残念だったな!ハジケは帰省していったよ!
「「「石楠花/くん/さん!?」」」
最初に叫んだのは誰か…それすらわからないほど生徒たちは動揺し、鱗の容態を確認するために急いで鱗の元へ駆けつけた。
「はははははッ!!なんだ!口ほどでもないな!!よくやったぞ脳無!!」
後ろで何か叫んでいるが気にしない。生徒たちの目には腕を引きちぎられながら吹き飛んでいく仲間の残像が脳裏にこびりついていた。
そしてたどり着いた先で見つけた仲間の姿に絶句した。
左腕は肘より上あたりから引きちぎれ血が大量に出ている。そして左腕をクッションにしても止まらなかった拳が左頬を捉え、左目も危険な状況だ。吹き飛ばされて障害物に叩きつけられた衝撃で体中がボロボロ。
「うわあぁぁぁぁぁぁぁ!?石楠花ぇぇぇぇぇぇぇ!」
「そんな………!?酷い…!!」
「石楠花さん!?死なないでくださいまし!?」
「石楠花!?しっかりしろ!!」
仲間たちが口々に名前を呼ぶ。死んでしまったのではないかという最悪が脳裏によぎるが振り払うように声をかけ続ける。その声が聞こえたのかゆっくりと目が開いた。
「あっ、手ぇ取れた」
いつも通りだった。
▽
イッテェ…、あの脳みそクロスケめ…!
腕が痛い、死ぬほど痛い。泣き叫びたいぐらい痛い、でも声には出さん!心配されるからな。
あと左目がイカれた…シャコが目を怪我するとか致命的じゃん。だが俺は止まらないがな!
「石楠花ぇぇ!!大丈夫かよ!?」
「ああ、余裕シャクシャクだ」
「逆に何で大丈夫なんだよ!?腕取れたんだぞ!?」
「俺は長男だから我慢できた。次男だったら我慢できず泣き叫んでいただろう」
「お前一人っ子だって前に言ってたじゃねぇかよぉぉぉ!?」
「覚えておけ、一人っ子と長男は紙一重。リピートアフターミー?」
「いつも通りで安心したよバカやろぉぉぉぉぉ!!」
皆が石楠花が生きていたことを喜ぶ。
八百万は特に凄かった。
「石楠花さん!!」
「イダダダダ!?傷口がより死ぬ!それにまだ勝ってないから!!」
「あっ!申し訳ございません!」
解放され、鱗はゆっくり立ち上がる。見つめる先はニヤニヤした顔のヴィランだ。
「なんだよ生きてたのか…残念だな。でももうその腕じゃ戦えないなぁ…!」
「心配してくれるのか?熊手男。生憎だが俺はここからだぜ?よし耳郎!」
「なっ…何だよ?」
「頑張れお兄ちゃんニャンニャン♪と言ってくれ」
「誰が言うか!?」
「えぇ〜、言ってくれないの?言ってくれなかったらパワーアップ出来ないんだぜ?」
「何で言わなきゃいけないんだよ!?」
「いいじゃねぇか、言ってやれよ。言ったところで結果は見えたんだからな。どの道片手のガキに何が出来るかって話さ」
「何でヴィランにまで待たれたんだよ!?」
意外と優しいじゃないか。それが後々自分の首を絞めることになるんだが待ってくれるってんなら待ってもらおうか。お前達はハジケの何たるかを分かっちゃいない。ヴィランにとってハジケリストは超越した存在なんだからな。
「さぁ、耳郎!」
「耳郎さんお願いします!!」
「「耳郎!」」
「うぅ……っ、がっ…頑張れお兄ちゃんニャンニャン…!!」
「よっしゃあぁぁぁ!力がみなぎってきたぁぁぁぁ!!テッテレ〜〜!新しい腕〜!!」
「「「はぁっ!?」」」
千切れた箇所から新たな腕が生えてきた。それもそうだ。脱皮を繰り返して成長する甲殻類の多くは、脱皮を繰り返すことで失われた脚や触角などの部位が再生していく。さらにはたった一回の脱皮で失った部位がほぼ元通りになる甲殻類も実際にいる。鱗は人型のシャコ、人間をベースにしているからこそ体に蓄えられた栄養分を消費することにより、瞬時に手足の再生を行えるまでに至っていた。
「はぁ!?何で腕が生えんだよ!?お前も『超再生』の個性持ちか!?」
「そんなわけないだろ、バカかお前。お兄ちゃんは時に次元を超える、それだけさ」
「ほんと何なんだよお前は!?ロードローラーと降ってきて!脳無と殴り合えて!腕千切れても元気で!腕が生えてきた!お前は一体何なんだ!!??」
「ハジケリストです」
「だからハジケリストって何なんだよぉぉぉぉぉぉ!?」
「落ち着いて死柄木 弔!?」
はぁー、煽り耐性ミドリムシ以下かよ。この煽りなんて俺の会話レベルでまだまだ序の口なのにもう掻きむしってるよ。敵なのにずっと見てられる、クラゲのアクアリウムみたいだ。
「石楠花!?お前どうやって腕生やしたんだよ!?」
「ん?簡単だよミノルン君。甲殻類は腕や足が生え変わる、緑黄色野菜でも知ってる常識だぜ?」
「おいら達野菜以下かよぉぉぉ!?」
でも腕生やすのに結構エネルギー使うんだよな。しかもちょっと細いし。また鍛え直しだ。おっと、落雁落雁。エネルギー補給は大事だよね。
「やはりあなたはここで殺しておかないと後々邪魔になる存在ですね!!」
「ワープゲートってトイレどうすんの?ワープさせんの?それって漏らしてんのと一緒じゃね?うわっ、汚な。えんがちょ」
「このクソガキがァァァァァァ!!」
「そう怒るなよ、落雁いるか?あっ、食ったら漏れるか。ごめんごめん」
「黒霧、お前が乗せられてどうするん「お前尻拭く時どうすんの?えっ、まさか拭かない派か。『きのこの山』、『たけのこの里』に続いて人気の『拭かない尻』か。マイナーだけど俺は応援してるぜ?」殺れ脳無!!あのクソガキを後悔するほどにブチ殺せ!!!」
めっちゃキレますやん。脳無君も大変だね?こんな尻をふかないすぐキレるパワハラ上司の指示に従わなきゃいけないなんて。俺なら術式展開しちゃうね。
ぶっちゃけ脳無君の対策はもう出来た。ようは当たらなきゃいいだけの話だ。今度の俺は一味違うから仲間を狙われることなんてバックスクリーン3連発ぐらいないね。
よーし!じゃあお兄ちゃん頑張っちゃおうかな!
