彼の後悔、ものすごい難しかったです。書き手が頑張ってもこれぐらい。キャラ崩壊にはなっていない、はず。
出来れば流れで一気に語り手編は終らせたい。
お気に入りや感想などいただければ励みになります。
やあやあ、諸君。
お待ちかねの花のお兄さんだよ。
あれ、なんだかものすごいブーイングが聞こえる気がするような。
ま、いっか!
今日の僕の役目はただ語ることだ。はは、不思議だね。私の本質は聞き手や読み手なものだからね。
さて、それじゃあ、話をしよう。
私の、私の、ひどい思い違いと、彼らへの侮りの話だ。
さて、君達が何よりも気になっているのは、私がなぜ、ウーサー王の願いを聞き入れたか、だね。
そうだね、うん。それは簡単な話で、私にとってこのブリテン島の結末において何よりもましなものであると思ったから。後は偏に、そうだね。言ってなんだけど、面白さというものもあったせいさ。
滅び行く世界に、ただ一人立つ孤高の王様。
好きだろ、君達だってそういうの?
ウーサーはそうだね、絶望していたし、それでもなお足掻くことを願っていた。彼はわかっていたんだ。ブリテンという島が少しずつ衰退し、滅びていくことを。そのくせ、外の世界はブリテン島がただ滅んでいくことを赦さなかった。
ねえ、君達は、もしも、きっと滅びることしか出来ないとしたらどうする?
どんなあがきも、どんな祈りも、結局は無に消えていく。
彼は、ならばと思ったんだよ。
滅びという死の前に彼は確かに愛していた民や臣下に夢を見せることを選んだんだ。
つかの間の夢、明日を生きていこうと願える輝き、綺麗で、そのまばゆさに目をくらませて、一瞬でも滅びから眼をそらさせる星。
まあ、聖剣がないと本気で詰んでたってのもあるんだけどね!
島の外から迫り来る敵に抗わなくては本当の意味でこの世は終る。
星諸共の滅びか、それとも星を生かすのか。
なら、後に続く何かがあるんだと信じるしか無かったんだよ。
だから、ウーサー王はこの島の滅びを受け入れた上で、美しい星を生み出すことを選んだ。己の名誉だとか、たくさんのことを放り出して。
浮気騒ぎも、不義の子も、それでも必要だったから。彼はそれを背負った。
私はそれを美しいと思った。誰かのために泥を被り、自分がどれだけ汚れても、彼は他人の幸福を願っていた。
私は、美しい夢を見る人間を美しいと思った。それが、ウーサーに肩入れしようとした理由だよ。
モルガンを疎ましいとした理由かい?
彼女の生まれた理由はあまりにも残酷だったから。僕達の望んだものは、星であり、そうして聖剣の使い手だ。彼女はあまりにも、言い方はなんだけど、僕達の計画には無駄なものだった。
愛さなかったのは偏に、僕もウーサーの心を全て理解しているわけでもないけど。
自分がこれからどれだけ非道なことをするかわかっていたからかな。彼女が彼を愛すれば愛するほどに、彼が彼女を愛すれば愛するほどに。彼の非道は、彼女への痛みになる。
なら、最初から悪役の方が双方気楽だろう?
・・・・・それ以外にもあったのかもしれないけれど。私にはその程度かな。
残酷?
・・・・そうだね、目一杯の残酷さで、そうして悲劇だ。限られた選択肢の中で、限られた人間が、限られた時間の中で選んだのが、理想の王を作るということだった。
私は、ウーサーに忠告はした。例え、そんなことをしても星は所詮、いつか落ちる。本当の暗闇に、困難に落ちたとき、人は
彼はそれになんて言ったと思う。
はっはっは、彼は平然とこう言ったのさ。
信じているって、さ。
馬鹿みたいな話だろう?
