IF―切り開かれる現在、閉ざされる未来―(OCCF)   作:黒川 優

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Who will dance?(Qui va danser ?)―2

レヴァ

 

アインスの機体の一種

淡緑にオレンジのラインが入っているのが特徴

単一能力は風を操る「ミスティル」

 

武装は十種類程の槍

(主に赤槍「アキュレス」黒槍「ブラックスピア」を使う)

と双短銃「ブランディストック」

 

ISの基準では第2世代にあたる。

 

 

モデル―遊戯王「ドラグニティアームズ―レヴァテイン」

 

 

 

(シャルルside)

 

(あれは……)

 

一夏達の前に立つ機体を凝視する。

淡橙の羽織に淡緑の装甲。

今のISには採用されていない素顔を隠す龍のお面のようなバイザー。

間違いない。アインスの中の一機「レヴァ」

 

「やはり出てきたか」

 

ボーデヴィッヒさんはアインスを見て満足そうに微笑んだ。

そのアインスはすでに彼女の視界から外れ、一夏達を観客席に運んでいた。

 

(速い……!)

同じ瞬間加速なのに自然体でするせいかまるで瞬間移動したように見える。

 

『ラウラ、今すぐISを収納しろ』

「ふざけるな!」

 

ボーデヴィッヒさんはアインスの反応が気に入らないのかレールカノンを放つ。

しかし、アインスは短銃を展開。砲弾を全く見ることなく誘爆させた。

その間にワイヤーブレードを切断して僕を助けてくれた。

 

『大丈夫か?』

「あっ、はい……」

 

性別の判断がつかないマシンボイス。

だからと言って冷たい、無機質といったわけでもない不思議なものだった。

 

『アインスを確認――赤い靴発動』

 

途端に頭の中でオーケストラの演奏が流れ意識が遠退く。

なのに右手は勝手にアインスの首へと動いていった。

 

(…ダメ!ここで起動しないで!)

 

朦朧とする意識で左手を動かし右手を抑える。

そして、機体が本格的に暴れる前に無理矢理収納させた。

そうしなければ機体が何をするか分からなかったから。

 

「はぁはぁ………」

『……………』

『どうやら足枷がもう一人できてしまったようだな』

『人を邪魔物のように言うなと以前言ったはずだが……』

『貴様は例外だろう?

貴様はここで消えても誰が、何を言う?』

『…………………』

 

彼女の言葉にアインスは黙ってしまった。

対して彼女はここでアインスがこうなることを分かっていたのか攻撃してきた。

アインスはワンテンポ遅れて僕を抱えてワイヤーブレードを回避する。

けれど僕は生身の状態。複雑な3次元回避ができない上にワイヤーブレードは16個。

 

あまり動けない内にAICに捕らえられる。

僕に対してはAICからワイヤーブレードに変えて適当な場所に投げ捨てられた。

 

「お前も死ぬ前に見てくと良い。コイツの素顔をな」

 

ボーデヴィッヒさんはアインスの顔面を思いっきり殴る。

シールドエネルギーで防がれなかった拳は顔を覆う仮面を砕いていった。

 

仮面が無くなり、素顔が見え隠していた髪が表に出る。

まるで女の子ように長い金髪、左右で若干色の異なる金眼、白い肌。

 

間違いなく優だった。

 

 

「ふん。その顔相変わらずだな。気にいらん」

『…………………』

 

何の前触れもなく空から大量の槍が雨のように降ってきた。

それを回避するためにボーデヴィッヒさんは距離をとる。

 

『もう一度言う。ラウラ、今すぐISを収納しろ。

俺はこの場を納めるためだけに来た』

「ふふふっ、ははははは!」

 

ボーデヴィッヒさんは優が言ったことがおかしかったようで笑っていた。

 

「私は待ち望んでいたのだ。お前と戦えるこの時を。

その私がこの絶好の機会を逃すと思っていたのか?」

『それは授業の時でもいいだろ』

「それではダメだ。私は他を圧倒する力、アインスを使うお前の全力と戦いたいのだ。

そして、その力を使わせる手段はここにある!」

 

彼女は僕にカノン砲を向けた。

 

『てめぇ!』

 

瞬間加速を仕掛けようとした瞬間、地面からワイヤーブレードが現れ優を捕えた。

 

「さぁ貴様には私のために消えてもらおう」

 

―バァアアアン!

