処女作でもなければ一部の人は知っている…のかもしれない。
おそらくn番煎じ
「…なんだって?」
「……そうか。
いや、以前からそう言っていたから今更止める気は無いさ。」
「それに、私に声をかけた次の日にそう言った事は今でも覚えているよ。」
「…トレーナーとしてウマ娘の育成を行うのは簡単ではない。だが、だからこそ福利厚生や給料面についてもかなり優遇されているはずだ。
何故それを蹴る必要がある?」
「………そう、か。そこまで言うなら私に止める術は無さそうだな。」
「…だが、それならせめて、せめて3日後のレースには来てくれ。そのくらいのわがままくらい、大丈夫だろう?」
3日後
(…トレーナー君。いや、彼は来ていないだろう。
…来れるはずがない。ここから移動に一日はかかるだろうな。)
(……足が重い。視界も…狭く感じるな。
そうか、精神的なダメージか。)
(…バカにしていたが、認識を改める必要があるな…)
……各ウマ娘、ゲートに並びました。
今…スタートしました!
アグネスタキオンが少し出遅れたようで、他のウマ娘にリードを奪われる形での開始となりました。
さぁ第1コーナーを曲がり、
先頭は5番、グラスランナー
その横2番、アカキタカケル
少し後ろに1番、ゼンノー、
1番人気アグネスタキオンは最後尾、ここから巻き返せるか!
(これ…は…酷いな…
砂浜で走った時より…いや、濡れた服で走る時より…足が…重い。)
(彼は…こんな時、なんて言うだろうか。
…きっと、「諦めるな」、と言いそうだな。)
(…でも、もうダメかもしれない。
あの時…あの時もそうだ…
あぁ…せめて、せめて少しでも…)
(……もう、届かないか。
諦めてしまおう。このレースを落としても別のレースがある。そこで実験をすればいい。)
────────!!
(……でも、
ここで、つまづく訳には…いかない…!)
(あの時だって、そうじゃないか、
私は、私は私を証明して見せた…!)
(走れるのだと。この足は「光の速度で駆け抜け消える粒子」では無いと…!)
「…けて…」
「負けてたまるかぁぁぁぁぁ…!」
先頭が最終コーナーに差し掛かっ…ア、アグネスタキオン!ここに来て驚異的な追い上げを見せる!
だが先頭ははるか遠くだ!これは追いつけるか!?
(まだだ…まだ、行ける…!
あの日夢見たあの速度に…!
あの日感じたあの熱に…!!
いや、違う…)
(あの日の夢を超える熱を、
あの日の記憶を置き去りにする速度を…)
「今…ッ」
「ここで……!」
「っ、はァァァァァァァァッ!」
凄い、なんという追い上げでしょうか!
今まで見たことの無い速度で、先頭集団に追いついていきます!
まさに「超高速の粒子」!
さぁ、残り200!
逃げ切るかアカキタカケル!
未だ縋り付くグラスランナー!
追い上げていくアグネスタキオン!
今、今!ゴール!
1着は…──────
「…そう、か。
…そうか。」
(…目の前が、暗くなる。
あんな、あんな無理をするような走りをすれば当然か…
……少し…少し休もう。
きっと……きっと………トレーナー……君…が……)
「……は…っ!?
こ…こは…」
「…なんだ、やはり居たんじゃないか、トレーナー君。」
「……ありがとう。」
「あの時、私を励ましてくれたのも、あの走りを見せられたのも。あの不調すら、全て君のおかげだ。」
「…本当に、ありがとう。」