ロット王は愛妻家   作:藤猫

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進んでいない。次回は進展します。

ロットさんの声、大i泉iさんみたいな感じなんですかね。めっちゃコミカル。
カルデアでの諸諸と三人で話してます。
あと、おまけの幕間があります。


評価、感想、ありがとうございます。
また、いただけましたら嬉しいです。


休憩

 

「・・・なんだか、へんな気分だね。」

「何が?」

 

藤丸立香は目の前の少年を見た。そうして、次には青い空を仰ぎ見た。その横で、たき火を前にしたコンラとグレイが同じように空を仰ぎ見た。

 

「本当にずっと昼なんだね。」

「だから言っただろう?」

 

コンラはそう言って苦笑した。

 

 

村から出た後、数時間ほど歩いてからコンラは川を見つけ、そこでひとまず休むこととなった。

日が暮れないせいで時間感覚が狂っているのか区切りをつけて休息を取るためだった。

 

「これを食べたら一眠りするといい。まあ、地べたで眠ることになるけど。」

 

そう言ってコンラは二人にたき火で焼いた魚を渡した。木の枝に刺さったそれはほかほかと湯気を立てている。

コンラはあっさりと川で魚を釣って見せた。

 

「おいしい。」

「本当ですね、焼き加減と塩加減が絶品で!」

 

むぐむぐと魚を食べる二人にコンラはにこにこと微笑んだ。

 

「それはよかった。ヴィーほど料理は得意ではないんだけど。たき火で魚を焼くことに関してはちょっと得意なんだ。」

「野営が多かったから?」

「うーん、それもあるけど。まあ、魚釣りが好きでね。ついでとばかりに焼きまくってたら自然と上手くなってたんだ。懐かしいなあ。昔、君達みたいにおいしいって食べてくれる人がいたから。」

 

それに立香は彼の師匠であるだろうスカサハの顔が脳裏に浮かんだ。けれど、直感的にスカサハがそういったことをするタイプで無いことは覚った。

それならばいったい誰のことを言っているんだろうと首を傾げた。

立香は魚を食べながらふと、疑問に思っていたことを考える。今回の特異点において、なぜ、コンラが召喚されたのだろうかと言うことだ。

 

(・・・広く言えば確かに同じような場所だけど。でも、ロット王がいるのならガウェインたちが召喚されてもおかしくない。)

 

何故、クー・フーリンの息子であるコンラなのだろうか。

 

「ふふふふ、おかわりいるか?」

「え、いいんですか?」

「いいよ。たくさんお食べ。」

 

コンラはにこにこと笑ってグレイに魚を渡した。グレイを見つめるその目がひどく優しげに見えるのは何故だろうか。

立香はそれに、ふと、口を開いた。

 

「ねえ、一つ聞いてもいいかな?」

「うん?なんだい?」

「ロット王の近くにいる魔女って、誰のことだと思う?」

「・・・・立香は誰だと思うの?」

 

それに立香は少しだけ黙り込んでしまう。彼の近しい存在で魔女、と言われると一人に絞られる。だが、彼女のまがまがしい妖婦のイメージは後の作家たちなどにつけられたものばかりだ。

 

「正直、モルガンのことが思い浮かぶけど、違うのかなとも思ってる。」

「拙もなんとも言えません。」

「・・・・二人は、ロット王とモルガン妃のことをどれだけ知ってるの?」

 

コンラは特別な感傷もない様子でそう聞いた。それにグレイと立香は顔を見合わせた。

 

「円卓の方々から少しは聞いています。」

「グレイは円卓の騎士たちと仲が良かったのかい?」

「・・・・いえ、拙は、その、この顔でしたので。ただ、ガウェインさんとガレスさんは、拙の目の色が気に入られたみたいで。」

 

末の娘君に似ていると。

 

それにコンラは青と緑の瞳をゆっくりと瞬きさせた。それに立香は、その二つの瞳を混ぜれば、きっとグレイの瞳によく似た色ができあがるのだろうかと考える。

 

「カルデアにはモルガンも確かにいたんだけど。」

 

それにコンラは顔を上げた。その顔には、確かな驚きが混じっていた。彼の珍しく焦った顔に立香は目を白黒させた。

 

「モルガンが?」

「うん、あ、でも、普通のモルガンとは違って。」

 

立香は己のカルデアに召喚された異聞帯のモルガンのことを説明した。

 

「・・・そうなのか。」

 

コンラはどこか落ち着かないというようにそのたき火をいじっている。

 

「それで、その。彼女はロット王に関して何か言っていたかな?」

「え、うん。実は、彼女からロット王のことは聞いたことなく。」

 

それにコンラの体がぴくりと震えた。彼は一瞬だけ黙り込み、そうして、ひどくなんとも言えない顔で立香を見た。

 

「・・・・それは、あれかな。話をしたくないぐらいに、嫌っていたとか?」

 

立香はその様子にはてと首を傾げる。隣を見れば同じように不思議そうな顔をしたグレイがコンラを見ていた。

その時、また、剣が甲高い金属音を立てた。それにコンラはちらと剣を後ろめたそうに見た。

 

「大丈夫?」

「いや、大丈夫だ。」

「コンラさんはモルガン妃とロット王のことがそんなに気になりますか?」

「え、あ、いや。ただ、これから敵になるかもしれない相手だからね。少しでも情報は欲しいだろう?」

 

苦笑気味の彼にそう言われれば、確かにと立香とグレイは頷いた。

 

「ああ、うん。モルガン曰く、正史側の自分に情報は貰ったそうなんだけど。でも、家族のことは全然くれなかったんだって。」

 

