの双子もそうだけど、なぜかツインテールの子がやたらと多い。

流行ってんのかな、ツインテール?

元お嬢様学校だけあって可愛い子が多いな。

 

などと思っていたら。

 

 

「……そんなに刺されたいんですか?」

低いシリアスな声が聞こえてきた。

 

左隣に座る少女から。

隣に座る黒髪ツインテールの美少女がとびっきりの笑顔でそう声をかけてきた。

思わず身構える。

女子とほとんど会話なんかしたことないこともあって反射的に身構えたがその判断は間違えではなかった。

何故なら、その少女の手に、学校の入学式で(一般的に日本では)普通なら持ってるはずがないスプリングフィールドM1903小銃(ライフル銃)(M1905ナイフ銃剣使用)が握られていたからだ。

 

「ど〜なってるの⁉︎」

 

思わずそう呟いてしまった。

 

スプリングフィールドM1903小銃とは。

1903年にアメリカ軍に正式採用され、.30-03弾という弾丸重量14g、蛋形、銃口初速700m/sを出す銃弾(当時ですでに時代遅れとされた銃弾)を使用するスナイパーライフル銃。

現在でも競技用として使われたりもしている。

 

その銃を持ってるだけならまだいい。

本当はよくねぇけど(銃刀法違反だけど)

だけどなぜ銃口と銃剣をこちらに向けてるんでしょう?

ワ・タ・シ・タ・ダ・ノ・イ・ッ・パ・ン・ジ・ン・デ・ス・ヨ?

入学式が行われている講堂の中でまるで銀行強盗犯に銃を突きつけられている人質の心境で席を立ち一人バンザイしてる俺。

周りから白い目で見られてるよ。

見てんなら誰か助けて下さい。

そんな俺を脅びやかす元凶の少女は。

 

「手短な刃物がありませんでしたので……」

 

などと言ってきた。

手短な刃物があれば銃を持ってこないのかよ⁉︎

そもそも刺したり、撃つ前提で持ってくんなそんなもん。

ツッコミをいれたかったが銃を持つ相手にツッコミを入れる勇気はなかった。

 

「マリナーゼ、気持ちはモーレツにわかりますけど今は我慢してください。

あなたも席に座った方がいいですよ?」

 

前に座る少女(・・・・・・)からそんな言葉をかけられた。

右隣に座る静刃を見るとポカンとした顏をしている。

静刃はあり得ないものを見ているような目で少女を見ている。

 

 

この少女達は昨夜の夢に(・・・・・)出てきた奴らだ。

どうなってんだ?

予知夢か?

黒髪ツインテールの少女達は俺や静刃と目が合うとその頬を赤く染めた。そして、ぷいっ。視線を前に戻した。

助かった。

なんだったんだ。

ツインテールを赤いリボンで結った少女のおかげで窮地から脱したがどうも腑に落ちない。

彼女達の反応は俺や静刃とすでに何処かで出会っているかのようなそんな態度だった。

 

 

 

 

 

入学式が終わり席を立とうとすると左隣に座るマリナーゼとかいう少女が声をかけてきた。

 

「放課後まで話す時間がありませんので、後でこの番号に電話してください」

 

そう言って携帯の番号が書かれているメモを手渡してきた。

女子なのに、初めて会った奴にいきなり番号教えるとか不用心だなと思った俺は注意しようと少女の方を見たがすでに少女はいなくなっていた。

 

 

 

 

「おい、置いていくぞ!」

 

静刃がそう言ってきたので俺は気にすることをやめてメモを制服のポケットにしまい、所属するクラスに向かうことにした。

 

居鳳高のクラスは普通の学校と違い各クラスごとにニックネームみたいなものがついていた。

 

I組(ヤパンセ)II組(シャマン)III組(エスピカ)VI組(マッキ)V組(マッキーナ)というようにな。

で、俺や静刃が所属するはずのクラスを確認したのだが……。

 

「……」

 

「……」

 

静刃と共にもう一度、手元のプリントに目を通す。

X(エックス)

とクラス分けのプリントに書かれているのを再度確認する。

よし、現実逃避は終わりだ。置かれた状況を確認しよう!

他のクラスはピカピカの新校舎なのに対して俺らが所属するX組の校舎は築50年以上経つ木造・一部が煉瓦造りの、古い建物だった。

差別されてんのか、と思わず目を疑いたくなった。

静刃の奴は何かの手違いがあったんだろうと新校舎の方へ向かおうとして、廊下の角でまるでアニメや漫画の展開のように、死角から出てきた誰かとぶつかって押し倒していた。

 

「110番、と。

もしくは写メってネットに流すか……」

 

押し倒した相手は昨夜の、メカを身に纏った少女。(・・・・・・・・・・・・・・)確か、キリコとかいう奴だった。

 

「待て! これは誤解だ!」

 

誤解、ね……。

静刃の奴はまだ気づいてないのか(・・・・・・・・)

自分が少女の身体のある部分を鷲掴みしてることを。

 

「ラッキースケベは漫画の中だけだと思ってました……」

 

toラ○るの主人公みたいな奴だな。静刃は。

俺の言葉でようやく自分が少女の胸を鷲掴みしてることに気がついたのか慌てて手を離した静刃だが。

 

「ご……っ、ゴメン! 俺はその、別に何かするつもりじゃ……!」

 

そりゃそうだ。やましいことをする目的でワザと押し倒したんなら俺が刺してやる。

 

