バッドエンド・ガールズ   作:青波 縁

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 こっちでの更新を忘れてました。


013 さあ、反撃開始だ

 

 「何だよ、これ?」

 

 

 森を抜けて、校舎を方を見たら何やら様子が可笑しい。

 

 「一体、何がどうしたら、こうなるのさ?」

 

 端から見ても異常な光景。

 こんなものが普通だと認識できる人が居たら、病院に行ってこいと言いたくなる。

 

 「それでねー、それでねー」

 

 顔面がモザイクで表情が見えない女子生徒。

 

 「そっかー! そっかー。そうなのかー?」

 

 その女子生徒の話を聞いてるのか解らない反応をする男子生徒。

 

 「アガガガ!アガガガガァア! 我らに救いを! 我らに栄光ある死を! どうか我らにそのお慈悲を下さい!」

 

 蜘蛛にカジられても平気な顔をして訳の分からないことを宣う集団。

 

 「ピーガガガでイーガガガなフジコ戦争勃発な員謝謝謝であるのですぅ!!!」

 

 ハゲの教師が半裸になって、意味不明なことを叫んでる。

 

 そんな状況になっているというのに、可笑しくなってない人たちはそれが見えてないかのように過ごしてる。

 まるで、それが穏やかな日常の一コマだって言ってるみたいで気持ちが悪かった。

 

 そう思っていると、校舎の何処かの窓が割れる音がした。

 数秒後に、赤ん坊サイズの蜘蛛と共に砕かれた硝子の破片が降ってくる。

 

 「うわっ!」

 

 降ってくる破片に慌てて校舎の方へと入ってしまった。

 

 「って何で、僕は校舎の中に入っちゃった!?」

 

 幾ら慌ててたからと言って、考えなしに動いてしまった自分を責める。

 いや? 待てよ。

 だが、数秒で考えを改める。

 あのサイズの蜘蛛ってことは僕を襲った人食い蜘蛛をわざわざ、窓から突き落としたってことになる。

 そうなると、あの異常な光景を異常だと認知してる人が校舎の中にいるってことになるんじゃないか?

 

 そう思うと、あの蜘蛛がどの辺りから落とされたのかを考える。

 

 「確か、三階の教室だったよね?」

 

 事態の究明に繋がるかもしれない。

 ダメもとでも向かってみる価値はありそうだ。

 

 そう思ったら、即行動に移したのであった。

 

 ◇

 

 校舎の中に入るとそれは、外と比べるといつもと変わらない光景に見えた。

 いつもと変わらないと言っても、校舎の所々に亀裂のようなモノが入っていたり偶に学生と思われる人の顔がモザイクが掛かりとても人間とは呼べるものではなかった。

 

 この世界が造りモノの世界じゃないと知らなければ、僕自身が可笑しくなってしまったんだと錯覚してたかもしれない。

 

 ガヤガヤ、ワイワイ。

 

 それにしても、いつもより騒がしい。

 何かのイベントにでも参加してるような活気だ。

 

 走る。

 蜘蛛が投げ捨てられたと思われる窓の教室へ。

 

 階段を螺旋上に駆け上がる。

 グルグル回って、全速力で駆け上がるものだから三半規管が酔いそうだ。

 

 「ハア、ハア、ハア!」

 

 視界に通り過ぎていく、生徒たちを後目に僕は思う。

 

 天音がそうまでして救いたいと願った人は誰なんだろう?

 

 僕は知らないし、きっとそれは天音(かのじょ)以外の誰も知らない。

 階段を登り終える。

 息を、ゼー、ゼーと切らして廊下に進む。

 体力もないのに何故か全力で走ったものだから前へ進むのが大変だ。

 

 そこで、僕は見た。

 校舎の外から見た光景とは違う、異常な光景がそこにはあった。

 

 「うわぁ……」

 

 蜘蛛。

 廊下一面に蜘蛛の群。いや、群というより死骸。

 そう、蜘蛛の死骸の山が廊下に積まれてる。

 

 トラウマになりそうな人食い蜘蛛がこうもあっさりと死んでいる。

 

 そして、僕を食い殺した時の蜘蛛の数より倍以上の死骸の数に圧倒されてしまう。

 

 バリン、と廊下の先の窓が破られて、蜘蛛の死骸が雪崩みたいに落っこちる。

 明らかに僕が外から見た時よりも落とされる蜘蛛が多い。

 

 「まあ、考えても仕方ないっしょ」

 

 あらゆるモノを破戒する魔剣を想像し、その意志(コード)現実化(リアルブート)する。

 

 目の前に現れた光輝く剣を掴むと、身体が羽を得たかのように軽くなる。

 心臓の鼓動が早くなり、一秒、一秒の感覚が短くなっては、どんなモノにも負けない強い自信が芽生えた。

 

