ノーゲーム・ノーライフ ―神様転生した一般人は気づかぬ間に神話の一部になるそうです―   作:七海香波

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 お久しぶりです。いや、ホントにもう長らくお待たせしました。
 ……実は十話くらいで終わる予定だったのに、気付けばまだまだ続きそうです。
 とにかく、最新話です。
 更新は非常に遅いですけど、是非このまま読み続けて頂ければ幸いです。

 ……あ。今回は後半がちょっとアレです。


第十二弾 快楽に溺れ、天翼は堕つ

 

 白が空との銃撃戦を行っていた頃――。

 

 ショッピングモール地下三〇階の大広間の中、黒といづなの二人は常人に捉えられないような速度で剣撃を繰り広げていた。いづなも銃を持ってはいるのだが、常に弾道予測線の上を黒が通らないようにしているため、銃弾が発射されることはほとんどない。

 いづなが音に近い速度で振り下ろした剣を黒は右の刀身の上を流すように反らす。ついでに少しばかり力を加えていづなの体勢を崩し、そこに左の突きを放つ。それをいづなはグリップの底で殴り返し、おまけとばかりに引き金を引いて胸を狙い撃つ。黒の心臓に狙いを定めたその弾丸は、咄嗟に黒のステップでかわされる。

 

 互いに一歩も引かず、出来た隙を狙って攻撃を仕掛けつづけていく。

 更に幾度と剣撃を重ねた中、向こうから声を掛けてきた。

 

「……まさかここまで防ぎきるとは、な」

「生憎あっちみたいにニートやってたわけじゃないんでね。普段から鍛えるなんてことはやらないが、いざという時には相応に動けるようにしてるんだよ」

「ふぅん。それでは、何処まで着いてこられるか――征くぞ?」

 

 いづなの身体が再度、鮮血に染まる――“血壊”。

 いくら血壊の使える個体とはいえ、そう連続して使えるわけもない。体力と同時に精神力まで湯水のように使われていくそれは、回復に相応の時間を必要とする。が、ここでコレを使っておかねば、後々面倒そうだ――と、いづなは考えた。

 だからこその“血壊”。これで一気に押し切る。

 ――しかし。

 たかがそれ(チートプレイ)で簡単に押し切られるようなら、(クロ)はそもそもこの舞台には立っていない。

 

「生憎、これもモンスター一匹防ぎきれないような剣ではないんだ」

 

 先ほどよりも速度を上げたいづなの攻撃に、黒は危なげなくも付いていく。

 

「後、行っておくが、俺は剣士じゃないんだぞ――ホラ」

 

 パンッ!――黒が懐から取り出して真上へと放り投げたものが、爆発する。

 閃光音響弾(フラッシュグレネード)――真上で生まれた小さな太陽が、血壊で数百倍にまで引き上げられた五感の内、視力と聴力を灼く。

 

「ぐぁッ!」

「ふんっ!」

 

 一瞬目と耳を反射で塞ぎかけたいづなの身体を、黒は思いっきり蹴り飛ばした。

 どれほど力が強くても体重は白と同じ程度のいづな。彼女は黒の蹴りによって、いとも簡単に広間の端へと吹っ飛ばされていった。丁度そこに積んで有ったいくつかの段ボールの山の中に飛び込んで、その辺りにそれらを思いっきり撒き散らしてしまう。

 

「……ぐっ、そんなモノを一体どこから……」

「そこら辺の店頭に並んでたぞ。にしても、東部連合ってどこまで物騒すぎる玩具売ってるんだ?こんなの子供に遊ばせたら大変だろうに。今みたいに、な」

「っつ……」

 

 いづなが目を押さえながら立ち上がる。

 当然そこで回復を待つほど出来た人間では無いので、遠慮無く近づいていく――わけにもいかない。

 

「さっさと構えなおしたらどうだ?とっくに回復してるのはバレバレだから。突っ込んでいったらすぐに反撃に転じてくるだろお前」

「ふっ、分かっていたか……」

 

 笑いながら立ち上がる彼女に、俺は剣を再度構え直す。

 

「で、ジブリールは控えさせたままで構わないのか?そろそろ出して来なきゃつらいんじゃないのかね?」

「ふ、まだまだだ。今奴を動かすと、こちらにとっても邪魔になるからな」

「そうかよ」

 

 ……本来は広範囲高威力の爆撃が持ち味の天翼種(フリューゲル)

