IF―切り開かれる現在、閉ざされる未来―(OCCF)   作:黒川 優

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皆さん、こんにちは。黒川 優です。

前回のあらすじ

私の個人的な考えと妄想が若干暴走した。そして色々捗った。
あとやはり私にこの手の話を書くのは苦手だと感じた。
(前話投稿が遅れた理由の1つですね)

魔「ちょっと待て。これは元々ラノベだぞ」
知らん。
魔「おい」
本来なら茶番無しで殺伐した感じにしたかった。
おかげで優が幸薄い人になってない。
魔「(唯殺しといて…)セシリアとシャルロットが取り合いをしてる時点でそれは無理だ」
(否定できない…)……後でフレーバー程度に優のキャラ説明をしよう。うん。
魔「(あっ逃げたな)じゃあ本編へいくぜ。どうぞ♪ヽ(´▽`)/」





School Festival―Approach Operation

◇

(シャルロットside―IS学園寮)

 

 

 

――コンコン

 

「ゆーうー、起きてるー?」

「あぁ、今出る」

「か、髪切ったんだね」

 

見とれていたことを隠したくて何とか言葉を紡ぐ。

出てきた優は長かった髪を切り、甘い顔をした男の子みたいな感じになっていた。

 

「あぁ。流石にここまで切れば今の格好に合うと思ってな。シャルも似合ってるなメイド服」

「ホント?衣斐服よりも?」

「もちろん。メイド服の方がかわいい」

「かっ、かわいい…」

 

そんなストレートに言われると思わなかった。

顔が一気に赤くなるのが触らなくても分かる。

 

「さぁ、早く行くぞ」

「あっ!待ってよ優!」

 

 

 

◇

(オータムside―IS学園内)

 

 

 

「ったく、うるせーな」

 

隣にいる金髪の青年、ベクターはこの雰囲気をかなり不快に感じていた。

 

「なぁベクター、騒ぎを起こす前に訓練機にされているISを破壊する方が穏便にいくんじゃないか?」

「バカかオメーは」

「あっ!?――」

 

何だとごらぁ!と言おうとしたが、私の声はベクターによって止められた。

 

「そんな大声で騒いだら怪しまれるだろーが」

「ちっ……」

 

「こういう時は非常時戦闘員になっているヤツがIS常備してるんだよ。

当然相互連絡できるシステムも持っている。そんな状態で戦闘しても意味ねぇだろ」

「でも、それならこれからすることに対しても向こうの対応も早いだろ?」

「向こうは足枷を着けて今日を迎えてるんだ。それを使わない手はないだろ」

 

先月のことといい、今回のことといい、ベクターという男は悪だくみに関しては右に出るものはいないと思う。

(噂では直接手を下さず内部情報撹乱と信頼関係の崩壊で敵対組織を壊滅させたことがあるらしい)

それでいて見た目はともかく態度も好青年のように振る舞うことができるというのだからタチが悪い。

 

まぁどうせ私は自分の意志ではどうしようもないので両手を上げて手をひらひらさせる。

 

「はいはい。お好きにどうぞ」

「もとからそのつもりだ」

 

ベクターは黒い笑みを浮かべていた。

 

「さぁ、よからぬことを始めようか」

 

 

 

◇

(セシリアside)

 

 

 

「優さん、こちらです」

 

私が手を振ると優さんも手を振って来てくれた。

いつも違って短髪なんですね。それはそれで似合ってますね。

これは一度でも写真に収めたいですね。

 

「突然無理を言ってすいません」

 

前日、それも就寝前にお願いしたのだ。

失礼な訪問ながら優さんは笑って了承して下さいました。

そういえばその時はまだ髪は長かったですね。自分で切ったのでしょうか?