 

再び爆音がアリーナに響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

(来ない………)

 

カノン砲が炸裂した音は確かにした。

けれど、衝撃も痛みも全く来ない。

僕は少しずつ目を開けた。

 

それは不思議な光景だった。

僕の周りに数本の槍が地面に突き刺さり、僕を守るように風が纏ってくれている。

ボーデヴィッヒさんの表情をみる限り、これがあのレールカノンを防いだのだろう。

 

「……貴様、何だその能力は…」

 

ボーデヴィッヒさんは困惑した表情で優を見る。

いや僕を含めここにいる誰もがそう思う。

なぜなら優は未だにワイヤーブレードによって拘束されているのだから。

 

『ミスティル』

 

地面に刺さっていた槍がひとりでに抜け回転して僕に絡み付くワイヤーブレードを切断してくれた。

槍の付近は明らかに風の流れが違う。

槍を動かしているのも、僕を守ってくれたのも風を操るレヴァの能力なんだと感じた。

 

『シャルル、できるだけ下がってくれ』

「うん」

 

一夏が零落白夜で開けた穴の近くに避難する。

 

『ありがとう。少しだけ待っててくれ。すぐ終わらせる』

『ふん。どんな能力が使えようと動けないお前など脅威ではない!』

 

ボーデヴィッヒさんはプラズマブレードを展開して優に肉薄した。

 

『単一化』

 

優の機体の装甲に紫電が走り吹き飛ぶ。

勢いよくパージした装甲は拘束していたワイヤーブレードを断ち切り、そのまま彼女のところにまで飛び散る。

至近距離で、しかも装甲が能動的に外されることは意外そのもので彼女はAICで装甲を防いでいた。

 

「ミスティル」

 

展開した槍に風が貫通力を上げるために回転しながら纏われる。

 

まだ動きの止まったままの彼女に順に強化した槍を至近距離で投擲する。

一本目、二本目はAICで防ぐが三本目の槍がボーデヴィッヒさんを襲った時、彼女はAICを切って回避行動に移る。

けれど、それより先に優が踵落としで地面に叩き落とした。

 

『ぐっ…………』

 

再び動こうとする彼女の視線の先に三本の槍が囲むように彼女の回りに立てられた。

それはその気になればいつでも倒すことができると言っているようだった。

 

『ラウラ、次同じことしてみろ。その時は容赦しない』

 

その時、いつも笑ってる優が初めて怒りを露にしてボーデヴィッヒさんを見ていた。

その瞳には鈴やセシリア、一夏を傷つけたことに対してだけでなく、何か大切なものにまで土足で入ってきたことにも怒っているようだった。

 

それを見た彼女は逃げるようにアリーナを出ていった。

 

『ふーー』

 

優はさっきとは一転して安堵したようで一息漏らしてアインスを収納する。

けれど僕達を見た瞬間、悲しそうな辛そうな顔をしてボーデヴィッヒさんを追うように優もアリーナを後にしていってしまった。

 

 

 

 

(一夏side―医務室)

 

「ここは……」

 

見覚えのある白い天井が見える。

無人機の時と同じようにまた奥のベッドで寝ているようだ。

いや、何か忘れてる……。

(そうだ。俺は……)

 

「鈴、セシリア!うっ……」

 

勢いよく起き上がったはいいが体の痛みに走る。

 

「一夏」

「箒……。二人は?」

「大丈夫だ。お前よりは軽傷だ」

 

医務室を見回す。他にいるのはシャルルだけでシャルルはケガしなかったみたいだ。

さすが代表候補生、俺とは違う。

 

「シャルルありがとな。あの場を納めてくれて」

「ううん。僕は何もしてないよ」

 

疲れているというより心ここに有らずのような感じ。

箒も何か考えて事いるようで何やら難しい顔をしている。

(そういえば……)

 

普段より重症気味の生徒が出たのに保険医の姿が見当たらない。

 

と思ったら圧縮空気のいい音とともに医務室のドアが開く。

そこには治療を終えた鈴とセシリア、保険医の平野先生だけでなく山田先生、そして千冬姉もここに入ってきた。

 

「目を覚ましたか一夏」

「千冬姉、――」

 

俺が続きを言う前にバッシーンっと出席簿で叩かれた。

 

「この馬鹿者が。

黒川がいなかったらどうなったか……」

「優が?」

「…そうか。お前はそこまで見てなかったのか」

「?」

「二人共、織斑に見せても――」

「はい。ここまでくると隠すのは無理だと思います」

「私もそう思います」

 

千冬姉の言葉に二人の先生は何かに賛同した。

 

「デュノア。織斑に活動記録を見せてやれ」

「はい」

 

