バッドエンド・ガールズ   作:青波 縁

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 「そんなのコントロールルームに決まってますわ!」

 

 シェリア会長がどや顔で答えると──。

 

 キーンコーン、カーンコーン。

 校舎の方からチャイムが鳴り響く。

 

 「……チャイムが鳴った?」

 

 チャイムが鳴ると言うことは、授業が終わったことを意味している。

 

 「どうやら、此処には留まれそうもないですね」

 

 真弓さんが校舎のある方角を向きながら言う。

 

 「そのようですわね」

 

 シェリア会長もその言葉に同調する。

 

 「チャイムが鳴ったら、何があるのさ?」

 

 シェリア会長が拳銃を取り出す。

 

 「魔女が重い腰を上げたと見て間違いないってことですね」

 

 真弓さんが魔法陣を展開させる。

 

 「魔女が? でも、シェリア会長は此処にいるじゃないか?」

 

 さっき、権能を通じてシェリア会長の身体を支配下に置いてるって話をしたじゃないか。

 

 「ええ、言いましたわ。でも、それは飽くまでワタクシという身体を使っての話ですのよ」

 

 ……?

 

 「勇貴さん。この世界は夢なんです。肉体という情報はなくても意識体さえあれば活動には支障はないんですよ」

 

 真弓さんはそう言うと展開させた魔法陣から放たれた光を僕らに包み込ませる。

 

 クスクス/キキキ。

 クスクス/キキキ。

 

 誰かの嘲る声が何処からか聞こえた気がした。

 

 「では、開けますわよ」

 

 ドアに手を掛けるシェリア会長。

 

 「ま、待った。今、魔術破戒(タイプ・ソード)現実化(リアルブート)するよ」

 

 あらゆる幻想を破壊する魔剣を構える。

 

 「──行きましょう。魔女から未来を取り戻すの戦いへ」

 

 ドアを開ける。

 その先に待つのは──。

 

 切り抜き(ジグザグ)切り抜き(ジグザグ)

 

 ジョキジョキ、──ジョッキン!

 切り抜いたら張り付けて、そこから開始。

 

 「エラー認証。エラー認証」

 

 頭の中で■■さんの声が響く。

 視界情報がモザイクで覆われ、見ているモノが雑音(ノイズ)に埋め尽くされた。

 

 「──これ、は?」

 

 何もない。

 二胡が襲った時に訪れた空間のような感覚がドアの向こうには広がっていた。

 僕はそれに呆然とするしか出来なかった。

 

 「『無の空間』? まさか、これも魔女が展開したのです、か?」

 

 だが、そんな僕の隣に来て真弓さんが口を開いた。

 

 「いえ。あの人にはそんな能力は無かった筈ですわ」

 

 シェリア会長がその言葉を否定する。

 

 「そう言えば、勇貴さんはこれをどう対処したのですか? 二胡さんは憤怒の権能(チート)を使ったと言ってましたが……」

 

 真弓さんが僕に問う。

 

 「うん。この空間に閉じ込められた時、自己投影(タイプ・ヒーロー)が使えるようになったんだ」

 

 あの時は自分の権能(チート)が使えなくなって、必死で足掻いたんだよね。

 

 「……そうですか。先ほど、私たちも話しましたが権能(チート)の能力は代償が付き物です。憤怒の権能(チート)もですが、その能力に頼り切るのは控えた方が良いですよ」

 

 真弓さんが今更のことを心配する。

 

 「……それが出来れば理想なんだけどね」

 

 他人事のように言う。

 その言い方が気に入らなかったのか、真弓さんが少し顔を強張らせた。

 

 「解っているなら、どうして──」

 

 「じゃあ、どうすれば良かったの?」

 

 真弓さんが言おうとしたことが何となく解った。

 だから、それに被せるように言葉を放った。

 

 「……え?」

 

 話の途中で遮った所為か、真弓さんが僕の言葉に呆然とする。

 

 「あの時、あの権能(チート)に目覚めなかったら僕はきっと、『無の空間』でずっと閉じ込められていた。それでいて、君たちも二胡を相手していた。しかも、僕があの場に駆けつけなかったらシェリア会長は二胡にやられていたかもしれない。その次に、君も倒されていたかもしれない。僕はそれが嫌だ。何も出来ずに奪われるのは、もう嫌なんだ」

 

 心配するのは解る。

 けれど、それで僕の大切なモノが奪われるのは嫌なんだ。

 

 「例え僕が僕じゃなくなったとしても、大切な人を助けられるのなら僕はこの権能(チカラ)を使うよ。君に何を言われようとそれは変わらない」

 

 真弓さんは僕を見る。

 彼女が何を思っているのか、僕には解らない。

 未だ、その心の内を話してくれてない。

 

 僕を大切にしようとしてくれるのが凄い伝わる。

 でも、僕が求める幸福は得られないのなら彼女の手はもう取れない。

 

 誰もが幸せに笑える未来を取りたいから、僕はこの権能(チート)を使うのだ。

 

 「──っ」

 

 耐えきれなくなったのか、真弓さんが僕から目を逸らす。

 

 「……七瀬勇貴。準備はよろしくて?」

 

 シェリア会長が先を促す。

 

 「うん、大丈夫」

 

 そう言うと、僕は目の前の何もない空間に廊下があると思い込む。

 すると、心臓の鼓動が強くなり自己投影(タイプ・ヒーロー)が発動される。

 

 ゴゴゴ!

 地響きが轟くと、見慣れた廊下へと世界が戻る。

 

 「よし、行こう」

 

 さあ、魔女が待つコントロールルームへ行くのみだ。

 

 ◇

 

 キーンコーン、カーンコーン。

 鐘の音が鳴る。

 それは、終末を知らせる予兆でしかなかった。

 

 「無駄なことを」

 

 神父は嗤う。

 彼にとって愚者の妄想も、哀れな幻想の嘆きも、魔女の嘲笑さえも同価値でしかなかった。

 

 「精々、頑張りたまえ。ドン・キホーテよ」

 

 夢は終わらない。

 『■■■■・■■タ■』の復活は未だ訪れない。

 

 「カァア、カァア!」

 

 何処かで、夜鷹の鳴き声が聞こえる。

 

 彷徨う亡者は幻想へと昇華し、キミを見つめるボクもまたそんな愚か者に舞い戻った。

 

 「さて、貴様はつまらない結末を見せるなよ、大罪の王よ」

 

 何処までも神父はボクらを嘲る。

 永遠の煉獄。

 泡沫の夢。

 全てが愚かで、灰になるまでその身を消費する。

 

 それが、ボクら凡人に出来る唯一の個性(アビリティ)なのだから。

 

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