IF―切り開かれる現在、閉ざされる未来―(OCCF) 作:黒川 優
皆さんこんにちは。黒川 優です。
先週「Last Jahr」を更新出来ました。
これから交互に更新できたらいいなぁ…と思っています。
それでは本編をどうぞ。
◇
(優side)
入れ替わりで一夏が箒、ラウラを連れてどこかへ行ったこの頃。
このお昼の時間帯は皆、ボリュームのある料理を展開する料理部や教職員のブース、午後から劇が始まるため、その席取りの関係もあって必然的にお客さんが減るはずなんだけど……。
「黒川くん!」
「黒川くん、――」
「黒川くん、写真撮ってあげて!」
他の教室に比べて相変わらずの長蛇の列を作りだしている。
よく見ると、ここにいる人上級生の人が多い気がする。
どうしてこうなった。
「ニーズが違うのよ」
クラスのしっかり者にしこの『ご奉仕喫茶』を仕切る鷹月さんがエッヘンと隣で胸を張っていた。
「ニーズ?」
「そ。皆が1人のアイドルを好きになるわけじゃないでしょ?
そういうことよ。ほら、次5番テーブルお願い」
メニュー表を持たされて次のお客さんの応答に向かう。
「お待たせしました。『執事にご褒美セット』のお客様ですね」
この執事にご褒美セットは自分が食べるのではなく食べさせるものである。
よくこんなことを考えるよな。よくそれを注文するな……。
蘭ちゃんに勧めたけど。
「はい!お願いします」
相手は○ッキーを逆に持って俺の口に運んでくる。
その表情は目を輝かせて何かを期待しているようだった。こっちも何となく察した。
まぁご奉仕喫茶だし、ここは乗ってあげましょうか。
俺は○ッキーをポリポリ食べ、最後にチョコのついた指を舐めた。
「―!」
「「「――!?」」」
「ご馳走様」
どっかの生徒会長を真似て妖しく微笑んだ。
このセリフは執事らしくないがどこか禁断の関係を思わせてくれるだろう。
現に相手の娘は顔を赤くして呆然とこっちを見ていた。
「すいません!執事にご褒美セットお願いします!」
「私も!お願いします」
「―――!」
一部始終を見た人達から一気に注文が加速した。
あぁ、やっぱりやり過ぎたかな…。
「シャルロットちゃん、セシリアちゃん、早いけど次の子と変わって。
癒子(ゆこ)、すこし客席を絞って」
「鷹月さん、どういうことですか!」
「これ以上見てたら貴女達暴れるでしょ?」
「う……」
「否定はできませんが」
「まっ、その辺の文句は黒川くんに。
私はこのチャンスを有効に使わせてもらうけどね」
鷹月は遠くで微笑んでいた。
あれ、こんな黒い人だったっけ?
その後1時間ほどずっと餌付けされた。
さすがにもう○ッキーは当分いらないわ。早く歯磨こう。
「優…お疲れ」
「シャル。なにか…?」
「分からない?」
シャルはにこっと微笑む。
けど何か違う。この前と違ってその笑顔に癒されない。
よく分からないが避けるべきと感じた。
が、後ろに下がっても誰かに止められた。
「優さんがそこまで接客熱心だとは思いませんでした。
それならわたくしにもして下さりますよね?」
「いやー…流石にお腹いっぱいかな」
「殿方たる者が言い訳をしてはいけませんよ」
「そうだよ優。今更1本や2本変わらないよ」
「いや…ね?」
「「優(さん)」」
――ダダダダダダダッ!!