そうだ、モルガン曰くであるが。

 

まあ、己の宝をわざわざ自分自身と言えども、他と共有したくなかったのでしょう。なので、私には子どもやオークニーでの記憶はほとんどありません。ただ、黒い髪に翠の瞳をした男が、私に笑いかけていたこと以外は。

 

 

「会ってみたいとは言ってたけどね。」

「・・・・そうか。」

 

コンラは少しだけ安堵するようにため息を吐いた。

 

「・・・君の所にはたくさんのサーヴァントがいるんだね。ガウェイン卿たちからは、ロット王のことで聞いてることはある?」

 

やけに、おそるおそるというような態度なのはなぜだろうか。その時、また剣から金属音がする。コンラはそれに落ち着けというように鞘を撫でる。

大丈夫なのだろうかと、グレイとコンラを見たが、彼は大丈夫だと微笑んだ。

 

「ガウェインかあ。そうだなあ。でも、ことあるごとにお父さんの、ロット王の話はしてるよ。」

「そうですね、拙もよく聞きます。」

「・・・・なにか、こう、悪いことかな?」

「ううん。たわいも無いことだよ。なんというか、父親だとか母親自慢に我先にと突っ込んでいってたりしたけど。ああ、でも、一度、話をしてくれたな。」

 

 

私の父ですか?

ええ、お聞きしたいのならいくらでも。父上のことなら、いくらでもお話ししますよ。

・・・・よき人でした。

あの人はどこまでも人を見ていた。誰かの悪性を徹底的に憎むことも無く、さりとて一方的な善性を祭り上げることもなく。

好きでした。アーサー王の騎士としての生き方に誇りを持っています。仕えられたことを幸福に思います。

ですが、幼いとき、父の後ろを追いかけていたオークニーでの日々は何よりも幸せでした。

・・・会いたいか、ですか。

ええ、合わせる顔などないです。私の最後は知っておいででしょう?

ランスロット卿と殺し合い、相打ちになり、そうして、ブリテンの滅びに立ち会うこともなく死にました。そうして、母とモードレッドに全てを、その罪を、押しつけてしまった。

ですが、もしも、叶うなら。会うことが出来たのなら、と。

ふふふふ、でも、わかっているのですよ。あの方は、サーヴァントにはならない。

善き人でした、良き王だったのです。ですが、彼の人はどこまでも人間でした。

英雄になるには、彼の人の物語はあまりにも足りない。

ですが、父上はそれを気にもしないのでしょう。

・・・・覚えておいてほしいわけでは、きっとなかったのだから。

 

 

意外なことに、ランスロットとガウェインたちオークニー兄妹は仲がいい。

元々、ランスロットを慕っていたガレスは己が殺されたことやブリテンのその後に思うところはあるようだが、今は今とそれ相応に交流を重ねている。

ガウェインは、一度殺して区切りをつけているようだった。本人はそう語っている。何よりも、彼が一度言っていたこと。自分と、彼の罪にどれほどの違いがあるのかと、そう言っていた。

 

まあ、アギーが来たら絶対的にぶち殺されますね!

 

と明るく語っていたため、やはり何かしら思うところがあるにはあるのだろう。

実際、ランスロットとガウェインが顔を合わせたとき、シミュレータで一悶着ありはした。

モードレッドに関しては、彼もまたそこまでランスロットのしたことに関して何かを言うこともなく良好に過ごしているようだった。

 

(僕と、ランスロット卿で言うのなら。きっと、僕の方がずっと悪い子だから。)

 

ランスロットは複雑な思いはあるようだが、彼らの感情に足を踏み入れることもなくそれ相応に過ごしている。

立香は、その彼らの感情に踏み込んでいないところがある。そこには赦しがないわけではない。そこには、怒りがないわけではない。

ただ、ガウェインはガウェインなりに、何かしら多くの思うところがあるのは確かだろう。

 

「ガウェインは、ランスロットのことをどう思ってるんだろう。」

「・・・・赦せないのは赦せないんだろうな。」

 

静かな声に立香はちらりと彼を見た。コンラはどこか遠い目でまた、たき火を見ていた。

 

「殺したこと、殺されたこと。複雑なことは多くある。それでも、それ以上に、きっと。自分のなしたことがどれほど罪深いのか、考えてるのかもね。」

「なしたこと?」

「自罰的なのかな。相手と自分の天秤を比べて、揺れるそれに呆れてるのかもしれない。ああ、自分に、それを責める資格があるのかって。自分の罪と、相手の罪。相手がしてしまったことが罪であるのなら、それに罰がいるのなら、自分もまたそうだって。」

「ガウェインさんは、妥協のようにランスロットさんを赦している、ということでしょうか?」

「そうじゃないのかもね。赦せない以上に、きっと、情があるんだ。長い間、苦しい戦いを続けていれば深くて、強い情が湧く。でも、ボクは情があるのならその情に引っ張られてもいいと思うけどね。」

 

憎いと思うものよりも、愛しいと思うものが多い方がずっと幸せだ。

 

穏やかにそう言った少年の横顔は、まるで成熟した男のように穏やかだった。

 

「コンラさんは、ガウェインさんの気持ちを理解されているんですね。」

 

グレイは尊敬するようにコンラを見た。彼はそれに、あーと声を上げた。

 

「まあ、あれだよ。うん、あくまで予想で、彼の心は彼だけのものだしね!」

 

さ、次の魚が焼けたよ!

 

そう言ってコンラはまた二人に焼けた魚を差し出した。

 

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