 単なる剣撃の死合に混ぜ込むと、味方ではあるモノの、細かい芸が出来ない故に共闘が難しいのだろう。確かにFate的にも、ヘラクレスでも無ければ他のバーサーカー枠とは共闘なんて出来ないだろうし。ランスロットとの共闘なんてまず無理だろうな。

 俺としてもジブリールがはいってくれれば少しはいづなの剣も単純になると思っていたのだが、やはりそれはないか。

 最初の辺りにそれを悟ったらしく、いづなは数度ジブリールを使った後はただ壁の側に控えさせている。

 

「なにしろ、天翼種(フリューゲル)の握力からも剣を取れるような小手先の相手だ。無理に力で押し切れないのだろうからな」

「……まあね」

 

 そう、今更な話だが、俺の構えている二剣の内の一つは、先ほどの接触の際にジブリールからかすめ取ったものなのだ。そこで手癖の悪さを見切られていた、というわけか。

 だから相手も単純な力押しの動作を取ってこないらしい。

 

「そぉれっ!」

 

 再度いづなが距離を詰め、剣を振るってくる。

 黒はそれを受けながら、防戦メインで剣を振るう。そして時折生まれた隙を狙って、容赦なく反撃を狙っていく。

 

「それにしても、怖くはないのか?」

 

 そのまま数度剣を重ねたところで、突然いづなが口を開いた。

 

「何が、だ?」

「その剣が、に決まっているだろう?どこで学んだかは知らないが、碌でも無い師なのは間違いがないな――ほら、今のように」

 

 いづなが黒に出来た隙を狙い右腕を奔らせる。

 しかしいつの間にかそこに移動していた黒の左腕によって、その攻撃ははじき返されてしまう。それでも言葉通り彼女の予測していた展開のようで、いづなとしても本命ではなかったらしく、その剣には余り力が込められていなかった。

 

「お前はどうやらわざと隙を作り、そこを狙わせることでこちらの剣を読みやすくしているのだろう?一歩間違えば即座に殺される、危険な戦法であることは分かっているだろうに」

「……そんなことを言われてもな」

「しかし、かと思えば」

 

 弾かれたいづなの腕に再度力が入る前に追い打ちをかけ、強引に作った隙を狙って、黒は突然嵐のような激しい斬撃の連打にスタイルを転化する。

 

「突如防御をかなぐり捨てての特攻を仕掛けてくる」

 

 いづなはそれらを自慢の反射神経で防ぎ、その中の力の入った一撃を利用して跳んで、後ろへと離れていく。

 

「全く、統一性のない剣術ばかりで対策のしようがない。それで居て、こちらと平然と渡り合う。こんな相手は初めてなんだ」

「何事にも初回があるのは必然だ。だったらこのまま敗北まで経験していくと良い」

「ふん、そこまではお断りだな!」

 

 距離を取ったいづなを追うように黒が駆ける。

 

「ジブリール!」

「はいマスター、仰せのままに!」

 

 しかしその間に突如、今まで壁の隅で突っ立っているだけだったジブリールが乱入してきた。その力任せの一撃を受け流すようにして防ぎながら、黒はいづなに苦笑して問いかけた。

 

「ったく、此奴を入れると面倒になるんじゃなかったのか?」

 

 そう言いながら、黒は続くジブリールの振るう拳を避ける。

 

「まあな。剣を持って無いからトドメを刺すことが出来ないし、精々肉盾が良いところだろう。しかし盾は盾でも、嵐のような怒濤の攻撃で相手を防いでくれる」

 

 ……彼女は確かに剣こそ持っていないものの、回避はそれなりに出来ないこともないし、なにより一撃の重さはご承知の通りだ。相手を足止めするには十分な役割を果たしてくれるだろう。

 というか逆に武器を持っていないから、その一撃でゲームオーバー(メロメロ)になることがない分、いづなより面倒な相手だ。死ぬことが無い代わりに破城鎚の連打を受けるなんて、ある意味そっちの方が地獄である。

 

 だからこそ小手先の技を利用したりしてジブリールを戦線から遠ざけるように誘ったのだが……。

 

