話数も少ない予定なので、終わり次第奈落2編に入っていきます。
結局昨日はおにぃが帰ってくることはなかった。あたしたちはみんなで急いで辺りを探し回ったけどおにぃは見つからなくて、迷惑を承知でご近所の人たちにも聞いてみたけど誰も知らないらしくて…行方不明になった。
もしかしたら朝になったら何食わぬ顔で帰ってくるんじゃないかと期待して待っていたけど、結局朝になっても帰ってこなくて…あたしたちはすぐに騎士団の詰所へ向かった。
必死に説明すれば騎士の人たちは神妙な顔で話を聞いてくれて、おにぃたちを探すために動いてくれた。王国の騎士の人たちはみんな凄い人たちだから、きっとすぐにおにぃを見つけてくれる。
そんで帰ってきたら家族みんなで頭引っぱたいて怒ってやるんだ!ごめんなさいって謝らせて!それで!……それで…
騎士の人たちが捜索に出てくれてから数日。改めて詰所に向かって話を聞いたらとんでもないことを言われた。
「……え?捜索の、打ち切り……?」
「あぁ…こちらでも君のお兄さんらしき人を探してみたんだがそれらしき人物は見つからなかった」
「そんな……あの!奈落って場所!あそこは調べたんですか!?おにぃたちはそこに行くって言ってたんです!!」
「行ってはみたが、あそこは結構前から封鎖されてる建物でね。鍵も掛かっているし今は入れないんだ」
「そんなはず!!じゃあ騎士の人たちが鍵を持ってるんじゃないんですか!?それなら鍵を開けて調べてみれば!」
「いや、あそこの管轄は我々騎士団ではないんだ。詳しく教えるのは禁止されているから言えないが…可哀想だがこれ以上の捜索は我々には出来ない」
「そんな……そんなこと……お願いします!!お金なら払うから!!だからおにぃを探してください!!お願いします!!」
騎士の人から伝えられた残酷な現実から逃げるように必死に訴えかける。お金ならあたしの全財産払う。足りなければ働いて返します!だからおにぃを……おにぃを探してよ……
必死に訴えても、騎士の人は悲痛な顔であたしを引き剥がした。
「すまないね。上からも捜索打ち切りの指令が出されてしまっているんだ。もうどうすることもできない」
「っ……わかり、ました。ごめんなさい…失礼します 」
騎士の人に見送られて詰所を出ていく。
どうすればいいんだろ…エンリさんがもし帰ってきてるなら…きっとエンリさんならおにぃのことを知ってる筈なのに。
でもエンリさんは貴族で、住んでる場所も貴族街。入るのに安くないお金が掛かるし、お貴族様はあたしたち平民に対して厳しい。人探しのためって言っても絶対酷いことされる。
…そうだ!学園!おにぃが通ってる十王学園なら!
そう考えたらあたしの足は自然と走り出していた。
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「そう……あなたがセドリック君の妹さんなのね」
「はい。いきなり尋ねてごめんなさい!でもここならおにぃの、兄の手がかりがあるかもって思って!」
十王学園で話を聞こうとしていたあたしを用務員さんが職員室まで案内してくれて、そこでおにぃたちの担任の先生とお話をする機会をもらった。「ここではなんだから…」と別室に案内されて、そこで先生に話を聞けば神妙な顔で少し唸った。
「なるほどね。でもごめんなさい。うちでも4人の学生が行方不明のままなの」
「4人…って」
「公には言わないでね。…セドリック君、オリバー君、ルーカス君、エンリさん。この4人が行方不明のままだわ」
「そんな……エンリさんまで……」
絶望で膝を折りそうになったところで、ふと引っ掛かることがあった。4人?今聞いた中で1人だけ名前を聞いてない人がいる。
おにぃはあの時言ってた。「エンリさんとエマさん、他の人も一緒」って言ってた!
でもこの先生はエマさんのことを言ってない!
「それならエマさん!エマさんは帰ってきてるんですか!?ならエマさんから話を聞かせてください!!」
「ごめんなさい…エマさんは今休学中なの。何かあったらしくて、今は誰とも会いたくないって」
「そんな!!ならあたしが直接いきます!!直接いって話を聞いてきます!!」
「やめなさい。エマさんは大貴族ホワイト家で、今ホワイト家も神経質になってるわ。あなたみたいな平民が行けば、あなただけじゃなくてあなたのお父さんやお母さんまで酷い目にあってしまう可能性が高いの」
「っ…」
この先生の言う通り、大貴族様の怒りを買えばうちみたいな平民の一家は王国で苦しい生活をすることになり得る。最悪ここで生活出来なくなる可能性すらあるくらいにお貴族様との付き合いはとっても難しい。むしろエンリさんみたいな優しいお貴族様の方が少数だし、良くても興味を持たれないくらい。それほど平民とお貴族様は隔たりがあるのがこの王国だ。
パパはお役所仕事だし、それこそあたしのせいでお貴族様の怒りを買って仕事が出来なくなってしまったら。そんなの最悪だ。おにぃを探すどころじゃなくなっちゃう。あたしの軽率な行動ひとつでおにぃが帰ってくる場所を無くしちゃう可能性もある。
あたしは先生の言葉に息を呑んで、深呼吸して落ち着きを取り戻そうとした。そうだ。直接伺うとしても、それは本当の最終手段だ。今はもう少しあたしの出来る範囲で探そう。
「…ごめんなさい先生。先生のおかげで暴走する前に気付くことができました……」
「いいのよ。あなたの気持ちだって間違ってないわ。誰だって大事な家族がいなくなったら冷静じゃいられないもの」
「でも、もう少し待ってみましょう…私たち学園側でも出来る限りの捜索はするから。今はこれで許してちょうだい」
「いえ、ありがとうございます!わざわざ今日は時間を割いていただいてありがとうございました!」
「こちらこそ期待に添えなくてごめんなさいね。もしセドリック君のことが分かったらあなたのお家にも連絡するわね」
「はい!ありがとうございます!では失礼します!」
「えぇ。気を付けて帰ってね」
あたしは先生に一礼して、部屋を出ていく。
おにぃは必ず帰ってくる。それにおにぃは喧嘩だって意外と強いんだ。だから絶対大丈夫。ふらっといきなり帰ってくるもん。
今は深く傷ついてるパパとママを元気づけよう。家族みんなで帰ってきたおにぃを迎えるためにもあたしが頑張らなきゃ!
こうしてあたしは十王学園を後にした。
『えぇ。念の為に用意しておいて』
『手筈はいつも通りに。そうしてちょうだい』
『…意外とどこにでも、イレギュラーはあるものね』