バッドエンド・ガールズ   作:青波 縁

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 すみません、こちらでの投稿を忘れてました。
 完結させるべく、頑張っていこうと思いますので、どうかお付き合い下さい!



014 その先に待つ者

 後悔の連続。終わりのない悪夢。

 どれだけ願っても叶うことのない願い。

 奇跡を願った。

 それに何の意味もないと知っていながらアタシは生まれた。

 

 「やあ、お目覚めかい、お姫様?」

 

 皮肉混じりにアタシの創造をしたそいつを睨む。

 

 「おやおや、そんな怖い顔をしてどうしたんだい? 寧ろ、ボクは感謝されるに然るべき行いをしたつもりだけど、まさかキミは恩に仇で返す類の人間じゃないだろう?」

 

 オドケて見せるそいつの姿を見て、アタシは直感した。

 

 「アタシは別に創ってくれだなんて頼んじゃいない」

 

 嗚呼、こいつは嫌いな人間だと本能が理解する。

 

 「うん、確かに頼まれていないとも。頼まれてはいないけど、キミは確かに願っただろう?」

 

 心の底を覗かれている。

 気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い。

 この女をアタシは気味が悪いと思ってる。

 

 「――――それで?」

 

 だから会話も早く切り上げたかった。

 

 「うんうん。気持ちの切り替えが早いのはキミの良いところだ。他の娘だとこうはならないからね。全く、二人とも面倒な娘たちだよ」

 

 短く切りそろえた黒髪をイジる姿が、何処となくアタシのモデルとなった少女と被った。

 嫌悪感が更に増して、もうそいつの顔を見るのも嫌で仕方なくなった。

 

 「ふむ。キミも我慢の限界のようだし、本題に入るとしようか」

 

 華奢な少女はそう言うと、おぞましい笑みで嗤うのだった。

 

 ◇

 

 走る。

 昼休みの校舎の廊下を人間の赤ん坊ほどの大きさの蜘蛛が這いまわる廊下を人目もくれず走り続ける。

 この非常事態を兄さんなら何とかしてくれると一途の望みに賭けて、その先を目指す。

 

 ジジジジジジ。

 ノイズが走る。誰かの声が頭の中に響き渡る。

 その声はよく聞き取れなかったが、本能がこの先を目指すなと告げている。

 KEEPOUT、立ち入り禁止、この先を目指すべからず。

 そんな誰かの叫びが幻聴として脳を揺らす。

 

 「うるさい、うるさい、うるさい!」

 

 アタシが決める。

 アタシが選択する。

 だからアンタは引っ込んでて。

 

 階段を上がり、三階の兄さんが待つ教室への廊下。

 そこにはうじゃうじゃと廊下一面に蜘蛛たちが待ち受けていた。

 気持ち悪い光景。

 この光景を見るだけで吐き気がしてきそうだった。

 

 ドクンと心臓が鼓動を速くする。脳が熱く、アドレナリンが沸騰する。

 自分の中に潜む怪物が眠りから覚めようと許可を促す。

 

 ハヤク、メザメサセロ。

 ハヤク、ソレヲクワセロ。

 

 頭がクラクラして、視界がブレる。

 不安定なコンディションで蜘蛛たち(そいつら)の嘲う姿を睨む。

 

 道は閉ざされた。蜘蛛たちが通せん坊をして邪魔してる。

 

 邪魔だ。邪魔だ。邪魔だ。

 

 三度、心の中で邪魔だと呟いて。

 

 「邪魔、だって――――」

 

 掛けていた眼鏡を外す。

 グラグラと地に足がつけていたのに、クラクラと眩暈がして上手く立っていられない。

 三半規管が麻痺してるのか。

 それとも目の前の障害を除けようと、己の血に酔っているだけなのか。

 

 或いはそのどちらかなのかはアタシは解らない。

 

 理性が邪魔だ。理性を外そう。

 

 頭の中の得体のしれない誰かがアタシに囁いて。

 

 それから。それから――――。

 

 「――――邪魔だって言ってんでしょうが!」

 

