二代目勇者が父の遺志を継ぎ、世界を救うまでの一大冒険活劇――――――ではなく、同じ町内の星野さんちの娘が、別口で魔王討伐を命じられる話。

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就活 or 魔王討伐

 ――精霊歴2007年。平和なこの世界に突如“魔王バラモス”と名乗る魔族が現れ、人類に対して宣戦を布告した。強大な配下を多数従える魔王軍を止めることは何人(なんぴと)にも敵わず、世界の国々は碌な抵抗もできないまま次々と滅ぼされていった。

 そんな絶望の中、人類の未来を守るべく一人の男が立ち上がる。その者の名は勇者オルテガ。アリアハンが世界に誇る史上最高の戦士は、『これ以上魔族の好きにさせてなるものか』と、単身魔王討伐のために旅立った。

 その実力は噂に違わず、オルテガは旅立ち直後から各地で目覚ましい活躍を見せた。魔王軍の将をことごとく打ち倒し、いくつもの国や街を魔族から解放し、そして長い旅路の果て、ついに彼は魔王城に後一歩のところまで到達したのだ。

 

 ――が、そこが彼の限界であった。

 魔王軍の幹部とネクロゴンド火山にて対峙したオルテガは、健闘も空しく、最後は敵諸共火口に落ちて相討ちとなってしまう。

 人類最強と謳われたオルテガでさえ、魔王の拠点に辿り着くことすらできなかった。その事実に人々は悲嘆に暮れ、世界は真の絶望に沈まんとした。

 

 

 

 だが、全ての希望が潰えたわけではない!

 オルテガの訃報から10年が経った今日この日、彼の子が父の無念を晴らさんと、二代目勇者としてアリアハンを旅立つのだ。

 ……しかしながら、何の支援もないまま行かせては彼もまた父と同じ最期を辿るかもしれない。ゆえにアリアハン国は、総力を挙げて全面的なバックアップを行った。実力と人格を兼ね備えた優秀な仲間を供に付け、潤沢な資金と装備品を惜しみなく与え、他国に頭を下げてまで勇者への協力を要請した。

 

 そして最後の仕上げとして、彼らは勇者支援のために一大プロジェクトを立ち上げたのだ。

 今回アリアハンは、オルテガの二の舞にならぬようにと仲間や物資を提供したわけだが、これはパーティそのものについても同じことが言える。すなわち、勇者のパーティが一組だけでは、求められる仕事が多過ぎていずれ手が足りなくなるかもしれない。あるいは、大勢の敵軍団と戦うときに多勢に無勢で一方的にやられてしまうかもしれない。

 ゆえに彼ら王政府は考えに考え、三日に及ぶ徹夜会議の末に、ついに一つの結論に達する。

 

 

『一組だけで足りないなら、もっと増やせば良いじゃん』――と。

 

 

 そう、一人だけに使命を押し付けるのではなく、民間からも広く()()()()()()()()()()のである。

 

 

 

 ――題して!

 

 仕事がなくて燻ぶっているそこの君! 世界平和のためにその力を役立ててみませんかプロジェクト!

 年齢、性別、人種、国籍、学歴、経験、一切不問! 求めるものは平和を願う心とやる気のみ!

 丁寧な指導と盤石の支援体制で初心者も安心!

 昇給・賞与制度あり! 任務達成後は近衛兵や官僚として正式採用の道も!

 オルテガ二世だけに全て押し付けてはアリアハン人の名が泣くぜ!

 

 さあ、家業を継げなくて職にあぶれている次男以下のみんな!

 新卒で就職できなくて困っている非正規雇用のみんな!

 ついでに、日々家でグータラしているヒキニートのみんな!

 今日から君も政府公認勇者(安定の公務員)だ! オルテガ二世の後に続き、世界を魔族の手から取り戻そうではないか!

 

 興味がある方はぜひ一度王城までお越しください! 美味しいお茶とお菓子もあるので、説明だけでも聞きに来てね!