空中投射のディスプレイが渡される。

映像で見えるのは意識を失う前に見た風を纏う淡緑の機体がラウラの機体と対峙しているところだ。

途中、付けていた仮面がラウラによって破壊される。

 

「どういうことだよ……。なんで優が…」

「それが黒川がISを使うことができ、AIFに属してしる理由だ」

 

つまり優がアインスだと……。

 

「ほんとに優がアインスを……?」

「えぇ」

「そうよ。アイツはアインスを使って私達を助けてくれたの」

 

二人は言いにくそうに俺に告げてくれる。

二人がそういうんだから優がアインスなのは本当なんだろう。

 

「念のために言っておく」

「亡国機業の活動が活発化しているのにも関わらず私達が演習ごっこができるのはIS、IFが前時代兵器より希少で戦闘が拡大しないのもあるが、一番はアイツが世界を駆け回っているお陰だ。それを浪費してまで下らないことはするな。いいな?」

「………はい」

 

どんな理由であれ模擬戦の範疇を超えてのISの使用に対する注意。

けれど、それは注意と呼ぶには重かった。

 

「ケガはもう大丈夫だろう。

今日のことは他言するなよ」

 

説明するようなことは終わったのか部屋を出るように千冬姉に手を振られた。

 

「千冬姉」

「なんだ?」

「後で話があるんだ」

「……分かった。後で向かう」

 

 

 

 

(シャルルside)

 

 

(優が、アインスか………)

 

確信はなかったけど、何となくそんな気はしてた。

前、優は一夏に代用が利く議会や裁判には属さないっと言ってた。

逆に言えば優がAIFにいるのは他に代用が利かないから。

そして、そのAIFで一番代用が利かないのはISが吸収されるISISに対して唯一の

有効手段のアインスだけ。

 

 

――ガチャ

 

「ただいま」

「あぁ、シャルルか……」

「優?」

 

ベッドで横になっていた優が少し体を起こす。

いつもと違ってどこか態度がよそよそしい。それに目に光がない。

 

「どうしたの?もしかしてアインスは使うだけでも何か影響あるの?今、何が必要?」

「シャルル……」

「ん?」

「俺のことが恐かったりしないのか?」

 

優は僕の反応がおかしかったのか、ちょっとキョトンとした顔で僕を見ていた。

 

「恐くないよ。どうして?」

「前、学園でバレた時は銃を突き付けられたから」

「…そっか。優、ちょっとだけ目閉じて」

 

膝立ちになってぎゅっと優を抱き締める。

 

「これが僕の答え」

「シャルル…」

「優がいなかったら僕は死んでたかもしれないから。

優に助けられて嬉しかったよ」

 

僕の言葉が本心だって分かってくれたのか少しだけいつもの優に戻った気がした。

 

「どうしてボーデヴィッヒさんは優を敵対視するの?」

「ラウラは千冬さんが好きだからな」

「え?」

「半年間ぐらいだけど千冬さんに教えて貰ってたんだよ。

その時に惚れたんだろう。同時に俺は憎き敵になってわけ」

「そんな。だって……」

「まぁそれが現実だ」

「現実なら優は悪くない!」

 

だってあの事件を起こした時、優の意志は欠片も反映されてなかった。

織斑先生と戦った時だって本当はもう戦える状態じゃなかった。

同じ立場だから分かる。あの時、優は千冬さんに殺されることでIS狩りを終えようとしていたんだ。

 

「そう言ってくれるなんて思わなかった」

 

優はちょこんと顔を僕の肩に置く。

 

「……ちょっとこうしてて良いか?」

「いくらでもどうぞ」

 

母親が子供をあやすように背中に手を当てる。

ゆっくり体を僕に預けてくれた。

 

「ありがとう」

 

小さい声だったけど、1回だけお礼を言ってくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「優」

「ん?」

「ごめんね……」

 

袖の中からスタンガンを取り出して優を気絶させた。

 

 

 

 

 

 

(一夏side―カフェ)

 

 

 

適当なテーブルに目を付け座る。

学園の食堂に隣接しているここは、本来夜のこの時間帯には閉まるのだが無理を言って開けてもらった。

 

 

「それで、私を呼んだのは優のことか」

 

千冬姉の言葉に頷く。

なんで千冬姉が預からなきゃならなかったのか?

普通、個人ではなく、委員会が監視するのが筋じゃないのか?

