聖闘士星矢:転生者編   作:madamu

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やっと書けた~


北の街にて

道路には雪が少なく、大通りには仕事終わりの労働者が帰路を足早に歩いていた。

北欧の工業の街。

大型車両が頻繁に通るこの街では車両が通る道路には雪は残っていない。

北欧、つまりはスウェーデン、ノルウェー、フィンランドの三国とソ連邦の一部を含まれている。

アスガルドの位置は地図上では表記されていない。

聖域もそうだが、本当の神域は俗世からは隔離されている。

だが、神域でも物資、燃料は必要だ。

最近だが聖域のごく一部では夜間に電灯をつけ始めた。

特に神官が住むエリアでは毎夜の篝火番は重労働でその負担削減だ。

 

まあアテナイ市で生活をしている俺からすればここまで近代化を拒む理由はよくわからん。

ただ近代社会で生活をする神の闘技を扱うものは惰弱となる。

精神的なことなのか、環境的なストレスが必要なのかよくわからない。

つまりはアスガルドでも少量の燃料の買い付けが必要で、その買い付け先と思われるのがこの工業の街だ。

近くの鉱山から出た鉱石の一次加工を担う街で、現代(1980年代)でも個人林業従事者、つまりは木こり達がこの街まで来て、ガソリンや灯油など液体燃料は買っていく。

 

そういった現代と近代の間にあるこの街には俺たちの求める人物が人目を忍んでくることが予想される。

この情報はグラード財団の協力で短時間に手に入れた情報だ。

そうでなきゃアルデバランの聖域出立に先駆け、この街までたどり着くことはできなかった。

 

【歴史から来た男】という情報があった。

地方のラジオ局に送られた情報でそれをグラード財団の人間が教えてくれた。

「古い人物に関わる変わった話はないか」という質問に対して出た答えとしては100万点だと思う。

105歳の大工の話とか、99年前から噂になっている池の主(魚)や、体長5mの熊の話とかしょうもない話が2ダースあったが

この【歴史から来た男】が探すべき人物だった。

 

この男の特徴は「今のじいさん連中でも話さない古い言い回しでしゃべる」そうだ。

これだ。

聖域の人間はあまり意識しないが、俺やデスマスクの旦那、それこそ城戸光政の子供たちなら気付くだろう。

聖域のような古からの神域出身者は言葉が古い。

日本語で表現するなら「さようなら」ではなく「お達者で」だったり、「貴方」が「お主」だったり、「すみません」が「かたじけない」などの現代では使わなくなった言葉遣いである。

 

「もし、店の方。そこにある灯油を2ガロンほどいただきたいがいかほどか?」と言われたら、多くの人間は「こいつ江戸時代か?」と思うだろう。

神域出身者はこういった話し方をする。

日本語で言えば単語の使い方が違うが、外国語だと発音におけるイントネーションの違いや文法上の単語の置き方などで時代差はでる。

それを若者が流ちょうに使えば、それは神域の人間だ。

北欧の神域、つまりはアスガルドの人間がこの街に来ている証拠で、それは燃料の購入だろうとあたりをつけた。

 

「電報か」

「奴らは電報の意味って分かっているのかね」

 

北欧は夕方でも明るい。

横にいるジャミアン(これがイギリス男子ってのが驚きだが、話だと良いところのご子息様だったらしい)が俺の独り言に相槌を打ってくれた。

 

二人とも旅行者の風体だが、防寒用の厚めのジャケットが色違いで何かしらの組織の人間であることがわかるだろう。

 

歴史から来た男は郵便局で電報を打っていた。

送り先はドイツということはわかった。

郵便局員にグラード財団の名刺といくらかの紙幣を渡すと世間話をしてくれた。

まあ小宇宙によって多少しゃべりやすくなるよう誘導はしているが。

 

