バッドエンド・ガールズ   作:青波 縁

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033 魔泥夢

 

 ピーガガガ、ピーガガガ。

 

 複写、転生。

 怪奇、突然。

 我等は泡沫の夢にして、闇に潜む猫のきまぐれ。

 

 ピーガガガ、ピーガガガ!

 

 冥途に迷え、弔い人よ。

 ()すれば、その閉ざされた意志(こえ)(わたし)は耳を傾けよう。

 

 キキキ!

 キキキ!

 

 噂好きな影絵の住人は、今日も生者の嘆きを糧に無意味な殺戮に勤しむ。

 彼らはそうやって、自らの文明を維持してきた。

 その在り方は悪辣。

 しかし、そうやって生きなければ身体を持たない彼らはとっくの昔に滅んでた。

 

 故に──。

 

 「ククク、……ククク!」

 

 私は彼らと夢を見る。

 どれほど退屈な遊戯(ゲーム)でも、投げ出すことをしなかったのはそんな影絵たちの足掻きを楽しみたいからかもしれない。

 

 ◇

 

 「──イイ加減ニ堕チロ!」

 

 放つノハ赤ト青ノ一閃。

 弾くノハ輝く虹ノ一閃。

 

 「何のこれきし!」

 

 金色ノ髪ガ靡ク。

 何度、攻撃シヨウトモ清廉ナ騎士ハ未だ折レナイ。

 

 ドクン。

 心臓ガ鼓動スル。

 ソノ度ニ制限時間ガ迫るノヲ感ジル。

 

 「ソコを退ケ。──今、ワタシにはオマエの相手ヲしテイル暇ハナイ!」

 

 ブゥン!

 

 『外なる神(ナイアルラトホテップ)』の端末がコチラに気付く前ニこの影絵(しょうじょ)ヲ始末シナクてはナラナイのに!

 

 「退かぬ。今度こそ、わたしたちは彼らを帰してやらねばならんのだ!」

 

 ガキン!

 

 ダガ、ソンなワタシの心中ナドお構イ無シニ目の前ノ幻想ハ権能(チート)の一撃を弾き返す。

 

 「──グゥ!」

 

 幾ら万能な、ありトあらユる魔導魔術(まどう)ヲ極メたワタシでも外宇宙ノ奴ラを相手にスルノは骨ガ折れるトイウモノ。

 完全ニ意識ヲこの身体ヘ転写スルまでは余計ナ仕事ハ悲願ノ妨げニナルダケダ。

 

 故ニ──。

 

 「邪魔ダ、オマエ()()! 消エロ!」

 

 ドクン。

 

 外なる神ニ散りバメられた権能(チート)ヲ起動シタ。

 

 ドクン、ドクン。

 エンドの鐘ガ鳴り響く。

 

 瞬間。

 

 「しまった、剣が!」

 

 真似事ノ騎士カラ虹色の剣ガ消エル。

 

 ソレハ奇跡ノような現実デ。

 嘘ノような事象デ。

 然レド、確定サレタ(コード)ノ起動術式。

 

 「止めてください! 勇貴さん!」

 

 徴収命令(タイプ·レイド)

 ソレハ、異能ノ所有権ヲ好きニ変えれる権能(チート)

 

 「今度コソ、──コレデ終わりダ」

 

 ブゥン!

 剣ヲ奪ワレタ少女へ断罪ノ一閃ガ放タレル。

 

 「──っ!」

 

 容赦ナク。

 徹底的ニ、(オレ)たちを助けヨうトした人ヲ殺す自分。

 

 止マラナイ。

 コノママだと、たくさんノ窮地ヲ助ケテクレタ彼女たちヲ見殺シにしてシマウのに自分ノ言うトオリ身体ガ動いてクレナイ。

 

 「……よもや、ここまでか」

 

 シスカの首へ魔剣ガ届クか否カの時。

 

 ────「大切なことだった。どんなに壊され変えられてもそれだけは手放さなかった! そんな大切なものを失くしてキミは、平気な訳ないだろう!」

 

 誰一人味方のいない中、そんな僕を怒った人の顔が過った。

 

 ガシャン!

 すると、何故か後少しの距離で(ワタシ)は足を踏み外してしまった。

 

 「──ナ、ニ?」

 

 あり得ないコトだった。

 この身体をもう完全に掌握していた筈だった。

 

 なのに、僕の意志で攻撃を止められたんだ。

 

 「ゆ、勇貴さん?」

 

 「──っ、今だ!」

 

 一瞬の停止。

 数秒の動作不良。

 全て順調に進んでいたそれに奇跡が起きた。

 

 「バカな!? 何故、動カン!!!?」

 

 その隙に、シスカは迷うことなく虹色に輝く大剣を具現させて──。

 

 「七瀬勇貴、──すまない!」

 

 ブゥン!

 僕の身体を両断したのだった。

 

 ◇

 

 キキキ。

 キキキ。

 

 「七瀬勇貴、──すまない!」

 

 ブゥン!

 

 流れる動作で廃騎士が銀髪の青年を斬り倒す。

 なす術もなく、抵抗する間もなく斬られた青年は血を流し倒れる。

 傷つけられたら、生身の人間であるならば血を流し倒れることは当然の話だ。

 

 いや、それよりも。

 

 「ククク」

 

 それをモニター越しに私は観測した。

 いや、漸く観測することにこぎ着けたというべきか。

 

 「……そうか」

 

 だがそうすることで、この夢の世界で起きた事象は現実へと反映されるのだから、良かったと開き直るべきなのだろう。

 先程から同じ言葉を繰り返す神父。

 

 「そうか!」

 

 胸が弾むように嬉しく、心の底から感謝の言葉が溢れ出る。

 

 そうだよ、あんな男にオマエほどの男が殺される訳がないのだから、これは当然の帰結だ。

 

 「本当にオマエなんだな、魔導魔術王(グランド·マスター)よ」

 

 頬が弛んだ。

 退屈な世界に光が差したことが見えたのだから。

 

 「ならば喜ぼう、オマエの復活を」

 

 そうと決まれば、先ずは祝杯を上げよう。

 好敵手の復活など、退屈に飽きた私にはこれほど喜ばしいことはない。

 

 アア、本当に。

 

 「ククク、……キキキ! そうだ、そうだ、そうだった! オマエという男が何の考えもなしに実験をするものか! ああ、本当に嬉しいぞぉ、私は!」

 

 嬉しくて、嬉しくて影絵たちを虐げる手が止まらない。

 

 何故なら私にとって下等な生物を見下すのも、犬畜生を転がすのも、善なる者を()とすのも娯楽の一つに過ぎないのだ。

 

 「これから、忙しくなるぞ! さあ、オマエたち、急いで舞台を構築するのだ!」

 

 真の愉悦とは、何か。

 神への冒涜を赦すのも、何か。

 それらすべては、『究極の一』へと至ることで私たち『外なる神』は知れる故に。

 

 「無様な影絵に、魔女にも劣る少女共よ、待っているが良い。オマエたちの企てなど、只の戯れにもならんということを教えてやる!」

 

 私はモニターに向かってそう叫び、黒い修道服を翻すのであった。

 

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