バッドエンド・ガールズ   作:青波 縁

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 お待たせしました! 更新を再開します!

 それでは、前回のあらすじ!

 ● 累の必死な説得(?)により七瀬勇貴は自分の目的を思い出す。グラウンドには生徒からゾンビの群れに大変身でどうしよう!?
   ↓
   よーし力技で突破しようともじり貧。そんな時に新たな権能に目覚め、ゾンビの群れを一掃!交信の杖に向かうため、校舎へと進む。

 ● コントロールルーム内にいる不細工なデブ男、七瀬勇貴の活躍に地団太踏む。
   ↓
   それを見つめる謎の少女。

 ● 交信の杖の門に何故か侵入した腰に剣を携えた青年。剣を振るうと一瞬で謎の記憶をスキップして底へとたどり着く。
   ↓
   そこで青年は謎の少女(アイドル)と取引を交わす。

 以上! 本編をお楽しみ下さい!



010 騎士に打ち勝つ方法

 

 子供の頃、僕は何だって出来ると思った。

 何だって夢を見れたし、なりたいと思える夢を見ることも出来た。

 振り返る。

 そこには、無数の僕の屍が山のように積まれている。

 膨大なテキストデータの僕だ。

 意志ある感情など、その死体には不要。

 それは、誰かを犠牲にしてでも得難い願いの代償なんだと思い込む。

 塵となって消えていく僕の死体。

 選ばれなかった可能性は虚空の世界を彷徨って、星屑にも成れず散っていく。

 ある日、自分の姿を鏡越しに見る。

 酷い面だ。

 いつしか鏡を見るのが嫌になり、世界の果てに独り、空を見上げた。

 ノイズ塗れで何も映らない視界。

 何も映らない僕の目はビー玉か何かが詰められてるようだ。

 ジジジ。

 そこに誰もいない。

 後ろを見ても、前を向いても、何処を見ても暗闇の中には僕一人の姿しかいない。

 

 「永遠を夢見よう。永久の彼方にある可能性を手に入れるのだ」

 

 そうすれば、きっと僕を見てくれる筈だ。

 名前を忘れた僕。

 存在理由もあやふやで、目的すらもすり替えられて地の底にいる。

 ズブズブ沼へ沈んでく彼を見て、ほくそ笑む。

 

 誰か、誰か僕を助けて。

 

 地の底で僕は叫びました。

 必死で懇願して、お願いしても誰も僕を救ってくれません。

 

 助けて助けて助けて助けて。

 殺される。殺される。

 助けて死にたくない。まだ僕はやりたいことがたくさん有るんだ。

 

 手を伸ばしても意味はない。

 心が死んだ。

 願いは一生、叶わない。

 世界の果てでテキストの中でしか生きられない僕はどうしたら良いんでしょうか?

 

 その問いの答えに誰も答えてなんかくれませんでした。

 

 ◇

 

 校舎の廊下を駆けていく。

 息を切らして心臓の鼓動を速くなる。

 ドクンと脈打つそれに痛みは感じなかった。

 ゾンビたちの猛攻を潜り抜け、中庭が見える渡り廊下へと辿り浮いた時。

 

 ガシャン。

 

 重量感溢れる鉄の音が聞こえ、足を止める。

 前方に見えるそれが影となって、威圧感を放つのに日の光が反射して鎧姿に目が眩む。

 肌寒い。

 圧倒される威圧感の正体が肌を通して伝わり理解する。

 一人でそれに対峙してその殺気のまがまがしさに、一人で打倒しなければならないプレッシャーに押しつぶされそうになる。

 

 「早かった。貴殿にしては珍しく切り替えが早かった」

 

 ガシャン!