 

「別にいいよ。そう知り合いがいるわけじゃないから一人になりやすいし」

「そうなのですか?」

「留年者って悲しい目で見られるんだよ…」

「ではその分私達と一緒にいましょう」

「あぁ。――!?」

 

優さんは何かに反応して二度見をしていた。

 

「優さん、どうかしましたか?」

「いや、何でもないよ」

 

そうは言うものの優さんは珍しく動揺しているようにも見えた。

 

「気になるなら行きましょう」

「でも、そしたら時間が……」

「このまま分からずモヤモヤするよりいいのではないでしょうか?」

「でも…」

「私は逃げませんよ」

「……ごめん。ちょっと行ってくる」

 

 

………………………………………

………………………………

………………………

 

 

「どうでしたか?」

 

わたくし達は休憩も兼ねて2年生のドーナツ屋さんで一休みしていた。

服装が服装なだけに周りの人は私達を見てますね。

私的にはこの上なく嬉しいですが。

 

「見逃した。悪いな。せっかく時間割いてくれたのに」

「構いませんわ。もしよければどんな方か教えてくれませんか?」

「……………」

 

(やっぱり亡国機業のことは気にしてるんですね…)

けど、どこで産まれたなんてわたくし達ではどうしようもない。

それで優さんを追及するのはお門違いに他ならない。

だから、わたくしはこうつけ加えた。

 

「世間ではなく、優さんの価値観で」

「昔の友達だよ。俺とソイツともう一人は不真面目でな、いっつも先生に怒られてた。

まぁ仕方ない。俺はその時にはオーディンの瞳を持っていたし、神童とも言われてたりした。

小学生レベルの問題なんて朝飯前。高校生レベルの問題も夕飯前だったかもしれない。

ISが世間に発表されるまではそんな感じでワイワイやってた気がする」

「そうだったのですね」

 

席を立って話を区切る。

これ以降を聞くのは私も辛いですね。

IS狩りもありましたし……。

 

「それで、どこに行きたいんだ?」

「そうですね……」

 

その友人を探すことがなければ別の所に行こうと思ってましたがあそこはここから遠くて移動だけでせっかくの時間がなくなってしまいますし。

 

「優さん、あそこはどうですか?」

 

わたくしが指差したのは最上階の端に置かれる部屋、音楽室。

 

「吹奏楽?何してたっけ?」

「たしか――」

「それはそれは吹奏楽の定番、楽器の演奏体験ですよー!」

「「――!?」」

 

後ろからひょこと誰かが首を伸ばしてきた。

 

「おやおや!噂の絶えない酉花ちゃん。それに機体持ちの期待の新人のセシリアちゃん」

「酉花ちゃん?」

「(後で話すよ)」

「?」

「これはこれは、ムフフ。それでは2名様ごあんなーい!」

 

私と優さんは何の抵抗もできないままズルズルと先輩に引っ張られた。

 

「それで酉花ちゃんとは?」

「去年の俺の名前。男だと目立つから女装してたんだけどねぇ…。誰かさんのせいで……」

 

(あぁ…更識会長ですね)

あの人、見た目と家系に反して自分の知らないことによく首突っ込みますよね。

しかもその後一年同室だったなんてうらやま…けしからんですわ。

 

「良かったではありませんか。一夏さんもいてくれたことで優さんは優さんとして生きれているのですから」

 

わたくしとしては黒川 優という殿方に出会えて本当に良かった。

できればその秘密はわたくしだけが知っていたらロマンチックなのですが…。

 

「あらあら。随分熱い密談をするのね。私の前でするなんて大胆過ぎない?」

「そう思うなら覗いてないで楽器持ってきて下さいよ」

「怒らない怒らない。

なにしろ今回、ウチの出し物は準備室にあるからね。さぁご覧あれ!」

「おぉ……」

「素晴らしいですわ」

「でしょでしょ?琴など昔のから現代の人気者エレキギターやベースまで!

何でも揃ってるよ。もし奏でたい楽器があったら入部してね♪」

 

ウィーン以外でここまで多くの楽器を揃えるとは……。

学園の生徒だけしか使えないのは勿体ないですわね。

 

「さぁさぁ。何がいい?

吹奏楽と言ったらトランペットかな?

