たとえば、こんなセファール。   作:けっぺん

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第五幕『美人秘書コヤンスカヤの特別授業』-1

 

 

 はい、それじゃあ、NFFサービス全員集合。点呼開始です。

 まずは私、コヤ――

 

「まずは拙僧から! 最高経営責任者ユーリンボ・ドドーマンにて!」

 

 ――意地でも最高経営責任者を貫き通すつもりですね、このクソ坊主……。

 いえ、失礼。なんでもございませんとも。

 ひとまず――ひとまずは、あらゆる文句、あらゆる制裁は置いておきましょう。

 次に私、コヤンスカヤ。今回のプロジェクトにて、セファール様ひいてはこの世界との契約を結ばせていただきました。

 

「……藤丸立香」

「……ま、マシュ・キリエライトです」

『セファール』

 

 いやセファール様はいいんですよ。監視することに否やはありませんが、別に社員ではないのですから。

 

『……』

 

 無表情のままちょっと悲しそうな雰囲気出すのやめてくれます!?

 何か悟ってあの聖剣使い様がこっちに飛んできたら流石にどうにもなりませんよ、まったく……。

 

「聖剣使いさん……とは? すみません、あの場にいた全員の名を聞いた訳ではないのですが……」

 

 ああ、そうでしたね。

 それも含めてお話ししましょうか。疑問点は晴らしておきましょう。

 まずはじめに、カルデアのお二方。

 貴方たちはこの世界を特異点として観測して、レイシフトを行ってやってきた。その認識は間違いないですか?

 

「……ああ。神代北欧に発見された特異点だって」

 

 ――なるほど、そういう。

 

 一応先に、その点の間違いを解消しておきますが、この世界は単なる特異点ではありません。

 貴方たち汎人類史から見た、別の世界。

 ――そう。ちょっとした歴史の“ずれ”から分岐し、編纂もしくは剪定の道を歩むことになる世界です。

 

「っ、それは……」

 

 ええ、貴方たちとしてはタイムリーですよね。

 とはいえ異聞帯とはまた違う。ここは剪定すべきという裁定の下っていない、未来がある世界。

 そういった世界は汎人類史ではなくとも、それこそ無限に存在します。

 カルデアのことですし、そうしたところからまろび出た英霊も召喚されていますでしょう? それの一つと考えてください。

 

「だけど、そうだとしたら何でコヤンスカヤがいるんだ?」

 

 明確な原因としては、私も何とも。ですが、幾つか確定的な点を話すとすれば……。

 まずは、少なくとも貴方たちのレイシフトに相乗りしていた訳ではありません。

 それから、私たちがこの世界を特異点だと観測して自ら飛び込んだというのもまた違う。

 私としては“気付けばここにいた”という理解なのですが、貴方は?

 

「ンン。そうですねぇ。拙僧はこの世界に召喚された身。貴女がたの事情などとんと存じ上げませぬゆえ」

 

 ああそうですか。そうなんですね。はいはい分かりました。

 そんな訳ですので、疑っているところ申し訳ないんですけど、割と私たちも巻き込まれた側と言いますか。

 悪巧みする目的であれば、こんな迂遠な手段は取りません。基本、私のビジネスもそこまで余裕がある訳ではないので。

 私はビジネスに関しては真摯ですので、詭弁や甘言は使っても嘘は言いません。

 ですので、ここにやってきたことが故意ではないこと、そしてここの問題をスパッと解決して帰還することが本意であることはご理解いただければ。

 貴方たちと雇用関係を結んだのも、そういう理由から。

 手段を選んではいられないのでカルデアと手を結ぶのも悪くはないという判断です。呉越同舟、お好きでしょう?

 

「……本当に、悪さをする気はないんだな?」

 

 それはもう。

 正義の味方とか虫唾が走りますが、そこはそれ。

 誠心誠意とはいかないまでも、今回ばかりは“世界を救う”側に立つべきだと判断しました。

 

「……そっちの、えっと、ドドーマンは?」

「ええ、ええ。こう見えて拙僧、善き英霊なれば。生前は不作に喘ぐ民衆のために呪を紡ぐことも茶飯事でした。こう、急急如律令(チチンプイプイ)~、地獄界曼荼羅(ビビデバビデブー)~みたいな」

