時は少し遡る。
早くコスチュームに着替え終わった鱗は演習場へ向かう。
演習場には早く着替え終わった女子達や爆豪、轟など比較的早く着替え終わっていた面子が揃っていた。
「おう早いねバッきゅん。随分とお洒落な小手を付けてるじゃないの。俺の腕の真似か?」
「誰がテメェのクソ腕なんか真似するか!?自分の個性を活かす為じゃクソが!!」
「そう照れるなって。中学1年生の時のお前の将来の目標は『石楠花 鱗様のようなクールな男になる!』だっただろ?俺は嬉しすぎて号泣したの覚えてるぜ?」
「勝手に俺の過去を捏造すんなやクソが!!誰がテメェみたいな奴になるか!!」
も~、ツンデレ率99%のかっちゃんめ、俺に憧れてるのなら素直にそういえばいいのに。シャイの極みかよ。
そういえば俺まだあの氷の個性の人と話してなかったっけ?まだ人数が少なくて授業も始まっていないこの時間なら親睦を深めるのにちょうどいいや。探せばすぐ見つかるしな。
おっ、見っけ!壁にもたれかかってた。そういうことがカッコいいと感じるお年頃だもんね。しかもあそこまで氷を自己主張するタイプの人間初めて見たわ。ハジケリストの鑑かよ。
「オッスオッス、おれ石楠花 鱗。よろしくな、ソーダ味」
「ソーダ味って俺のことか?俺は轟 焦凍だ」
「それ左目見えてんの?落雁食う?」
「俺はなれ合うつもりはねぇよ。あっち行ってろ」
「連れないこと言うなよ~!HAHAHA!」
「ッチ…!」
舌打ち程度じゃ俺は折れないね。今までに1万回以上の舌打ちをくらってきた俺からしたら今のはまだ「もうちょい話しかけてもいいですよ?」という意味合いの舌打ちだな。舌打ちコンシェルジュを舐めるなよ?
「あっ、石楠花君の服かっこいいね!」
「ありがとう!そんなハッピーな君には落雁をあげよう!」
まぁ、舌打ちするクールイケメンよりも目先の女の子だよね!
「石楠花君の服と腕がマッチしてかっこいいね!それに比べて私は要望ちゃんと書けばよかったよ…パツパツスーツんなった。はずかしい…」
「大丈夫だよモチモチ∞モチ。そのパツパツ具合がいい感じにヴィランの煩悩を刺激して動きを鈍らせてくれるよ」
「モチ!?それに嫌やわ!煩悩を刺激して鈍らせるなんて!?」
「大丈夫、
「田楽マンって誰!?」
流石三重県出身、いい感じに大脳に響くツッコミをしてくれる。えっ、何で出身地を知ってるかって?普通に話していることが聞こえてきただけですが何か?(シャコイヤー)
「またアンタは息を吐くようにセクハラ発言して…」
「そうですわ!そのような発言するものではないですわよ!」
おっと、この声は耳郎と八百万か?
おいおいセクハラする人間に自ら近づくとは焼きもちかよ。
まぁ何処にいても俺の『
そして鱗が振り返ったと同時に動きが停止した。
しかしその目はある一転に集中していた。
「…?どうしたのでしょうか?」
「ウチは石楠花が言いたいことが分かった。それと同時に非常にムカムカしてきた」
「えっ?えっ?」
そして鱗は深く息を吸い込み……
「痴女がいるぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉおお!!!」
全力で叫んだ。
そりゃそうだ。目の前に胸元のはだけたハイレグみたいな痴女御用達の服をコスチュームとして着ているA組一発育がいい女子がいるのだから。
「まぁ!失礼ですわね!個性の都合上このような構造が適正なのですわ!」
「適正でももうちょい隠しなよ!ウチも最初は要望不伝達のコスチュームだと思ったんだから」
「某としては目の保養でありがたいでごじゃるよ、デュフフフ!」
「石楠花は黙ってろ!?あと妙にムカつキショイ話し方すんな!!」
「痴女を前にして『ムカつキショイ』なんて新語を作るなんて中々やるな耳郎。今年の流行語大賞は耳郎の一人勝ちだよ、おめでとう」
「黙ってろ!!」
「あの……これでもかなり当初よりは布の面積が増えたのですが…」
「「痴女かよ!?」」
この日、石楠花の入学後初ツッコミが確認された。
耳郎との親密度が5上がった。
「とにかく!石楠花はこれ以上やらしい目でヤオモモを見ないこと!」
「それ腹ペコの動物の前に餌を置いて『3年間食べずに待っててね』って言ってるようなもんだぞ?」
「そんなわけねーだろ!?」
「わかったよ、とりあえず耳郎の(無い)胸見とくから」
「何でそうな…待て今非常にムカついたのは気のせいか?」
「気のせいだろ、更年期か?」
「イヤホンジャック!!」
「ぐあぁぁぁああ!?」
こいつ…!的確に俺の思考を読み取り、躊躇なくイヤホン爆音攻撃してきやがった…!まさか…殺し屋か!?あの濃密な殺気は間違いなく殺し屋だ!エージェントペタコンMarkⅡかよちくしょう…!