 

 相対する敵の強さを見て実感しては心が折れそうになる。

 手に握った魔剣が熱を帯びて、光が更に集っていくのが分かった。

 魔剣が光ると同時にふつふつと自信が湧いてきた。

 

 「降伏せよ。(わたし)の速さがその魔剣の力を以ても遙かに上であると知っているであろう」

 

 降伏を求める、澄んだ女の声。

 鎧の擦れる音がする度、彼女の実力が垣間見える。

 

 「戯れ言はそこまでだ。先を急ぐ。そこを退いて貰いたい」

 

 意気揚々にその提案を切り捨てる。

 

 「――――そうか。貴殿にも猶予の短さが解るか。ならば、(わたし)も相応の応えを返すとしよう」

 

 ――――ガシャン!

 廃騎士が剣を構える。

 最早、言葉は不要。

 事、この殺し合いにおいてそんなモノは必要としなかった。

 見据える幻想(ヒト)は知らない。

 先ほどの僕を見てはいない。

 それだけ、幻影疾風(タイプ·ファントム)の覚醒は唐突で、ご都合主義とも思えた。

 けれど、関係ない。

 たとえ誰かの思惑でその能力を得たとしてもその能力を奮うのは僕自身の意思なのだから。

 

 「――――では、参る」

 

 互いの間合いは十メートルも離れている。

 一度、廃騎士と対峙した時はその間合いの詰め方の速さに成す術もなかった。

 だが、今回は違う。

 同じ速さ、否、それ以上の速さを以てそれを凌駕するのだから。

 

 一秒。

 廃騎士が言葉を告げるのと同時に胸の奥底に秘めたそれを目覚める。

 スローモーションとなる世界。

 一歩、それは秒速の世界ではコンマ六十秒の集合体で繰り出された初手。

 グンと距離が縮まるのが見て取れた。

 だからそれに応える為、迷うことなく魔術破戒(タイプ·ソード)を構えてそれに備えた。

 廊下の床に火花が走った。

 最凶の騎士が助走もなく跳んだ。

 凄まじい速さで、コンマ七秒の世界で織りなす跳躍を以て僕と廃騎士の間合いは零となる。

 

 幻影疾風(タイプ·ファントム)がなかったら、僕は此処で敗れてた。

 真面にそれを受け止めることが出来なかった。

 何もかもが理不尽だと嘆いて、死んでたんだからこれ以上ない幸運とも言えた。

 

 鉄と鉄が交じり合う。

 喉元から引き裂こうと縦一閃。

 息継ぎなく放たれた、鮮やかな一撃は神がかってたと言えよう。

 

 「――――っつあ!」

 

 火花が散って、重い一撃に全身の神経が悲鳴を上げる。

 思わず吐き出された苦悶。

 脳が揺れて三半規管を狂わせた。

 

 「ほう」

 

 短く吐き捨てられた賞賛。

 その神がかりの一撃を受け止めた僕を見て廃騎士は次なる一手を繰り出そうと構えて。

 

 「――――ァアアア!」

 

 全身に力を籠める。

 魔術破戒(タイプ·ソード)が呼応するように光り輝く。

 二秒しか経過してない攻防。

 音速を越えた光速の世界。

 コンマ数秒で繰り出される次の一手に瞼を閉じる暇もなく加速する。

 

 廃騎士の大振りな横凪の一閃を右へ走り抜けるように駆け出し、

 

 「――――」

 

 すれ違いざまにそのがら空きな懐に魔術破戒(タイプ·ソード)で斬りつけた。

 閃光。

 脳内にアドレナリンが湧きだし、視界が一瞬真っ白になる。

 

 ガシャン。

 地に膝を屈するのは誰だったか。

 その光速の世界での殺し合いを制したのは僕だったか。

 

 「見事でした」

 

 短く告げられた賞賛。

 それ故に勝者が決まり、真っ白な視界が元に戻る。

 未だに廃騎士が何をしたかったのか理解出来ないが、一つだけ理解出来ることがある。

 それは紛れもない一つの難関を自力で突破したという達成感が得られたと言うことだった。

 

 騎士の幻影は此処で散った。

 最期に廃騎士が笑ったような気がして、何故か誇らしげに思えた。

 

 ◇

 

 カタカタカタ。

 文字を打つキーボード。

 嘘みたいに上がるパラメータを前に戦慄する。

 