酉花ちゃんは男の子だしドラムとか一回してみたいとかあるのかな?」

「う~ん…。セシリア何がいい?

いっぱいあって何にすべきか分からない」

「そうですね。優さんはどんなジャンルのものを演奏したいですか?」

「ん~ジャズとか?渋くてカッコよさそう」

「では、先輩。サックスをお願いします」

「はいはーい。そうだね。サックスはⅢ世のが有名かな。

テンポも調節しやすいしソロでもできる」

「なんですかそのⅢ世とは?」

「有名な盗人だよ。セシリアちゃんの国でも映画上映するくらい人気じゃないかな?」

 

あっ。実在する方ではないのですね。

 

「はいはい。アルトサックス。ついでレクチャーすると大体アルト、テナー、バリトン、ソプラノがあってソプラノのは真っすぐなやつもあるね」

 

先輩は私達にサックスを渡す。

やはりバイオリンに比べると重いですわね。

 

「で、念のため聞くけどお二人共経験は?」

「ない」

「わたくしも管楽器は……」

「了解了解。それじゃあ譜面に沿って一から説明しようか。

これがミ。これがファ。またミ。これがソ。これがラ。ラ……」

 

 

「よしよし。じゃあここまで弾いてみようか。

ミファミソーラファミー。ミ……」

「♪♪♪♪♪~」

 

一通り弾き終わると優さんはキラキラした顔をしていた。

それはもう子供のように。

わたくしもこの気持ちを忘れてはいけないですね。

 

「はいはい。残念だけど演奏体験はこれで終わり。

もう一度弾きたいならまた並ぶかウチに入ってね。入部大歓迎だよ」

 

待機場所兼二年の出し物になっている音楽室に戻された。

そこでは吹奏楽の体験会の順番待ちの人で賑わっていた。

先輩が客引きしてくれたのは幸運だったのかもしれませんね。

 

そして、ここ音楽室には必ずある楽器があった。

 

「なぁセシリア。サックスの譜面でも弾けるかな?」

「弾きますよ。ただハ長調の部分しか弾けませんが」

 

優さんは勝手にピアノのカバーを開け、軽く音を奏でる。

その指の動きは演奏経験のある人の独特のものだった。

 

「ご自宅にあるのですか?」

「前、弾きたいものがあって教えて貰ったけどサッパリだった。

ホントに才能云々を言うものなんだなって痛感したよ」

「優さんにもできないことってあるのですね」

「できないことだらけだよ。

洗濯機の使い方とかダメだったな。

見事に壊して一夏に怒られた」

 

ふふふっ。

優さんはもっと大人のイメージがありましたが意外とお茶目ですね。

 

「その弾けなかったという曲、教えて下さりませんか?」

「いいのか?」

「はい。せっかく目の前にピアノがあるのですから」

「じゃあコレを頼む」

「あら?聞かない名前の曲ですね」

「B級ものって思ってくれればいいよ。これ譜面」

 

(魔法使いの夜?)

譜面を見る限りはメロスピ系に近い曲であることが分かりますね。

優さんがこのタイプの曲を聞くとは意外。

優さんの知らない一面を知ることができる。それも楽しい。

 

「では、弾きますね」

 

―♪♪♪

低音で疾走し始め、転調しつつもその疾走感を保っているメロディ。

魔法使いという割にはアグレッシブですね。

新鮮で弾いているこっちも楽しい。

 

―パチパチパチパチ

弾き終えると優さんだけではなく音楽室にいた皆さんからも拍手を貰った。

 

「セシリア、もう1回。もう1回頼む」

 

自分の聞きたかった曲を生で聞けたのが嬉しいのか、優さんは目を輝かせていた。

その姿につい、くすっと笑ってしまった。

 

「セシリア?」

「いえ。酉花ちゃんに子供らしい1面があるとは思わなかったので」

「年上にそう言うなよ…」

「ふふっ。可愛いところも素敵ですよ」

 

わたくしが微笑むと優さんは照れ隠しにそっぽを向いた。

 

 

 

◇

(箒side)

 

 

いつもは着ないタイプの服にどうもソワソワして仕方がない。

一夏が燕尾服を着るということもあって勢いで接客係になったが他の女子にも褒めてくれたし、たぶん一夏も悪くは言わないだろう。

あとはあの軍人ウサギからどう一歩踏み出すべきか……。

 

「優さんお久し振りです」

 

後ろを振り返るとそこには赤髪の少女が立っていた。

私に比べると少し幼いか…?