「石楠花…?」
「ういっす」
いい笑顔だね。顔に影が差した黒い笑みじゃなかったら向日葵ってあだ名をつけるぐらいよかったのに。
「もうその辺りで勘弁してあげなよ。石楠花君もわざとじゃないんだよきっと!」
おいおい天使が降臨なされたのか?
この声は葉隠か?なぜ女子は俺の後ろから声をかけることが多いんだよ。俺の男らしい背筋に見とれちまったのか?ならしょうがないな。
そこで待っててくれよマイラブリーエンジェル葉隠。今稀代の天才石楠花様があなた様のお顔を崇拝するために振り向きますからね。
……ていうか葉隠って透明だからコスチュームどうしてるんだろ?
まさか全裸なんてことはないよな。きっとそうだ、そうに違いな…
てっ…手袋と靴のみ着用の全裸美少女だとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?
「バカなぁぁぁぁぁ!?」ドガンッ!!
「「「石楠花/君/さん/ちゃん!?」」」
石楠花は何かに殴られたように10m程吹っ飛び壁に激突した。石楠花に10のダメージ!
「アンタ急にどうしたの!?何急に吹っ飛んで壁にヤ〇チャ倒れポーズでめり込んでんの!?」
「どうなされたのですか!?」
「ごめん!?私透明以外の新しい力でも獲得したの!?」
「サッ…!」
「「「さ?」」」
「サイバイマンめ…!!」
「「「あっ、よかった。いつも通りだ」」」
あぶねぇ……!俺じゃなかったら5回は死んでたな…!
なんて破壊力なんだ…!まるで童貞から進化した魔法使いが待ち続けている夢のような存在が目の前に降臨なさるとは…!
葉隠の全裸を視界に収めた瞬間から脳内ブルーレイをフル稼働して大脳皮質にフルHDで保存し、俺の息子に送られる元気エネルギーを中学の時教員のBBAが全校集会中にパンチラをして大多数の生徒を保健室送りにした忌まわしき事件を思い出すことによって強制的に押さえつけたことにより、何とか吹っ飛ぶだけに留まった訳だが……葉隠半端ないって。
今だけは何でも見通す石楠花アイが憎い…!
葉隠のおっpゲフンゲフン…ハリのある乳房と桃色に聳え立った乳頭。
普段あらわになることはない、新たな生命の誕生を迎えるため必要不可欠な象徴たる女性器、+おけけ。
全てが鮮明に色褪せない思い出となって俺の頭の中でチューチュートレインして来やがるっ…!
まさか自分の体を使ってまで俺の魂を取りに来るとは、その根性天晴なり!だが裸で登場レベルなら毎日ビデオで目に焼き付けてるんだよ!!残念だったな!
まぁクラスメイトの全裸という背徳感でもう既にヤバいが、童貞界のハジケリスト筆頭の俺を倒すなんて10年早い「ごめんね石楠花君!?怪我してない!?大丈夫!?」わ……
クラスメイトの美少女の全裸+上目遣い涙目内股胸お股強調フルコンボだとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?
