たとえば、こんなセファール。   作:けっぺん

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第五幕『美人秘書コヤンスカヤの特別授業』-2

 

 

 で、どこまで話しましたっけ。

 ――そう。セファールが“守る”側になった世界。

 こうなることで、世界は大いに変わりました。

 この世界では神代が既に終わっています。何せ、人間や文明は残っていれど、神々の類は全滅しているので。

 その後、彼女が神格化され、巨神王セファールとして唯一の神となったのがこの世界です。

 

「……? ――、か、神々が全滅? 神霊となった方もいないのですか?」

 

 ええ、全滅。

 汎人類史においては後の世に名のある神霊として刻まれる者も、みーんな。

 ですよね、セファール様?

 

『むしゃむしゃしてやった。反省はしている』

「むしゃむしゃしてやった!?」

『ちなみにもう神様じゃないけど、一人まだ生きてるよ。今は別のところを守っているけど』

 

 え、あ、そうなんです? ……いたんですね、生き残り。

 じゃあちょっと訂正。神々はほぼ全滅しています。

 ここは私もセファール様たちから聞いた話ではありませんが、なんでも、聖剣使い様を助けるためだったとか。

 

「あの、“聖剣使い”とは先程の、汎人類史において白い巨人セファールを倒したという、聖剣に選ばれた人間、という理解で合っていますか?」

 

 そうですね。一体何処から汎人類史との“ズレ”が生じたのか不明なので、必ずしも汎人類史のセファール伝説に登場する聖剣使いと同一人物とは言い切ることが出来ませんが。

 どういう訳かこの世界では、セファール様と聖剣使い様が友情を育み、互いを大敵と見なさなくなったと……これ本人の前で解説すべき話ですか?

 

『いいぞもっとやれ』

 

 本体の方で今何しているのか知りませんけど、だんだん適当になってません?

 ……この辺りは本人がから説明していただいた方が正確なのですが、ゴーサインが出たので仕方なく続けます。

 ――お二方、付いてこられてます? なんか背後に宇宙が見えるんですが。

 “外”由来のサーヴァントとか連れてきてませんよね? くれぐれも変なところと繋げないでくださいよ? あの手のサーヴァントは理解の及ばない領域にいて面倒極まりないので。

 

 セファール様の友であった聖剣使い様ですが、ある時、当時まだ生き残っていた神によって、呪いを掛けられました。

 恐らくは、遊星からの巨人を討つという使命を果たす様子の見られなかった彼女にしびれを切らしたのでしょう。

 そして、呪いにより死に瀕した聖剣使い様を救うため、セファール様は神々を一掃し、その力を吸収して、聖剣使い様の命を助けたとか。

 その後、神々のいなくなった世界を維持するため、セファール様は世界そのもののルールを作り替え、自身が世界と同化し、土台となることで今日まで続く世界となった――これが世界のあらましのようです。

 

「――、……、ごめん、もう一回お願いできる? というか、コヤンスカヤは何故そんなところまで……」

 

 独学です。文明が続いていて、人間に“智慧”が許されている世界であるなら、創世記など一番はじめに書物になるでしょう。

 この世界の書物、貴方たちも読んでみては? 汎人類史と異なる文化で割と面白いですよ。

 という訳で、再度説明はしません。無理やりでも理解して、納得してください。

 

 この世界の創世記、その結論としては、『セファール様と聖剣使い様は共に世界を守る存在となり、“終末”が訪れた時、聖剣使い様がセファール様を斬ることで世界は終わる』というものです。

 よってセファール様が世界となって一万一千年、聖剣使い様もまた人として、その永きを共に生きてきました。

 先程の場で、明らかに一人気配の“格”が違う方がいましたでしょう? あの方が聖剣使い様――いつかこの世界を終わらせる役目を持つ、最強の剣聖です。

 

「あの方が……確かに、セファールさんの前にいて尚、一切霞まない圧倒的な力を感じました」

 

 対面してそのくらいの感覚ってことは、余程そちらには気を抜いていたんですね、彼女。

 まあ、とりあえず喧嘩を売るべきではないと忠告しておきますよ。

 やろうと思えば超級の霊基すら一撃でぶった切れる、一万年以上磨き上げられた剣の極みなので。

 

 

 さて。聖剣使い様についてはこんなところで。

 続いては、お二方に対処を手伝ってもらう侵略種について。

 とはいっても、こちらについては知られていることもあまりないんですけどね。

 

「侵略種……アトリさんが言うには、一万年もの間、この世界を脅かしてきた、空から襲来する存在だとか」

 

 アトリ――ああ、セファール様の長姉たる戦闘王女ですね。

 ええ。記録によれば、侵略種と呼ばれるようになった存在はそのアトリ様が生まれるよりも前、セファール様が世界を変えて千年後に最初の例が発生したとか。

 

『ん――そうだね。よく覚えている。あれが最初で、あそこまで強いのは、あまり見ない』

 

 この世界としても、侵略種について長年研究してきたのでしょう。

 しかし、それが“世界”と“人間”を侵す力を持っていること以外に分かっていることはない。

 ゆえに世界を、そして人々の営みを終わらせないために、この世界は死力を尽くして侵略種と戦ってきた。

 ――それがこの世界の人類史。

 汎人類史が多くの超克、様々な苦難、多種多様の挫折を積み上げてきたように、この世界は共通した敵との戦いを通して成長してきたのです。

 

『それも独学? そっちの世界には、侵略種はいないの?』

 

 独学です。それと、この世界における侵略種に該当する存在が襲来してくるという事態は、まあ、ないですね。

 異星からの侵略、異相からの接近についてはまあともかくとして。

 とりあえず、その辺の話はご勘弁を。お二方の様子を見れば分かる通り、私たちが仲良く出来る話題ではないので。

 