私の顔と分かると彼女は困惑した表情をしていた。

 

「あ、すいません……。知り合いに似ていたもので…」

 

(この人もか……)

――私と優が似ている。

男女や生まれの違いから直接そう言われないが今の彼女のように間違う人が少ないわけではない。

嫌でも思わされる。私と優では“差”が大きすぎる。

優の前では私の存在など…消えてしまいそうだ。

 

「優…。お前、一夏の知り合いか?」

「あ、はい…。あそこにいる赤髪の男が同級生で、私はその妹です」

 

少女が指差す先には一夏と同じ背の赤髪の男子が立っていた。

確かに私達と年が近い気がする。

 

(ふぅ……)

心の中で一旦深呼吸して落ち着かせる。

気にしたって容姿は本人の意志では仕方のないことだ。

それを私がどうこう言うことはできない。

もっとポジティブに。私だって努力すれば優のようになれる。

そう思おう。せっかくの文化祭をこんなことでふいにしたくない。

 

「そうか。一夏も喜ぶだろう。付いてきてくれ。案内する」

「はい!お願いします!」

 

 

 

◇

(弾side)

 

 

 

「はぁ……」

 

俺達を案内してくれた人も美女。教室前で客引きしている娘も美女。

そして、メイド姿で奉仕してくれる娘も美女。

なんだここ?夢の世界か?アイドルグループでもこうはならないだろ。

そこに……

 

「蘭ちゃん、久しぶり」

「優さんお久し振りです!」

 

コイツらはいるんだよな。

俺は「リア充爆発しろ」とは言わないがコイツらには言われても文句は言えないと思う。

 

「(蘭ちゃん、一夏に『執事にご褒美セット』頼みな。一夏が良いことしてくれるよ)」

「(どんなのですか?)」

「(それはお楽しみに)」

 

(はぁ……)

俺的には一夏より優といてくれた方が安心なんだけどコイツは人の気持ちを察知しちまうからなぁ。蘭の気持ちを尊重して自分は引いてる。

 

「なぁ弾。俺はこれから休憩だから一緒に回ろうぜ。

(お前のタイプの人と思われる人紹介するよ)」

 

後ろの言葉をこっそり俺に伝えてくる。

これも目の前で妹の色恋沙汰を見せないように俺ら兄妹に配慮してる。

どうやったら2歳差でこうなるんだよ。

絶対俺はこんな風になれないわ。

 

「あぁそうだな。蘭、俺は優と回るわ。何かあったらメールなり何なりしてくれ」

「りょーかーい」

 

優は燕尾服のまま裏側から出てきた。

どうやら休憩と言っても短時間らしい。

 

「なぁ優。お前さ、さっきの美人メイドさんと似てないか?」

「…すまん。誰のことを言ってる?」

「あぁ…すまん」

 

そういえばここ美人揃いだったな。美人だけじゃ誰かわからねぇ。

 

「あれだよ。ちょっと気が強そうだけど大和撫子って感じのやつ」

「箒か」

「そうそう!俺達を案内してくれた女子」

 

俺がそう言うと優は苦笑いした。

もしかして、俺意外の奴も言ってるのか?