でも、真実、彼はそうするしかなかった。元々、賭けみたいなものだ。ならば、良い方向に彼は賭けた。私もまた、そうだった。
滅びしか無いのなら、その男の、確率の少ない賭けであったとしても。
私は、それに賭けたくなった。
元より、私も彼もわかっていたんだ。私たちの作るものが理想の王であるなんて事はおまけのようなもので、結局は聖剣を扱えるものがどうしても必要だった。
それでも、彼は信じていた。輝かしい誰かを見たとき、きっと、人々は少しでも明日を善きものにしたいと立ち上がってくれると。
私は、いつもの通りにすれば良いと思っていた。いつものように王を作り、星を守るための役割を遂げさせて、その後は適当にやり過ごせば良いと。
人々が望んだ救世主、美しい星。でも、私はそれについて何の罪悪感も持っていなかった。
だって、それを望んだのは人だから。
あの子が王になったことを、私は深く考えていなかった。
ただ、普通の子どものように、与えられたことを素直に吸収し、王として育てられたからこそ王になったのだと。
あの子はあの子なりに王としての理想を持ってくれていたことにほくそ笑んでいた。
そうだ、私は間違えていた。致命的な、間違いだ。
私たちはあの子にとって、王になると言うことは結末でしか無いのだと思っていた。けれど、違う。あの子にとって、王とは過程に過ぎなかった。
あの子は、ただ、他人にとって他愛もない、当たり前のような何かの幸せこそが善きもので、それこそが何よりも大切にされるべきだと信じていた。
だから、彼女は大切にしていた。
アルトリアも現実を知る。あの終焉の近づく世界で、王になるという地獄。それを味わえば、きっと、あの子も王であることをやめたいと願うと。
その少女だってきっと、己の幸せを求めてしまいたくなるときが来ると。
彼女にだってご褒美が必要だ。だから、いつか、その時が来たら。私はその手を取るんだと。その時は、なんだってやりようもある。
元より、聖剣が必要な山場さえ越えてしまえば、あとは如何様にだって。滅びまでの、時間稼ぎになるだろうと。
・・・・ロット王の、モルガンの子どもたちを彼女の臣下に求めたのはそれもある。代替わり用の駒、次代のための存在。
それだけだった。
例え、あの子が消えても、新しい王が立てば人々は期待する。今度こそ、善き人が、この国を良き方向に導いてくれる。
つかの間だけ、人々はまばゆい星に目を向ける。その輝きになれたら次を、そのまた次を。
醜悪だろう?
でも、私にとってそれが最善手だった。輝かしい希望に目をくらませて、私は、人々に走りきって欲しかった。
この終わりゆく島の時間を。きっと、明日があるのだと信じて、懸命に生きて欲しいと。
明日があると信じながら、私は人々に死んで欲しかった。
絶望の中で、冬の中で死ぬよりも。明日を信じられる、春の中で私は死んで欲しかった。
けれど、思い上がりだった。あの子は、自分の受ける苦痛なんて、自分にとっての善きものの幸福の前では無意味に等しかった。
私は、その時、ロット王の言葉が浮かんだ。
生きるために、人は生きているのだと。
・・・・そうだ、私は人を、アルトリアを侮っていた。
彼女は、そうだ、信じていた。戦い続ければ、優しい明日が来ることを。
あの子にとって、王なんてものは手段にしかならなかった。あの子は、この島がいつまでも続くのだと信じていた。
そうだ、私は、あの子を王にした。そうして、理想の王であるように教育した。
意識の差だった。
私は理想の王を作ることを目的としていた。けれど、あの子は違う。あの子は理想の王になって、誰かが生きるために戦うことこそが目的だった。
笑える話じゃないか。
誰よりも、何よりも、アルトリアを理解していたのは、ただ真摯で誠実なだけの、神も、理想も興味ないただの男だったのだから。
・・・次は、ロット王を切り捨てた理由の話だね。
・・・私は、そうだね、信頼していたんだ。モルガンを。いや、私はモルガンという魔女を理解していると思っていた。
なぜって?簡単だよ。
彼女は、私と同じ、人なれど、人ではない境の存在だった。
生物というのは模倣の生き物だ。生まれ落ちた瞬間に本能的に出来る行動はあるけれど、それが高度化すればどうしても他の生物を真似しなくてはいけない。
私は、生まれ落ちた瞬間から模倣すべき存在を持たなかった。なんせ、夢魔と人との混血児なんていなかったものでね。
私は、私を持たなかった。私は、私なりの先達を持てなかった。
だから、私は最初に目を奪われたものに強い関心を持った。そうだ、この目で見た、どこかで生きている人々。その軌跡である美しい物語。
それを眺めることこそ私は私の命題とした。
君達だってそれを必要としているだろう?
命の価値が高まり、死ぬ危機というものが薄まっていくにつれ、生き方の理由を求めてしまう。
私はまず、生まれてから生きるための理由を探した。
・・・・・ねえ、考えてごらんよ。
何故、生きている?何故、今日死なない?