 

                                アリアハン城 人事課

                                TELL ○○○-××××

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――というわけで、みやこ。ちょうどいいところに仕事の募集が来たから、アンタ今から行ってきな」

「無理に決まってるでしょおおおッ!?」

 

 少女の平穏な日常は、母親の無慈悲な宣告によって突如崩壊した。実家暮らしのひきこもりコミュ障にとって、それはまさに青天の霹靂であったのだ!

 しかし母は、娘の嘆きなどまるッと無視して問いを重ねてくる。

 

「あのね、みやこ? アンタ、今が何月だか分かってる?」

「うっ……。し、七月です」

「そうだね……。それでアンタ、半年前に私に何て言った?」

「……し、新年度までにはちゃんと仕事見つけるから……し、心配しないで……と、言いました」

「そうだね…………、

 

 

 

 

 ――――で? アンタ今、何やってるの?

 

 

 

 

 …………。

 

 ………………。

 

「……か……家事手伝いを、少しょ――」

「あ゛?」

「ニートですうううーーーーー!! ごめんなさいお母さんんんんーーー!!」

 

 ジャージ姿で正座させられていた娘は、ついに母に向かって土下座した。

 彼女の名前は星野みやこ(19歳、無職)。“新卒で就職”という世間の流れに見事乗り損ね、めでたく就職浪人生活が決定した、実家暮らしコミュ障ヒキニート女である!

 

 ……とはいえ、彼女とて望んでこんな状況になったわけではない。

 騎士学校での成績は平均よりもかなり優秀だったし、学業以外のスペックだって概ね高水準だ。苦手だった運動も学校生活の中でできる限り改善してきたし、彼女なりに三年間精一杯の努力は続けてきた。

 

 悲しむべきは、その筋金入りのコミュ障であった。

 家族以外の人間とは会話どころか目も合わせることすら満足にできず、コミュニケーション能力は全くの壊滅状態。一番マシな事例で、優しい年配教師相手に『はい』『いいえ』を何とかつっかえながら言える程度。これでは自己アピールなど夢のまた夢である。

 当然就活や面接なんぞうまく行くわけもなく、見事この春からダメダメニート生活に突入したのであった。

 

「というわけで、みやこ。アンタに残された道は、『死ぬ気でコミュ障改善してもう一回就活を頑張る』か、『公募勇者になって魔王討伐の旅に出る』か……、二つに一つしかないんだよ。分かったかい?」

 

 母親の最後通告に、しかしみやこ(ダメニート)は最後の抵抗を見せる。

 

「……い、いや、あのお母さん? ……あ、あともう一つ……、道があると思うんだけどなあ……?」

「ぅん? ウジウジ引きこもっていただけかと思ってたけど、何か考えがあったのか。よし、聞かせてみな?」

 

 ちょっとだけ見直したという母と極力目線を合わせないようにしながら、ダメニートは渾身の案を披露した。

 

「ま、前に……、ひなたが面倒見てくれるって、言って――」

 

 

 

 

 

 ――バキリッ!!

 

「ヒッ!?」

 

 ドアノブが、握り潰された音だった。

 

「……もし本気で言ってるなら――ちょっとこっち来い」

「じょじょ、冗談です! ごめんなさい!!」

「ならさっさと城で説明受けてきなッ、この馬鹿娘!!」

「は、はいいいいッ!」

 

 かくしてみやこは、“妹のヒモ”という真正のクズになってしまう前になんとか踏み(とど)まり、アリアハン城へ就職活動(強制)に出かけたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ……勇者なんて無理だよおお……」

 

 10分後、みやこは王都の片隅で膝を抱えていた。

 あの後城の人事課まで行き、みやこの勇者応募は何の問題もなく受理された。みやことしては自分の弱そうな外見から断って欲しかったのだが、まさかのフリーパス、笑顔でウェルカムであった。そんなになり手がいないのか……。

 そして親切なことに、ルイーダの酒場という店まで紹介されてしまう。

 