 

「箒はどこの生まれか分からない俺と違ってちゃんとした家柄の娘だよ」

「けど、いつもの髪の長いお前があの娘みたいに結ったらかなり似てると思うぞ。

身長もお前が低いせいで近いし」

「だとしても他人の空似ってやつだよ。さっ、ここだ」

 

「あっ、黒川くんだ!」

「友達も一緒だ!」

「えっ、ウソ!」

「どこどこ!?あっホントだ!」

 

教室に入った途端クラスの皆が俺達を見てきた。

ホント男子ってだけでここでは目立つな。

 

「ほら一歩前」

 

バンっと後ろから背中を叩かれて俺は前に出る。

 

「初めまして!」

「きゃー!かっこいい!」

「織斑君とは違うカッコよさが」

「アンタ……弾?」

 

俺を呼ぶ声がしたと思うといくらか背の低い女子がいた。

目の前に真っ赤なチャイナドレスの、しかも一枚布のスカートタイプ。

スリットが深く入っていて大胆だ。

シニョンもしてあって本場の人に見えると思う。俺は本場の人の知らないけど。

 

「……誰だ?」

 

――バン!

 

俺の顔はトレーか何かがめり込んでいた。

そういえば前、一夏のことでからかったら同じことをされたわ。

 

「てめ……鈴だな…」

「久々にあった幼馴染みにその態度はなによ」

「悪かったって」

 

文化祭でチャイナドレス着ているとはいえ、1、2年でここまで変わるとは思わなかったんだよ。

 

「まぁいいわ。席空いてるから座りなさい」

「サンキュ」

 

俺は裏方の部屋に近いテーブルに案内された。

鈴も注文したものを持って向かいに座った。

 

「で?一夏とはどうなんだ?」

「別に。ふつーよ。相変わらずハーレムを量産してるわ」

「そうじゃなくて。進展はあったのかって話だよ」

「ふつーに友達としてやってるわ」

 

(やっぱりか…)

親父さんとおばさんが離婚したことまだ引きずってるな。

 

「鈴、お前はお前だ。アイツは気にしないと思うぞ」

「そのためだけに近づくのも失礼でしょ」

「まぁそうだけどよ…。そしたらお前誰とも付き合わねぇじゃん」

「ありがと。そういうこと言うのアンタぐらいよ。

まぁ、あとはウチの人達と遊んできなさい。

はいはい。好きにしてどーぞ」

「え?おおぉぉぉぉお!?」

 

いきなり後ろから引っ張られて裏方の部屋に運ばれて、いやこれもう誘拐レベルだよな。

しかも足と抑えられちゃったし。

 

「鈴ちゃんといつ会ったの?」

「鈴ちゃんとどんな関係なの?」

「ねぇねぇ、……」

 

 

…………………………………………

…………………………………

…………………………

 

 

「あー………」

 

一件目だったのに1時間近くいた気がする。

嬉しいけど、質問の嵐で少し疲れた。アイツら毎日これなんだろうな。よく体もつな。

 

……まぁ蘭もこれでIS学園に行くなんて無謀なことは言わないだろ。

あのちんちくりんが1年でここの美女と同じラインに立てるわけないからな。

っていうか優はどこ行った?途中から見えなくなったんだが…トイレか?

 

「貴方が五反田 弾君でよろしいのかしら?」

「はい!?」

 

不意に声をかけられて、びくっと背筋を伸ばす。

振り返った先に立っていたのは容姿は眼鏡にヘアバンド、三つ編みと自由度の高い学園にしては校則をしっかり守った格好をしておりお堅いイメージがするが、美人だ。

大事なことだからもう一度言う。美人だ。ストライクゾーンのド真ん中だ。

 

「あ、はい。そうです」

「実は黒川さんからこれを届けるように、と」

 

中学生の時流行ったメモを折りたたんで蓋をする手紙を渡された。

 

(女子かアイツは)

ペラッと開けると優にしては珍しい走り書きの文字の文面だった。

 

『  弾へ

 

用事ができたから席外すわ。

どうせお前はどのクラス行っても俺ヒマだし頑張れ。

代わりに先輩と回ってくれ。

 

PS, その先輩は布仏虚先輩って言ってフリーだから頑張れ』

 

(やかましいわあのアホ)

コレ本人が先に見たらどうするんだよ…。

ていうか先輩をそんなことに使うな。

 

 

(ん?……待てよ)

そんな知られたら困る内容があるのにこの人はここにいる。

つまりこの人は別口でここにいるってことになる。

誰かが俺とこの人をくっ付けようとしている?

