この度は昨日に投稿すると書いておきながら、投稿が遅れてしまい申し訳ございませんでした。
今回の話も短いとは思われますが、作者の誠心誠意、熱い創作魂を込めて書きましたので、是非お楽しみください。
「これ、飛鳥ちゃんが君に渡しておいてって頼まれたの」
お決まりの台詞。
お決まりの態度。
お決まりの無力感。
もう何が正しくて。何が間違いだったのか解らない。
僕が僕でいることが間違いだった?
それとも、単純に僕のしていることが気に入らなかった?
だから、天音は僕を殺そうとしたの?
リテイク先輩が僕の手にダーレスの黒箱を渡した。
その手の平に納まるそれが憎らしい。
「こんなの、ぃるかよ」
弱い自分。
弱くて、弱くて逃げ出した自分。
そんな自分には自分の意志で生きる権利さえ与えられないのか。
そう思ってしまったら、言葉にせずにはいられなかった。
「――――こんなの、いらないよぉ」
膝が折れる。
前のめりになって、
誰も僕を助けてくれない。
只、僕が僕であり続けたいと願っただけ。
なのに、誰も僕の味方で居てくれない。
「――――そうね。確かにそれは貴方には要らないものだったのでしょうね」
「この箱を渡さずに黙って見捨てていれば、確かに貴方はこんな目に遭うこともなかった」
たらればの話を語った。
もしそうしていたら、僕はこんな思いをしなくても済んだ。
なのにリテイク先輩はそれしなかった。
「なら、ど、う、し、て?」
ゆっくりとそんな言葉が口から零れた。
どうしてそんなことをした?
どうしてそんな余計なことをしたんだ?
僕を弄んで愉しんでるのか?
そんな想いが言葉を言いそうになって――――。
「でもそれは、出来ない。出来なかった。私たちに未来を想う心を踏みにじる権利なんてないから」
手の平から見えるこの黒い箱にリテイク先輩は何を見ているのか解らない。
「け、ん、り?」
何とか口から出た言葉。
関心もなかった彼女の口から出た、誰の言葉でも、誰の意志でもない純粋な想いがそこにはあった。
「そう。貴方が先を勧めるように。貴方がそれを笑えるように。他の誰でもない貴方の未来を夢見た誰かが私に託した希望なの」
今まで、どうでも良いモノと自分を見ていた先輩。
それが今になってそんな言葉をくれるのか意味が解らなかったけど。
「それをどうして何も持たない私が蔑ろに出来ると言うの?」
喉を詰まらせる何かがあった。
胸が締め付けられるようにそれを苦しく思った。
誰かが僕を支えてくれている。
誰かが僕の未来を案じてる。
言われなかったそれらの想いを彼女は伝えた。
「あーあ。これで私も目をつけられちゃったか」
ジジジ。
ノイズが激しくなる。
大雨を降らせるようになっていく。
馬事雑言の幻聴が僕の心を抉ってくる。
死ね、死ね死ね死ね、死ね。
テメェ様なんて誰も見ちゃいねぇえんですよ!