そんな理由を心のどこかで探している。
私が生きていた時代と、君達の住む時代は違っているから別問題かな?
でも、思っていた。
人であるということは揺らぎやすいということさ。正しくも、強くも、弱くも、間違うことさえも君達は簡単にやってしまう。
私たちは違う。
私たちはどちらでもあり、どちらでもない存在だった。簡単に揺らぐことは出来ない、私たちは変われない。
モルガンはこの島を滅ぼすことしか出来ない、だって、そのために生まれてきたのだから。
私は、信用していた。
自分と同じだったはずの彼女を。
変わることの出来ない、人であり、人ではない半端者同士である彼女を。
ああ、そうだね。目論見は外れた。
私は、一人の男の驚くような真摯さが与えるものを理解していなかった。
私は、一人の女の一途な恋をわかっていなかった。
そうだ、私は、とある女の恋を見くびっていた。
その恋のために、生まれ持った生きる理由も、使命も。その愛のために、与えられてきた拒絶も、憎しみも。
悉く、放り出してしまうなんて結末があるなんてこれっぽっちだって思っていなかったんだよ。
・・・・そうして、あの最後に繋がった。
円卓の彼らに関しては、私は残念ながらノータッチだったんだよ。
私はあくまでお膳立てをするだけで、基本干渉はしていない。
・・・・まあ、オークニーの子どもたちはどうしても必要だったからやってくるまでの道筋は整えたけれど。でも、それ以外はしていないんだ。
敵意を抱くようなら何かしら手を回すことも考えたけれど、彼らはよく働き、よく仕えてくれた。
それに感謝している。これは、嘘ではない。
・・・・私は、私は、ランスロット卿とグィネヴィアの末路をあまり気にしていなかった。
それは当然の結末だ。
ロット王を殺した後、彼女にはどうしても後ろ盾の妻が必要だった。けれど、女に嫁ぐ女はいない。婚前にそれを打ち明けて他に漏れるようなへまも出来ない。
だから、だまし討ちのように婚姻した。
グィネヴィアは、アルトリアが女であることに驚き、その理想に傾倒し、そうして、自分の夫が女であることに密かに安堵していた。
まあ、そうだろう。顔さえも知らない男と体を重ね、そうして子を産むというプレッシャーから一時とはいえ解放されたのだから。
それが長く続く苦悩の日々の始まりだった。
子を産めない王妃、王の寵愛のない妃。
そんな彼女の扱いは、唯一の妃であるとは言え想像できるだろう。そうして、皆は言った。王が次の妃だとか、違う女と求めないのは、王がお優しくあれに遠慮しているからだろうと。
悪意はたやすく広がった。そうして、グィネヴィアはその苦しみにもだえていた。
彼女がランスロット卿との恋に落ちたのは当たり前だ。
だって、彼女は何にも悪くなかったのだから。
それについては理解していた。けれど、ランスロット卿の狂行を読み切ることが出来なかった。
・・・・逃げるならば、逃げればいい。アルトリアは王であることを止めないとわかっていた。そうして、一度始まった彼女の不貞もまた、ばれてしまえばどうしようもない。
けれど、ランスロット卿が愛の前にそこまでたやすく狂うことを、私はこれっぽっちだって考えていなかった。
ロット王の子どもたちが死ぬことを、その一瞬の成り行きを止めることが出来なかった。太陽の騎士のそれもまた。
止めたとしても、止められない。もう、ページはめくれてしまった。
・・・・・私が、モルガンのあれを受け入れたのは偏に、それも当然だと思ったからだ。
それこそが私に出来た、唯一の彼女への誠実さだった。
閉じ込められ、もう、そこでただ一人。
私には、書き手の才はなかったのさ。
まあ、そんなところだね!
私の語りはどうだった?あまり話をする機会もなかったからね。上手く出来たかわからないけれど。
・・・・おや、どうしたんだい。そんな顔をして。そんな哀れむような顔しないでくれないかな?
そんな顔をして、なんて。
何を言っているんだい?私はちゃんと笑えているだろう。表情を作るのも、大変なんだから。感情を消費して、そうして。
・・・・・泣いているように、見えたのかい?