 人食い蜘蛛と僕とでは戦闘経験が違うだろう。

 正直、この魔剣を持っても僕では付け焼き刃にしかならないと思ってた。

 

 だが、魔術破戒(タイプ·ソード)現実化(リアルブート)をしてから意識が変わった。

 

 「さあ、反撃開始だ」

 

 こちらに向かって来る蜘蛛の群れに魔術破戒(タイプ·ソード)の魔剣を構えた。

 

 ◇

 

 最近、よく嫌な夢を見る。

 アタシの能力が暴走して兄を殺してしまう、そんなあり得たかもしれない未来。

 死に際の兄を抱く感触が余りにも現実的で、どうしようもない絶望感が押し寄せて来ていつも目が覚める。

 そんな、悪夢。

 兄はアタシが殺したというのに、最期までアタシを笑って許す。

 

 「嫌な夢」

 

 アタシの両親は遠い昔に魔導の外道魔術師に殺されて、この世に居ない。

 だから、アタシの肉親と呼べる人はもう兄しか居ない。

 男で一人、あらやる外道魔術師たちから守ってくれた家族。

 いつしか兄を家族として慕う以上の想いを抱えてしまった。

 何気ない行動目で追うことをしてしまう。

 彼の息づかい。彼のちょっとした仕草。兄が誰かに恋心を抱くんじゃないかって不安を抱えては、嫉妬する。

 この想いはきっと叶わない。叶ってはならない。

 その夢を抱くのは、間違いだと気付いてる。

 けれど、そんなもしもを叶えることが出来るのなら――――。

 

 最愛の人。アタシが憧れる正義の味方。

 

 もし、そんな人が自分の手で殺してしまったとしたら、きっとアタシは――――。

 

 そう思ってたら、いつもの退屈な日常に変化が起こった。

 日に日に生徒たちが行方不明になるのだ。

 生徒たちが居なくなる。

 この学園では日常茶飯事な事件だというのに、何故か胸騒ぎがした。

 とても大切な何かが終わってしまうないんじゃないかと恐れてしまった。

 

 最愛の兄が死ぬ、そんな予感が頭に掠めて仕方なかった。

 

 ジジジ。

 ――――キキキ! ッキキキキィイ!

 

 今日も何も変わらない日常の始まりだった。

 今朝、勇貴に会って少し口論をしてしまった。

 それは何気ない、ちょっとした意見の違い。

 朝食の目玉焼きに何を掛けるのがベストチョイスなのかという下らない理由。

 そんな些細な喧嘩で感情を抱けるとは夢にも思わなかったけど、それでもやっぱり勇貴(かれ)のチョイスはあり得ないなと思う。

 だって目玉焼きに醤油だよ?

 普通、ケチャップとマヨネーズのダブルトッピングでしょう!

 それなのに、彼はそのチョイスの方があり得ないなんて言い出す始末なんだから、こちらもつい感情的になってしまった。

 けど、何となく気が合う同じクラスの男子生徒。

 彼を意識し始めたのがいつだったか解らないけど、それでも何処か大好きな兄みたいで放っておけなかった。

 記憶喪失の何の力も持たない彼をどうして兄さんの姿に重ねるのか解らないけど、気の抜けた雰囲気が兄さんが時折見せる横顔と同じだったからかもしれない。

 

 授業を受けて、何気ない生活を過ごして。

 それから――――。

 

 そして、それは突如として起こった。

 

 「キキキキキッシャアアア!!!」

 

 昼休み、蜘蛛の怪物が現れた。

 至るところに現れては生徒たちを襲っていく。

 そんな阿鼻叫喚な光景に対し、誰も気にしない。

 それどころか、変なことを言ったりする人も現れたりもした。

 

 可笑しい。

 みんな、どうして平然とそんな何食わぬ顔をしているの?

 

 日常が壊れていく。

 誰もそれを認識していない。

 奇妙な光景。狂った光景。壊れていく世界。

 

 「キャアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 思わず叫ぶ。

 教室を抜け出す。

 だが、何処へ行ってもそれは続く。

 あろうことか、生徒たちの顔にノイズらしきものが入っていたり、モザイクみたいな靄が掛かっていたりする始末だ。

 

 「な、何なの!?」

 

 アタシだけなのか。

 アタシしかこの異常に気付いていないのか。

 助けて。助けて。

 誰か助けて。

 

 「そうだ、兄さんなら何とかしてくれるかもしれない」

 

 兄さんならもしかしたら、この狂った光景を何とかしてくれるんじゃないかと希望を持つ。

 アタシはそう思うと、早速兄さんのいる教室へ向かうことにした。

 

 その選択が間違いだったとはこの時のアタシには思えなかった。

 

 





 次回の更新は8月24日に投稿予定にしております。
 作者自身もこれからが書いていて続きが楽しみになるこの頃。苦痛に感じることも有れば、それでも完結目指して頑張ります!
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