胸糞です。この作品に救いはありません。寝る前に色々考えていた時に思いついた作品です。読むときは注意してください。基本的に登場する人物は主人公と八神はやてとその家族(ヴォルケンリッター)のみです

1 / 1
魔法少女リリカルなのは~絶望~

 少年はミッドチルダに住む、どこにでもいるような普通の少年だった。

 

 成績が飛びぬけて良いわけでも、先生を悩ませる問題児でもないどこにでもいるような普通の少年だった。

 

 父と母からの愛情を一身に受けて育ち将来は管理局の魔導士として悪い人を捕まえる。そんな夢を持っている只の少年だった。

 

 そんな少年の人生を変えたのは本当に偶然だった。

 

 友達と遊んだ帰り道、少年は通り魔に遭遇した。しかし、ただの通り魔ではない。闇の書と呼ばれるロストロギアを使って人のリンカーコアを奪う通り魔である。少年は偶然その場に居合わせた。少年の視線の先にはピンクの髪をした長身の女性と金髪の女性。そしてその足元に転がる数人の死体。

 

「ん? 見られてしまったか……」

「シグナム……」

「分かっている」

 

 少年の存在に気付きシグナムと呼ばれた女性が剣を取り少年の方に歩き出す。少年はあまりの出来事に腰を抜かしてしまいその場から動けなかった。

 

 しかし、シグナムは途中で何かに気付いたようにあらぬ方向を見ると金髪の女性の方を向き頷き合いその場から姿を消した。その瞬間、管理局の魔導士がやってきた。魔導士に気付いたらしく少年は間一髪命が助かったのである。

 

 ……ここまでならただの”ちょっと日常では遭遇し辛い経験をした普通の少年”で終わる筈だった。しかし、少年は通り魔がいなくなったことで安堵し体が動く様になりその場から逃げ出してしまったのである。誰だってこのような場面に遭遇すれば逃げたくなるだろう。しかし、あまりにも間が悪かった。

 

「っ! 逃げたぞ! 闇の書の関係者だ!」

「捕らえろ!」

 

 魔導士は少年が逃げ出したことで闇の書の関係者と勘違いした。シグナムや金髪の女性の他に幼い外見の少女がいた事で幼い外見の敵もいるという認識が会ったのが拍車をかけていた。

 

 結果、現役の魔導士から逃げきれる訳がなく少年が捕まった。そしてそのまま闇の書の主と思われ局まで移送された。厳しい取り調べを受け、何度も怒声を浴びせられ、やってもいない罪を着せられる。少年の心はズタズタだった。取り調べを行った局員が功績欲しさに冤罪だろうと関係なく少年を闇の書の主と決めつけて逮捕しようと考えていた事も関係している。

 

 少年は闇の書の主として牢屋で過ごす事となる。それは本当の闇の書の主が捕まる半年後まで続き牢屋の中にいながら何度も罵声と暴力が振るわれ少年の心は疲弊していた。

 

 少年が闇の書の主ではなかったと知った局員は腹いせに”闇の書の蒐集に協力していた”と罪をでっち上げて再逮捕しようとするがさすがに異常に気付き局員は降格、少年は開放された。

 

 謝罪や賠償金もなく、ただ追い出されるように解放された少年は半年ぶりに両親と再会した。しかし、そのまま日常に戻れるかと言われればそうではない。少年が逮捕されたという事は噂として広がっており少年は一気に孤立した。少年が教室に入ればそれまでの喧騒はなくなり静かになる。クラスメイトは皆犯罪者を見るような目で少年を見つめ陰でコソコソと噂する。

 

 通学路では闇の書の被害者たちに襲われ命の危機に遭うなど少年への理不尽な暴言、暴力は続いた。

 

 そしてある日、少年は被害者遺族の一人にナイフで刺された。その遺族は何処からか少年が闇の書の主という情報を手に入れて復讐しようとしたのである。管理局は少年を刺した者に”少年にもそう思わせる言動、行動があったと思われる”として軽めの処分で済んでいた。流石のこれには少年の両親が反対するも”犯罪者の親”と言うレッテルを張られ世間から孤立していった。

 

 少年が中学生になる頃、両親は自殺した。少年の親というだけで辛い目に遭った事による行動であった。少年は完全に一人となった。少年は中学を中退するとそのままホームレスとなり底辺生活を送るようになった。

 

 そんな少年も青年となり、成人を迎えようとしていると再び”それ”は起こった。

 

「は、はは……」

 

 青年の前では同じようにシグナムという女性がリンカーコアから魔力を蒐集していた。11年前と同じ現場に遭遇した青年はこれまでの辛い記憶が蘇ってきた。何故自分がこんな目に合わないといけない?何で僕は犯罪者にされたのか?何故?何故?何故?

 

 気付けば青年は石を持ちシグナムという女性に襲いかかっていた。しかし、魔導士ですらないホームレスが叶う訳もなく返り討ちに遭った。

 

「む? お前もリンカーコアがあるようだな」

 

 そう言ってシグナムという女性は青年からも蒐集を始めた。痛みで気が狂いそうになりながらも耐えシグナムも命までは取るつもりはないのか蒐集するとそのまま何処かへと消えていった。青年は痛みをこらえながらその場を離れようとする。11年前のようになってはたまらないという思いから。

 

 しかし、その思いは無情にも壊された。

 

「貴様!? 11年前の協力者か!」

 

 魔導士に見つかり前科者リストに載っていた青年の情報を見て攻撃を受けた後に拘束される青年。蒐集と攻撃によるダメージで意識を失う瞬間、青年は思う。

 

「はは……。俺の人生って何なんだろうな……」

 

 青年は拘束されそのまま牢屋に収監された。そして、闇の書事件が解決すると青年は利用される事になった。

 

【闇の書は消滅したがそこには協力者がいた。それは11年前にも協力者となっていた男である】

 

 管理局は今回の事件で”八神はやて”と言う強力な駒を手に入れた。それを潤滑に用いる為に青年に全てのヘイトが行くようにしたのである。これにより八神はやては闇の書の主という立場から闇の書の被害者となり遺族から攻撃を受ける事は無くなったが青年は管理局が断言したこととさっさと解放された事により遺族の復讐を受ける事となる。

 

 そして彼は、とある遺族の攻撃で致命傷を負い誰にも治してもらえる事無く息を引き取った。彼の遺体はゴミ処理場に捨てられ墓すら作られなかった。

 

 彼の名誉が回復されるのは八神はやてが真実に気づき自ら闇の書の最後の主という事を明かすと同時に青年は何の関係もない被害者であると当時の記録と共に暴露する時であった。その後、八神はやてや闇の書事件の解決に活躍したハラオウン親子などにより墓が作られる事となる。彼の関係した出来事により管理局の体制は見直されより健全な組織として生まれ変わっていくこととなる。

 

 しかし、それが青年にとっていい事なのか。それは今を生きる者たちには分からない。

 



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。