 ――ルイーダの酒場。

 旅人たちが仲間を求めやってくる出会いと別れの店。一人旅では危険だということで、みやこも勇者と同じくここで仲間を募るよう指示されて来たのだが……。

 

「ううぅ……、飲食店なんて一人じゃ入れないよぉ……」

 

 店に入る前に再び躓いていた。

 みやこにとって魔物と戦うなどこの上なく恐ろしい行為だが、一人で店に入って店員と会話するのも同等以上に過酷な試練である。ましてや話すだけでなく仲間を集めて旅路をともにするなど……。そんなリア充な行い、想像しただけで失神しそうになる。

 魔物への恐怖と、人付き合いへの恐怖のダブルパンチ。元から飴細工並みだったみやこのメンタルは、もはや引っくり返った絹豆腐状態だ。

 

(もういっそお母さんに、ニート続けさせてくださいって土下座しようかなぁ……?)

 

 やがて進退窮まったみやこが、愚かにも命を投げ捨てる選択をしようとしたそのとき、

 

「さっきから何してるんだ、みゃー姉?」

「くぁwせdrftgyふじこlpーッ!? ――――って……、ひなた?」

 

 突然の声掛けに跳び上がったみやこは、しかし声の主を確認して目を瞬かせた。

 背後から話しかけてきたのは、みやこの妹・星野ひなたであったのだ。草むらの奥で体育座りしていた姉を見つけ、不思議そうに小首を傾げている。

 その見慣れた顔を認識した瞬間、みやこの目からブワッと涙が溢れ出した。

 

「ひ……ひなたぁぁぁぁ!」

「うぉ!? ど、どうした、みゃー姉! なんかあったのか!?」

「あったどころじゃないよう……! いきなり勇者になれとか言われても困るうううぅ!」

 

 みやこは情けなく妹に泣きついた。姉の威厳だとか年上の矜持だとかそんなものはもうどうでもいい。今はとにかく誰かに甘えたい。そしてできればいっしょに母にお願いして、無茶な言い付けを撤回させてほしい。

 普段の立ち位置は逆転し、みやこは妹のお腹にギュっと抱き着く。

 

「よしよし、いきなり慣れないことさせられて不安なんだな? 大丈夫だぞ、みゃー姉。私が付いてるから安心だ」

「! ひ……ひなたあああ」

 

 抱き着く姉の頭を優しく撫でながら、キラキラ光るイケメンスマイル。なんと頼りになる妹だろう。いつもはシスコン過ぎて少し困ることもあるが、なんだかもう自分の方が堕とされそうである。

 

(ああ、きっともう大丈夫。ひなたがいっしょにお願いしてくれれば、お母さんだってきっと許してくれるはず……!)

 

 みやこは希望の涙を流した。

 

「私もみゃー姉の冒険についていってやるからな! いっしょなら安心だ!」

「ファ!?」

 

 希望の涙は絶望の宣言で押し流された。

 次いでひなたの全身をよくよく確認してみれば、彼女の服は普段着ではなく、手足の先まで覆われた丈夫な武闘着であった。――そういえば、とみやこは思い出す。この元気な妹は幼年騎士学校で武闘家コースを専攻しているのだ。ちょっと強引に作ったツーサイドアップが大変可愛らしくて非常に萌え……ってそんなことを言っている場合ではない!

 

「どど、どういうことなの、ひなた!? いっしょに行くって、なんで!?」

 

 慌てる姉に妹は笑顔で死刑宣告をする。

 

「お母さんに頼まれたんだ! 『どうせみやこは仲間なんて集められないから、夏休みの間だけでもアンタが付いてってあげなさい』って。みゃー姉友達いないもんな!」

「ぐふぅ!」

 

 母(と妹)の辛辣な言葉にみやこは崩れ落ちた。

 ……同時に、自分にはもはや逃げ場がないことも悟った。娘が言い付けをサボるために考えることなど、母は全てお見通しなのだろう。ならばもう退路はなし、魔王討伐へ向かってただ前進するしかないのである。

 