「きゃあああっ!」
悲鳴と共に教室には割れた窓ガラスが床に広がった。
急いで外を見る。
(嘘だろ…)
そこにはオシリスに酷似した機体が学園上空を飛翔していた。
相違点は機体のカラーが黄色であることぐらいか。
その操縦者は大鎌『デスサイズ』を振り回す。
『Ruin Rain 』
「Power Wall 」
疑似絶対防御で校舎から雷の矢を守る。
ひとまず何とかなったが残りエネルギー的にこれ以上は無理だ。
元々コイツは所持者を守るものに過ぎないからだ。
『緊急事態発生。来場者の皆さんは教員の指示に従って地下シェルターへ向かって下さい。―繰り返します…』
「優、これは…」
「シャル。今すぐ一夏達と合流して襲撃者を足止めしてくれ。俺はここにいる人達を避難させてから行く。セシリアも頼む」
「わかった」
「わかりましたわ」
二人は一夏達と合流しに教室の外へ出た。
(……………)
今のはオシリスの「Ruin Rain」
そのオシリスはSlave Mode時でしか使えない。
始めから通常の機体として使うことは今の解析レベルでは無理なはずだ。
「優くん」
二人と入れ替わるように楯無が教室に入り、ディスプレイを見せてくれた。
「ISISよ。IFとは逆側から学園に侵入してきているわ」
「ちっ……」
(こんな時に………)
ここでISの数が減るのはマズイ。
「俺はそっちに向かう。楯無、皆の避難を頼む」
「わかったわ」
今回は訓練された生徒だけでなく一般市民の人達もいる。
学園としてはその人達の救出、保護に回らざる負えないはず。
とてもじゃないが侵入者を撃退する戦力を揃えることは不可能だ。
早く増援を呼ばないと……。
『こちらAIF日本本部』
「さとりか!」
『いえ…只今さとりさんは席を外しています』
「学園で非常事態が発生した。学園内だけじゃ対処できない。さとり達を寄越してくれ」
『しかし私達は裏守防衛でなければ……」
「あ?」
状況が状況なだけについ低めの声で相手を脅すような声が出てしまう。
以前あったデュノア社襲撃事件や先日のISIS騒動では俺がいなくても話を進めてくれる有能なEU各支部だったおかげで・・日本・の・・・・システムを忘れてた。
俺をここに置いているのは学園の防衛が最たる目的である。
意思疎通に問題のない日本人が好ましいのは言うまでもない。
それを少数の人間で行うのは無理がある。
故に切り捨てれる人間。俺のように“非国民”であることも望ましいのが暗黙の了解だったりする。
特に自由国籍の俺は義務を果たすことはないが権利を得ることはない。憲法で保護されることもない。そして他人は過失を擦り付けることができる。
厄介事にならないと動けない日本の憲法に縛られてしまったAIF日本本部。
その大元を作ったのがあの無能な輩の遺産である。
それが学園、日本を守っている組織の正体である。
まったく機能しない。
それでいて被害が出れば文句を言う。
そんな頭の堅い連中が作った組織だ。
これでも長官が緩めてくれた方だが俺一人で対応できない事態に対して初動が取れないことに代わりはない。
まったく。綺麗事ばかり並べやがって。
それで信用がなくなるのが自分の国だって分かっちゃいない。
「じゃあなんだ。誰かが人前で殺されないと動けないとでも言うのか。
人を助ける機関が。あ?」
『それは……』
「もういい。さとりに変われ。お空でもお燐でもいい」
『少々お待ちくだピー――』
ノイズが入り始め通信が出来なくなった。
「電波ジャックもか……」
これは本格的にマズイな。
奴等学園を乗っ取るつもりか。
◇
(一夏side)
「これで全員か」
「うん。ありがとうラウラ」
ジャミングのせいで通信機器が上手く機能しない中、ラウラがEmergency Callを意図的に誤作動させることで合流していなかったシャルロットとセシリアに位置を教えたのだ。
IFにはない安全面の機能を使った手段。相手に知られないという点では最良の方法だと思う。
「ISISの反応もあるこの状況、あの機体は私達が処理しなければならない」
建物の影から相手を盗み見る。
相手が行う技を見る限りオシリスと同機体と言ってもいい。
「Ruin Rainなら私のAICで何とかなる。
一夏は雪羅と零落白夜でサンダーフォースを無効化しろ。
鈴と私は接近戦でセシリア、シャルロットは遠距離でヤツを攻撃。
箒は基本一夏の側にいて燃費の悪い百式をカバーだ」
『てめぇ達だけで勝てると思ってんのか?』
「貴様こそ一人で勝てると思ってるのか?」
『さぁどうだろうな!』