「そして私はこの隙を利用して、少し休ませて貰うとするよ。さすがにおいかけっこで少々疲れたんでな」

「……俺だって疲れてるんだがな」

「だったらさっさと私に惚れてくれればいいんだ。そうすれば全て丸く収まる」

「俺はまだ幼女趣味(ロリコン)に目覚めた覚えは無いし、せっかくの申し出だが、それだけは丁重に断らせて貰うとしよう。空にでもいってやれ、多分そっちの方があいつは喜ぶぞ」

「その分白がキレるのだろう?」

「あ、気付いたのか?」

 

 楽しそうにくっくっと笑ういづなに対し、軽口を返しながら黒はジブリールの攻撃を捌き続ける。確かにジブリールを相手取るのは天災を物理的に相手しているようなものだが、クセさえ掴んでしまえばなんて事は無い。

 ここしばらく一緒に暮らしてきたのだから、黒は彼女のそういうところは全て見知っている。だからこそ、そんな余裕もあったようだ。

 

「まあな。私は恋愛など生まれてこの方一度も経験した覚えは無いが、あのような分かりやすい関係なら一目で見て取れる」

「へぇ、ちなみに俺とジブリールだったらその目にはどんなふうに映ってたんだ?」

「随分と歪な主従関係」

「……そうかい」

 

 一瞬だけ眉をひそめながらも、黒は戦闘を続けていく。

 そんな彼の様子を肴にしつつ、いづなは戦いと言う名の美酒に酔って喋り続ける。

 

「悪いが開始時の様子からそっちの事を観察させて貰っていてね。鉛や水銀のように重い愛を語るお前と、愛と好意の区別のついていないジブリール……男性は二度と届かないような何処かにいる女性を恋い慕い続けていて、そんな男を分かっていながら従い続ける女。これを歪としてなんというのやら」

「さあね。言われてみればそんな感じだが、生憎俺はそれに近いような関係を知ってるんでね、そう歪とは思わないさ。強いて言うなら歪んでいるのは俺だけさ。彼女はただ純粋なだけ、そうは思えないか?」

「……そんなものか?」

「多分な。最も、これもあくまで俺個人の意見だし、一般論とは限らないがな。――というわけで、そろそろ目を覚ましてもらおうか、ジブリール!」

 

 黒は彼女の一際大きな攻撃をはじき返した後、刀を近くの地面に捨てる。

 突然のその行動に、ジブリールの目が一瞬そちらに引きつけられた。そうして生まれた僅かな意識の乱れを狙って――黒は彼女を、思いっきり抱きしめた。

 その異様な動きを受けて、ジブリールが硬直する。……わざわざ自分を相手にして、なぜ武器を捨てて抱きしめてくるのだろうか。そんな疑問が、彼女の頭を駆け巡る。

 

「お?」

 

 その光景にいづなは手を出すどころか、面白そうな表情を向ける。なにをしている、早くトドメを刺せといのが語りかけるが、そんなどうでも良いことに耳を傾ける気は起きなかった。

 人の恋路を邪魔するなんて無粋なことは、実に下らない。というか敵を前にしてこんなユニークな出来事をする彼らは非常に興味深い。――そんなことを言い訳にしながら、彼女は黒とジブリールの様子を見る。

 

 画面の外の観客も同じように、一体何をするのかを見守る中――。

 

「ほら」

 

 黒の手がジブリールの背へとまわり、その付け根を軽く撫で上げる。

 ――それが一体何だというのだと、黒がなにをしたかったのか分からないいづなだったが、次の瞬間、驚くべき声を聞くことになる。

 

「ひ――にゃぁぁぁんっ!?」

 

 ジブリールが妙に艶っぽい声を、遠慮も無しに響かせたのだ。――そう、天翼種(フリューゲル)の翼は性的な弱点なのである。

 それを思い出した黒は、変に時間を稼がれて体力を回復されるくらいなら、いっそのこと、さっさと快楽で堕としてしまったほうが早い……そう考えて、少々強引にこの手を取ったのだった。

 ――理性を失っている今の状態なら、それは尚更効果を発揮するだろうからな。元々コイツは周囲の目があっても平気で快感に悶えるタイプだし。残念なことに。

 

「にゃ、にゃにぉ――ひうぅぅっ!」

 

 戸惑いの声を上げる彼女を無視して、ただひたすらに彼女の性感帯である翼を撫で、手の中で揉んだり、さすったりして快感を誘っていく。本来ならばこんなことはしたくないし、体の中では一部が恐ろしいほどに血流が早くなっているが、それでもゲームに勝つためにはそれくらいなんて事は無い。

