どうも話の方向が他の拙作に似るな~
「今の彼らには休息が必要ですね」
十二宮の一番上、アテナ神殿では城戸沙織がブルーウォリアーの代表と会談し、その感想を端的に言った。
20分ほど前にアテナと対面し、現在北極圏のブルーグラード地域が北欧の神闘士によって攻撃を受け、集落が二か所占拠されており、聖域に対してブルーグラード地方の庇護と北欧アスガルドへの制裁を嘆願し倒れたのだ。
集められたのはアテナの聖闘士の中心人物、牡羊座のムウ、乙女座のシャカ、獅子座のアイオリア、蠍座のミロ、牡牛座のアルデバラン、そしてオリオン座の俺と琴座のオルフェ、ブルーウォリアーと面識のある氷河。それと辰巳さん。
あとは幾人かの神官連中。まあ、神官は書記のようなもんだけど。
アテナ神殿で一番大きい謁見の間には長方形の大きな机が置かれ、机上には世界地図が広げられている。
北欧とシベリアにはそれぞれ赤丸が描かれている。
「東シベリアに北欧の尖兵とは・・・」
頭を振り、事の複雑さと重さを感じているのはアイオリアだった。
まあ、脳筋らしくこういった戦略的なことは苦手なのかね。
城戸沙織嬢以外は臨戦態勢で聖衣をまとっている。
すでに事態は検討ではなく判断と実行のタイミングなんだろう。
「北欧の神闘士が永久凍土のブルーグラードへ侵攻する。ありえんな」
アルデバランはうつむき加減にそう独語する。
周囲の数名はその言葉に対して同意してうなずく。
そうなのだ、雪に閉ざされた国が、もっと雪に閉ざされた寒い国へ侵攻をする。
なんの得があるんだ?
1980年代の北欧の遥か田舎。
神話の領域に足を突っ込んでいるアスガルド地域。
燃料だって薪や石炭。電気だって通っているか怪しいもんだ。
アニメの記憶だと・・・田舎というか中世というか・・・
そこが永久凍土を抱える北極圏のブルーグラード地域を侵攻して何になる。
アニオリ対原作の外伝短編。
読者としてはうれしいが、実際は侵攻動機が不明な侵攻戦争。
「これはハーデス復活の兆しでしょうか」
「否定はしませんが五老峰の老師からはハーデス復活の兆しがあるとは・・」
アテナの疑問に首を横に振るムウ。
黄金の牡羊もこの状況には思案に回る。
机上の地図には神官たちが情報を書き込んでいく。
その情報の中にはシベリアのブルーグラード地域の二か所の村にはアスガルドの兵士が十数名駐屯。
率いるのは神闘士トールである。
北欧地域の情報の書き込みは一切ない。
情報が少ないのだ。
アスガルドには神闘士がいる、それだけしか知らないし興味がない。
この世界にもアテナの聖闘士以外にも神代の技を受け継ぐ人々はひと握りながらいる。
ブルーグラードのブルーウォリアー、北欧アスガルドの神闘士、それ以外にもバチカンには聖域の分派と言っていい存在も数名いるらしい。
この辺りは教皇は「ローマの戦士たち」と呼んでいたので人類数千年の歴史が生んだなにかがいるのだろう。
世界各地には聖域を祖とした神代の戦士が現代社会の陰に生きている。
だが、そんな少数派など聖域に比べれば、いや比べるまでもない。
せいぜい青銅くらい、よくて白銀の実力に指がかかるかどうか。
「まずは先遣隊の派遣をしないことにはままなりませんぞ。手をこまねいては聖域の力が弱まったと思われます」
現地に聖闘士を派遣。それは偶発的な戦闘と結果としてアスガルドの神闘士との全面闘争でもある。
発言した蠍座のミロはこの中だとタカ派か。イメージ通りだ。
自信のある横顔だ。
まあ確かに神闘士はアニメでは強かったが、黄金聖闘士以上かと聞かれるとちょっと違うんだよな~。
海皇ポセイドンとの戦いとの記憶が残る今の聖域の士気や戦力を考えれば北欧アスガルドの平定は難しくない。
正直神闘士の実力は海闘士とどっこいか少し下くらいである。
黄金聖闘士を一人派遣すればおつり来るかな。
だが、簡単に黄金聖闘士は派遣できない。
ハーデスの復活の可能性が残る今、聖域を守る人間は必要だし、その役目は黄金聖闘士だ。
数秒の沈黙。
「ハーデス復活の兆しと捉えるなら派遣は悪手ではないか。聖域の防衛を弱めることになる。それにこれがハーデスの謀の可能性もある」
「だが、ハーデスの復活との関係は見いだせない。必要な憶測だが、今はそれだけだ」
アイオリアの言葉に返答したのはシャカ(cv三ツ矢雄二)だ。
沈黙。
皆わかっているのだ。
倒すは易し、しかし向かうが難し。
みな沈黙に伏す。
神官たちの地図絵の書き込みも止まる。
どうも、聖域の人たちは「戦略」を考えるのが苦手なようだ。
まあ基本は敵陣特攻がメインの鉄砲玉集団だ。
俺は城戸沙織の方に視線を向けると口を開いた。
正直場違いなことを言って反感食らうのは覚悟のうえで。
「アテナ、グラード財団に北欧の地下資源調査を行っている会社がありましたよね?」
やめろよ、何言ってんだこいつ?みたいな視線。わかってたけどさ。
シャカも目をとじてる割りにはこっちに顔を向けるな。見えてるんだろ!