・・・・・はっはっは、そうか。そうかい、ああ、そんな風に見えているのかい。こんな、無表情のそれが。
確かに私は悔いている。そうだ、悔いて、いる。
・・・・・私は、自分が正しいと信じていたんだ。
今でさえも、私は自分が正しいと信じている。自分の行いが、悪であると思っていない。
だって、そうだろう。私には感情が無い。それは私心を持たず、どんなときだって私の思うハッピーエンドのために選択のできることだった。罪悪感なんて、なかったんだ。
ああ、そうだ。それでも、私は所詮は非人間だった。
私には、人の恋も、愛も、理解できていなかった。ただ、事実による問いと答えへのアプローチ。
だが、現実を救うには事実が最も必要であるはずだった。
人は、間違いを起こす。たやすくゆらぎ、信じていたものをあっさりと手放してしまう。
私は、無駄だと知りつつもアルトリアを産みだしたのはそうだった。
迷う彼らに、導きがあれば、と。人は幸せに死ぬために生きているのだと思っていた。最後の最期、ああ、良い人生だったと今際の際に思うことこそがよいもののはずだ。
・・・違って、いたんだね。
君達は、死ぬためにじゃなくて、生ききるために頑張っていたんだね。
私は、それを理解していなかった。
だって、私はそうだった。最後に見る夢が、物語が、善いものであればきっと。滅びという運命が見えていたのならなおさらに。
・・・なんて馬鹿なことを考えた。
私は所詮、非人間だったというのに。アルトリアと最後に話した日、彼女が口にした見当違いの恋の話。
あれと同じだ。私は、人では無いのに、人に寄り添おうとした。人で無いのに、人と共に生きようとした。
それでも、美しいと思ってしまった。理解も出来ないのに、分かりもしないのに、君達が明日を生きるために走るその姿を。私は、きっと。
そうだ、それだけは愛していたんだよ。
ロット王の言葉が今更になって理解できた。
彼は最後までアルトリアを人だと勘違いしていたから、そうして、彼女が人と共に生きていくから。
人は、生きるために生きている。ロット王は、きっと、アルトリアが傷つくってわかっていたんだ。彼女は、愛を知らなかったけれど。それでも、人を愛していたから。
やられたよ、ああ、本当に!
私は、悔いているんだ。どうしようもなく、あの子の導き方を間違えてしまった。
私は、人を愛していない。私は、愛がわからない。
でも、それでも、確かに。
報われて欲しいと思う人がいた。幸福な終わりを迎えて欲しいと思う、人が、いた。
・・・・・それをぶち壊したのも、そうして、あの子を一人にしてしまったのも、全部、ボクだった。
・・・・私は、悔いている。あの子の導き方を間違えたことも、私とあの子の間に致命的な齟齬があったことも。私に、人の幸福が作り出せると信じたことも。
そうだ、悔いている。
でも、私はきっとあの子を作り出したことは後悔しないよ。いや、後悔できない。
戦い続けた彼女の人生を、それでも、誰かのために生きた人生を。
あの結末は、醜悪であったかもしれない。一人の女が徹底的に嘆いていたあの終わり。
そうだ、私は、一人の女から何もかもを奪うことに疑問は無かった。傷つく事なんて無いと思っていた。
だって、彼女は私と同じ、人であり、人でないのだから。アルトリアのように私が少しずつ教え、導いたわけでも無く。
最初から与えられた願いに従うものだと思っていた。違っていたね。そうだ、彼女もまた、私とは違った。
モルガンは、確かに、愛を教えられた。それを受け取る心が、彼女にはあったんだ。
それが致命的な勘違いだった。
散々に傷つけたんだろうね。私は、彼女を。
それでも、アルトリアだけにしか救われなかったものがあるはずだ。あの子は確かに、いつだって最善を選んでいた。
結末は醜悪だった。それでも、その過程にあった輝かしいものがあったのなら、それは間違いでは無い。
あの日、彼女は確かに、誰かを幸福にしたのだから。
これが、私の後悔の話だ。どんなものとも交われないと知りながら、誰かに寄り添おうとした、とある半端者の話だよ。
・・・・ロット王は、私にどんな罰を望むんだろうね。モルガンもまた、私を赦さないだろう。
ああ、それでいいんだ。それは正しいから。
でも、もしも、叶うなら。
私はもう少しだけ、あの二人と話をしてみたかったなあ。それを潰してしまったのは、結局私なのだけど。