 自身のそれを表に出さないようにしながら、ジブリールの性格にあったような攻め方を続けて行く。あくまでこちらは無表情のまま、言葉も合わせて彼女を追い込んでいく。

 

「ほら、その辺りが良いんだろう?」

「ああもう、いい加減になさいま――あひぃっ!」

 

 徐々に目の前のジブリールの顔が、敵対していた相手による快感に悔しがりながら、それでも抗えない快感に悶えるように、頬を振るわせつつ、ひどく紅潮していく。

 それでも黒は一切手を緩めずに、なおも追撃する。手に込める力に緩急を付けたり、時折不意打ちに指をつーっと流したり、また軽くピンッ、と弾いたりして少しずつ彼女の快感のゲージを上げていく。

 

「もう、本当にっ、これ以上やるというのならぁんっ!……・私も容赦しませんよ――ひぅんっ!」

 

 そんな事を口に出したりするが、それでもこちらは手を休めない。

 

「どう容赦しないのか興味が有るな、なら言ってみろ」

 

 むしろそんな挑発的な言葉を耳元で呟きながら、ふーっと耳に息を吹きかける。そのくすぐるような感覚に、ジブリールの全身が小さく悶えるように震える。

 彼女はこちらの背中を叩いてくるが、そこには力が入っておらずポカポカとした可愛らしい物でしかない。ちなみにいづなはまだ楽しそうにニヤニヤと、側にあった瓦礫に腰を下ろしてこちらの様子を見ている。

 俺はあくまでそのまま遠慮無くセクハラ紛いのことを続けて行き――やがて。

 ジブリールの体から伝わる鼓動が、徐々に激しくなってくる。

 

「もう、あっ、ひっ、止めて、くださっ……」

 

 そんなことを言ってくるが、当然無視して俺は続行の意志を体で示す。

 彼女の手も俺の背中にただ掛けられただけの状態となり、口では反抗の意を示しながらも全身をこちらに預け始めてきている。

 いかにいづなに惚れていたとしても性根は変わっていないらしく、すぐに快楽の渦に溺れてしまうものらしい。……ここまで弱いとは思っていなかったが、強気に攻められると一気にここまで弱くなってしまうとは。

 徐々に俺の首元に当たる彼女の吐息が甘さと暖かさを増していき、涎まで垂れてくる始末だ。……もう小さいお子様は見てはいけないような顔になっているのかもしれないが、そこはあの獣の爺がモザイクをかけたりしているだろう。

 

「もぅ……ダメッ……限界で、御座いますぅ……あ、ああ、ひにゃぁぁん!!」

 

 最後にそんな声を上げて、彼女はくたっとなってしまった。全身から力抜け、俺にその柔らかな肢体を預けてくる。

 ――さて、と。

 俺はあくまで冷静さを保ちながら、彼女の体を少し引きはがすようにしてゆっくりと自身の前へと持ってくる。……その際に色んな心地よい感触が伝わってくるが、それらを意志の力で無視し続ける。

 ついでに顔が丁度正面に来たのだが、本当にだらけきった顔をしてるな。当初はあんなに凛々しい感じで美しいと思えたのに、それが快感に歪むとこうなるのか。もはや恥女みたいなものだが、それでもどこか気品が残っている。

 

「あ、ひ……ふにゅぅん……」

 

 もはや息も絶え絶えで、その声は女性特有の甘い香りと熱っぽさを合わせて艶やかな雰囲気を醸し出している。男なら誰だってこの顔を見れば、一発で陥落するだろうと思えるほどだ。俺だってシロナを知らなかったら、この場で襲ってしまうくらいに今の彼女は“男”を刺激する粧いだ。

 ゴクリと唾を飲み込んで本能を理性で抑えながら、足下に転がっていた剣を足で蹴り上げて右手で握り、絶頂の余韻に浸っている彼女の頭を、そのまま峰の方で思いっきり殴りつける。

 

「はぐぅっ!」

 

 なぜかそれさえも幸せそうな顔でそれを受け入れながら、彼女は地面に落ちて気絶してしまった。……まぁ、こいつの身体能力なら放っておいても大丈夫だろう。

 そして改めて息を整えていづなの方へと向き直ると、彼女はパチパチと拍手しながら立ち上がった。

 