 

どう考えてもそれが分からなかった。

委員会がそうしたのも、千冬姉もそれに応じたことも。

 

「一夏、お前は優の正体が分かるまでアインスをどう思っていた?」

「そりゃあ…。近い言葉で言えば“悪”だって思った。

どんな理由があっても人を殺していいわけじゃないから」

「綺麗な回答だな。そう言ってくれないと困るが」

 

(綺麗な回答……?)

その意味はよく分からないが今知りたいこととは違うので置いて置く。

 

「じゃあ、なぜアイツはそんなことをしたと思う?」

「そりゃあ、やっぱり殺意の類いがあったからとか?

じゃなかったら……」

 

―バッシーーン!!

 

最後まで言い切る前に思いっきり出席簿で叩かれた。

容赦ない一撃に額がテーブルにぶつかった。

それだけ俺が間違ったことに怒っているんだと顔は見れなかったけどそれを感じた。

 

「授業でも言ったはずだ。

Slave Mode、AIによるものでそこにアイツの意志など無かったと」

「じゃあ……」

「アイツだってそんなことは分かってる。

だから、あの戦い以外峰打ちで終わりにしている」

 

 

 

 

「IS狩りの直後、何が原因でSlave Modeが発動するなんて全く分からなかった。

だからアイツは私のもとを離れようとしなかった。当時、唯一アインスに対抗できる私から」

「それまで優は一人の時どうしたんだ?」

 

そうだとしても、千冬姉が連れてくまで委員会が預かってたはずだ。

 

「同僚の話だと全く眠らず他人と距離を取っていたらしい。

そのせいで倒れることも多々あった、っと」

「……優も大変だったんだな」

「あぁ。ある意味、IS狩りの一番の被害者は優だからな。

12、3の子供にしては失ったものが多過ぎた」

 

そうか。IS狩りは6年前の出来事。

そんな子供にあんなことをさせるなんて酷い話だな……。

 

「話はもう良いか?」

「最後に、優は委員会の仕事以外でアインスを使ったことは?」

「ない。そもそも委員会に籠りきりで心配になる」

「そっか」

 

アインスを持っている人が信用できる人で良かった。

 

「なら、早くデュノアの所にも行かないとな」

「シャルルの所に?」

「後で寮室が血生臭い現場にされたら私の管理能力が疑われるからな」

「……………………」

 

いつも自分の部屋を掃除してもらっている人が何を言っているのだろうか。

 

「まぁ、アイツはお前と違って“優等生”だし誤解はしてないと思うが」

「ぐっ……」

 

ここぞとばかりに痛いところを突いてきた。

 

「どうせ下らないことを考えてたんだろう。お返しだ」

 

話を一段落着けた俺達はここを貸してくれた従業員にお礼を言って寮に戻った。

 

 

――コンコン

 

「デュノアいるか?私だ」

「…………………」

 

千冬姉はノックを繰り返す。けど、部屋から返答は全く無かった。

 

「デュノア?黒川?」

「…………………」

 

不審に思った千冬姉がドアノブを回す。

普段鍵が掛かっているはずのドアが開いた。

 

「!?」

 

異常を感じたのかそのまま勢いよくドアを開けて中に入る。

その部屋には誰もいなかった。

 

 

 

 

(優side)

 

 

意識が朦朧とする。

体が泥のように重い。

 

(睡眠薬を大量に盛られたか……)

 

とりあえず誰かが来る前に見える範囲だけでも状況を確認する。

 

俺自身は鎖に繋がれた手錠で拘束されている。

部屋ははめごろしの窓にひとつしかないドア。

荷物は部屋に戻った時と同じ手荷物。

圏外で使えないが端末数台はここにある。

GPSの処理とかが面倒なせいか。

逆に身に付けていたアクセサリー類は没収。

IFも待機状態は怪しまれないようにアクセサリーなどが待機状態になっていることを知っていたのだろう。

後、ここを強行突破されないようにミリータも盗られたな。

 

 

 

 

ガチャ――

 

 

 

「…シャルロット」

「いつから僕のことを?」

「学園に戻る前からだ。まさか、こんなことをするとは思わなかったな」

「なら僕がなんのために来たかわかるよね」

 

シャルロットはリヴァイブを展開し俺に銃を向けた。

 

「優、アインスのセキュリティはどうやって解ける?」

 

どうやら持ち出した主はセキュリティの解除中らしい。

 

「…シャルロット。何のためにこんなことをしている?」

「………………………」

「自分を苦しめてまで何がしたい?」

「うるさい!」

 

放たれた銃弾は俺の横の壁に穴を開けた。

 