独りよがりなその叫びが再び熱を灯った僕の心を壊そうと躍起になっている。
「アドバイスしておくと、今君がいる現状は彼女が夢見た幻想なの」
ジジジジジジ。
消え入りそうな言葉が途切れて、虚構の世界へと失われていく。
彼女が見せる表情がモザイクに見えて、
「先、 進みた、い ら。こっちの
そこに居たという事実が消去され、吸血姫は夢の世界を追放された。
◇
ザー、ザー。
電波ジャック、電波ジャック。
次元が割れました。
世界が構築されました。
アナタを覗きます。
アナタの心を描写します。
ザー、ザー。
システムは順調。視聴するのは上位世界。
アナタの姿を私は見ます。
泡沫の夢。胡蝶の夢。誰も彼も溺れていく。
もしもが赦されるのなら、そんなユメを願うだろう。
人間は愚かだ。人間は浅ましい。
その本質は変わらない。
時が流れる。
それが停止することはあり得ない。
それが許されるのは空想上の中だけだと相場が決まっている。
書き続けろ、書き続けろ。
終わらせろ、終わらせろ。
何度、自分に言い聞かせてきたことだろう。
誰からも読まれなくとも。
誰からも期待されなくても。
停滞した物語ほど残酷なものはないのだから。
カチカチカチ。
不意に窓から空を見上げたくなった。
空は真っ暗で、お星様とお月様が輝いていてどんよりとした気持ちが軽くなった気がした。
デスクに置いておいたカフェオレを手にする。
もう温くなったそれは、まるで自分の現状そのものを体現しているかのようだった。
鬱屈とした気持ちがまたやってくる。
誰でもない誰かの書斎。
そこで独りで稚拙な物語を執筆するのは、何とも言いようのない倦怠感が来るものだ。
「オレの人生もこんな風にやり直せたら良いのになぁ」
でも、それは叶わない願いだ。
だって、これは現実で。
この物語の主人公はもしもの自分が逃げ出したらの話だったから。
先はある。
この物語に続きがある。
でも、今、この次の展開に持っていくことが果たして正しいことなのだろうか。
そう思うと、この物語の続きが止まってしまう。
だって、そうじゃないか。
作中に主人公も思っていたじゃないか。
あんまりだって言ってたさ。
「あーあ、オレも二次元に行けたらなぁ」
そんなことを思った。
オタクなら誰でも思うことを口にした。
この時はそうなったら良いなと思ったんだ。
ザー! ザー!
ノイズが入りました。
これ以上は閲覧不可となりました。
「さあ、日常を再開しましょう」
つまらない人間の一章を見ました。
アナタが貴方を描くそんな描写に過ぎません。
アクセス権限を行使します。
それでh、続きを楽しみましょう。
◇
ノイズが入ると頭痛がして視界が一瞬の間、真っ暗となった。
その暗闇は、どのくらいの時間換算をして伝えれば良いのか解らないが、数秒のような気がする。
「こっちの天音を頼れ、か」
こっちと言う表現。
つまり、リテイク先輩もこの世界が現実でない夢の世界だと言う事実を知っていた。
そう考えて間違いはないのだろう。
誰かが見る夢の世界。
彼女も死んだ人の復活を夢見た。
だが、どうにも引っかかる。
多分だけど、天音が取り戻したい人と瑞希ちゃんが復活させたい人は別人だ。
だって、そうなると瑞希ちゃんが口々に言っていたであろう『兄さん』は天音のお兄さんってことになる。
違和感だらけだ。
先ず、彼女たち二人の顔つきが全然似てない。
あれじゃあ、家族とは違う赤の他人だ。
必ずしも、血が繋がっていることが家族だなんて言うつもりはないけど、他にも彼女たちが姉妹でない理由がある。
それは、瑞希ちゃんが僕を兄さんにしようとしたのに対して、天音は自身と兄さんを
だってそうだろう。
わざわざ、一人の人間の魂を改竄して死者を甦らせようとしてるのに、それを終えたら、その死んだ人間を
最初の魂を改竄の方にしておけば、それで無駄な手間がない。
それをしないのは、二人が別人の復活を望んでいた場合なんだ。
「火鳥ー、いるー?」
三度目の正直というヤツで友達を呼ぶ。
だが、待っていても火鳥が来る気配はない。
「火鳥もかー」
どうやら、あっちの天音は徹底的にこっちのメンタルを叩き壊す気満々だ。
「ってことは、一人でこっちの天音の元に行かなきゃいけないのかー」
前会った時はなんか怒ってたみたいだし、会うのがなんか嫌だなー。
僕のことだし、フラグなんて建てちゃいないだろうしね。
そんなことを思いながら、森を出ることにした。
次回の更新は8月23日に投稿予定にしております。
毎日更新を目標に日々、頑張る所存ですのでどうか温かい眼差しでお待ち頂けると嬉しいです。