「ふう、中々面白い余興だったな」

「その見た目で言うことがそれかよ……この耳年増め」

「失礼な奴だな。というか公衆の面前でそんな事をしでかしたお前に非難する資格はない」

 

 よっこらせ、と立ち上がった彼女と俺は、再度剣を構えて対峙する。

 彼女は何処か呆れたような目でこちらを見てくるが、知った事かとそれを無視して俺は話を続ける。というか、下手に触れたら危険な感じがする。

 

「それで、ジブリールをこちらに渡しても良かったのか?お前のことだから、手段はともかくいずれ取られることくらい分かってたろうに」

「なに、構わんさ。あそいつが思ったより扱いにくかったものだからな。正直お前は良くそんなのを躾けられる、と少しは尊敬するぞ」

「普段からこんな感じに躾けた覚えは無いがな――そしていづなさんよ、残念ながら一騎打ちはここまでらしいぜ?」

 

 黒の耳にはこちらに近づいてきている三人の足音が届いている。恐らく空にステファニーに、そして白だろう。それも正気を失ったような足取りではなく、至って正常な間隔を刻んで向かってきている。と言うことは、どうやら白は上手くやったようだ。

 それは同じく、いづなの耳にも聞こえて来ているだろう。

 

「ふむ、ではまた身を隠すと――おっと」

 

 再度逃げようとしたいづなに、鋭い一閃が襲いかかる。彼女は咄嗟に反応してそれを避けたが、おかげで元いた場所に戻ってきてしまった。

 その目の前に降り立ったのは、目を覚ましたジブリール。

 どこかまだ虚ろな雰囲気をのこしているが、しっかりと瞳に正常な光を浮かばせている。

 

「うふふ、もうそんなことはさせませんよ獣風情が。よくもこの私を操ってくれましたね」

「それはゲームの仕様だろうに。それに最後はあれだけ感じていたんだ、むしろその切っ掛けを作った私に感謝して欲しいな」

 

 ふ、ふふ、と怒り半分で悪魔のように笑いながら語るジブリールに、いづなは同じく挑戦的に笑って応対する。

 

「だとしても私のこのマスターに対する想いを一時的ながら奪ったのは貴方。その罪は貴方に帰属すべきでしょう?殺すだけでは飽き足りませんねぇ」

「それは止めて貰いたい物だ……ふむ、しかしこれではどうしようも無いな」

 

 丁度そこで、空達が広間に入ってくる。

 何故か白はステファニーに背負われているが、その他は至って元気そのものにみえる。目も元に戻っている辺り、彼女一人で上手くやれたということか。

 こちらに近づいてきた空に、久しぶりだな、と言葉を掛ける。

 

「遅いぞ空。走ってこいっての」

「ぜぇ、ぜぇ……いや、十分頑張ったっての……ニートにゃこの辺が限界なんだよ」

「隣を歩く一般人(ステフ)と走って同レベルってどういう事だよ。しかも白を背負ってるってのに」

 

 白がステフの背中から降りて、こちらにVサインを送ってくる。同時にジブリールがこちらへと戻ってくる。

 そして全員で改めて、いづなへと対峙した。

 

「――さて、長らく掛かったが、ようやく見つけたぜぇ、いづなたん!」

「疲れた分、後でモフモフして癒す……異議、なしっ!」

「私としてはもうどうでも良いのですが……」

「いえ、失礼ながらその前に私の愛を侮辱した罪として半殺し……否、九割殺しさせて頂きたく存じますっ」

「少しはまともな言葉を話せよお前ら」

 

 何だかんだで普段通りのテンションの五人が揃う。

 これならば、まず負けることはないだろう――誰もがそう思っていた。

 

 しかし彼ら五人を目の前にしても、いづなは一向に戦意を緩めようとしない。

 それどころか、ますます戦意が募っている様子だ。ここは仮想空間だというのに、本物の圧力さえ感じられるような脅威の視線が五人に突き刺さる。

 対峙する正面の彼女の小さな体から発せられる重圧は、黒の手の平の中にじっとりと汗をにじませてくる。

 

「ふん――甘いな」

 

 そんな一言が発せられる。

 と同時に、今の日常的な空気が一瞬にして吹っ飛んでいった。

 

 ……戦いはここからが、本番のようだ。

 

 




 次からはようやくゲームも終盤戦です。
 ここまで色々仕込んできた分を、そろそろ解放していこうかと。
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