「うぅ、死の近付く音が聞こえるよぉ……」

 

 みやこは五体投地で諦観の涙を流すのであった。

 

「よし、じゃあ仲間を紹介するぞ!」

「ふぇ……? 仲間?」

「うん、私の学校の友達だ! 『勇者の旅のお供をすればシューショクに有利になるぞ』って言ったら、ついて来てくれるって!」

「そ、それはしっかりしてる子たちだね……」

「あと先生が、実習の単位にも上乗せしてくれるって言ってた!」

「は、はは……よ、良かった、ね」

 

 命がけの魔王討伐の旅が、いつの間にか小学生の単位実習に早変わり。みやこはもう、泣いて良いやら笑って良いやら微妙な気持ちであった。

 

「まずこっちが、魔法使いの“乃愛(のあ)”!」

 

 ひなたの紹介を受け、魔女帽子を被った金髪少女が敬礼しながら進み出る。

 

「こんにちは、姫坂乃愛でーす! みやこお姉さんだから、ミャーさんで良いよね? よろしくね~!」

「あ、うん……よ、よろしく」

 

 金髪魔女っ娘の元気な挨拶に、みやこは苦笑しながら返す。

 

(…………で、でもまあ、一人で行くよりはまだ気が楽になったかな?)

 

 “ニート脱出のため”という侘しい理由よりかは、妹とその友達の引率の方がまだいくらか生産的な気持ちになれる。危険が少ないところでボチボチ魔物退治を頑張って……、子どもたちにいろいろ経験を積ませてあげよう。

 きっと勇者としての評価点は低くなるだろうけど……。打算とはいえせっかくついて来てくれるのだ。このひと月の期間は、まるっと小学生たちのお世話に使ってあげようじゃないか。

 みやこは邪な気持ちを全て引っ込め、菩薩のような心で妹の友達に相対したのであった。

 

「それでこっちが、僧侶をやってる“花”だ!」

「えっと……初めまして、白咲花(しろさきはな)です。これから一か月、よろしくお願いします」

 

 

 

 

 

「――――ッ」

 

 

 現れたのは、絵に描いたような黒髪ロング清楚美少女であった。

 彼女の容姿を認識した途端、みやこの全身に雷に打たれたような衝撃が走った。

 

 

(……天使が……舞い降りた……)

 

 

 みやこの胸に形容しがたい気持ちが溢れ出す。初対面の相手への人見知り的反応とも違う。

 嬉しいような恥ずかしいような、何やらもにょもにょとした気持ち。

 詳細は分からない。しかし彼女は今、とにかくこの子と仲良くなりたくてたまらなかった。

 みやこはスッと立ち上がると、精一杯の笑顔?で幼女に笑いかけた。

 

「は、始めまして、花ちゃん。フヒ、星野、みやこです。こ、これからよろしくね?」

「あ、はい……。よ、よろしく?」

 

 戸惑い気味に差し出された花の手を、みやこは壊れ物を扱うようにそっと握った。小学生の小さく柔らかな掌は、みやこの両手の中にすっぽり収まってしまった。

 ニギニギニギ……。

 

「…………フ、フヒッ……ふひひひひッ」

「あ、あの……? どうしたんですか?」

 

 条件反射的につい答える。

 

「は、花ちゃんの手、すべすべで気持ち良いね……!」

「ッ!? き、気持ち悪!?」

 

 危ない発言にドン引きして後ずさる花。

 ひなたが安心させるように笑う。

 

「大丈夫だぞ、花。みゃー姉は可愛いものが好きなだけなんだ。たまにちょっと変になるけど、変なことはしないから安心だ!」

「何も安心できないよ! 今まさに変なことされてるんだけど!」

「へ、変なことなんてしないよ~。ただ、ちょ~っと身体のサイズを測らせてほしいだけで……」

「ひィ!? 何言ってるの、この人ッ?」

「へ、変な意味じゃないよ~? す、すぐ終わるから、ハァハァ、採寸させてッ!」

「ッ! よ、寄らないで、変態!」

「ヘブゥッ!?」

 

 メジャーを引っ張りながらにじり寄るみやこに、花のビンタが炸裂した。地面に引っくり返るダメニートを見下ろす目は、まさしくゴミを見るような目だった。

 

「ひ、ひなた! 悪いけどやっぱりこの話無しで!」

「え、なんでだ? 魔物が危ないからか?」

「もっと危ないモノがいるからだよ!」

「でも……もう学校に届け出しちゃったから、今からやめるとペナルティが……」

「う……」

 

(ナイス、ひなた!)