さっきの指示通りラウラ、鈴の接近ペアが相手する。
デカい鎌にも関わらず2人の攻撃を捌ききる。
しかし、ワイヤーブレードを搭載しているラウラ
大鎌に巻き付き
相手にとって大鎌は重要なものなのか手を放さない。
体勢を崩され引っ張られる。衝撃砲をチャージしている鈴の所に。
『くらいなさい!』
『サンダーフォース』
相手は雷を鎧のように纏う。
しかし、雷では衝撃砲を防ぎようがない。
それが分かったのか被弾覚悟で鈴への攻撃に転用してきた。
「零落白夜」
エネルギー攻撃の雷を無力化し俺も近接戦に参加する。
3対1。先月から連携訓練も行ってるから足を引っ張りあうなんてことはい。
圧倒的な手数の多さはこの女を追い詰めていた。
『ちっ!面倒だな。ならコイツだ。――スコール親愛なる貴女』
大鎌を振るうと雷を帯びたナイフがRuin Rainを雨のように降らす。
この広範囲、無差別攻撃じゃAICで防げない。
何より一つ一つが小さくてAICなどで止めることができない。
「どうするんだよ?範囲外まで下がるしかない!」
『一夏!範囲外にはISISがいるのだぞ』
『ラウラ!―――』
『シャルロット!バルムだ!相殺してくれ!』
『でも、それだけじゃ』
『それでいい!早く!』
シャルロットはラウラの指示通り相殺するために平行切替でバルムを放ったが押し戻され爆風によって土が舞い上がったことで辺りは煙に包まれた。
『全員ステルスモードへ変更。今から提示するポイントへ移動してくれ』
再びEmergency Call によるモールス信号で集合場所が記される。
「大丈夫か?」
「問題ない」
「まだまだいけるよ」
「そうか。これは鈴の案だ。私も問題ないと思う。いいか―――」
「俺はどうすればいいんだ?」
「ISISが乱入した時のためだ。私達には対抗する手がない。頼むぞ」
「あぁ」
「全員持ち場につけ。合図はEmergency Call。見逃すな」
「「「了解」」」
全員散開しそれぞれの持ち場に就く。
シャルロットは再びバルムをSky Shineで展開。
下から、または重力によって上から攻撃を図る。
しかも自身の意志で爆発できる。
バルムの爆発によって土は舞い続けシャルロット達の身を隠していた。
『ちっ。みみっちいことしやがって』
相手の動きがガクンと止まった。
レーゲンのワイヤーブレードが相手を捕らえたからだ。
『下にいるのは私だけではない』
『ならぶっ殺してやるよ!』
相手はRuin Rain とサンダーフォースを織り混ぜた雷を放つ。
あれではAICでもワイヤーブレードでも防げない。
派手な音と共にグラウンドの土が吹き飛んだ。
『はっ!馬鹿め!そんな見えるもので拘束するから――』
『ふっ。だからといって真下にいると思ったら大間違いだ』
オープンチャネルからラウラの声が聞こえ相手のワイヤーブレードの拘束は解けないままだった。
実はラウラはこの女の真下にはいない。
拘束成功時にワイヤーブレードを機体から切り離したのだ。
ただしAICでワイヤーブレードを固定したため拘束を続けながら自分は移動することができる。
――ガシャン
なぜ直接AICを掛けなかったかというと相手の性格上、相手はさっきのように攻撃する。
そうすれば必ず隙ができる。ラウラも攻撃に参加できる程の隙が。
『ラウラ、シャルロット。タイミング合わせなさい』
『合わせるのは鈴の方でしょ?』
『間違って最大威力で撃つなよ?火も風が強すぎれば消えてしまうものだ』
『あー!分かってるわよ!いくわよ!』
ラウラはレールカノン、シャルロットはバルム、少し遅れて鈴が龍砲を放つ。
元々一撃で致命傷レベルの威力を与えるレールカノンにバルム。
さらに衝撃砲による高密度の空気を得て大爆発を起こした。
絶対防御という装甲を突破するためのエクスプロージョンブリッド。
あまりの威力に爆風で相手は地面に叩きつけられる。
『くそっ!このクソアマ共がぁ!許さねぇ!ぶっ殺してやる』
相手は汚い言葉を吐いているが肝心の機体は装甲がほとんどは吹き飛んでいる。
エネルギーも少ないのは確かだ。
『終わりだテロリスト』
箒は相手の肩の上に降りたった。
高速で移動してきたISを二点で受け止めた相手は再び倒れる。
箒は容赦なく空裂を首筋に当てた。
『動くな。スナイパーはお前の頭を捉えている。
貴様の機体では防ぐことはできん』
『舐めたことしやがって』
『姉さんを殺そうとしたその罪、死んで償え』
箒がそう伝えると相手はピクッと反応し俺達を嘲笑った。
『ふふっ。ふはははは!
私達がテメェの姉を殺そうとした?
