???
やあ、ご機嫌はいかがかな?
ここ?
ここがどこであるだとか、いまがいつかとか、ひとまず君には関係の無いことだよ。
君がすべきこと、そうして、考えるべき事はたった一つだけなのでね。
君は、その剣を抜くか、それとも抜かないか。選択すべき事は一つだけさ。
ただし、その剣を取る前にちょっとだけでも考えることを薦めるよ。
もちろん、それを引き抜けば相応に君には恩恵が与えられる。そうだ、君だけではけして与えられることの無い、奇跡と言えるような出来事がもたらされる。
だが、その代り代償が必要になる。
それを引き抜けば最後、君は人ではなくなる。それでもいいのかい?
その言葉でようやく気づいた。目の前に、剣がある。
何と表現して良いのかわからない。ただ、剣が目の前にある。台座に深々と刺さったそれは沈黙して自分の前にあった。
代償とは、なんだろうか。それはわからない。ただ、それによって起こされる奇跡というものが何か理解できた。
自分は、それに手を伸ばした。
また、声がそれを引き留める。
いいのかい?
その選択肢はお世辞にも楽なことではないはずだ。君はまた、役目というものを背負い込む。もっとも、君にとっては辛い配役を振られてしまう。
それに自分は少しだけ考えた。
そうだ、確かに、辛いだろう。きっと、苦しいと思うことはある。自分に出来るだろうか、とも思う。けれど、それでもいいかと思う。
奇跡なんてものは結局の話、起こったとしても何百という代償の果てに、砂粒程度のものが与えられるのが当たり前なのだ。
だから、自分はその剣を握った。
己の存在程度で、それが叶うというならば。それほどの幸福は無いはずだ。ならばいい。自分はそれに納得できる。
どれほどの苦難、どれほどの迷いがあっても。その奇跡を自分は望んだのだから。
もう一度、その柄を握った。そうして、それをゆっくりと引き抜いた。
それに、また、呆れたような声がした。
あーあ。
辛い選択をするものだ。君はこれから心しなくてはいけない。
君は、多くのものを壊すだろう。君は、多くのものを殺すだろう。君は、多くのものを滅ぼすだろう。
それでも、君はいいのかい?
おかしなことを言うと、ぼんやりと思った。
覚悟があるから抜いたのだ、選択したからここにいる。
頷いた自分に、それは心の底から呆れた声を出した。
まあ、いいさ。
君がどちらを選んでも。関係の無いことだ。
それじゃあ、頑張ってくれ。
そうだ、最後にそんな君に一つだけ。
産まれ墜ちる影に祝福あれ