バッドエンド・ガールズ   作:青波 縁

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040 愚か者は気付かない

 

 夢の中を微睡む誰か。

 もう二度と目を覚ますことのない誰か。

 

 知らない世界で生きるのは、■で。

 虚構の現実で死のうとするのは、■だった。

 

 「──っ」

 

 ゴウ、ゴウ。

 目の前はノイズの嵐で閉ざされ動けない。

 

 ゴウ、ゴウ。

 その先に何か光るものでも有れば、希望の一つも抱けるのに何も見えない。

 

 「────」

 

 ああ。きっと、その嵐を越えても待っているのは深く閉ざされた暗闇なのだろう。

 

 目を瞑ると夢を見る。

 キラキラとした、不格好ながらも誰かを助けるヒーローになる、そんな夢に浸るのは居心地が良かった。

 

 誰も傷付かない。

 誰も悲しまない物語は、平穏を保つ欠片なのだから失くしてはいけない。

 

 けど。

 

 ズキリと頭が痛くなる。

 

 「──っ」

 

 すると見ていた夢は霞み、掴むことのない幻となって消えてしまう。

 

 どうしてそうなるのか解らない。

 幸せになることの何が駄目なのか解らない。

 

 けど、このまま歩みを止めてしまうのはいけないことだと誰かが言っているような気がした。

 

 「夢を、──夢を見たんだ」

 

 影絵の夜に、落書きの舞台。

 所々が穴だらけの記憶に、意味のない繰り返しを気にしなければ幸せな日々を過ごせるのは、きっと嘘じゃない。

 

 「そこでは、みんな、とても笑ってた」

 

 目の前のノイズは越えられない。

 誰も望まないバッドエンドに価値はない。

 

 それなのに、どうして──。

 

 「嫌なんだ。もう沢山なんだ。──疲れた。疲れたよ」

 

 親友を斬り捨てた。

 家族に会いたい願いも斬り捨てた。

 叶わぬ夢を見た少女の願いを対価に僕はその嵐の中を進んでた。

 

 「ねえ、どうして──」

 

 解らない。

 何もない虚構の僕でも、それが幸せだと解るのに歩くのを止めない。

 

 ゴウ、ゴウ。

 ゴウ、ゴウ。

 

 ──僕の必死な問いかけに誰も答えてはくれない。

 

 ◇

 

 「そうだ。シスカ。シスカ·クルセイドだ。邪魔するぞ」

 

 少女の青い硝子みたいな透き通った碧眼が僕を見る。

 

 「────」

 

 同時に今がいつで、この後に起こり得ることが想像してしまえた。

 それは、この緩急しなければならない状況においてはありがたいことだった。

 

 「シスカさん」

 

 そうとなれば、善は急げ。

 これからどうするかの方針を相談するべきだと直感する。

 

 「……状況は理解した」

 

 邂逅すること、僅か数分も満たずシスカさんは僕が何をしたいのか読んだ。

 うん、やっぱり彼女もある程度の僕の心を読めるみたいだね。

 

 「解ってる。貴殿の言いたいことは最もである。だが、事態は一刻も争うのですよ」

 

 少女は背を向ける。

 此処で語ることはないと先を促す姿に、少しだけカチンと来る。

 

 「……そう、だね」

 

 だが、それをグッと堪える。

 この場で言い争ったところで事態は悪化するだけなのは明白だったから。

 

 そう思い、部屋から出ようとしたシスカさんの後を追おうとし──。

 

 「ム。──いかんな。どうやら、あのナイ神父に『真弓』殿が捕まったみたいだ」

 

 ドアノブに手を掛けた彼女がそんなことを言ったんだ。

 

 「……え?」

 

 それは、突然のことだった。

 それは、宇宙の交信だとかそんな次元の話の切り返しだった。

 

 「ちょ、ちょっ、いきなり何を──、って言うか何でそんなこと解るの!?」

 

 開けたドアから外へ出ようとするシスカさんの手を掴み、説明を求める。

 

 「有無。しかし、それは言えん。それを答えるには、貴殿には欠片が足りていない」

 

 「……欠片って、何?」

 

 「それも言えぬ。今はそれ故に資格がないとしか答えれない。──だが、強いて言うのであるならば『外なる神』を打倒した先に貴殿の求める答えがあるのかもしれん」

 

 そう言って今度こそ、彼女は外へ出る。

 

 「ま、待ってよー!」

 

 そんなシスカさんの後を僕は慌てて追うのであった。

 

 キキキ。

 何処からか覗く影絵たちの嗤いを耳にしながら──。

 

 ◇

 

 「クスクス」

 

 俯瞰する。

 この膨大な夢の中を私は観測することが出来る。

 

 「クスクス」

 

 邪魔者は排除する。

 そうしなければ、私は『私』を得ることが出来ない故に。

 

 「そうです。その為に、あんなモノまで利用したのです」

 

 『外なる神(ナイアルラトホテップ)』の端末も、名城真弓も、あの狡猾な魔女さえも騙せたのはその為だ。

 

 「全てが計画通り。ナイ神父があれに気付くことも、あれが私の思考を操作することも全てが想定内」

 

 残留思念(ヒロイン)たちは知っている。

 だからこそ、愚かでも、その儚い命を世界の薪へと投じてる。

 彼女たちはその為に生まれてきたのだから、死ぬことさえ厭わないだろう。

 

 目が疼く。

 すると先の未来を捉え、次のステップに進んだことを私は知る。

 

 「ええ。だからこそ私は賭けに出れた。この『千里眼』の異能で先を見通せたからこそ、私は──」

 

 この夢の中では、あらゆるモノが虚構と化す。

 それを理解していたからこそ、愚者がどんなに危機的状況でも干渉しなかったのだ。

 

 「そろそろ舞台装置の神様にもご退場して頂きましょうかねぇ」

 

 紺色の髪を弄る。

 

 「■■■■■」

 

 兜を被る黒いローブの騎士はそんな私に賛同するよう唸る。

 

 「おや、珍しい。貴方も私と同意見ですか」

 

 全ては願いの為。

 人造人間(ホムンクルス)の私が完全な人間へと至る故に。

 

 「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!」

 

 彼もまた願いの果てを夢見て、『大罪の王』は咆哮するのだった。

 




 取りあえず、なろうまで投稿していた分はこれで終わり、次話の投稿は未定です。
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