ロット王は愛妻家   作:藤猫

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お久しぶりです。
なんとか完結まで頑張ります。

感想、評価ありがとうございます。感想いただけましたら嬉しいです。


門前

夢を見る。

ただ、夢を見る。

夢など見ないはずなのに、夢を、見ている。

女が一人、日の光の中で立っている。それを見る。ただ、それを見る。

別段、それに意味は無い。

ただ、昔から眺めていたものの一つを惰性のように眺めている。

ただ、他のよりも変わっていて、そうして、見慣れていた。

それは、柔らかな日差しの中にいてなお、まるで凍り付いたような、冷たい表情をしている。

それに、不似合いだと思う。

笑うべきなのだ。そんな、柔らかな日差しの中にあるのなら。

見惚れるような、美しい笑みこそふさわしいというのに。

不思議だと思う。

それはよく笑っていたのに。何故か、笑っていない。

春風に吹かれ、柔らかな日の下にあってなお、それは茫然とそこに立っている。

それが気に入らない。

あまりにも、ふさわしくないのだ。

 

「無理でしょう。」

 

人でなしの声がする。

虹色に輝く、淡い白銀の髪をしたそれは仮面のような表情でそこにいた。

 

「・・・・彼女は別に、無意味に笑っていたわけではない。」

 

ああ、そうか。それならば、用意すればいい。

女が笑えるような、そんなものを。望むものを見せるのは得意なのだ。

ふさわしい、あの女が笑えば、その日向の中で微笑めば。

それ以上ないほどに、美しい絵画のような光景になるはずだ。

 

それに、人でなしは呆れた顔をした。ああ、感情などないくせに。そんな顔をする。それは、せめてもの意思表示だろうか。

 

「いいえ、彼女が笑うには必要なものがあった。けれど、もう、それは存在しないのならば。私たちに出来ることなどあるはずがない。」

 

そういって、その人でなしは変わること無くもの悲しい顔をした。悲しいなんて、わかりもしないくせに。

 

 

 

「・・・・・ガウェイン兄上が鍵なのです。」

 

その言葉を聞いたとき、ロットはああと思った。

そうだろうと、国の中核、オークニーの城、それを守るのであるのならばあの子ほどふさわしいものはない。

 

 

「・・・懐かしきかな、我が故郷。」

 

ぽつりと零れた声に藤丸立香はゆっくりと自分の隣に立った男のことを見上げた。そこには寂しいまでに静かな目をした男がいた。

ガへリスに案内された城は、立香にはひどく、堅牢なものに見えた。色は暗く、かの白亜の城のような華やかさなど無い。遠くに見えるそれに森の中から目を細めた。

けれど、そんな堅実さと言える城は、なんだか彼らしいと感じられた。

 

「・・・・あの城に入るには、二つの方法があります。」

 

ガへリスのそれにロットが答えた。

 

「あの城の王として設定されているアーサーの許可を取るか。」

「・・・・門番である兄上を殺すか、です。」

 

それにランスロットが顔をしかめた。

立香はガへリスに事前に伝えられていたことを思い出す。

 

あの城は堅牢だ。わざと弱点を作っている。承認、それとも門番を殺すか。

本来なら最初の選択肢をとる気だった。話したとおり、城にはグレイ嬢がいる。彼女の言葉なら、陛下も聞かれると思ったが。

だめだった。

 

「・・・強行突破しかないんだね。」

 

モードレッドのそれにガへリスは苦い顔をした。

 

「だが、何故、グレイなら説得が出来ると思ったんだ?確か、あの子はアーサーの遠縁の子孫ではあるらしいが。」

 

ロットは少しだけ苦い顔をした。

 

「そんなにも、己を顧みる子ではないだろう。」

 

それにガへリスが少しだけ驚いた顔をした。

 

「・・・・お知りではなかったのですか?」

「何がだ?」

「グレイ嬢は、アーサー王の遠縁、というよりは母上の子孫という方が正しいのですよ。あの子は、ガウェイン兄上の娘の末になるのですよ。」

 

それに、その場にいた一同が目を丸くする。そうして、叫んだ。

 

「「「ええええええええええええええ!!!???」」」

 

森の中に響き渡った声の後にロットが叫んだ。

 

「ほんとか!?」

「はい、母から聞きましたので。本当にお知りでなかったのですね。」

「知らん!俺は、あくまであの子がアーサーのロンゴミニアドを受け継いだという事実だとか、遠縁だとかしか聞いていない!」

「じゃ、じゃあ、あの子!ローアルの!?」

「・・・・そうか、生き延びていたのか。」

 

立香も目を丸くした。

いいや、彼女の事情については少しだけ把握している。けれど、だ。

 

(そうか、アルトリアの血統って事は、イコールでモルガンの血統なんだ!)