心を読むとか次元を操るなどの精密な使い方は出来ないが、白銀聖闘士ともなれば類似的な使い方をすることは可能だ。

それこそ相手の心の隙に自分の小宇宙を滑り込ませ好意的な人物と思わせることもできる。

あくまで小技だ。少しでも自分の小宇宙に触れている者には効かない。

きっと春麗に効かないし、貴鬼にはもっと効かない。

あくまで一般人向けの小技だ。

 

まあ小宇宙を応用した超能力もどきの技なんてのもある。

あれだよ「私の小宇宙に直接語り掛けるのは・・・」というテレパシー的使い方であったり

デスマスクの旦那が五老峰で祈る春麗を滝へ落したのも小宇宙を利用した念動力である。

 

黄金聖闘士となればそこまで強力だが、白銀聖闘士なら小技やかくし芸程度だ。

 

アステリオンをはじめ、俺や魔鈴、カペラあたりはこの小技を使う。

逆にアルゴルなんかは小技は下手だったりする。

盾の石化能力と拳技ごり押しなんだよね、あいつ。

 

郵便局から出ると先ほどのようにアスガルドの人間が電報を使っていることに感嘆とも言えぬ言葉が口をつく。

一緒にいるジャミアンはアスガルドの文明的発展度に疑問を示すが、まともに答えは返せない。

 

二人して黙々と数分歩く。

この通りは郵便局がある程度には建物が多い。

もう少し建物がない、人の目が少ない場所で聖域への連絡を行いたい。

 

聖域の報告はこの後ジャミアンがカラスを飛ばす。

ジャミアンの小宇宙によって操られたカラスは鳩以上に正確にジャミアンの思念を届けてくれる。

普通の文よりもニュアンスを含めて正確に伝えてくれる。

 

今からアルデバラン一行に飛ばせばアスガルド到着前にはカラスからの伝言が聞こえるだろう。

「アスガルドは外部と接触している。注意されたし」とこれだけで通じるだろう。

あとは、聖域とブルーグラードに連絡だ。

 

どうなるかわからないが、アルデバランの動きに呼応して待機組がアスガルドになだれ込むか、ブルーグラード側で動きが起きるか。

 

地面が雪解けのぬかるみの道になる。

整備された地面ではない。

 

一番近い建築物は後方100mあたりの位置にある公衆トイレでこの先を行けば森だ。

昔行ったロシア(いや今だとソ連か)では街はずれや、警察署の近くには、凍死防止用の小屋があったりした。

この公衆トイレもそれに近いのかも。

北欧、特にソ連側の人間は酒飲みが多い。

泥酔して夜道をたどり町の端まで行くなど日常茶飯事だろう。

 

「この辺りでいいか」

俺の言葉にジャミアンは指笛を吹く。

1分ほどすると数羽のカラスがジャミアンの上空を旋回する。

別段、手元に呼びつけずとも、ジャミアンの能力をもってすればこの距離で伝言をカラスに着けることが可能だ。

「どのくらいで聖域に行くんだ?」

「夜通し飛んで明日の朝だな」

「電報の方が・・・いや受け取り考えると変わらんか」

「近代化比べは引き分け、引き分け」

ジャミアンの笑い声についついつられてしまう。

 

二人で一通り笑った後「宿に」と俺が言葉を発した瞬間。

 

周辺の空気が変わった。

ここだと街に近い。

森に行くのが良いのか、街の中に戻るのが有利なのか。

俺とジャミアンの行動は森を選択した。

俺たちは人命をそれなりに守るがヤツらが同じように考えているとは思えない。

一つの街を潰してでも俺たちを殺すかもしれない。

 

聖闘士の移動速度というのはなかなか表現しづらい。

コミック21巻(くらい)の星矢たちが聖域からハーデス城へ向かうシーンが流星として表現されている(はずだ)

実際俺たち聖闘士は常人以上の速度だが、小宇宙を燃やしても音速や光速で走れるわけではない。

端的に言えば小宇宙を使った空気抵抗の減少がメインだ。

走るときに空気抵抗を減らし、速度を上げる。

そこに鍛え抜かれた肉体と小宇宙の力。

合わさればエンジンで動くものと速度はたいして変わらない。

 