「優にわからないよ…。僕の気持ちなんか……」

 

シャルロットは奥歯を噛み締めて、苦しそうに小さく言った。

その瞬間、突如発生した雷は俺の手錠とシャルロットが構えていた銃を破壊された。

 

「なんで……。どうして……」

「まぁ…アインスの能力?」

 

本当は色々とあるのだが今はそれより……

新しく展開した銃を退けてまっすぐシャルロットを見る。

 

「俺にもその気持ちはわかる。俺も大人に利用されてきたことがあるから」

 

子供が社会的に自立できないことをいいことに法外なことを強要する。

亡国機業も似たようなものだった。

 

「だから何!そんなこと僕には!」

「だから俺が助けてやる」

「え…………」

 

シャルロットは俺が何を言ったのか分からなかったように呆然と俺を見ていた。

 

「助けてやるって言ったんだよ。

お前を縛っているもの、苦しめてるもの全部、取っ払ってやるって」

「…………………」

「だから、そんな無理すんな」

 

壊れそうなほど小さく見える彼女をそっと抱き締める。

リプァイブの展開が解けてシャルロットは俺の胸の中で泣き崩れた。

 

 

 

(シャルロットside)

 

 

あの後、優の言葉に泣き崩れたてた。

僕にそんな言葉をかけてくれる人なんてお母さんがいなくなってから誰もいなかったから、

その間優はずっと僕を膝の上に乗せてこの前僕がしたように背中を軽く叩いてくれた。

 

「大丈夫か?」

「うん。もう大丈夫。ありがと」

 

名残惜しいが立って優の膝の上から離れようとする。

けど、何故か優に肩を押さえ付けられて動けなかった。

「優?」

「さーて、落ち着いたばかりで悪いが言いたいことがある」

「ん?なに?」

 

―グリグリグリグリ

 

「痛い!痛いよ優!?」

 

くの字にした両指で思いっきり頭を弄られた。

 

「まったく。何の為に俺がAIFだと言ったと思う?

お前がヘルプ出せるようにする為。

せめて、何らかの形で俺を利用できるようにする為だよ。

それなのにお前ときたらスタンガンに大漁の睡眠薬。俺を殺す気かよ」

「ご、ごめん………」

「それに学園の特記事項で外からの圧力は無くなるっていうのに自分から学園の外に出やがって。

何の為に学園に入れたと思ってる?」

「で、でもリブァイブ通して監視されてるから、いつか暴走させられちゃうんだもん」

 

――グリグリグリグリ

また指で頭を弄くられた。

 

「痛い!」

「ほう。それは大した自信だな。

こっちは能力がそこそこ強いせいで能力制限、一機は使用禁止を受けてる機体だぞ?

それが第二世代ごときのIS一機に遅れをとると思ったのか?」

「そ、それは………」

「しかもだ。俺がいなくたって千冬さんを始めとして各国の実力者の先生方、楯無を始めとする代表達がいるんだぞ」

 

……………………………

…………………

 

「優は……僕がバカだって言いたいの………」

「あぁ。当たりだ。このことに関してはお前はバカだ」

 

薄々感じていたのを聞いたら即答された。

そのことに頭の中で何かが切れたような気がした。

 

「優だってIS狩りで僕の気持ち分かるんでしょ!

僕が『助けて』って言える状況じゃないって!」

「そういう時はあえて赤い靴を使えばいいんだよ。

事後で調べればお前が強要されたってすぐわかるんだから」

「そんな身勝手なことできないよ!」

「じゃあなんだ?

理不尽な責任背負わされて殺されても良いって言うのか?」

「そ、それは……」

 

膝の上で抱き上げられた状態だったのを押し倒される。

 

「ちょっ、優……」

「ったく、聞いてれば言い返してきて、なに?助けてもらいたくないの?」

「それは、…助けてもらいたいです……」

「なら少しは素直になれ」

 

優の顔が近付いて来る。

髪がくすぐったい。聞こえる吐息に意識してしまって顔が赤くなる。

 

(そんないきなり……。でも優なら…)

 

上のボタンを開けられ、そこに優がうずくまるように顔を入れる。

優の唇が僕の首筋に触れる。

 

 

そのまま…………

 

(あれ……?)

何も起きない。

普通、このままスキンシップを取るはずなのに…。

不思議に思って目を開けると僕から顔を離していてリブァイブの待機状態の首飾りを口にくわえていた。

 

「証拠のご提示ありがとうございます」

 

僕の気持ちなんて知らずにニコニコと笑ってる。

つまり、今までしてた紛らわしい行動は首飾りを取るだけだと……。

 

「………………」

「ん?どうした?」

「……この、バカ優!」

 

バシーン!

