こんなの需要…………ある?
世界中の気配は薄くなった。
怪人が現れて十年経った今、気づけば人通りなどかなり減った。
自分ではない何者かがどこかにいないか注意しなければならないほど、ほとんどの人は隠れるようになった。
世界は変わった。
「おばぶっ!」
『虎と人間が融合したような赤子』がたった一人、いや一匹?どっちか分からないがとりあえず一人と仮定して、たった一人でよちよちと闊歩しても誰も見向きもしない。それどころか別方面へ警戒しているように見えた。
育児放棄かと思われても仕方ない状態の赤子ではあるが、それよりも『彼ら』の意識は別の方へ向いていた。
ドゴンッ!
世界は争いに包まれた。
個人で大いなる力を持てば、それを常に持て余すというもの。そして、身も変わればそれにつられて心も浸食されていくのも当然のこと。
「ここの物資は俺のものだ!」
「渡すものか!これは家族が生きるために必要なんだ!」
赤子の背後で起きた爆発は、全身から火を出している炭のような体をした男が起こしたもののようだ。
それに対するは首に酸素ボンベのようなものをつけた半魚人。この二人は酸素ボンベをとりあっていたのだ。
と、このように文明社会は大きく崩れ、秩序あるのは怪人として相当前から活動かつ組織を築いていた者らのみであった。
かつて下々の民として無関係と思っていた者は、例え怪人になったとしても大いなる力を持たざるなら怯えて暮らさざるを得なくなってしまった。
どこかの傘下にはいろうとしても伝がない。未だ怪人となっていない人間はもはや行く当てもなくなってきている。
世界は終わった。
人間として刻んできた歴史は幕を閉じた。
「いいぞ炎人間!焼き魚にしてしまえー!」
「魚君も負けんな!水だして消していけぇー」
殺し合いが起きようとも野次ばかりが飛ぶようになってしまった怪人たちの世界と化した。
混沌となる場を収める英雄はもうどこにもいない。
かつてにはいたかもしれないが…………
「ばぶー」パァンッ!
「ぐわー!?」
「どわー!?」
「何だ今の!なんか黄色いのが音速みたいな速さで通ったぞ!?」
「今ので二人とも弾き飛ばされた!賭けは無効だ!」
神の愚行によって全て無駄となったのだ。
「レイってほんと便利だよな。一駆けで世界を見回れるのは卑怯すぎる、って肉をとるな!野菜を食え」
「便利って言うな。いや、実際便利だけどさぁ」
「はふはふ、実際そうじゃん。電気の速度で動けるって相当凄いことだよ?」
「衛星をハッキングした方が早いと思うが…………まあインターネットがほとんど機能しなくなった今では特定はたやすいからの。肉貰い」
「だーかーらー!野菜を食えっつってんだろ!それ俺が狙ってた肉なんだよ!」
一方そのころ、一人と三匹は焼き肉をしていた。
人里離れた場所で家畜を飼い、ついでに野菜も作って牧場主として大成功していた。
大成功といっても暮らしているのは一人と三匹と家畜大勢+α。ついでを言うとどこかの勢力についているという訳でもない。
既に『これだけで一つの勢力』として成り立ってしまったのだ。
お分かりであろう、世界を簡単に股にかけることが出来る雷に機械と知識に長けた化け狸、無限に命を使いつぶすハイエナに加えて暗殺者として最高峰の兎。
回復役が足りない?そんなものは再生したり生き返ったり、そもそも傷つかないから問題ない(僕は問題あるよ!?by 兎)。
たまに外に出て情報と資材をこっそり集め、思うままに過ごしている。
そんなこんなでしっとりとした牧場生活を四人は送っていた。
「全く、俺が雑食だからいいものを…………で、どうだった?」
「私も古巣も気になるが、海外も相当変わっただろう」
「ああ、アメリカなんかは帝国になっていたな。帝王みたいなのが独裁政治をしてた。妙に筋肉ダルマが議員に多かったが、割と安定してたぞ。それに対して中国は…………相変わらず無法地帯だ」