まあ数キロ程度の短距離テレポーテーションも可能だが数分の瞑想が必要なのと体力消耗が激しい。

黄金聖闘士はぽんぽんテレポーテーションするが、やはりあの12人は神話に近い存在だ。

 

数度の呼吸で森の入り口に到着する。

すでに街はずれの公衆トイレも小さな豆粒だ。

周りには木々。

そして殺気。

「お前たちは聖域の聖闘士か」

ぬっと木の陰から現れたのは紫に鈍く光る金属製の衣。

冥衣だ。

しっかりと兜をつけ、目元は見えない。

俺やジャミアンよりも背が高い。

アルデバランほどではないが、それでも獅子座のアイオリアよりも一回りはデカい。

 

「名前を聞くが、答えてくれるか?」

ジャミアンと俺は周囲に注意を払いながらファイティングポーズをとる。

聖衣はない。

小宇宙を燃やし呼びたいが、冥闘士の小宇宙が場を支配し、さらには奴の視線や殺気が小宇宙を燃やす暇を与えてくれない。

少し離れた木の陰からも数人が姿を現す。

こちらに近づきながら取り囲むように広がる。

 

「我々は冥闘士だ」

ジャミアンが一歩下がる。

威圧されておびえたというよりも、逃走か攻撃かに悩んでいる様子だ。

「封印は解けていないと思うが」

俺の言葉にはあまり意味がない。

時間稼ぎなのか、隙を窺うためなのか、自分でもわからない、何か事を起こすタイミングを計る。

 

「封印されているのは闘士としての魂だ。俺たちは宿命によって集められた」

「わからん言い回しだ」

車田節にしては遠回しな言い方に首を傾げる。

 

「お前たち聖闘士も訓練する前から、星座の宿命を背負うだろう」

冥闘士からの捕捉に俺もジャミアンもうなずいてしまった。

「納得したか」

「ああ」

相手の声に返事をしたのはジャミアン。

 

周りの気温が徐々に下がるもうすぐ夜なのだろう。

森の入り口は一気に影が落ちる。

 

「おしゃべりの趣味はない」

そういって、冥闘士は左手を上げ周りの仲間に包囲を狭めるよう指示をした。

まさにジリジリと音が聞こえるような遅さだ。

ジャミアンも視線で周囲を制する。

 

「9対2だ」

周囲の冥闘士の誰かの声。

全員が冥衣姿。不利は目に見えている。

 

「聖衣もどきか」

「冥衣だ」

知ってる。

ついつい強がりが口に出たな。

律儀に返してくれる相手も相手。

 

「ジャミアン上だ!」

導火線に火がつく前。いきなりの俺の声。

緊張が高まり暴発寸前するタイミングは誰でもわかる。

相手が動きに移る前、それを外す。

 

ジャミアンは一気に跳躍する。

敵はすぐさま行動に移せない、一秒視線でジャミアンを追う。

 

そして次の瞬間。一気に濃霧がこの一帯を覆う。

ジャミアンの跳躍はある程度距離がとれるだろう。

 

俺の持つ技の一つ。

【ミスト・オブ・ラビリンス】

球形に周りを囲む霧は高い遮音性能があり目くらましにもってこい。

下手に入り込むと、方向感覚が狂わされ数m四方をさまようことになる。

上空に逃げようとしても、数mの跳躍を思い込まされその場に立ち尽くすだけだ。

 

この技が掃除屋としての俺の特徴だ。

獲物を絶対に逃がさない。

霧の牢獄に閉じ込めることができるのだ。

 

冥闘士たちはジャミアンの姿を目で追えなくなると一気に俺へと視線を向ける。

「9対1だ」

俺の言葉に冥闘士たちの殺気の濃度が高まる。

 

「やれ」

デカい冥闘士が一言いう。

四方から飛ばされる殺気。

マッハを超える拳打。

 

一つ、二つ、三つ・・・。

いくつかの拳を避け、いくつかの拳を防ぎ、いくつかの拳が俺の体を打つ。

重傷とはならないが、それでも体の芯に衝撃がくる。

俺たち聖闘士の体は強靭だがそれでも数発、数十発と高速の拳が叩き込まれるとやはりきつい。

 

膝はつきたく・・・ない!

