前世も今世もマッドサイエンティスト ーヴェルデだから仕方がないー   作:ポロンクセマ

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★ここから原作軸に入ります。

★捏造オンパレードで進む予定なので、お気を付けください。








第三章 元アルコバレーノin原作突入
七話 お休みなさい


 組織にいた時代、スコッチからある日本語を教えてもらった。

 

 それが『袖振り合うも多生の縁』という言葉。

 

 元々は室町時代から見られる仏教の教えからきていて、「多少」ではなく、「多生」がポイントらしい。漢字間違いが多いから気を付けるようにとも言われた。

 

「『道を行くとき、見知らぬ人と袖が触れ合う程度のことも、前世からの因縁による』という考えだな。つまり、『人との縁は単なる偶然ではなく、すべてに意味があり、深い因縁によって起こるものだから、どんな出会いも大切にしなければならない』って意味なんだ」

「まぁ出会いによって、生き方や人格形成に影響を与える事もあるしな」

「だからカルーソーも人との出会いや縁は大切にしてほしい。きっとそれは新しい発見や新しい感情をもたらしてくれるから」

 

 確か歴史民俗博物館に一緒に行った時の会話だったかな。

 学校にも行かず同年代とも触れ合わず、大人に囲まれながら育った私を心配してくれたスコッチ。

 彼は表向き、研究の合間の息抜きと称して、私を様々な場所に連れ出してくれた。外の世界に触れさせようとしてくれた。

 それが情操教育の一環だったのだと知ったのは、組織を抜けて彼と同居を始めてからだ。

 

「ずっと組織の中にいたら感覚も狂うよな。しかも周りにいるのはまっとうな大人とは言い難いし。組織の連中は研究結果さえ出せれば良いみたいな感じで、誰もヴェルデの教育を気にしていなかったから、倫理観や道徳観がずっと心配だったんだ」

「そうか。健康面だけでなく、いろいろと考えていてくれたんだな……。知らなかったよ。一応、礼を言う。ありがとう、景光」

「どういたしまして」

 

 しかし残念ながら。私の人格はその当時、すでに形成し終わってたんだよなぁ。

 そう思ったが、あえて口には出さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ひゅーひゅー、と笛を鳴らすような音がする。

 

 それを発しているのは、私の目の前に横たわる血まみれの女性。

 年の頃は20代半ばほど。手入れが行き届いた長い黒髪にクリーム色のスーツを身に着けて、しっかりとした化粧もしている。

 こんな場でなければ、『きれいなお嬢さん』と誰もが言うような、そんな女性。

 彼女は現在、港の冷たいアスファルトの上で腹から血を流し、肩で呼吸をしながら苦しそうに身体を丸めていた。

 拳銃で撃たれたのだ。しかも至近距離、致命傷になる付近を故意に狙われて。

 “あの男”の腕ならば一発で仕留める事も可能だったはずなのに、あえてそこを狙った。確実に殺す目的で、最期まで苦しませる目的で彼女は撃たれた。

 

「ちっ、相変わらず悪趣味な……」

 

 気管が狭くなっているのか、それとも何かが詰まっているのか。

 ごぽり、と嫌な音を立てて口から血が流れ出た。 

 彼女の全身から零れ落ちる命の音は、聞いていて気持ちの良いものではない。

 

 今、彼女の命は風前の灯火だった。

 

「ん、けたたましいサイレンだな」

 

 銃声を聞いた誰かが通報したのだろう。近付きつつあるサイレンの音に私の肩がぴくりと反応する。

 だがきっと救急車では間に合わない。この出血量だ。病院に着くまで彼女は持ちこたえられないだろう。

 “最悪”が容易に想像できて、大きく息を吐く。

 

「ここにはキング・モスカの試運転に来ただけだったのになぁ……。こんな場面に遭遇するとは。これが袖振り合うも多生の縁ってやつなんだろうか」

 

 彼女の目の前に膝をつき、汗で頬に張り付いた髪の毛を払ってやる。

 するとうつろな目がこちらをゆっくりと捉えた。

 

「よしよし、可哀そうに。痛いだろう。……今、楽にしてやる」

 

 彼女の頭に手を添えてゆるゆると撫でれば、かすかに笑ったような気配がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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