「ブハぁぁぁ!?」ズドンッ!
「「「ええええええ!?」」」
葉隠の凶悪コンボの完成により、天井に突き刺さった石楠花が完成した。
「何でアイツはまた吹っ飛んだの!?しかも血塗れで上に!?」
「知りませんわ!?何があったのでしょう…」
「えっ!私やっぱり新たな個性に目覚めちゃった!?」
三者三様の意見が飛び交うが解決には至らない。
しかしそこで精神的支柱こと梅雨ちゃんが名案を思いつく。
「爆豪ちゃんなら同じ学校だったらしいから、何か知ってるんじゃないかしら?」
「「「それだ!」」」
「アアッ?」
その言葉と同時に女子達が爆豪の元に集まる。しかしそんな状況でも一切喜びを見せないのが爆豪 勝己と言う男だ。
芦戸「ねー爆豪!石楠花は何で刺さってるの?」
耳郎「お願い、気になって眠れないんだ爆豪」
麗日「何でなん爆豪君」
蛙吹「何故かしら爆豪ちゃん」
八百万「何故ですの?」
葉隠「教えて爆豪君!」
「だあぁぁ!うるせぇんだよ!誰だテメェら!」
この通り平常運転である。
「えぇー教えてよ爆豪…あっ、まさか知らないの?」
「はあぁ!?知ってるわクソが!」
チョロい。
「で、何で吹き飛んだの?」
「あぁ?そんなもん簡単だろ。アイツはアホみたいに目が良い、それこそ気持ち悪いぐれぇにな。だからそこの透明女の裸でも見えたんだろ。アイツ前に透明でも見えるって言ってたしな。これでいいかクソが!」
これ以上にないほど簡潔にわかりやすい説明であった。だからこそ約一名は思考が停止する。まさかと思った可能性の一つが実現してしまったからだ。
「今…目がいいって言った…?」
「…言ったね」
「透明でも…見えるって……言った…?」
「…言ってたわ」
「裸も…見える…?」
「…そうらしいね」
「私…何したっけ…?」
「…裸で近づいていましたわ」
「裸を…見られた?」
「…そうだな」
なんて声を掛けていいのかわからない…!女子たちの思考は偶然にも一致した。
「ねぇ…もしかして石楠花君から見たら私って…痴女?」
その問いに対して誰も答えなかった。いや、答えられなかった。誰も「痴女っていうのはこのハイレグポニーテールのことを言うんだよ?」とは言えなかった。
そしてそんなお通夜みたいな雰囲気の中…
「俺復活!」
石楠花復活、カオスの誕生である。
「どうしたそんな葬式みたいなテンションで。ペットのところてんが食われたのか?」
「いや、その…石楠花ってさ?透明でも見えるの?」
この一言で賢い石楠花はおおよそ理解した。そして先ほどの光景を思い出して息子が暴れださないように脳が円周率のループ再生を始めた。この男、気が利くのである。
「そのことか…葉隠!!」
「はっ、はい!!」
「俺が今からいうことは一つだけだ。それは……
国宝級の裸体をありがとうございました」
「いっ…いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?恥ずかしいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」
全裸の女の子を前にした直球の誉め言葉である。
そして目の前で女の子を汚される瞬間を見た女子たちの行動は早かった。
「「「おらあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」
「ぐはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
女子の恨みがこもった5人分の渾身のアッパーカットが顎に直撃。
再び石楠花は天井に帰っていった。逆生け花の完成である。
そしてすべての出来事が終わったと同時に着替え終わった男子たちが演習場に到着し、石楠花(生け花モード)を目撃する。
「お前何があったらこんなことになるんだ!?」
「しっかりしろ石楠花!?」
「うぅ……もうお嫁に行けない……」
「シュ☆ク☆セ☆イ☆しなきゃね……!」
そして最後に緑谷が演習場に到着することでこの騒動はようやく終了した。
「えっ…これどういう状況!?」
オールマイト「(若い子たちの会話の中に入っていいものなのか……えっ!?何で石楠花君器用に天井に刺さってるんだい!?)」
この間オールマイトはずっとオロオロしていた。