「なんでしょう、呪文に含まれた意味合いが致命的に今の段階で出てはいけない言葉な気がします!」

「おおっと、失礼。拙僧は謎多きサーヴァントにて。戦う際は何だかんだ、シャドウサーヴァントやら巨大な怨霊で誤魔化す感じの」

「先輩、この方、真面目にやらなければならない特異点にいてはいけないオーラしか放っていません!」

「これもしかしてぐだぐだだったりする? それかセイバーウォーズとか」

 

 ――それならそれで私のような“デキる”ビジネスウーマンは決して参加要請に応じませんのでご安心を。

 まあ、なんかその方は放っておいていいです。賑やかしも一人や二人必要でしょう。

 

「これ以上増えると収拾がつかなくなりそうなんだけど」

 

 カルデアが呼ばなければ増えませんよ、きっと。

 くれぐれも、彼のノリに順応しそうなサーヴァントは召喚しないことをお勧めします。

 恐らく頭痛を抱えて乗り切れるようなものではないので。

 

「なるほど……先輩、この特異点では信長さんたちやXさんたちの召喚は避けましょう。今回の特異点攻略に途轍もない難易度上昇を招く危険があります」

「……うん、そうしよう。余計なことしたらこの特異点の危機が増えそうだ」

 

 えぇ……本当にいるんですか、そういうサーヴァント……。

 いや、いいです。追求しません。

 その情報で得られる利益以上に理解に要する負債の方が大きくなりそうです。

 この方もどうしても邪魔だと言うなら交換ショップにでも放り込んでおいてください。

 

 それはともかくとして……とりあえず理解していただけました?

 一応、この特異点を修正するまで――つまりは貴方たちがカルデアに帰還するまでは一旦、過去のいざこざは無かったことに。

 互いに出来ることを尽くし、ギブとテイクを繰り返す間柄になりましょうという事です。

 

「――分かった。ひとまずは、そういう事で」

 

 ……物分かりが良すぎるのも考え物ですねぇ。それがこれまで色んな幸運を呼んできたのでしょうけど。

 私はその辺りで貴方たちの足を掬う側なのでやめておけとも言いません。

 

 さて。この特異点が普通のそれとは違う――そうですねぇ、便宜上、『特異並行世界』とでも称しましょうか。

 そういう、貴方たちの汎人類史の過去ではないことは理解していただけたかと。

 ここから先はその前提で話をさせていただきますが、よろしくて?

 

「……その前に。ここが後に、北欧異聞帯になる世界ってことはない?」

「――――ッ」

 

 ――――ええ。誓って、そんなことはないと断言しましょう。

 確かに、このタイミングで北欧に発見された、並行世界に端を発する特異点であるなら、そう疑うのは間違っていません。その着眼点はある種の脅威として評価します。

 それはそれとして……この一時、貴方たちを管理する大人として、忠告しておきます。

 断った異聞帯に同情しないこと。それが出来なければ、せめて忘れること。救っただけの世界であっても、それが最善です。

 

「…………」

 

 ……この辺りは、終わった後にゆっくり考えてくださいな。

 今は特異点に集中を。私が現時点で把握していて、貴方たちが理解しておくべき事柄を説明します。

 まず、この世界では唯一の神にして、世界そのものの土台でもある巨神王セファール様について。

 

『お? 私?』

 

 ええ、セファール様について。

 貴女には先程説明しましたが、彼らも知っておく必要があります。

 あまりいい気分になる話ではないと思うので、不快になったら端末との通信を切ってください。

 

『了解。まあ、特に不快さはないし、どちらかと言うと興味深い。分からない単語が多くて若干宇宙背負っているけど』

 

 ――マジでフランク過ぎないですかねえ、この方。

 

 ええと。巨神王セファール――汎人類史においてはセファール、或いはセファル。

 この名について、何か知っていることは?

 

「……特には」

「わたしも……この特異点――いえ、特異並行世界に来るまでは聞いたことのなかった言葉です」

 

 結構。歴史としては、英雄王の時代よりも遥かに前の出来事ですからね。

 セファールというのは、汎人類史において紀元前一万二千年、流れ星として地球に降臨し、当時の文明を痕跡すら残さず滅ぼした白い巨人です。

 当時、世界の理であった神々を蹂躙し、その数少ない生き残り――メソポタミアに名を残す神々も、命乞いで恩赦を得るしかなかった、星の文明に対し圧倒的な有利を持つ存在でした。