▽
「何で…!?何で脳無の攻撃が当たらない!?」
戦闘が始まって現在まで鱗に脳無の攻撃が当たった回数は未だゼロ。対する鱗の攻撃は脳無に面白いくらいに当たる。そして攻撃が当たるたびに脳無は動きが鈍る。
脳無も心なしか焦って見えた。
当然だ。人間など叩けば粉砕できる筈のこの拳が…
対オールマイトのため改造され『筋力』『俊敏』『個性』全てが強化され、オールマイト並の力をオールマイト並のスピードに乗せて放つこの拳が…
当然だ。男は躱して打つ、打っては躱す。この動作に命をかけてきたのだ。
鱗が脳無に対して行っているのは『真拳』でも『ハジケパワー』でもない。只々純粋な『ボクシング』。
躱して『
潜って『
普段はハジケている男は、幼少の頃から毎日毎日毎日毎日この動きばかりを練習してきた。
そんな武道の道を歩んできた男に対して力、スピードに任せたテレフォンパンチなど当たる筈がなかった。
「何してる脳無!?早くそのガキをブチ殺せ!!」
「やかましい!!白滝でも食ってろ!」
「ぐえっ!」
戦いながら顔面に白滝をヒットさせられるぐらい、今の鱗には余裕がある。積み上げてきた努力、相手との圧倒的な差、そして何より…
自分の背には守るべき存在達がいることが鱗を強くする何よりの根拠だった。
「いいよ脳無君!かなり強めの俺のパンチでも壊れてくれない!こんな
「本当に何なのですか彼は!?援護しようにも風圧で近づけない!!とんでもないことを仕出かすバカだと思いきやオールマイトと同威力の連撃、更にヒーロー以上の身体能力だと!?何でこんな
「何なんだ…、一体何なんだお前はァァァァ…!!」
その問いに対し、鱗は…
「ハジケリストです」
「「だからハジケリストって何なんだァァァ!?」」
安定の答えを導き出した。
「じゃあ脳無君、今から
「「「ツッ…!?」」」
雰囲気が今までの比にならないくらい冷たいものに変わった。それこそ敵も味方も背筋に冷たいものが通るくらいに。
腕を引き、力を溜める。そして………
前二本の捕脚をスナップさせ打ち出すこの一撃は
しかしこれらは水中での出来事。陸地では自分の余りの力に耐えきれず、自身も傷ついてしまう可能性があるから加減をすると言う説がある。
だがこの説は否である。いや、
彼は人の枠組みでは考えられないことを易々とやってのける。脳がセーブをかける?いや、かけない。自身の力で傷つく?いや、傷つかない。ハジケリストには当たり前の常識は通用しない。
考えたくもないが………
限界まで溜められた力を解放した時、光るのだ。その現象の名は『ソノルミネッセンス』。シャコはパンチの威力で真空の泡"キャビテーション"を引き起こす。キャビテーションによって発生した泡が高温になり、原子・分子が放棄されて発光するのだ。
ではこのキャビテーションはどこで発生するのか?
答えは簡単。殴られる対象の
『人は水の溜まった皮袋だ』と…
人の水分量は80%を占める。だからこそ鱗はパンチの当たる瞬間に"発勁"を乗せる。するとどうだ?シャコのパンチによって放たれる発勁は相手の体内でキャビテーションを発生させ、淡く光り、体外からも体内からも崩壊させる。
その名も……『青龍蝦パンチ・改』
鱗の拳が脳無に直撃した時、置き去りにした音が森羅万象全てを支配し、脳無の胸を拳型に陥没させ、轟音と共に紙切れのように吹き飛ばした。
そして吹き飛ばされた脳無がもう立ち上がることはなかった。
「…勉強になったか脳無君。ただ打ち合うのが"喧嘩"なら、打たせず打つのが"格闘技"、でもって…
吹き飛ばされた脳無に背を向け、高々と右手を挙げた。
鱗は目が良いが流石に空間を超えてみることは出来ない。
だからこそ気づかなかった。
敵は
「