「なんだか、また殺気を感じるな……」

 

静刃がそう呟いたが俺はスルーしてやった。

 

「えーっと……俺、行ってもいいか……?」

 

静刃がそう言うと、こくり。うなずいた。倒れたまま。

静刃が後ずさると……。

キリコの下半身の光景が近くにいた俺にも飛び込んできた。

チェック柄をした居鳳高のスカートが、まるで花開いたように___大きくめくれ上がり、中身が丸見えになっていた。

一瞬白い下着に見えたのは、白い、スクール水着。

それを何故か制服の下に着ている。

キリコは、スカートを手では戻さずに、重力に戻るのを任せて立ち上がった。

そして、とこ、とこ。

歩いて、X組の教室へと入っていった。

 

「あらあら、ごめんなさいね。遅くなっちゃって」

 

キリコの様子をドア越しに覗いていると、担任らしき教師が、廊下の角から、ズルズルと重たそうな台車を引いてやってきた。

台車には包帯でグルグル巻きにされた棒のようなものと同じように包帯でグルグル巻きにされた物が載っており、それはかなりの重量物だったみたいだ。

先生が遅れたのもそのせいらしい。

キリコが教室の真ん中辺りに座っているので俺と静刃は彼女から少し離れた窓際の席に座った。

 

「うふふ。はい、はじめまして。私がX組担任の森セアラです。でも、森という苗字の先生は居鳳高に2人いますので、私は『セアラさん』、と呼ばれているんですよー」

 

にこやかに語る森先生、あらためセアラさんは……。

ゆったりとウェーブした長いプラチナブロンド髪の北欧人を思わせる白さで、そこに紅い唇が薔薇の花びらみつに煌めき、それでいて、穏やかで親しみの持てる日本人らしさもかね備えた顔つきをしている。

もの凄い美人で、背も高く、胸も規格外にデカい。

女が苦手な俺にとっては要注意人物だ。

 

「それでは出席を取りまーす。京菱キリコさーん」

 

「はい」

 

小学生を相手にするような感じで出席を取りはじめたセアラさん。

名前を呼ばれたメカ少女、キリコが返事をした。

次々と名前を呼ばれる生徒達。

といっても、欠席や早退で最初からいない生徒とかもいたけどな。

そして静刃の前に俺の名前が呼ばれた。

 

「では、次からはいよいよ待望の男子達。

当導弾輝くーん。

名は体を表すんですね。射撃を嗜まれてますし」

 

「しゃ……射撃? やったことないですよ。そんなの」

 

「えっ、だってこれ、さっきご親族の方が届けにいらしたんですが」

 

と、セアラさんが台車に載った重量物を指差す。

 

「親族……?」

 

誰だ?

 

「とってもかっこ良くて背の高い女性です。

X組の原田静刃くんと当導弾輝くんに、って」

 

不思議に思った俺と静刃は教壇の前にいき、台車に載った重量物を持ち上げると。

あれ? 軽いぞ。なんで台車なんて必要だったんだ?

 

「まあ、力持ちですね!」

 

先生は重量物を持ち上げた俺と棒のようなものを持った静刃を見て目を大きく見開いている。

昨日、祈にも言われたような気がするがセアラさんも虚弱体質なんじゃないか。

そんなことを思いながら、台車の上に載った重量物の包みを開けると、中からでてきたのは、黒い大型リボルバー拳銃だった。

昨日、俺の元に届けられたあの銃と同じだ。

気味が悪い。

そう思った俺はセアラさんに言った。

 

「「せ、先生。これは俺の物じゃありません。人違いです」」

 

中から日本刀が出てきた静刃とともにそう声を張り上げた。

 

「えっ。でも、ほら。お名前がありますよ」

 

そう言われて確認すると銃身にタグがヒモでつけられていてそこに『当導弾輝』と書かれている。

 

「い、いりません。こんなの。

違法なものだし」

 

「でもこれ、先生の物でもないですし……」

 

涙目で見つめられた。

くっ、ずるい。

女の涙は反則だ。

 

「じゃあ……わかりました。俺が捨てておきます」

 

結局、自分達で捨てることになった。

銃身を隠すように、セアラさんから貰った包帯でグルグル巻きにしていると、キリコが声をかけてきた。

 

「ナンセンス」

 

虚空を見つめたまま、俺と静刃に話しかけてきた。

 

「特別な人間は、凡人として生きようとしても世界がそれを許さない。静刃と弾輝もその一人」

 

なんだ。

何の話だ。

 

「……京菱キリコ。何か言いたいことがあるなら、せめてこっちを向いて言え」

 

静刃がちょっと切れぎみに言ったが、キリコはさっきと同じ姿勢で、ネジの切れたゼンマイ人形のように静止している。

 

「あわわわ、教室でケンカは駄目ですよ、駄目ですからねー?」

 

セアラさんの注意が聞こえ、この欠席者、早退者が多いHRはグダグダな流れで終了してしまった。

俺と静刃の手元に____この不気味な力を残して。

 

 

 

後になって知ることになる。

この居鳳高の中でも異質なX組で過ごすなかで。

新型の異能、未知の異能(・・・・・・・・・・)を集めた特殊なクラス。

居鳳のXは、異能のX。異能達の交差点。

通称育成不能なX(バッテン)組に入れられたのは、決まっていた運命(さだめ)だったということを。

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