正気かお前ら!?ありがとうございます!
5時間目、それは昼ご飯を食べて適度に眠くなってきた時間に襲いかかる授業である。そんな時間に今日は『ある授業』が行われようとしていた。
「今日のヒーロー基礎学だが…、俺とオールマイト、そしてもう1人の3人体制で見ることになった」
「ハーイ!何するんですか!?」
瀬呂、それ以上でもそれ以下でもない男が相澤先生に質問する。彼は実力はあるのかも知れないが爆豪からもしょうゆ顔と呼ばれるように、生粋のしょうゆ顔である。
「何か失礼なことを考えられてる気がする…」
勘も中々鋭いな。だが俺からすればお前はどんまい顔だ。予測しよう!お前は将来きっと『どんまい』と言われるッ!これは確定事項だ!!
鱗がアホなことを考えている間にも話は進んでいく。
「災害災難なんでもござれ、
「レスキュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
「石楠花黙れ」
いやー、レスキュー沸るね!レスキューって言葉だけで茶碗3杯はいけるぐらい沸るね!俺の個性を何処まで活かせるか調べないと!
「今回のコスチュームの着用は各自の判断で構わない。中には活動を制限するコスチュームもあるだろうからな。訓練場は少し離れた場所にあるからバスに乗っていく。以上準備開始」
「任せてくだせぇとっつぁん!」
「石楠花黙れ」
ボキャブラリーもっと増やしましょうぜイレイザーヘッド!
「あっ、そうだ葉隠」
「どうしたの?石楠花君」
「前言ってたコスチューム出来たぜ」
「えっ、本当に作ってくれたの!?」
当たり前じゃないか。毎日裸を拝めるのはありがたいが、俺がマトモに動けなくなる。常に前傾姿勢のヒーローなんてカッコ悪すぎだろ。
「その商品がこちらです」
「テレビショッピングみたい!」
「葉隠仕様に作られた戦闘服でございます。耐冷、耐熱、衝撃吸収仕様に裂傷にも強い。破れにくく通気性も抜群。更に動きやすさを重視した逸品となっております」
「「「いや機能のデパートかよ!?」」」
恐ろしく高性能なコスチュームを持ってきた鱗。そんなコスチュームを作ってしまう鱗のお父さんの会社が気になる一同だった。
▽
俺はコスチュームで出陣だぜ!
コスチュームを着るとあの日の出来事が脳裏によぎって大変だぜ!
八百万もコスチュームを着るたびに顔を真っ赤にしてるしな。かわいい。あっ、目が合った。イヤンイヤンしてる。かわいい。
それよりも緑谷はまだ体操服らしい。コスチュームの修復は作った会社が行うから俺は手出しできないんだよな。葉隠のコスチューム?あんなもん手袋と靴だけなんだから修復もクソもないだろ。だから俺が間に入っても大丈夫。OK?
「石楠花君!これすっごく着心地いいし動きやすいよ!」
そこにはコスチュームを着こなした葉隠の姿があった。
このコスチュームは葉隠に合わせて任意で透明にしたり、皆に見えるようにしたり出来る。だからこそ今は制服みたいな感じで服だけが動いているように見える。
「それは良かった。俺も頑張った甲斐があるってもんだ」
「えっ!?石楠花君も開発に関わったの!?」
「うん。一応コスチューム開発のライセンス持ってるし」
「「「お前本当に何者なんだよ!?」」」
衝撃、クラスメイトがコスチューム開発に関われる件について。
まぁいいじゃないか。親父に教えてもらったらメキメキ上達してライセンス取れるまでに至った経緯なんて。
「でも葉隠のコスチュームってエロいよな。なんか対魔「当て身」グエッ…!」
それ以上は言わせないよ峰田。俺の誇りにかけて。
と、ここまで黙っていた緑谷が急に大声を上げた。
「あーーーーーーーっ!?」
「ウルセェカスが!急に叫ぶんじゃねぇぞクソが!!」
「そそそそのコスチュームっ!何処かで見たことあるデザインだと思ったら!もしかして石楠花君!そのコスチューム会社って"
「えっ、よくコスチュームの外見を見ただけでわかったな。変態か?」
なんで見ただけで分かるんだろ?ヒーローオタクの目って俺よりいいんじゃね?
「だってCOSMOSは有名なんてレベルじゃないよ!?あらゆる今をときめくプロヒーロー達のコスチュームを作り!オールマイトのコスチューム開発にも携わり!自分ではどうすることもできない個性をサポートアイテムで制御できるようにして日常生活を送れるようになった人は数知れず!今最も有名なコスチューム会社で!他にも…ブツブツブツブツ…」
「逃げろみんな!耳がゲシュタルト崩壊起こすぞ!!」
こいつ一つに集中するとお経のように何かを唱え出すんだよな。寺の関係者か?
