005
本当に章変えしやがった。
「そういえばデュララ木さん」
「僕のことを東京の池袋でキレた奴らが繰り広げる物語のような名前で呼ぶな。僕の名前は阿良々木だ」
「失礼。噛みまみた」
「飛ばした!」
面倒なのか!?
面倒だったらやめてもいいんだぜ!?
はっきりしろよ!
「何ならデュラララ!!さんと呼んだ方がよろしかったですかね? その方が語呂もいいですし」
「いやいや、よくねえよ」
「何なら折原臨也さんとお呼びしましょうか」
「それ分かる奴にしか分からないネタだな!」
デュラララ関係だけれども。
「何はともあれ、折原さん」
「違う、僕の名前は阿良々木だ!」
「失礼、噛みました」
「違う、わざとだ……」
「噛みまみた」
「わざとじゃないっ!?」
「借りました?」
「何をだよ!」
「それはもちろん、『化物語 まよいマイマイ ブルーレイ』ですよ」
「またそれか!」
しかもまたブルーレイ!
そんなにいいのだろうか。
というか道理で「借りました?」なんて普通の言葉にしたわけだ。
「借りました? 借りましたっ?」
どうしてみんなこの話をしたがるんだろう。
まあ僕も映像化嬉しいけど。
仕方ない。話に乗ってやろう。
「いや。……借りてない」
「さすが阿良々木さん。借りるだけでは物足りず、買っちゃったんですねっ?」
「いや。八九寺。悪いけど……」
見てもない。
いや、あれトラウマでもあるし。
だって結構危ないシーン収録されてんだぜ?
「そんな……」
一瞬でひまわりが咲いたような八九寺の笑顔が消える。
マジでヘコんでいた。
申し訳ない。
「まさかロリコンな阿良々木さんが、わたしの映像を見ていないなんて……」
「ロリコンとさりげなく台詞に混ぜるのはどうかと思うが」
「ということは、わたしと羽川さんの副音声もご覧になってないということですね?」
「何!?」
八九寺と羽川のコンビで!?
またまた聞いてないよ羽川さん!
「はい。まあご覧も何も、副音声なので映像はありませんから、お聞きになっていないと訂正しましょう。ハッチーとバサ姉のコンビでお送りしていました」
ばさねえー!
見てー!
聞きてー!
「それに映像特典付です。わたしのビデオを買った方はご存知でしょうが、もれなく羽川さんと阿良々木さんが揉み合うビデオが収録されています」
「何だそれは!?」
全く身に覚えがない!
あっても肩だけ!
「ディスクの裏面を読み込めば、見れるはずです」
「嘘つけ!」
「それも本編と同じく、たっぷり一時間半あります」
「長っ!」
それはきついだろ!
見る方もやる方も。あと撮る方も。
「まあそれはともかくとして、わたし的にはあのオープニング映像をご覧になってないというのはとても残念です」
「オープニング……?」
「わたしが歌ってます、キュートでプリティーなポップミュージックです!」
知らない!
知らねえぞそんなの!
どうして僕はこんなに無知なんだ!
「何です、鞭ですか? 阿良々木さんはどんな趣味をお持ちなんでしょう」
「黙れ。勝手に変な解釈をするな」
どちらかといえば無恥か。
恥を知らない。
「でもまあ、一度は見ることをお勧めします」
「ああ。言われずとも見るよ」
本当に残念だけど、僕ひたぎクラブしか見てないんだ。
いや、あれ見るのも結構ヤバいと思うよ?
だってガハラさんのあんなシーンやこんなシーンがあるんだもん。
でも副音声は聞いてない。
次回予告も飛ばしてた。
これ以上この話をしたらボロが出そうなので、この辺で終わり。
「ところで、あたた木さん」
「人をさも痛そうな人呼ばわりするな。僕の名前は阿良々木だ」
「失礼。噛みました」
「違う、わざとだ」
「噛みまみた」
「わざとじゃないっ!?」
「蟹は滋賀」
「いや、北海道だ!」
滋賀にもいるかもだけど!
僕の中では北海道。
戦場ヶ原さん、約束、忘れてません。
「先程から疑問に思ってたのですが、ここは何処なんでしょう?」
「は?」
何だ。
ギャグパート終了なのか?
怪しい空気だ。
「いえ、何だかわたし達、ここは知っている場所のはずなのに、違う気がしません?」
「…………」
「具体的に申しますと、ギャラも貰えないのに強制出勤させられて、挙句の果てにいつものように馬鹿な掛け合いをさせられているとしか思えないのです」
「何言ってんだお前!?」
八九寺P!?
そんなことはありませんよ!?
別にネットで二次創作として登場させられてるわけないじゃないか!
気のせいだよ、気のせい。
……いやでもここどこ?
「わたしは出演したくないって断ったのですが…聞いてもらえず、というか逆に一番出番が多くなってしまうというこの仕打ち……」
「八九寺プロデューサー大丈夫か」
「猿も筆の誤りとはこのことです……」
「弘法も筆の誤りだろ!」
混じっちゃってる混じっちゃってる。
猿は間違えても仕方ないよ!
書道とか無理だろ。
「あるいは、河童の島流しもいいところです……」
「何をしたんだ、河童……」
何をしたら追放になるんだろう。
キュウリの食べすぎだろうか。
「ところで阿良々木さん、その、八九寺Pと呼ぶのはやめていただけませんか?」
「え?」
何でだ。
「いえ、その、Pって何か禁句みたいで嫌じゃありません?」
「そんなことないぞ!?」
お前そんなこと考えてたのか!
お前が言うことによって逆にみんな気にしちゃうだろ!
「八九寺。Pってのはプロデューサーだけでなく、パーフェクトとかプロフェッショナルとかポライトとか、いい略語としても取れるじゃないか。ポジティヴにプラスに考えようぜ」
「では、これからは八九寺プラスと名乗りましょう」
「それはよく分からない!」
「いやでも阿良々木さん。プラスと記号で表記したら、なんだかキラキラしている様に見えなくもないでしょう?」
八九寺+。
見えなくもない。
か?
高校生の僕からすると、何だか化学のイオン式っぽい。
K+、Na+、八九寺+。
いや、八九寺プラスってむしろゲームっぽい?
「わたしが言いたかったのは、そんなことではなく」
「何だ、違うのか」
いちいちまどろっこしいな。
「えーっとですね、阿良々木さん。わたし、この間ある方をお見かけしたのです」
「ん」
「その方は、アロハを着ていらっしゃいました」
「……冗談はよそうぜ、真宵ちゃん。そういうの僕好きじゃないんだよ」
「いえ、別に阿良々木さんではありませんよ」
「分かってるわ!」
八九寺は真面目な顔をしてゆっくりと言葉を紡ぐ。
「忍野さんを、お見かけしたのです」
「……忍野。忍野、メメか」
「はい」
八九寺は頷いて。
そして言った。
「忍野さんが、再びこの町に来ているんですよ――!」