 「嘘だろ?」

 

 無精ひげが目立つ、腹回りが出た男はコントロールルームに独り驚愕する。

 モニター越しに廃騎士の敗北を見て、もう持てる手札の無さに焦燥もした。

 

 「どうする? どうする、どうする!?」

 

 |愚者(りそう)が此処へとやって来る。

 何度も意思を改竄したというのに、それを跳ね除けて何度でも立ち上がる姿に嫉妬する。

 どうして男は屈しない。

 七回もキャラクリエイトしても尚、その理想は立ち向かうことを諦めない。

 

 「クソ! クソクソクソ! お前なんか。お前なんかにやられてたまるか!」

 

 何としてもそれに勝たなければならない。

 この夢の世界では神を自負する男こそが最強でなくてはならないのだと決めつけてた。

 なのに。

 どうして男の思い通りにならないんだと嘆いてる。

 

 交信の杖の前に立つ愚者。

 奴は知らない。

 此処にたどり着く為にはアクセス権が必要なのことを知らない。

 この門を開かなければ、此処には到達出来ない。

 そうだ。

 此処が最期の砦だ。

 アクセス権を持たない幻想たちは所詮、主役を盛り上げる為に用意されたガヤの一つにしか過ぎない。

 そうだ。

 此処さえ突破されなければ、幾らでも男を改竄する機会などある。

 

 「ねえ、もう十分楽しんだでしょ、  さん」

 

 だから気づかない。

 背後に潜む少女の不意打ちに何も警戒などしてなかったのだ。

 

 「――――え?」

 

 背中に斬りつけられた衝撃。

 モニターにかかる鮮血。

 痛みは無かったと後に男は語った。

 備え付けられたチェアから転げ落ちる。

 倒れ伏す男は、背後に居た少女の姿を捉えた。

 

 「ど、どうして?」

 

 今まで何もしてこなかったのに、と男は呟いた。

 

 「貴方のことは前から気に食わなかったんです」

 

 少女の影がキキキと嗤う。

 何処までも純粋に死者を追い求める亡者として倒れ伏す男を無様に嘲うのだ。

 

 「ふ、ふざけ、」

 

 怒りに任せ、未だ痛みに藻掻く男は少女に対し文句を言おうと立ち上がろうとした。

 

 「我慢したんですよ。計画を遂行するには貴方の存在は丁度いい隠れ蓑に出来たんですから」

 

 影絵の猿がコントロールルームに集まった。

 宴の始まりを祝う為に舞を踊った。

 嬉しそうに、地に伏せる獲物を嬲った。

 仲良く取り分けるように立ち上がろうとしたそれを自慢の爪で斬りつけたんだ。

 

 「ッヒギャ!? ッグゥ。や、止めて。い、イタ、い。痛い!」

 

 痛い、痛いと激痛に男は転げまわる。

 それを面白がって、影絵の猿たちは愉しんだ。

 

 「それも、もうお終いです。貴方の世界は私たちで有効活用させて頂きますよ」

 

 アイドルは微笑みます。

 そんな男を滑稽だと罵ることもせず、この状況を楽しんでるのです。

 

 「さて、目的も達成されましたし、この世界も崩れることでしょうし、折角ですので今まで好き勝手にしてきたツケを支払うと良いでしょう」

 

 カタカタカタ。

 直接のアクセス権限をアズマを介して男が持つ能力を奪った。

 それをするのは、少女にとっては容易なことだった。

 

 「や。止め、て」

 

 べそをかく男。

 傷だらけで何も出来ないと言うのに男は懇願する。

 

 「では、どうぞ残り少ない神様気分でも味わって下さい」

 

 じゃあと手を振って夢を後にする少女を男は黙って見送るしか出来なかったのだ。

 交信の杖の門が開かれた。

 画面越しの光り輝く剣が相も変わらず眩く見える。

 奇跡は起きない。

 ドン・キホーテ同士が邂逅するのは時間の問題だった。

 

 





 次回の投稿は9月16日を予定しております。
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