 この出来事は神代終焉の契機となり、後の衰退に繋がっていきます。

 先史文明を滅ぼし尽くした白い巨人は、その後、当時聖剣に選ばれた一人の人間によって打ち倒されました。

 倒れた巨人はその亡骸を残し、それが元になって幾つかの伝承を作っていますが――まあ、それは置いておくとして。

 この世界はセファールが滅ぶことも、また、文明を滅ぼすこともなく、世界の守護者となった世界のようです。

 

「――――?」

「――――?」

 

 ……と、こんな感じに。セファール様におかれては、別の世界の基準ではこういう反応になる世界だと自覚していただけますと、私たちも色々とやりやすいです。

 

『話を聞くたびに思うけどセファールってヤバすぎない?』

 

 ヤバすぎなんですよ。それはもう。

 私もちょっとばかり名のある神様の分体をコピーした身ですが、それだけ遠くて薄い縁でも魂レベルでビビっちゃっている感じで。

 とにかく、カルデアのお二方。理解出来なくても理解してください。もっと理解出来ないこととか、カルデアならたくさんあったでしょう?

 

「…………確かに。チェイテピラミッド姫路城よりはマシ……チェイテピラミッド姫路城よりはマシ……」

「……そ、そうですね。チェイテピラミッド姫路城よりは……」

 

 貴方たち普段微小特異点で一体何してるんですか……?

 

『チェイテピラミッド姫路城って? 何それ凄い面白そうな響き』

 

 そこ! 興味を持たなくていいです! 貴女が興味を持つとなんか途轍もなく嫌な予感がするので!

 ともかく、カルデアにとっては決して理解不能な域の話ではない筈だと! そう思ってください! いいですね!




■コヤンスカヤ
「NFFサービス、特異並行世界支店です。侵略種ポイントの交換はこちらから。累計報酬の担当がいないので、あと一名どこかから見繕ってこないとですねぇ。あ、暇ならちょっとスライドしてユーリンボさんがサボってないか見てきてくださいます?」
今回の解説役。台詞が多くなりすぎたので視点ごと書き直した。
どこぞのクソ坊主のノリと勢いとはいえ、社員として契約を行った以上、カルデアに対し必要な説明・疑問の解消は行う。
この特異点の修正において、カルデアと敵対するつもりがなく援助を行うという意思に偽りはない。
今回の説明に関しても、一切の嘘はついていない。
この世界はまだ、この時点では剪定の処断を下されていない、未来ある人類史だ。
「断った異聞帯に同情するな。無理ならば忘れろ。救った世界も同じく」というのは、この世界の危機に立ち向かう僅かな間の部下への、ちょっとした忠告。
――だってそういうの、貴方たちは耐えられないでしょう?

■ユーリンボ・ドドーマン
「NFFサービス、交換ショップにて! ンン、拙僧商人の真似事など、とんと縁のない深刻(シリアス)系サーヴァントにございますれば。うっかり、ええ、うっかり交換アイテムの必要数を間違えてしまうやも……ああ冗談ですぞ。冗談なのでコヤンスカヤ殿への連絡はやめていただきたい! 切に!」
とりあえずコヤンスカヤと違って、人理漂白事件においてカルデアとはまだ面識がないため、この特異点に召喚された自立サーヴァントという立場をでっち上げた。
カルデアには「召喚されて早々にNFFサービスを乗っ取った」と認識された。割と間違ってない。
この世界から帰還しないと自身の不死が取り返しの付かないことになりそうなため、コヤンスカヤとカルデアを利用する算段。

■藤丸立香
並行世界由来となる“イフ”のサーヴァントなら割とたくさんいる。
今回の事象は、原因こそ異なれど、かつて妖術師と戦った亜種並行世界と同類のものだと考えている。
下総国での一件は覚えているし、暗躍していたキャスター・リンボの事も決して忘れていないが、ドドーマンの認識阻害の呪術は凄いので気付かれていない。

■マシュ・キリエライト
イベントへの順応性は先輩に負けず劣らず割と高いため並行世界云々の話もすぐに理解した。
ただし、“汎人類史におけるセファール伝説”を教わった次の瞬間にやたら都合の良い二次創作を聞かされて平常心でいられるほどでもなかった。

■セファール
『リツカたちの世界の私こっわ……』

■ぐだぐだ鯖、ユニヴァース鯖
特異点が増えるので出禁。
他のイベントの中に平然と紛れ込み、マンションの一室から突如出現したりする。

■チェイテピラミッド姫路城
この話を更新した時点ならばゲームの方でサクッと振り返れる二〇一七年ハロウィンの怪。
カルデアが崩壊し地表が漂白される二か月前の出来事。
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