 

 言いよどむ花にチャンスを見たみやこは、ここぞとばかりに畳みかける。

 

「は、花ちゃ~ん? いっしょに来てくれたら、お城で貰った美味しいお菓子あげるよ~?」

 

 ――ピクリ。

 

「お、お菓子……?」

「ゆ、勇者支援金も貰ってるから、高級なお菓子もいっぱい買えるよ? 甘くて美味しいお菓子がいっぱいだよ~?」

「甘くて……美味しい……」

「わ、私お菓子作り得意だから、いっしょに来てくれればいつでも好きなお菓子作ってあげるよ~?」

「いつでも……好きなだけ……」

「他の土地にいけば、見たことない珍しいお菓子があるかもしれないよ~? それも全部食べて良いんだよ~ッ!」

「…………ッ」

 

 沈黙。

 

 思考。

 

 打算。

 

 やがて、結論。

 

「…………。し、仕方ないですね……。一度言ったことを撤回するのは良くないですし、仕方ないから付いていってあげます」

 

(チョロい。そして可愛い!!)

 

 みやこはこのときほど、勇者になって良かったと思ったことはなかった。もはや彼女の頭から魔王討伐の恐怖は消えていた。

 ――『この旅の間に花ちゃんともっと仲良くなりたい!』

 今思うことはただそれだけだ。

 

「フ、フヒヒッ! じゃ、じゃあ親睦を深めるためにも……、早速ウチに来てお茶会を――」

 

 

 

 

「あのー……?」

 

 

 

 

「……はい?」

 

 これからめくるめく至福の時が始まろうという瞬間に、水を差すような無粋な声かけ。『もう、誰ー?』と、みやこは怪訝そうに後ろを振り返り――――

 

 

 

 

「この辺りで、『お菓子をエサに女児を誘拐する不審者』の通報があったんですが、何かご存じですか?」

 

 

 

 

「…………え?」

 

 気が付けば鎧姿の衛兵が三人、みやこをグルリと取り囲んでいた。

 

 

 ……。

 

 

 …………。

 

 

 ………………。

 

 

「通報にあった人物と特徴が一致します。――10時30分、不審者を確保」

「子どもたちにケガはありません。未遂に終わって良かった」

「これより容疑者を連行します。さあ、こっちに来なさい」

「ぅえ!? ……や……ちが……私……、怪しい、者じゃ……ッ」

 

 いきなりの犯罪者扱いに焦りまくるみやこ。コミュ障の彼女としては珍しく、なんとか頑張って誤解を解こうとするが……。

 

「コラ、抵抗はやめなさい! カップケーキを使って女児を誘惑、通報にあった通りだぞ!」

「芋ジャージにマントとサークレットなんか付けて! 怪しいにも程がある!」

「や……ち、違……ッ」

「なら職業を言ってみなさい!」

「ゆゆ……勇者ですうう!」

「何が勇者だ! 平日の昼間から徘徊する不審者じゃないか!」

「大人しくついてきなさい! 抵抗すると罪が重くなるぞ!」

「ひぃぃぃ! やっぱりお外怖いいいい!」

 

 

 

 

 

 

 ――かくして、勇者みやこの冒険初日は、“職質からの逮捕”という酷過ぎる結果に終わった。

 こんな有り様で果たして彼女は魔王を倒せるのか? それはまだ誰にも分からなかった。

 

 

「お巡りさん待ってー! みゃー姉はただ小さい女の子が好きなだけで、邪な気持ちなんか全然ないんだーーー!!」

「ややこしくなるから変なこと言わないで、ひなたーー!!」

「お姉さん! 連行される前にお菓子だけは置いてってーー!」

「ミャーさーん! 世界一可愛い私にはなんか言うことないのーーッ!」

 

 

 頑張れ、みやこ!