 

「それでは…どこかご要望はありますか?」

「じゃあ…先輩のクラスに行きたいです。先輩もその方が楽でしょう?」

「えぇ。ありがとう。ウチのクラスはこちらです」

 

 

 

 

◇

(優side)

 

 

 

メッセージで言っていた所に行くとメイド姿のままのシャルがきょろきょろと俺を探していた。

 

「お待たせ。待った?」

「ううん。お友達大丈夫だった?」

「他の女子に囲まれてウハウハしてたから平気だろ」

「そうなの?」

「虚さん呼んだし大丈夫だよ」

「そっか。じゃあ行こ」

 

俺の体をグイグイ引っ張ってどこかへ連れて行く。

だから胸が当たりかねない腕の組み方はやめなさいって…。

 

「どこに行く?」

「料理部」

「料理部?」

「うん、日本の伝統料理を作ってるんだって。せっかくだから作れるようになりたいなぁって」

「シャル、料理うまいもんな」

 

母子家庭の娘だったから料理をする機会が多かったこともあるけど、それを抜きとしても旨い。しかももう日本食も作れるっていうんだから花嫁修業の点では完璧だろうな。

 

「ホント?じゃあまた今度作ってあげるね」

「おう。サンキュー」

 

「おお!黒川君。ここにいたのね」

「あっ、黛先輩」

「いやー向こうで一夏君のお友達がいるって言うから男子勢はそこにいると思ったけど違うのねー。探すの大変だよ。まだ一夏君見当たらないし」

「一夏はクラスで執事してますよ」

「ホント!?これで念願の執事シーンが撮れるわね!じゃ!」

 

黛先輩は人混みの中をダッシュで走り去って行った。…と思ったらそのままの速さで帰ってきた。

 

「あっ、そうだ。黒川君、デュノア君をお姫様抱っこしてよ」

「お姫様抱っこですか?」

「うん。二人共丁度良い格好してるし、一夏君には出来ないことだからね」

 

ほら、他の子がうるさいからと付け足す黛先輩。

それで、親子関係でもある俺らに頼んでるわけね。

 

「どうする?」

「いいよ!やろ!ね!」

 

いつにも増してシャルはやる気満々だ。やっぱりフランスの子もお姫様抱っこは夢なんだろうか。

 

「じゃあいくぞ」

「うん」

 

ひょいっとシャルの体を持ち上げる。

見た目から分かるけど軽いな。

 

「いいね。デュノアさん、黒川君の首に回して」

 

シャルはしゅるっと腕を伸ばし首に回す。

 

(う、これはまずい…)

体が近づくことでふわっと甘い香りが広がる。

「ゆう……」

 

シャル本人を見るとうっとりしたような顔で俺を見つめていた。

親の贔屓目無しでもそれは蠱惑的で魔法に掛かったのように目が離せない。

 

「シャル…」

 

俺はシャルの頭を引き寄せる。そして、そのまま――

 

パシャ――

 

「いやーいいのできたわ」

「えっ、……あ、はい」

 

ぱっと顔を離し反射的に黛先輩に対応する。

が、先輩が何を言っていたのか全然頭に入らない。

 

「二人共ありがとね。じゃあねー」

 

かき回したこっちの心境など知らんと言わんばかりに黛先輩はもういなくなっていた。

嵐のような人である。

 

「シャル?」

「あ…ぅ…」

 

シャルはパニックを起こしたような顔をしたが、なぜか体は何の行動も起こさない不思議な状態になっていた。

仕方ないこのまま調理室行くか。腕も回されたままだし。

そのまま抱っこしたまま料理部の所まで向かった。

 

 

……………………………………

……………………………

……………………

 

 

無事、料理部に入ることができた。

やっぱりお姫様抱っこの状態は目立つらしく、部長さんらしい人がこっちに来てくれた。

 