 

織斑先生の出席簿アタック並みにいい音が部屋に鳴り響いた。

 

………………………………

………………………

……………

 

 

「ふう」

 

今まで溜まってたものを大声出したり暴れたりして吐き出したおかげで体が軽くなったような気がした。

 

「理不尽だ……」

 

頬に見事なほど真っ赤な紅葉を付けた優が小さい声で異を唱えてた。

 

「優が悪いの」

 

人の気持ち弄んで、1回馬にでも蹴られればいいんだ。

 

「で、どうやってここから出るの?」

 

盾殺しはここに入れられる前に外されちゃったし、赤い靴がある以上リブァイブを展開するのは危ない。

 

「そうだな。まずはコレを持ってて」

 

ひょいと優が携帯端末を僕の手の上に乗せる。

 

「これは?」

「ん?アインスの待機状態」

「え?」

 

優の言った言葉が理解できなかった。

企業秘密の塊みたいなものを、しかもさっきまで欲しがっていた人に渡すなんて。

信用してもらっているのか、はたまた図太いのか……。

それより……

 

「アインスの待機状態ってもっと小さいんじゃないの!?」

「機体が10近く入ってるんだぞ。アクセサリーの類いに収まるわけないじゃん」

「…あはははは」

 

アクセサリーの類いだと思ってた。

ホントに僕は優に言われた通りバカなんかな……。

なんか色々自信無くした。

 

「わざわざ機体を持ち替えた理由の一つは赤い靴を使えないようにする為」

「え?だって優はISに乗れるんじゃないの?」

「俺は一夏と違ってアインスのコアを代用してるだけで本質的に適性はないんだ」

 

なるほど。どんなシステムがあってもISが起動できなきゃ話にならない。

デメリットになるところをあえて使うことでリスクそのものを無くしたんだ。

 

「僕がアインスを使って脱出すればいいんだね」

「残念ながら委員会の調査でアインスは俺以外使えないし、使えたとしても千冬さんの出席簿アタックよりも痛い仕打ちが待ってるから無理だ」

「……じゃあここから出れないじゃん」

「そこでさっきの雷だ。ちょっと壁側まで行ってくれないか?」

 

言われた通り、壁に寄り掛かる。

対して優は僕と反対側の壁に進んで行った。

 

「さっきの雷は簡単に謂えば操縦者保護の一つで俺が命の危険にある時やアインスと距離がある時に発生する。

で、この雷サンダーフォースって言うんだが、元は一機体の技の一つだ。

つまり………」

 

僕が持っているアインスの待機状態から雷が展開された。

壁に突きの体勢を取る。雷は優の意志を読み取ったかのようにドリルの形をして腕に纏う。

 

――ガラガラガラ

 

「この位の壁ならアインスを展開しなくても破壊できるわけ」

 

 

ずっと僕が悩んでいたのがバカみたいに

あっという間に取り払われた

 

「じゃあ行きますか。色々取り戻しに」

 

優は僕の頭をくしゃくしゃと撫でながらにっと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「解析の結果はどうだ?」

「はい。IFの波長と思われるものが検出されました。ただいまセキュリティ解除中です」

「そうか。続行してくれ」

「了解しました」

 

 

やっとだ。

始めは織斑一夏を狙っていたが、それ以上の上玉アインスが学園にいる。しかも同室ときたものだ。私はシャルロットにアインスを連れてくるように命じた。

そしてそのアインスを手に入れた。

これでわが社が不動の地位を築くことができる。

 

―バン!

 

突如ドアが乱暴に開かれる。

そこにいるのは……

 

「Bonjour(ボンジュール)、Dunois président (デュノア社長)」

 

幽閉したはずのアインスとシャルロットだった。

 

 

 

(デュノア社長side)

 

「Bonjour(ボンジュール)、Dunois président (デュノア社長)」

 

アインスはドアを開けた乱暴さとは対称的に微笑んで私に挨拶をしてきた。

 

「黒川君。いくら君でも普段はアポを取ってくれないかな?そしてドアを蹴り開けないでほしい」

 

私が彼の動きを知っているのは不自然なので平静を取り繕う。

 

「今日はAIFの仕事で、貴方を捕まえに来ました」

「何の罪で?」

「窃盗。しかもアインスの」

 

こともあろうか、アインスはストレートに「盗まれた」言った。

 

「何の根拠で?まさか、私の子が君に何かしたからか?