 世界に平和を取り戻すその日まで、折れることなく進み続けるのだ!

 

 とりあえず今は、素直に自白した方が罪は軽くなるぞ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 なぜか頭に浮かんだ『わたてん+ドラクエ3』という謎の組み合わせ……。ドラクエ世界をベースに現代日本テイストが入り混じった世界観となっております。なので電話とかジャージとか職質とか割と何でもアリです。
 息抜き作品なので、続くかどうかは未定。



人物紹介

・星野ひなた(幼年騎士学校5年。戦闘職業:武闘家)
 みやこの妹。原作と同じく、筋金入りのお姉ちゃん大好きっ子。姉と一日会えないだけで魂が抜けてしまうので、母に言われなくても冒険にはついて来るつもりだった。武闘家を専攻した理由は、運動が得意なのと、なんかカッコ良かったから。運動能力的にやや鈍くさいお姉ちゃんを、身体を張って守ってあげる所存。
 当然、夏休みが終わってもついていくつもりなので、みやこが早く魔王を討伐しないと、ひなたが小学校で留年してしまうかもしれない。責任重大である。


・白咲花(幼年騎士学校5年。戦闘職業:僧侶)
 ひなたの親友で幼年学校の同級生。成績に加点されるからとひなたに誘われて、ホイホイ冒険についてきた。みやこのことは警戒しているがお菓子の誘惑には抗えなかった。世界線が違っても相変わらずチョロい子。
 僧侶を専攻した理由は、ルビス教のマスコット『ひげろー司祭』が好きだから。信徒になれば特典としていろいろなひげろーグッズが貰える。当然打算まみれなので信仰心など爪の先くらいしか存在しない。――が、ひげろーグッズをくれることは純粋に感謝しているので、真面目に修行した結果、僧侶としての実力はかなりのものになった。これにはルビス様も苦笑い。


・姫坂乃愛(幼年騎士学校5年。戦闘職業:魔法使い)
 同じくひなたの親友。なんだか面白そうな気配がしたので、ひなたたちにくっ付いてやってきた。みやこのことはなんか愉快そうなお姉さんだな~と思っている。
 魔法使いを専攻した理由は衣装が可愛かったから。帽子をカスタマイズしたり、必要もないのに箒を用意したりと、自身の可愛さを彩ることには余念がない。それゆえ、みやこが花のことばかり可愛いと褒めるのはちょっと不満。この旅の間に、自分がサイキョーにカワイイことを分からせてあげようと鼻息を荒くしている。……でもたぶん、この子は分からせられる方が映えると思う。


・星野みやこ(ニート→公募勇者。戦闘職業:???)
 不運にも就職に失敗した、ひきこもりコミュ障主人公(※幼女相手は除く)。本人はひきこもりではなくインドア派を自称している。このほど、母親によって強制的に勇者プロジェクトに応募させられ、ニートから見事公認勇者にジョブチェンジした。
 勇者なんて適当なところで辞めたいと思っていたが、好みドストライクの花に出会ったことで即座に考えを改める。旅の途中は泊まる部屋もいっしょだろうし、その間に仲良くなれればとても嬉しい。あと、自作の衣装を着てもらったり、写真を撮らせてもらったり、あわよくばいっしょにお風呂とか入れないかといろいろ期待している。自分の性別が女で良かったと、しみじみ思っている。
 ……ちなみに、戦いが苦手なのになぜ騎士学校へ進学したのかというと、中等部卒業時もコミュ障で就職できず、仕方なくモラトリアム期間を延長しただけである。しかし三年経った今回も、結局は同じ轍を踏むことになってしまった。まるで成長していない……。
 






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