随分被害者面するんだなぁ。あ?』
『なに?』
『知らねえのか?――――――』
あの女が何を言ったのか分からないがその言葉に箒は目を大きく開き動きが止まってしまった。
警告―――
『箒!そこから離れろ!』
何かが高速で箒の所に向かっていた。
瞬間加速より速い。白雷か!?
(くそっ!間に合え…!)
――キィン!ザクッ
第二形態になり大型、推進力アップとなった百式はここでその本領を発揮し、箒をそこから押し出し向かってくるものの攻撃を雪羅で防ぎ零落白夜で突き刺した。
『よく反応できたな。だが、無意味だ』
反撃に突き刺した雪片は相手のウイングスラスターに挟まれる形になってしまった。
マズイと思った時には雪片を持つ手を引くよりも先に灰色のローブを被った操縦者に掴まれる。
『くたばれ――Absolute Power Force』
(な……!?)
防ぐ間もなく俺は腕部から放たれる業炎に包まれた。
◇
(蘭side)
ISISはISを吸収する。
と言うことは学園の人が私達を助けてくれる望みは低い。
「お兄走って!」
でもどこに?
このまま私達がシェルターに向かったらこのISISも来てしまう。
『そこの二人。頭を下げて!』
誰かの声がすると同時にISISの一体に砲弾が当たり後方に吹き飛ばされた。
「お空。そんなデカイ砲弾使ったら敵に居場所を知らせるようなものよ。
近接武器にしなさい」
「さとり様、…それは無理ですよ。
生身で倒すには不意討ちの一撃で破壊するしかないんですから」
目を開けると長身で長い黒髪に緑の大きなリボンをしている女性と短身で薄紫のボブに深紅の瞳を持ち、変な目を巻き付けている女性2人が立っていた。
「あの、………」
「…そうね。なら手榴弾にしましょう。あの空洞になっている胸部に近づければ問題ないわ」
「え?」
「気にしないでちょうだい」
「さとりか!?」
どこからともなく誰かが飛んで来たかのように私達の前に現れた。
その人は私達の前にいる人がいることが意外だったみたい。
「さとりさん。どうしてここに?まさか――」
「自力で来ました。おかしな反応をキャッチしましたので何かあったのかと」
「あのEmergency Call、モールス信号みたいになってるんだよねー。
てっきり私達に対してかとおもったんだー」
「お空も……。正式なものじゃない。防衛は厳しいか。俺がそっちに行く。
大方破壊したつもりだが残っていたら頼む」
「そのために私達が来たんですよ。
勝手に来た身なので大きくは出られないですけどね」
「頑張ってねー優」
「黒川…さん……?」
お兄も言葉を失ったまま黒川さんを見ていた。
この場面で銃刀法違反なんてレベルを軽く超える武装を持っていられるのはAIFの職員のみ。
けれど、ISは一夏さん以外女性にしか使えない。
つまり、目の前にいるこの人がアインスなのだ。
「あぁ。2人とも間に合って良かった」
黒川さんはほっとした顔で私に手を差し伸べる。
――人を殺めたその手を
――世界を壊したその手を
私は恐くて後退りしてしまった。
「……………」
「ごめんなさい…。私……」
「気にしなくていいよ。慣れてるから。さとりさん、お空、後はよろしく」
それだけ言うと黒川さんは壁をかけ上がりいなくなってしまった。
あまり聞きなれないエクスプロージョンブリッドについて。
一例は弾頭に空洞があってその中に水銀の粒が入っている弾丸を撃つことです。
当たった時、慣性で水銀が弾道を破裂させる…らしいです。
(見たことないので詳しく言えません。あるのも問題ですが)
火薬を減らして水銀を入れるので威力は変わらないだとか何とか。まぁ銃弾は重いから意味がありますしね。BB弾で撃たれても死ぬほど痛くないのを考えると分かりやすいのでは。
しかし、これで燃料タンクでも撃てばヘリを落とせるとか。
つまり専ら対機械の銃弾ってわけです。
特に甲龍の衝撃砲は元をたどれば空気(酸素)なので爆発に相性がいい。
今回はそれで絶対防御を超えようとしたのです。やだ、立案者鈴ちゃん怖い…。
こう書くとISの銃弾って基本的にエクスプロージョンブリッドになりますね。
っとどうでもいいお話でした。
次回、やっとテーマを日本語にできると思います。
やっぱり英語のテーマって分かりにくくて取っつきにくいですよね。
考える私も大変なんですよw
それでも使う理由は次回に。
ここまで読んで頂きありがとうございました。