だとしたらそれはシャルロットの独断での行動であって私は何も関わっていない」

「そんな……」

 

シャルロットは落胆の声を漏らす。

当たり前だ。お前はわが社存続の糧でしかない。

 

「そうですか……」

 

バサッバサッ――

 

アインスは持っていた紙を吹雪のように散らせた。

 

「『赤い靴』システム

この資料は以前、調査の関係でここに来た時拝借したものです」

「………………」

「随分物騒なシステムですね。Slave Mode に酷似している。

競技の枠を超えたシステムを作って一体何に使うのですか?」

 

私の机に流れて来た一枚をざっと読む。

文書の内容は本物。

間違いない。アインスは私の策略を知っている。

 

「それは亡国機業が再びIS狩りを行った時、最悪の場合を想定してのシステムだ」

「いくら正当防衛のためとはいえ、委員会の申請なしにこのようなシステムを作られるのは遺憾です。出回っているリヴァイブをこれから我々が調査することになります。構いませんよね?」

「……………」

 

彼は私にシャルロットが持っているはずの待機状態の首飾りを見せつける。

アインスは私が動くのを待っている。

この状況で私が動けば、『赤い靴』がシャルロットのリヴァイブの中にしか入っていないことを肯定するからだ。

が、このまま黙っていても調査で分かってしまう。

そして、それはデータを盗もうとしたことに直結する。

 

 

(…このクソガキが!)

 

そこで閃く。

アインスのミリータからマシンガンを展開し二人に向ける。

 

「その行動はリヴァイブを見られると困ることがあるからと見てよろしいのでしょうか?」

「だとしても、できるものならやってみろ」

 

そうだ。アインスは今、私達の手にある。靴のせいでシャルロットのリヴァイブが使えない今、奴らに自衛の手段はない。ここで殺し口封じをすれば問題ないのだ。

 

「社長、面白いことを一つ」

「アンタの言うアインスは、俺からのプレゼントです」

「ほう。それは有り難い」

 

表情一つ変えないと思ったら死に際を予期したらしい。

その予測ができたなら、ここに足を入れなければいいものを。

 

「それは意外ですね。まさか中身のない偽物で満足して下さるとは」

「な…に……」

 

突如、解析を行わせていたラボから大量の花火がうち上がった。

 

「なんだあれは!?」

「あれが偽物の中身です。ユニークでしょう?」

 

爆発音と派手な色で社員を含む人が打ち上げ地点を見た。

最終的に外から丸見えの状態になり何発かは高くうち上がっていった。

 

(これではあのラボの目撃者が数えきれないほどに……)

 

「偽物だから当然、俺しか持っていないし、俺以外の人間が持つ意味はない。

ですが何故、貴方の会社の人間が持っているのでしょうか?」

「それは………」

 

この状況を覆す言葉を返すことができなかった。

 

「デュノア社長。委員会に来ていただけますね?」

 

『社長、アインスにコア・ネットワークとは別に、発信機、GPSと思われるものが――』

「……………………」

 

アインスはこうなることを想定していた。そして私は愚かにも自らその証拠を並べてしまった。

皮肉にも踊ったのは私。こうなった以上、捕まれば私の人生は終わりだ。

 

(どうすればここから…)

 

 

狭い通路ならアインスを展開できない。

そしてアインスも一役員。ならば――

 

「来い!」

「きゃ!」

 

シャルロットを盾にして非常用の通路を通る。

 

「動くな!!動けば……」

 

ガシャ――

 

シャルロットに向けたはずの銃はアインスに取られ、私の脳天に構えられていた。

 

「悪いけど逃がさねえよ」

 

アインスは風のように私の横にいたシャルロットを抱え、更に銃を頭に押し付ける。

 

 

「てめえは何回人を都合の良い道具のように扱ったら気が済む?」

「……あ…ぁ……」

 

アインスはさっきと一転してドスの効いた低い声に言葉が出なかった。

 

「…ま、待って……くれ」

 

しかしアインスは躊躇なく銃のトリガーを引いた。

 

パァンッ‼

 

銃弾は私の耳をかすり壁に穴を開けた。

私は腰が砕けたかのように床に尻をつく。

 

「殺しはしない。だがアンタを絶対に許さない。覚悟しろ」

 

アインスを見上げる。その瞳は私に向けられた銃よりもずっと恐ろしかった。

 

 

(シャルロットside)

 

 

 