だが衝撃は俺の体の防御反応で背中を丸める態勢にする。

足元に泥濘が足首を飲み込む。

 

黒人の冥闘士の一人が両手を地面につけ俺になぶるような視線を飛ばす。

この両手を地面につけた冥闘士の技なのだろう。

地面が小さく波打ち、重い水のように俺の足を固定する。

 

「死破刺刃(シハザッパ)!」

敵の中から声がする。

刺突が俺の右脇を刺す。

「!!」

熱い痛みが右脇から広がる。

だが動きを止めるわけにもいかず、抜き手で俺の脇腹を刺した冥闘士に拳をふるうが相手の方がワンテンポ早く距離を取る。

 

「白銀聖闘士、実力は認めるが我ら冥闘士はそれ以上よ!」

俺を刺した冥闘士が吠える。

ああ、このままいけばお前らの勝ちだ。

そして聖戦が始まり、最終的にはアテナが勝つ。

星矢の魂を燃やしてな。

 

片膝をつく。少しずつ出る出血は遠くない先に俺から体力を奪う。

小宇宙を燃やせないほど。

 

小宇宙の濃霧が強大な小宇宙で力づくで開かれる感覚。

「俺からすれば1001対9だな」

冥闘士たちの包囲の間。

緊張も恐怖もない声。周りを小馬鹿にするような強者の声。

 

「貴様!」

冥闘士が声を上げ、その人物に体を向けた。

「お前ら程度にはこれで十分だ」

めったに見せない高速拳。

 

あまり使わない理由は「俺は獅子座よりスマートだからな」だった。

 

「な!!!」

一人の冥闘士が振り向きざま声を出したが、瞬きをした次の瞬間には地面に伏せていた。

口からは血を流し白目をむいている。

マッハは23、79、101、334どんどん早くなっていく。

もう俺の目でも追えない。

まさに光速の拳だ。

 

実際に「光速」を拳技に実戦レベルで活用しているのは獅子座のアイオリアか牡牛座のアルデバランくらいだ。

ある程度余裕をもって行うなら光速拳は黄金聖闘士の全員出来るだろう。

だが同格の相手と命のやり取りの中で、フットワークを駆使しつつ小宇宙を高め、特殊技能を多量に使う聖闘士同士の戦闘では簡単に光速の拳を放つことはできない。

光速の拳を常態的に繰り出すアイオリアの聖闘士としての基礎能力は群を抜いている。

まあムウやシャカ、アフロディーテのような特殊性を一切持たぬ「凡人」の証拠でもある。

 

思考に1秒沈み込んだ時にはすべて終わっていた。

地に伏せ、泥にまみれる冥闘士たち。

呻く者もいれば、無言の者、そして生死が不明の者。

 

「お早い出所で。アテナに泣きついた?」

「逆だ。アテナから誘ってきやがった。どうやらイタリア男はお初な様子でな」

薄ら笑いを浮かべるわけでもなく、軽口でもなく、普通の会話でこう言えるのだからイタリア男は洒脱だ。

 

逆賊、悪逆非道、無頼漢。

細身のスーツに襟元に毛皮のついたコート。

聖闘士というよりは出張中のマフィアだな、まあ似たようなものか。

逆立つ銀色の髪には雪が少しついている。

 

「おい、街の方によさそうな酒場見つけたから行こうぜ」

兄貴風を吹かせて手を差し伸べてくる。

俺もその手をつかみ立ち上がる。

「賛成」

 

蟹座のデスマスク。

さすが城戸沙織だ。隠し玉をここで出してくるとは。

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