 ついに、その感情を爆発させる。

 己の中に在った封印を解く。

 目の前が真っ赤に染まるのを感じながら、その理性を本能に預けた。

 

 熱い身体を抱きしめながら。

 自身の背後に現れるそれを見ることは無く。

 

 只、純粋にその湧いてくる殺意にその身を任せた。

 

 ◇

 

 縦に一閃。

 そうすることで目の前の蜘蛛は切り裂かれ、醜い悲鳴を上げては塵となって散る。

 休む暇なく襲い掛かって来る蜘蛛を更に切り裂いては、幻想となって消滅させていった。

 

 「次から次へと!」

 

 未だ、暴れる蜘蛛たちの中心にたどり着けない。

 それらが僕の障害となっているのは明らかだ。

 

 「キキキキキッシャアアア!!!」

 

 最早、廊下が蜘蛛たちが流す血で川が出来るんじゃないかってぐらいの惨状だ。

 

 「ッハア!」

 

 蜘蛛を一閃しては、一度、大きく後ろへ下がる。

 このままでは埒が明かないと悟る。

 

 「ハア、ハア、ハア!」

 

 蜘蛛はこちらの様子を窺うように、ジリジリと間合いを詰めていく。

 このままでは数の暴力でじり貧なのは間違いない。

 持久戦になれば明らかに不利なのはこちらだ。

 

 「どう、する!」

 

 視界の淵に現れる蜘蛛を斬る。

 空を切るかのようにあっさりとその蜘蛛は斬られて、塵となって消滅する。

 

 今更だが、この魔術破戒(タイプ·ソード)はチートだ。

 

 自慢じゃないが僕は何の力もなければ特別に鍛えている訳ではない。

 だが、ここまで化け物相手に接戦を繰り広げられるのは、この魔術破戒(タイプ·ソード)が在ってこその成せる技だと言えるだろう。

 だが、チートと言えどそれを扱う僕はチートではない。

 

 「キキキ!? ッキキキキキキィイ!!!」

 

 な、何だいきなり?

 

 この状況を攻めあぐねていると、突然、蜘蛛たちが散開していった。

 

 その数秒後。

 

 僕は何故か身体が目に見えない何かに吹っ飛ばされる。

 

 「――――ッガ!」

 

 思わぬ衝撃に上手く堪えることが出来ず、廊下の柱まで行ってしまう。

 視界がブレる。

 ノイズが走る感覚。唐突の頭痛。割れるんじゃないかってぐらいの絶妙な痛み。

 また、誰かが僕の頭を弄ろうとそれを行使する。

 

 ふざけやがって。

 僕は決してモノじゃないんだぞ。

 そんなホイホイ記憶を消そうとしやがって、何様のつもりだよ?

 

 痛みに堪える。目の前に意識を向けようとして、それに目が留まる。

 

 それは、見えてはいなかった。

 だが、目を凝らしたことでそれがはっきりと僕の目から脳に視認させることに成功した。

 

 蜘蛛とは別の何か見てはならない怪物。

 トカゲか何かを象徴したようなフォルム。

 廊下の天井まで届くのではないかと心配してしまう程の大きさの体格。

 筋の入った頑丈そうな灰色の鱗を纏ったそいつが、ご自慢の腕を振り回しては、逃げようとする蜘蛛たちを裂いていく。

 

 「グルルル! ッグルルルゥウ!!!」

 

 尻尾を一度丸めたかと思うと、すぐさま広げて地にベタンと音を上げて叩きつけられた。

 衝撃で圧縮された空気が地べたの蜘蛛たちの血を吹き飛ばす。

 それの顔はよく見えない。

 なのにそれどんな顔をしてるのかが何となく理解する。

 

 それと同時に、その何かの前によく知る少女が倒れているのを見つけた。

 

 「あ、天音?」

 

 まだグラグラとする視界。

 もう一度よく目を凝らして、観察する。

 

 「グルルルルゥラァア!!!」

 

 巨体が咆哮を上げると同時にその姿が透けていく。

 

 「天音!!!」

 

 怪物が消えるか間近で漸く倒れている天音の下を駆け寄った。

 

 




 
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