「おおっ、黒川くんだ!そして一度は男子だったと噂のデュノアくんだ!」

「どうも」

「…にゃ…」

「デュノア君、大丈夫?」

 

声をかけてくれた料理部長さんは不思議そうにシャルを見ていた。

しかし、それにしてもまるで夢の中にでもいるような感じだな。

 

「シャル、シャル」

「ふにゅ……え、優?」

「やっと戻ってきたか、」

「僕は…」

 

シャルは何かを思い出したらしく一気に顔が赤くなった。

まぁさっきの写真は恥ずかしかったが。

 

「おやおや?二人共皆に隠れて何をしてたんだい?

執事とメイドの秘密の逢い引き?っていってもミンチじゃないわよ?合挽だけに!なんちゃって」

「「………………」」

 

(この人、一夏と同じタイプの人間か……)

どうやらシャルも一気に現実に戻ったらしく料理部長さんを冷たい目で見ていた。

 

「さあさあ、食べていってよ。その代わり写真撮らせて~。あとうちに投票して?」

「投票ですか?まぁそれくらいなら――」

「ダメだよ優。不正勧誘だから」

「そうなの?」

「あちゃー。娘さんの方が厳しかったか」

 

一瞬、シャルがピクッて反応したけどいつも通りの感じに戻った。

特に普通のやりとりだったと思うが。

 

「じゃあ、肉じゃがいただけますか?」

「はーい、どうぞ~」

 

お金を払い肉じゃがを頂く。向こうのご厚意でご飯も頂けた。

2人で教室内に置かれたベンチで並んで食べた。

しっかりした味付けになっているがくどくはない。

いい味付けってやつだ。部活のものでここまで美味いものがでるとは思わなかった。

 

「そういえば、肉じゃがって昔は女性の必須スキルだったらしいぞ」

「そうなの?」

「なんでも肉じゃががうまい相手も結婚しろというのが昔の風習だったらしい」

「け、結婚……」

「変な話だよな」

 

因みにウチ(俺、一夏、千冬さん)で無縁の話をなぜ知っているのかというと、ナターシャさんが千冬さんを弄る時のネタのひとつだったからだ。

千冬さんも手を抜かなければちゃんとした料理ができるんだけどね……。

相変わらず家の中ではずぼらである。

 

「結婚…けっこん……」

「シャル?」

 

またさっきのようにフリーズしたような状態になってしまった。

もしかしてさっきの肉じゃが、合わなかったのか?

 

「あらあら遠回しに結婚の催促?見せつけるわね~」

「楯無…」

「ちゃお。優くん、シャルロットちゃん」

 

楯無さんの姿はシャルや箒達と同じメイド服姿。

一体、どうやって店の服を仕入れたのやら……。

 

「何か用ですか?楯無さん」

 

シャルが不機嫌そうに聞いてきた。

こらこら、まだ何もしてないでしょう。

 

「貴方逹もう交代の時間だから声かけるようにって言われただけよ」

「仕方ない。一回戻るか。」

 

料理部の皆さんにお礼を述べ、俺達は自分のクラスに戻ることにした。

その時、楯無にこっそり耳打ちする。

 

「ところで向こうはどうなんだ?」

「順調よ。今、自分のクラスを案内してるわ」

「へぇ~さっそく見せつけですか。虚さんも大胆ですね」

「そうねぇ。案外、早くことが進むかしら」

「じゃあ尾行よろしく」

「了解」

 

いたずらをしている子供のような顔をして俺達と逆の方向へ去って行った。

 

 

 





すいません。投稿が大分遅くなりました。

なぜかと申しますとセシリアのシーンをどうしても入れたかったからです。
(もう忘れられているだろう)Conflictの特訓をカットしてしまったので2度目は避けたかったのです。
いい加減書くなり何なりしたいですね。

しかし、やっぱり音楽の知識がないのは辛いです……。
東方を知った後はホント後悔しましたね。楽譜見て演奏できるようになりたかった。

ではではまた次回。
ここまで読んで頂きありがとうございました。


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