 

ロットはそれに額に手を当て、そうして、あああああああと苦悶の声を上げた。

 

「あああああ、くそおおおおお!それならもっと構っとけばよかった!!」

「・・・・現金だなあ。」

「それはそうだろう!?こちとら、孫の顔だって拝めなかったんだから!そんな、孫の末とか、四捨五入でひ孫みたいなもんだろう!?」

「関係性の格付けが力業過ぎない!?」

「あああああ、なんか、アーサー関係で結構複雑らしいって聞いてたから構うの遠慮してたのに。もう、構う時間ないから諦めねえとなあ。」

 

その横でランスロットが少しだけ小さくなっているのが印象的だ。

ぼやくようなそれにガへリスが物悲しげな顔をした。

 

「・・・・ですが、それが叶いませんでした。」

「まあ、その程度のことで心を開く程度なら最初からモルガンに与さなかっただろうな。」

 

ロットは平然とそう言った。それにランスロットは少しだけ意外そうと言うのだろうか。驚いた顔をした。

 

「ええ、陛下は首を縦に振られませんでした。本来なら、それで父上達を城に招き入れる気でした。ですが、それが叶わないとなれば。」

「ガウェインと戦い、勝って、城に入れと。」

 

それにその場にいた、モードレッドとガへリス、そうしてランスロットが沈んだ顔をした、いいや、ため息を吐く者までいた。

ロットはそれに驚いた顔をした。

 

「・・・確かに、兄と戦うのは憂鬱とはわかるが。いや、そういう意味ではないな?」

「だってさあ、兄上めちゃくちゃ強いんだよ?」

「それは、そうだが。この人数ならまだなんとかなるだろう?あれは日が出ている間力が増すなら、この夜ならばそこまで。」

「兄上がこちらに召喚された折、セイバーとして召喚されておられません。」

 

ランスロットがそれに反応した。

 

「・・・では、なにと?」

「わからない。ただ、どちらかというとオルタとしての側面である。理性がない、とまではいかないが。感情の発露が激しく。城への守護、いいや、母上の側にいることに並々ならぬ執着をされておられて。そのまま、門番として城の前に。ただ、一つ言えるのは、一筋縄ではいかないだろうな。」

 

ガへリスの苦い顔に、ロットはちらりとランスロットを見た。

 

「ランスロット郷、あなたはガウェインに勝てるのか?」

 

ストレートな問いかけにランスロットは鳩が豆鉄砲を喰らったかのような顔をした。ロットはそれに平然とした顔をする。

 

「なんでも円卓で最強らしいな。それなら、ガウェインにも勝てるだろうが。まあ、条件が色々と違うのならば難しいか?」

「あ、ああいや。その、生前ならば確かに私は最強と言われましたが。ただ、私はサーヴァント。私の逸話には、ガウェインに負けたというものがあります。ですので、それに引きずられると。」

「あー、そっか。それは、そうだな。」

 

ロットはちらりと自分の持った剣を見た。それは、変わること無く、装飾など一切無い無骨なものでしかない。

それにモードレッドが気になっていたと口を開く。

 

「・・・・そう言えば、アギー兄上の宝具の無効化って、父様がしたの?」

「そう言えば、あれってロット王の宝具?」

 

それにロットはああと頷いた。

 

「そうだな。まあ、そんなものだが。俺の宝具はちょっと特殊でなあ。やれるとしたら一回だけなんだ。」

「なんで?」

「やったら、俺は消し飛ぶ。」

 

淡々とした言い方でそう言った。それにモードレッドは顔をしかめた。

 

「・・・・父様の話に、そんな自爆系のものなんてあった?」

「ないが。まあ、俺は成り立ちが色々と特殊だからなあ。だが、そうだ。」

 

使い方はわかってる。だから、安心しなさい。

 

柔らかく笑った男は、なんだか全部を知っているかのように微笑んだ。

 

「よっし、それじゃあ。会いに行こうか。」

愛しい、五月の鷹に。

 

 

 

 

ふと、気がつく。

うたた寝をしていたかのような、そんな感覚だ。

いいや、敵が来ないのならば、それはいつだってうつらうつらと夢を見ていた。

それは、彼の母がした、唯一の慰めだ。

せめて、心の慰めになるような夢を見るように、と。

優しい夢だ。

 

幼い自分が駆けている。遠くで、黄金に実った麦の波が揺れていた。

もしかしたら、真っ白なパンが食べられるかもしれない。

嬉しくて、そんなことを考える。

明日は何をしようか。

弟たちと鍛錬をしようか、いいや、従者を連れて森に行こうか、妹のために綺麗な石でも探そうか?

ああ、でも、母上に勉強もしなさいと言われていた。

やだなあ、釣りもしたいし、弟たちとも遊びたい、そうだ、教わった罠を張って鹿でも取りたい。

走る、走る、どうして走るんだろうか。

考える。

明日の楽しいことを考えて走っている。なのに、何故、そんなことを考えているのだろうか?

 

どうして、と。

 

そう思ったときだ。

 

「ガウェイン!」

 

声がした。それに、自分は立ち止まる。夕焼けの中、麦の畑が、まるで黄金の海のようだった。

その中で、誰かが立っている。

影になって、見えない。ただ、黒い髪が夕日の中でたなびいていて。

 

何かの気配を感じた。

それにガウェインはゆっくりと、目を開く。

見ていた夢を忘れる。切り捨てる、必要は無い。ああ、敵を殺さねば、母を守らねば。

それに考えが切り替わる。

 

ゆっくりと、それは剣に手をかけた。

そこにいるのは、黒い騎士だ。

黒い甲冑に、金の髪、そうして鉄のバイザー。

禍々しいまでのそれは敵に目を向けた。やってきたそれに、ガウェインは固まった。

 

それに、彼は、夢の続きのように呟いた。

 

「ちちうえ?」

 

幼い子どものような声で、それは茫然と呟いた。

 

 




ガウェインは。アルトリアオルタみたいな格好を想像してください。
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