そうして飯田の指示に従ってバスに乗り込んでいく。修学旅行タイプじゃなく、市営バスタイプだったので指示は無駄になったが。
バスの中では各々が話し始める。その中でも蛙吹が緑谷に聞いた言葉がみんなの耳を集中させた。
「私思った事を何でも言っちゃうの緑谷ちゃん」
「あ!!ハイ!?蛙吹さん!!」
「梅雨ちゃんと呼んで」
「あなたの個性オールマイトに似てる」
ファっ!?遂にバレたか緑谷!お前の挙動はいつかバレると思っていたがもうバレたのかお前!
「そそそそそうかな!?いやでも僕はそのえー」
その隠そうともしないキョドり方、俺は他人事だからすげぇ面白い。引くほど面白い。こんな大事な話を俺の家の前でしてたって事実がより面白味を加速させてる。家なら心配されるぐらい笑ってた。
「待てよ梅雨ちゃん、オールマイトは怪我しねぇぞ。似て非なるアレだぜ」
何故止める切島!!ここから面白くなったと言うのに!!
お前は後で鼻フックデストロイヤーの刑に処す!
こうして話は進んで行き、誰の個性が派手で強いと言う話題に変わっていった。
「派手で強えっつったら爆豪と轟と石楠花だな」
「ケッ」
「バッキュン、褒められて嬉しいならちゃんと言葉に出さないとダメよ?」
「うるせぇ石楠花!!ババアかテメェは!!」
「爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気出なさそ」
「んだとコラ!!出すわ!!」
「ホラ」
「ハハハハハハハハハハハハ!!ヒーっ!!」
「腹抱えながら笑うな石楠花!!ブッ殺すぞ!!」
おいおい核心つかれてるじゃあないか爆豪君ヨォ。事実その通りだしね。
「この付き合いの浅さで既にクソを下水で煮込んだような性格と認識されるってすげぇよ」
「テメェのボキャブラリーは何だコラ!殺すぞ!!!」
「確かにコイツは糞に糞尿をぶっかけてルーブルに飾って金取るくらい最低な性格をしてるけど、根は良いやつなんだよ」
「テメェのボキャブラリーも何とかしろや石楠花!!全然褒めてねぇじゃねぇかクソが!!」
「「「ブァッハッハッハww」」」
「笑うなクソどもがぁぁ!!」
ちゃっかりいじられキャラに定着しちゃって。俺のおかげかな!!
「もう着くぞ、いい加減にしとけよ…」
「「「はい!」」」
こっちも調教具合がいいね!
▽
「すっげーー!!USJかよ!?」
いやマジで広いな。近所の公園何個分よ?なんか湖も見えるぜ。ラブラブデートできるじゃん。
「私の家の敷地より広い気がしますわ」
「それはいったいどれほど広い家なんだい?」
このお嬢様はいきなり何を言い出すんだ。広い気がするって何?一回広いって意味を辞書で調べさせないといけませんわ。
八百万と話していると相澤先生とスペースヒーロー13号がいた。しかし3人と言っていたのにあと一人がいない。多分オールマイトだろう。なんかニュースでヒーロー事件を解決したって書いてあったし。
「水難事故、土砂災害、火事…etc、あらゆる事故や災害を想定し僕が作った演習場です。その名も…
本当にUSJとは…訴えられたりしないよな。
「えー始める前にお小言を一つ二つ三つ四つ…」
「「「(増える…)」」」
ヤバい増えすぎだ。多すぎて俺の耳が言葉を拒み始めた。とりあえず主要単語だけ聞き取って、あとは必ずスケベを成功させる魔法の言葉でも考えとくか。
えーと?「ブラックホール」、「簡単に人を殺せる力」、「可能性」、「人に向ける危うさ」、「どう活用するか」。なるほど人を殺せる力でも使い方によっては人を助ける可能性を秘めている。訓練で実際に体験して、それをどう活用して素晴らしいヒーローになるか考えよう、そんなところだな。
「以上!ご清聴ありがとうございました」
「ステキー!」
「ブラボー!ブラーボー!!」
いい話だよね。
「そんじゃあまずは…」
だが奇しくも人を助ける力を学ぶ機会に異変が訪れてしまった。最初に気づいたのは石楠花、次に相澤。いち早く発生した靄に気づき一歩前に出る。そして相澤が号令を出す。
「一かたまりになって動くな!!13号!!生徒を守れ!」
「何だアリャ!?また入試みたいなもう始まってんぞパターン?」
「動くな!あれは………
「13号に…イレイザーヘッドですか…、先日
「やはり先日のはクソどもの仕業だったか…」
「どこだよ…せっかくこんなに大衆引き連れてきたのにさ…オールマイト…平和の象徴が…いないなんて…
子供を殺せば来るのかな?」
突然現れた悪意。その現実に頭が追い付かない者やまともに動けない者がいる中、一人の男は違った。
「えっ、ファッション界のドンが降臨なされたぞ!?今最新のファッション、『全身熊手コーデfeat.黒トリュフの中からコンニチハ』の完全再現かよ!!原宿に行ってみな!みんなが崇め奉るぜ!」
「何だ?…お前…」
運命のゴングが今鳴らされた。