「ふーん、じゃあ中華圏は注意しなきゃいけないって感じだね!」
「そろそろ警備ドローンも新調すべきかね。ま、私が創ったやつは街の最新版をさらに先を行く性能だから心配はそこまでないんだがの」
大狸の科学力は相変わらず凄まじく、たまに外から教えを乞う怪人がやってくることもある。
下心があるのが大半だが、純粋にやってきた者らには対価を求めてある程度は教えていたりする。
牧場をするキッカケは対価として家畜を持ってきた者がいたことがきっかけであるのだが、これは別の話。
「いやー、あれから結構経ったけどこう言うのも悪くないね。みんなでいるから
「この生活がどこまで続くか見ものだな」
「とりあえず真っ先に死にそうなのは『ジュー』だと思うけどな」
「『リク』くん酷いよ!みんな揃って不死身なのが悪いんだよ!?その要素分けてよ!」
「ま、分けられたとしても受け継ぐのは私たちの子供になるだろうな」
「うぅ…………性欲はみんなで発散してるんだけど子作りは『リク』くんしかできないから」
「悪かったな種無しで」
「科学の力で遺伝子を再現するのは難しいの。この前のやつはうまくいかなかったからねぇ」
「あれは、もう勘弁だな…………」
ここまでにあったことを思い出しながらそれぞれ野菜を頬張る。肉を先に食べきってしまい野菜しか残ってないのだ。
幸いにも全員が人間としての雑食性は残っていたので兎でも肉は食べれるし、ハイエナでも野菜を食べられる。
食事を終えてそれぞれ解散、といくはずだった。
「『レイ』、久しぶりに僕と遊ぼうよ。街で貯めたモノもあるから…………ね?」
「…………この場で言うかお前」
兎の言った言葉にハイエナと大狸がギラリと目を光らす。
この反応は、前にも何回かあったことがあり…………
「ふーーーーん?俺もその『遊び』に混ぜてもらおうかな?」
「新作があるからそれも試して欲しい。カラダで、ね?」
…………
「…………家畜の世話をしてからな!」
「あ、逃げた!」
焼肉をした後で世話と言うが、自慢の速度で食卓から消えた。
変なとことでヘタレというか。『レイ』が身体を許した回数は一年を通して半分もない。
言っておくが、怪人となると様々な欲が強くなるため異性として年の半数を許してないのは大分溜まったりする。
「…………全く、あいつのああいうところだけは直らんの」
「真面目なんだよあいつは。いつまでも死んだ『彼女』のことが後悔で残ってるんだろうよ」
「はぁー、全く敵わないなぁ。その人に負けないよう僕らも女を磨こう!」
「…………元々は男だったよな俺ら?」
「『リク』は一人称から直さないといけないね」
「『ケン』は順応しすぎだ!全く、
「なにさー!元々女装癖はあったけどちょうどいいんだもん!」
「ぶりっ子するな」
やれやれ、と言ったふうに三匹もようやく動き出す。
さっさと家畜の世話をして、みんなで楽しい1日を過ごすために。
焼肉の残り香を残したまま、食卓に誰もいなくなった。
そして、明日もまた怪人が増えてまた混沌と化していくのだろう。
それでも、一人と三匹の生活は変わらないのだろう。
もしかしたら『増える』かもしれないが…………それはまた別のお話。
カメオ出演、誰でどの作品は分かるかな?(匿名投稿に変わってるから探せないかも)
最初に言った通り、これで最終回です。文明崩壊エンドです。
もし、『レイ』が『ヒーロー』になっていたら怪人化の進行はもっと遅くなってただろうが、これが結末です。
前書きの通り、中の話をすると18禁になるのでこれでおしまい。需要あったら書くかも。
ご愛読ありがとうございました。次の作品が出たらよろしくお願いします。
追記・需要あるみたいだから18禁書いたよ。興味ある人だけは読んでね。
https://syosetu.org/novel/294471