「関連会社にアスガルド地域の天候情報を集めさせることは可能でしょうか。神々の降誕には異常気象がつきものです。その兆しがあれば、北欧の神が降臨したか、ハーデスの復活の兆しがあったと考えれば良いと思います」
天候というのは神々の兆しだ。
アテナ生誕の時には雷が轟き、ポセイドンは雨を降らす。
劇場版では「最終聖戦の戦士たち」では摩利支天やミカエル、アテナに抑え込まれていた堕天使ルシファーが地形を自由に操作していた。
だが、サガはそんなことはできない。ハーデス軍の誰一人として出来ない。神ではないからだ。
「異常気象が無いのであれば、そこには人間の策謀があると考えてはいかがでしょうか」
調査をして弱点が分かれば、敵の根城に容易に入り込めれば、神々に操られている人物を特定できれば。
なんでもいい、調査することで疑念をなくし、より戦力を効率的に使いたいだけなのだ。
星矢も紫龍も氷河も瞬も(一輝は別に違うが)十二宮編は満身創痍で意識をなくし、ポセイドン編の後も聖衣は解体寸前。
激戦に投入される人間を効率的に「生きて返す」という考えが聖域にはないのだ。
そう思えばサガは必ず逃走手段や情報の隠蔽はしてくれた。
「何が言いたいのかね。筆頭殿」
上の立場の慇懃無礼ほど厭味ったらしいものは無いな、乙女座のシャカよ。
「神々の戦争であれば我ら聖闘士は拳をふるいますが、人間同士の謀であればそれにあったやり方をするべきです」
つまりは調査だ。
「簡単に言えば、戦前に調査を行います。北欧の適当な国で前線基地を作り、そこに聖闘士を待機させます。調査を行い行動指針がまとまったら待機させた聖闘士で一斉に叩く。何もギリシャから戦力を小出しにする必要はありません」
あぶね~「教皇が最初から日本に黄金聖闘士を筆頭に部隊を送り込めばあなたはここにはいなかった」と言いそうだった。我慢した。
「それはサガのやり方か」
ちげーよ、ばか。
唇の端の上がったミロの笑顔は微笑みというよりは嫌味だ。
俺、前世蠍座だったけどファン止めまーす!
「戦争映画の受け売りですが」
つい声を張ってしまった。
言っては悪いが黄金聖闘士をはじめ多くの聖闘士は相手の意図を調べるなんてことはしない。
教皇からの命令で討伐対象の聖闘士を殺すだけだ。
俺やデスマスクの旦那は暗殺をしてきた。
国内外の聖域の関係者に接触して対象を調べ消す。
少なくともほかの連中よりかは、世俗の戦い方を承知しているし、その世俗の戦い方を聖域に持ち込むことでより優位に戦える。
城戸沙織は俺とミロの視線が交わるをの見て嘆息を一つ。
数段高いところにある玉座に座りなおすと命令を発した。
「牡牛座のアルデバラン、あなたが使者として北欧に向かいなさい」
これは戦闘になることを前提とした派遣なのだろう。
でもアルデバランはシドにやられなかったっけ?
タカ派の蠍座のミロや、高圧的な乙女座のシャカ、すぐ悩む獅子座のレオに比べれば、胆力や冷静さといった部分では使者役としては適任だろう。
アルデバランは机から少し離れ、玉座のアテナに正対すると片膝を曲げ命令受諾の意思を見せる。
「源十郎、あなたが選抜した数名を使い先んじて情報収集を行いなさい」
「はっ」
俺もアルデバランと同じく膝を折り、命令を受ける。
「ミロ、あなたは北極圏でブルーグラードの人々を助けなさい」
「御意」
最後の命令はブルーグラードへの庇護だ。
これは「外交(戦闘前提)」と「調査(戦闘可能性)」「防御(戦闘前提)」とそれぞれの部隊に役割を持たせた案だ。
現在の状況に合わせて複数の対応を並行して行う。
確かに人が大勢いる聖域にしかできない方法だ。
玉座の城戸沙織は命令の意図を説明する。
雄々しく、強く、まさに神の地上の神威の代行者の言葉だ。
「良いですか。今回のブルーグラードへのアスガルド側の侵攻を早期で終わらせます。次の戦いの可能性が残る以上、時間をかけてはいられません。7日間。7日間ですべて終わらせます」
牡牛座のアルデバランは3日後、アテナの親書発行と人員の準備を待ってから北欧へ出発した。
鷲座のマリン、白鳥座の氷河、海ヘビ座の市を選抜して。
命令から翌日には、俺は烏座のジャミアンを引き連れてスウェーデンのストックホルムから北へと出発した。
ストックホルムには予備戦力として地獄の番犬座のダンテ、巨犬座のシリウス、龍座の紫龍、一角馬座の邪武、子獅子星座の蛮が待機することとなった。
ブルーグラード地域には蠍座のミロを筆頭に蛇使い座のシャイナ、蜥蜴星座のミスティ、白鯨座のモーゼス、猟犬座のアステリオン、狼座の那智、大熊座の檄、アンドロメダ座の瞬が派遣された。
1980年代になって聖域は初めて近代的な神話的戦争をすることとなった。