バッドエンド・ガールズ   作:青波 縁

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025 正体夢

 

 「──光よ!」

 

 辺り一面に光の雨が降り注ぐ。

 

 カツン。

 すると、オレの前に少女が現れる。

 

 「フィリ、ア?」

 

 名前を呟く。

 

 「──はい! 貴方のヒロインのフィリアちゃんです!」

 

 そう言って、現れた少女──フィリアは微笑むのだった。

 

 「なるほど。此処で、貴女が来ますか」

 

 学生服の少女はクスクス笑ってるが、そこに先程までの余裕は感じられない。

 

 「勿論。例え、記憶を引き継ぐだけの別物だろうと愛する人の元へ駆け付けるヒロインですので、私」

 

 可愛いですよね、とかウィンクするフィリアは可愛い。

 

 ──だが。

 

 「そうですか、そうですか。まあ、順序が変わっただけで計画には支障はありませんし、貴女諸とも処分すれば問題はありません」

 

 くるりと謎の少女のスカートが翻る。

 

 カツン。

 靴音を鳴らす。

 

 「キキキ」

 「キキキィ?」

 「キキッキ!!!」

 

 足下から無数の赤い化け物が這い出て来た。

 

 「増えたぞ!?」

 

 仰々しいそれ。

 形のない怪物。

 どいつもこいつも同じ見た目をしており、強いのか弱いのか分からない。

 

 「クスクス、クスクス」

 

 紺の髪を搔きながら、少女は嗤う。

 

 「さあ、お行きなさいな、同胞(エイプ)たち」

 

 呟くような処刑宣告。

 命じられるまま、エイプと呼ばれる赤い怪物たちは奇声を上げて動き出す。

 

 「勇貴さん、──来ます!」

 

 フィリアがオレの傍に駆け寄りながら、そう叫ぶ。

 

 「ああ!」

 

 再び、赤と青の魔剣を構え直して、フィリアの叫びにそう返した。

 

 「「「「「キキキキキキキィイイイ!!!」」」」」

 

 赤い怪物、『同胞(エイプ)』との死闘が今、始まった。

 

 ◇

 

 ふと、この世界に浸り続けていると、現実と夢の違いは何かを考えてしまう。

 

 それは、気の迷いで。

 それは、してはいけないことだ。

 

 しかし、一度考えてしまったら、もうその疑問が頭から離れることはなくなってしまった。

 

 それは、神としての進化を願う自分にとって思考してはならぬ決まりごとだというのに。

 

 「全ては、あの女だ。あの女が悪いのだ」

 

 今、自分は薄氷の上に立たされた状況だ。

 袋小路に追い詰められていると言い換えても問題ない。

 それぐらい自分は、ウェイトリー=ウェストは危機的状況に陥らされている。

 

 「く、そぉ。なーにが、これこそ神である第一歩なのですよ、だ。違うではないか」

 

 再生する能力は持っていない自分。

 神という上位存在へ至る為ならば何だって犠牲にしてきた自分。

 女の戯言を聞き入れたが故に騙された哀れな男の末路であった。

 

 ────「すぴー、すぴー。ああ、ウェイトリー。貴方の実験なのですが、数万回も繰り返すなんて無駄も良いところだと思いませんか?」

 

 初めはそんな甘言だった。

 愚直にも魔導魔術王(グランド·マスター)の命令通りにしていた我を女はそう誑かしたと思う。

 

 ────「いえいえ。魔導魔術王(グランド·マスター)の理論は確実です。不確定要素もなく順調に計画(プラン)は実行できるでしょう」

 

 囁くように並べられた戯言。

 だが、あの時の焦っていた我にとってそれは魅力的なものに見えた。

 

 そう。神様に至れたとしても、自分という思想が引き継がれないと悩んでいた我にはノアの方舟のように思えたのだ。

 

 ────「近道。これは、回り道する貴方に『魔導魔術王(グランド·マスター)』が魂を注いだ作品の私が教えられる最高の攻略法です」

 

 だが、それに荷担したのが間違いで。

 そこから我らの『神へ至る計画』の歯車がズレたのは事実。

 

 ────「イヒヒヒヒ! 良いですわ、良いですわよ! そっちがそのつもりならアタクシにも考えがあります!」

 

 アトラク=ナクアと言い争うことが増えた。

 同じ理想を持っていた彼女と縁が切れたのがいつからだったのかは思い出せない。

 というより、それを思考するということが出来なくなった我にはどうしようもないことだった。

 

 ────「まあ、お酷い。ウェイトリーはこんなにも頑張ってるのに、それを許容しないだなんてアトラク=ナクアも酷いですね」

 

 都合の良い言葉。

 耳元で囁かれる甘言は、いつだって我の味方をしてくれる。

 

 ────「そうです。そうなのです。やっと分かって頂けましたか、ウェイトリー=ウェスト。彼女は貴方を見ていない。只、貴方を通して魔導魔術王(グランド·マスター)計画(プラン)の遂行を遵守してるに過ぎません」

 

 嘘とは事実を交えるからこそ、信憑性が増す。

 『ウェイトリー=ウェスト』になる愚か者だった我はいつだってそんな嘘に騙され生きてきた。

 

 なのに、同じ過ちを犯すのはどうしてなんだ?

 

 「う、ううう。あた、まが痛い」

 

 考えるとそこから麻痺した痛みが全身を襲う。

 

 「どうしてだ? どうしてなのだ? 貴様の言う通りにしていたら、我は神様になれたのか? なあ、教えてくれよ。……教えて、くれ、魔導魔術王(グランド·マスター)

 

 今は亡き男に問う。

 だが、そんな問いに誰も答えない。

 

 「哀れ。なんと、哀れなことか」

 

 傷だらけの身体。

 自分より上位の神様を取り込めば、人間から完全な神へと進化出来る。

 そんな与太話を信じて、我は真世界帰閉ノ扉(パラレルポーター)を開こうとした『ナイアルラト=ホテップ』を襲った。

 

 「ぐふぅ。……それが、この結果」

 

 愚か。

 余りにも愚かだった。

 あんなにも魔導魔術王(グランド·マスター)は忠告してくれたのに、我はそれを破ってしまったのだから。

 

 ────「ククク、ウェイトリー。それは浅はかだ。ナンセンスだ。例え、夢世界の中であろうと『外なる神』を敵に回してはいけないよ。そうしたら最後、あれはワタシであろうとも全てを狂わせるだろうね」

 

 「何、立ち上がろうとしている?」

 

 頭を踏みつけられる。

 

 ジジジ。

 嗚呼、何故。

 神である我が何故、こんな仕打ちをせねばならぬ?

 

 「フム。また洗脳状態に戻ったか。実に都合の良いことだな、ウェイトリー=ウェストよ。オマエは本当に哀れな道化だ」

 

 神父が嗤う。

 地を這う虫けらを潰しながら、モニターの画面を眺めるそれは正に悪辣な神そのもの。

 

 「嗚呼、退屈だ。退屈で、退屈で、死にそうだ」

 

 そう呟きながら、外なる神──『ナイアルラトホテップ』は画面に映る銀の髪の青年を見つめ続けた。

 

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