あの後、花火を確認したIS委員会がデュノア社を強制捜査し『赤い靴』の製作チーム、データの強奪に関わった人達は委員会に重要参考人として連れてかれた。

 

「シャルロット何にする?」

「……じゃあ、これ」

 

メニューを置くとすぐに給仕さんが僕達のテーブルに来てくれた。

 

「キノコのヴルーテとサーモンのテリーヌで」

「かしこまりました」

 

 

注文を聞くと給仕さんはメニューを伝えにどこかへ行ってしまった。

それより………

 

「僕をこんな所に連れて来ていいの?」

 

いい服着せてもらって、高い車乗って、しかも今は一流レストランで食事。

どう考えても僕がいるような場所じゃなかった。

 

「別に。シャルロットは靴のせいで強要されただけだから逮捕されることはないよ。

まぁ監視はあるけどな」

 

監視と言ってもするのは優だから、実質的に僕はおとめがなしである。

 

「優…その、ごめん」

 

いくら強要されていたとはいえ、自分がやったことに変わりはない。

ちゃんと頭を下げて謝る。

 

「まぁいいって。旨いもん食ってぱぁーってしようぜ」

「でも……」

「それ以上言うとその口にワインボトルつっこむよ?」

 

 

優は妖しい顔をしてワインを持つ。

僕のためにわざわざこんなことをしてくれたのだ。

その厚意を踏みにじってはいけない。

 

「ごめん。ありがとう」

 

その後は今回の事件のことなんて無かったかのようにいっぱい話した。

学園でのこと、学園に来るまでのこと、

この好意が自分の為だけに向けられているのはとても心地よくて、お酒を飲んでないのにふわふわとした気持ちになっていた。

 

 

 

 

 

「車を表に出しました」

「悪いね。慣れない日本車使わせて」

「いえ」

 

さりげなくチップを渡している辺り、優は僕なんかよりずっと大人だなと思う。

 

「どうぞ。お嬢様」

「だからやめてって、優」

 

誰にもされたことのなかったエスコートを急にされ恥ずかしくなる。

 

「さて、帰りますか」

 

 

夜の街の中車を進める。

けど、通る道は行きと逆方向でどんどん郊外に向かって行ってた。

 

「優どこ行くの?」

「それはお楽しみにで」

 

更に30分くらい車を飛ばす。

 

「ねぇ、今更だけど優って運転していいの?」

「あぁ。アインスは資格取得の年齢制限はなくなるから、試験に受かればOKだ」

「そうなんだ」

 

アインスもISと同じように使用制限があるからそうしないと移動が不便だ。

特にこんな田舎に行くときは電車もそうな……。

 

(あれ……?)

 

暗くて外は見にくいけど途中から自分の見慣れた道を走っていることに気づいた。

 

「到着」

 

ドアを開けられる。

そこに広がっていたのはあの人に引き取られる前、お母さんと住んでいた家だった。

 

「キレイ……」

 

家の前の空地に一面に色とりどりの花が咲き、地面からのライトで輝いていた。

 

「学園に戻る前、シャルロットに名義を戻しといたんだ。

俺の予想通り、誰かさんが不正に土地を横取りしてたからな。ほいっ」

 

家の鍵を渡される。

 

「久しぶりの我が家に入りな」

「うん!」

 

ドアを開けて家の中に入る。僕の部屋もお母さんの部屋も前と何も変わってない。

それどころか僕一人じゃ掃除できなかったところまできれいになっていた。

 

「お邪魔します。どうだ?」

「優、ホントありがとう……」

 

あの人との約束でここを取り戻せてもきっと戻ってこれないと思ってた。

だから、こうしてここにいられるのがホントに嬉しい。

 

「大袈裟だって」

「だって…だって……」

 

くしゃくしゃと頭を撫でられる。

 

「なぁシャルロット」

「なに?」

 

この時、思いもしない言葉が発せられた。

 

「俺の養子にならないか?」

「え?」

 

 

 

 

 




いかがでしょうか?

個人的に物語のキーパーソン、アインスの登場の仕方は良いのではないか、っとちょっと思ってます。
優がオリキャラでなければ(それはしょうがない)

それかどっかのエド・フェニックスみたいな登場ができた理由が機体を持っているから、っという理由でも推測できますね。

キャラ説明で専用IS無しとあるのにアインスを持っているのはアインスがISじゃないからです。
(屁理屈ですね……)

次回、原作2巻後半内容の6月をお楽しみしてくれたら嬉しいです

ここまで読んで頂きありがとうございました。
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