『……了解。そっちの世界も、大変なんだね』

 

 大変ですねえ……さて、お二方の顔が怖いので話を戻します。

 この侵略種との戦いで人々は成長し、その中でこの街に展開されているものはじめとした防衛機構が数多く作られてきました。

 規模の差はあれど、この世界はどの生存圏もこんな感じだとか。

 全ては侵略種から世界を、自分たちを守るため。一丸となっている訳です。

 

「――この世界にある、魔術とも科学とも違う技術も、そのための?」

 

 そうみたいですね。この世界においてはこの技術こそが魔術と呼ばれているらしいですが。

 現時点で汎人類史を超える技術を持つのは、そうでもしないとこの世界が維持できないから。

 人間では勝てない侵略種を、人間の手でどうにかするための意地の結晶って奴です。

 

「……強い、世界なんですね」

「うん――ウルクみたいだ。そこの誰もが、諦められないと戦っている」

 

 ただまあ、“人間では勝てない”というのは致命的な訳で。

 直接侵略種と戦えるような存在が、この世界には足りていないんですよ。

 防衛機構はあくまでも、襲撃を防ぐためのもの。そこから機転を利かせて戦える者が、世界の規模に対して少なすぎる。

 それを担当しているのが、アトリ様にブリュンヒルデ様、そして戦乙女(ワルキューレ)の皆様――セファール様の娘、ということです。

 ――ああ、言いたいことは分かりますが、汎人類史におけるワルキューレと彼女たちは、呼称が同じだけでまったく別の存在ですので、余計な感傷は持たないことです。

 ともかく、この世界は人材不足。

 だけど、許容を上回るほどの侵略種の群れが、ここ数年ひっきりなしで襲来してきている。

 そんな中でやってきた、侵略種と真っ向から戦えるサーヴァントを従えるカルデアのマスター。

 ――お二方に望まれていること、ご理解いただけました?

 

「……勿論。尚更、侵略種を放って特異点の原因を探す訳にはいかなくなった」

「はい。対処を手伝う、では足りなかったと認識を改めます。セファールさんの言った通り――わたしたちの全力で、この世界の限界を超えなければなりません!」

 

 はー……はぁ……即答。即答ですか。まあ、貴方たちならそうなりますよねぇ。

 一応、説明するべき内容はこんなところです。後は実際に、お二方の目で見て、どうとでも思ってくださいな。

 そんな訳ですので、セファール様? 私たちNFFサービスはこの世界に力をお貸しします。

 主に実働としては彼らを動かそうと思うのですが、それでよろしくて?

 

『ん。ありがとう、四人とも。改めて、力を貸して』

「ああ――これからよろしく、セファール」

「よろしくお願いします、セファールさん!」

「ンン、異なる世界、異なる思想の輩が手を結び一つの危機に当たる! いやはや、何ともはや!」

 

 ああ、もうショップに行ったと思ってました。いたんですね貴方。

 この悪徳坊主はともかく、私としても力を尽くす所存ですので、そこはご安心を。

 生き延びる、勝ち切るという気概は、それはもう私の尻尾にビンビンと伝わってきています。

 人間とは、世界とはそうでなくては。それでこそ手を貸し甲斐があるというものです。

 ええ――それでは始めましょう。NFFサービス、お仕事開始です!




■コヤンスカヤ
前話に続き解説役。
――いつか敵になるのなら、その時のために色々と知っておいた方がいいですものねぇ?

■セファール
涙腺があったら感涙していた。
そうじゃなくても多分何か異変を悟った聖剣使いがこの後NFFサービスに突撃する。

■聖剣使い
一万一千年もの間、剣士として人間の頂点であり続けた存在。
正しい構えも振り方の心得も学んでいないが、ただ一点、“いつか世界を終わらせるため”にひたすら磨き上げられた剣の極み。
武、剣技という側面では彼女に勝てる使い手は数いるものの、その剣筋の冴えにおいて彼女の上を行くものは、人類史において存在しない。
技も、術も削ぎ落とした、剣を用いてのあらゆる行いの深奥を、いつかへの過程として無意識に学び、戦闘においても一手段として行使する。
他者から見れば型も技の出だしも読めず、まったく異なる思想の境地で振るわれるべき剣が通常攻撃で飛んでくるやべー奴。
ただし、それは本人が何かを考えている訳ではなく、単に戦闘での選択肢として出力しているだけであり、そこにコツもクソもない膨大な年月によるごり押しのため、同じ境地に至った剣士にまったく共感が出来ない。

同じく規格外の剣士である“山の翁”とは、もしも出会って、殺す理由もなく互いを競う目的で剣をぶつけ合えば、セファールとの関係とはまた違う無二の感情を抱くと思われる。
彼が行ったように、死のないビーストⅡに死の概念を付与するような芸当は出来ないが、ビーストⅡを斬ることは出来る。
殺せるかは知らないが斬ることは出来る――そこに気付いた後、次の「これは私では無理そうですね」という段階に至るのは、聖剣を百回振ってからである。

■創世記
セファール伝説のハッピーエンド版。ただし神々は全滅する。誰かを助けるというのは誰かを助けないということなんだ。
コヤンスカヤは太平洋異聞帯にて『はじまりのものがたり』という創世記を描く絵本でこれを知り、読み終わるまでに三回くらい「は?」って言った。
ラグナロクの最中であるこの時代にも妖精が記したというこの物語は存在する。
普及している言語・文字については、恐らくは汎人類史にも存在するいずれかのもの。
一万年前から変わらずそれが使われてきたのか、どこかのタイミングで変化し、そちらにセファールたちが順応したのかは決めていないので自由に想像してほしい。
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